新書のプロに会いに行こう
これまでに「謝罪大国ニッポン(著者:中川淳一郎)」や、「大塚明夫の声優塾(著者:大塚明夫)」「週末バックパッカー(著者:我妻弘崇)」などの新書を手がけてきた本当に新書を作ってる編集者の今井雄紀さんに、「売れる新書のタイトル」のポイントについてお聞きしました。
―今井さん、この中で売れそうな新書はありますか?
「うーん、そうですねぇ…。今の新書は帯も非常に大事なので、一概にタイトルだけでは判断が難しいですね…。中には帯を付けることで一気に映えるものもあると思います。例えばこれですね」
「仮にですけど、『今こそ夜這い!』みたいな帯を付けたら、タイトルに説得力が生まれて手に取ってみたくなるかもしれません」
―おお! 確かにただのひどい下ネタ本だったのが、一気に「昔の文化を見直す」みたいな趣に変わりますね!
「表紙から数ミリ小さいだけの全面帯というものも登場するくらいで、本当に帯の存在は重要です。なのでこの企画もタイトルと一緒に、帯もセットで考えてみてはどうでしょうか?」
―なるほど、知らない内にそんなに帯が重要な世界になっていたとは…。今回は「信じられないほどダルい」などの諸処の事情がありますので、タイトルだけでの判断をお願い致します!
「わかりました。すごく悩みましたが、今回見た中で『売れそうな新書』第1位は……」
「こちらです」
―おお…! これなんですか?! 決め手は一体何なんでしょうか?
「イオナズン・スライムという言葉が非常にキャッチーかつ、戦争という重いテーマとも噛みあうのでとても良いですね。見た人の頭に『?』が浮かぶので、思わず手に取りたくなるタイトルだと思います」
―なるほど…、そう言われると良いタイトルに見えてくるから不思議です。
「ただ当たり前ですが、内容はちゃんとドラクエと関係していないとダメですね。キャラクターの使用許諾はもちろん、堀井雄二さんとの対談があるとか」
―まあ、内容は、この際いいじゃないですか。本は書きたくないけど夢だけを見ていたいんです…。ちなみに『すごく悩んだ』と仰ってましたが、惜しかったタイトルってどれでしょう?
「3冊あるんですが、まずはこれですね」
「難しいものをわかりやすく解説するっていうのは単純に需要があります。ただ、『ブラックマンデーは皿づまり!?』を頭に持ってきてもいいかなと思いますね。こういう人を引き付けるワードは頭に持ってくるべきです」
―なるほど! そこがクリアされてたら1位だったかもしれないですね。他はどれでしょう?
「2冊目はこれです。新書を買う層は50代~60代が多いので、健康・美容系はテーマとしてそもそも強いので売れると思います」
―でもこれ「スケベな運送屋」とか書いてますが、それはいいんですか…?
「確かにそこは懸念点ですが、『自分なんてただのスケベな運送屋ですから』という謙虚な感じがして、逆にいいかもしれません」
―本当ですか?「スケベな運送屋」に関してめちゃめちゃポジティブな捉え方ですね。
「3冊目は条件付きでこれです」
―これですか?! 正直、これが売れるとは思わないんですが、条件って一体何ですか?
「リュウが書けば売れます」
―じゃあ無理だろ。
「そうですね。現実的に無理だなと考えたので外しましたが、著者が誰かによってタイトルの説得力も大きく変わるということです」
―なるほど、奥が深いですね…。では最後に、これは絶対売れないという本も教えてください!
「うーん、それも非常に難しいのですが、強いて言えばこれですね」
―これはなんとなくわかる気がしますが、どういうところが悪いのでしょうか?
「タイトルに造語を入れるのはいいんですが、『味噌ギツネ』『即煮』と造語が2個以上入っていては意味がわかりません。造語は1個に留めて、他はそれをフォローして説明するようなタイトルにすべきですね」
―なるほど、確かにそうですね。でもこれに関しては「味噌ギツネ」というカードを入れた奴が一番悪いと思います。
「それは私もそう思います」
というわけで、新書のプロに太鼓判をいただいたこちらのタイトル、出版をお考えの出版社の方はオモコロまでご連絡ください(すぐさまスクエニから訴えられます)
みなさんも、何かのタイトルがどうしても思いつかない時はこの方法を試してみてはいかがでしょう? 時間をドブに投棄できます。
【前回の記事】
「読みたくなるタイトル」はどう生まれるのか?プロが教えるベストセラーの作り方