本の奥付を見たことはありますか?

通常、書籍の一番後ろにある、出版元や発行年が書かれたページです。

↑こういうのが奥付

 

ここでついつい気になってしまうのが、ここ。

そう、刷数。

これは、この本が何回印刷されたかを意味しています。本が売れて、在庫が少なくなると重版がかかり、追加で印刷され、その際にここの数字が1つずつ増えていくのです。

年間7万冊の本が世に出ていくと言われる現在、多くの本が1刷目で姿を消していくなか、ベストセラー本ともなるとここに数十もの数字が刻まれることになります。

 

というわけで、今日はこの刷数を使って、ブラックジャックをします

 

挑戦するのは、この4人。

原宿:オモコロ編集長。かつて書店で働いていた。

ダ・ヴィンチ・恐山:オモコロ編集部。作家としての顔も持つ。

みくのしん:オモコロ編集部。初めて本を読む記事で大バズりした。

加味條:この記事を書いているライター。本を読める。

 

4人がやってきたのは、都内某所の大型書店。

これから下記のルールに従い、本を買っていく。

 

【ルール】

・予算は3,000円以内

・合計刷数が、210刷になるように本を選ぶ

・奥付を見たり、ネットで検索するのはNG

・本当に読みたい本を買う

よーし、やるぞ……。

刷数か……。全く予想がつかない。

そうなんです。1回の印刷で刷ってる部数も本によってバラバラなので、「何部売れてれば何刷」っていう明確な基準が無いんですよね。

※というわけで念を押しておくと、この企画で刷数を扱うのは「予想しづらい数字だから」という理由であり、刷数の大小によって本の優劣などを論じるものではありません。あらかじめご了承ください。

ただいきなり合計210刷を狙えを言われても無理だと思うので、目安を用意しました。

お、助かる!

【参考情報】(2023/10/18に書店で確認した刷数)

『ハンチバック』⇒ 6刷
著:市川沙央(直近の芥川賞受賞作) 

『変な家』⇒ 31刷
著:雨穴(2021年発売のベストセラー小説) 

『スマホ脳』⇒ 26刷
著:アンデシュ・ハンセン 訳:久山 葉子(2020年発売のベストセラー新書) 

『君たちはどう生きるか』⇒ 97刷
著:吉野 源三郎(原著)   

『深夜特急1―香港・マカオ―』⇒ 62刷で新版になり、現在6刷
著:沢木耕太郎 (バックパッカーの聖書と呼ばれる本)

いわゆる名著だと、1冊で100刷ぐらいいくのか。

深夜特急のパターンが怖いですね。途中で版が変わり数字がリセットされる、という。

こういう場合は、カウントは6刷になっちゃうってこと!?

そうです! では皆さん、ぴったり210刷目指して本を買いましょう! ブラックジャックですから、210を1でも超えたらドボンで失格ですからね。

よし……

買うぞ!!!!!

 

~1時間後~

 

買い物を終えた4人が再集合した。

難しかった!

刷数を気にしながら本買うの、新鮮でした。

まったく自信ないなぁ。

それでは、順番に買った本を紹介していきましょうか。

 

1人目:加味條の買った本

では僕から行きますね。買ったのはこの3冊です。

宮部みゆきの『火車』だ! なつかしいな。

お、泡坂妻夫の本がある。

作戦としては、ベストセラー本を2刷買って100刷+100刷にして、最後に新刊で1桁足して210刷にしようとしたんですが……。まあとりあえず、1冊ずつ紹介していきますね。

 

1冊目:火車

「100」狙いで買ったのがこれです。

これはもう、全員読んでた。ドラマ化も映画化もしたし。

でも100刷って相当じゃないですか!? そんないきます!?

全然行くと思いますよ、だってほら、背表紙に……

250万部!?

ミステリーでこんな数字、なかなか無いはず。

たしか、カード破産の話なんですよね。タイトルは「火の車」って意味で。

 

【火車(著:宮部みゆき)あらすじ】

休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。

新潮社サイトより引用)

みなさん読んだことあるんですか?

高校のときに読みました。登場人物がめちゃくちゃ多かった記憶があります。

僕も読んだんですけど、まったく覚えてないかも。

え?

いや、めちゃくちゃ面白かったんですよ。

どう面白いんですか?

覚えてない。

なんでだよ!

なんでかなあ……。当時、お金がなくてブックオフで100円で買った本をただただ乱読してたから、「読みたい」じゃなかったのかも、「めくりたい」だけだったのかも。

読んでいたのではなく、めくっていた……。

あと「爆発的にウケてる」っていう前情報が入りすぎて、「確認」みたいな気持ちで読んでしまったのかもしれないですね。「こういうのがウケんのか」みたいな気持ちで「火車」を読んでた。これを機に、ちゃんと読み直そうかな。

結局、どんな話なんだ。

 

 

2冊目:しあわせの書 迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術

で、もう1冊100刷を探そうとしたときに、これを見つけちゃって……。

ヨギガンジーのやつだ!

なにこれ! 見たことないかも。

「とんでもない本だぞ」って数年前にネットでめっちゃバズってたので、読みたくなって買っちゃったんですが、刷数がまったく見当がつかない。

どうバズってたんですか?

内容というか、本自体にギミックがあるらしいんですよ。

あ、本当だ、帯にも「絶対の本書のトリックを明かさないでください」って書いてある!

えー、気になりすぎる! 一番最後のページだけ今読んでみましょう!

絶対イヤです。

 

【しあわせの書―迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術―(著:泡坂妻夫)あらすじ】

二代目教祖の継承問題で揺れる宗教団体“惟霊講会”。布教のための小冊子「しあわせの書」に封じ込められた驚くべき企みとは何か?

新潮社サイトより引用)

この作者、マジシャンなんですよ。マジシャンならではのギミック本を他にも出してて、たとえばある本では、袋とじが何個もあって、普通に読んだあとに袋とじを開けてもう一度読むと、まったく別の話になるというがありました。

※その本がこちら↓

ギミック本で言うと、「世界でいちばん透きとおった物語」も話題になってたよね。

TikTokきっかけで売れたらしいですね。読んだら確かにすごかったです。

読みながら、作者がギミックを思いついたときの葛藤みたいなものをつい想像しちゃいました。「あれ、これできるぞ?……でも、それを俺がやるのか?…………やるかぁ!」みたいな。

ギミックってめちゃくちゃ滑る可能性もあるのに、その恐怖に立ち向かったのはすごい!

気になりすぎる! それも最後のページだけ読みましょう!

絶対イヤです。

 

3冊目:ナイフをひねれば

で、計算ではあと数十刷が必要なんですが、そこで買ってしまったのがこれです。

いやいや、これ新作でしょ!

買い物の時間が残りギリギリになって、とっさに平積みされてた欲しかった本を手に取ってしまいました。パニックバイ。

この作者の『カササギ殺人事件』、めちゃくちゃ面白いんだよ。「話題書らしいけど、意外とちゃんとした本格ミステリだなぁ」と思いながら読んでると、途中で「ええっ!?」ってなる

上下巻あって、下巻の最初でビビらされるんですよね。

いいなぁ! 僕は長い本読めないから、羨ましいです。そういう読書体験。

ただ、これは『カササギ殺人事件』とは別の「ホーソーンシリーズ」の新刊なんです。このシリーズは作者自身が主人公というのが最大の特徴で。

有栖川有栖みたいな?

というより、フェイクドキュメンタリーに近いですね。実在の人物とか、ドラマや映画の名前がバンバン出てきます。

作者のアンソニー・ホロヴィッツは、実際に脚本家としても成功してる人なんだよね。で、そこに脚本の監修をしてくれたホーソーンっていう元刑事が来て「俺の捜査する様子を取材して本にしてくれ」って言いだすのよ。

このホーソーンがめっちゃ嫌なやつで、作者も腹を立てて「そんなの誰が書くか!」って喧嘩別れしたりするんですけど、「でも犯人は気になるな」って思ってついていっちゃう。

たしかに、フェイクドキュメンタリーっぽい!

イギリスの雨穴ってこと?

 

びっくりしたのが、作中にスピルバーグが出てくるんですよ。

え、あの映画監督の!?

そうそう。登場人物として普通に出てきてセリフもある。「これスピルバーグ殺されないよな!?」とかちょっと心配になっちゃったり。

そんなことしていいの!?

そのあたりも含めて、リアルとフェイクの境界線があいまいに感じられて楽しいんです。

そのうえで展開に無駄がなく、きもちよ~く謎解きが進行する。揺れの少ない高級車の後部座席に乗っているような安心感。

俺も乗りてぇよ。

ただ、翻訳小説に慣れてないと、カタカナの名前を憶えるのに苦労するかもしれません。僕はしました。

わかるけど、そこは頑張ろうよ。

 

刷数は……?

では、刷数の方を見ていきましょうか。まずは『火車』から。

これは相当いってるでしょ。

ええと……

91刷!!

おおーっ!

これは結構やばいかもな。残り2冊で119必要なわけですから。

『ナイフをひねれば』は新刊だから、ヨギガンジーがめちゃくちゃウケてないと届かなそう……。

ヨギガンジーに頼りすぎたデッキ構築だ。

では、『ナイフをひねれば』から見てみます。これが……

初版!!

あーあ! やばいよ!

出たばっかりの本ですからね。そりゃそう。

勝ちに行くなら『カササギ殺人事件』にしないと。

いや、『カササギ』はもう読んじゃったので……

「読んじゃった」って、自分が読みたい本買っただけじゃねーか!

というわけで、『しあわせの書』で118刷かせぐ必要があるわけですが。

さすがに100はキツイんじゃないかな……。

頼む!!!!!

29刷!

思ったより行ってる! すごい!

でも全然足りてないじゃん!

加味條さんは、読みたい本を買いすぎたな。勝負から降り、我欲に走った男。

経費の使い方がこなれてきている。

違うんです! 時間が無くて咄嗟に買ってしまっただけで……!

言い訳は署で聞きます。

 

 

2人目:恐山の買った本

 

続いては私が行きましょう。まずはこれです。

 

1冊目:思考の整理学

はいはい。これはもう、ビジネスマンは全員読みました。

ビジネス書かあ。一番読まないな。

「ビジネス書○○選」ってあったら、『アイデアのつくり方』と、この『思考の整理学』は絶対に入っている。

部数も堂々の240万部。100刷は行ってるでしょう。

これ読んだら賢くなるんですか!?

なります。

マジで!? ほんとに!?

すがすがしいほどの断言だ。

どう賢くなるんですか!?

ええと……1位になれます

 

マジで!? じゃあ読もうかな……。

何の1位?

さっきパラっと読んでみたんですけど、内容的にはそこまで難しいこと言ってないんですよね。アイデアを思いつくのに必要なことがいろいろ書いてあるんですが。

というと?

「メモを取りなさい」とか「一回寝かせなさい」とか、言ってしまえば平凡なんだけど、すっきりした物言いで言われるので妙に説得力があります。

『アイデアのつくり方』でも同じこと言ってるんだよなあ。断片を集めまくった後に一度全部忘れておくと、ある日突然、「あっ!」てつながる瞬間がある、と。

 

長く読み継がれてるだけあって、本質的なことなんでしょうね。作者の外山滋比古さんも生誕100周年らしいです。

そんな昔の人の本だったんですね! 広告代理店出身のパワポ職人みたいな人が書いた本かと思ってました。

めちゃくちゃ失礼。

この本に限らず、ビジネス書ってエナジードリンクと一緒なんですよね。読んだらしばらくは「やるぞ!」って思ってがんばれるので、そのために読むんです。

で、数か月後に効果が切れて、次の本に手を伸ばす、と。

そういうもんなのか……。エナジードリンクの割には分厚いなぁ。

 

 

2冊目:風の谷のナウシカ

次の本も出しましょうか。言わずと知れた『風の谷のナウシカ』の、宮崎駿が描いた原作マンガです。

おーっ! これ全巻持ってます!

たしか80年代に初版が出ていて、価格も550円とかなりお手頃です。これは相当刷られてるはず。さらに……

 

ポスターまで付いてます。

「敗走」!?

めちゃめちゃ良い!

 

【風の谷のナウシカ(著: 宮崎駿) あらすじ】

「火の7日間」とよばれる戦争によって、巨大文明が崩壊してから千年。荒れた大地に腐海という死の森が広がっていた。主人公・ナウシカのいる風の谷が、恐ろしい巨神兵を使い腐海を焼き払おうとするクシャナたちに侵略された。腐海の森と共に生きようとするナウシカと、腐海を焼き払おうとする人々。だが、その腐海には、秘密があって……。

徳間書店サイトより引用)

漫画は全7巻あるけど、映画は2巻までしかカバーしてないから、映画の先の話まで楽しめるんだよね。

ちょっと適当なページを開いてみたんですが、絵が上手すぎてクラクラします

 

すごすぎ。描き込みすぎ。パワー吸い取られそう。

「わしには強すぎる」……。

それはラピュタです。

 

 

『ナウシカ』は版が途切れてないので100刷くらいあるはず。『思考の整理学』と合わせて180~190くらいとして、残りの20刷ほどをこれで埋めます。

 

3冊目:三千円の使いかた

三千円!?

これめちゃくちゃ売れてるよね! どんな内容なんだろう? 節約テクニックみたいなこと?

いや、小説ですね。予算3,000円って言われて、これが目に入って思わず買っちゃいました。

80万部とはすごい。

ドラマ化までされてますね。あらすじは……

 

【三千円の使いかた (著:原田ひ香) あらすじ】

「人は三千円の使いかたで、人生が決まるよ」突然の入院、離婚、介護費用……。一生懸命生きるあなたのための「節約」家族小説!

中公文庫サイトより引用)

お金が必要になった家族が、節約や財テクを駆使してがんばる話みたいですね。

生活の話というと、『老後の資金がありません』の垣谷美雨さんを思い出しますが……

まさに、解説を垣谷さんが寄せてます。

お金の話って全員に平等に刺さるから、つい気になっちゃいますね。作中でどういう「三千円の使いかた」をするのか気になるな……。

みくのしんは、今、3,000円を渡されたらどうやって使う? 

えっ、むずい! うーん……

 

1,000円を、3回使うかもしれないです。

……ん?

一気に3,000円はちょっと無理じゃないですか!? 1,000円ならいけそう。

その1,000円は何に使うの?

そうっすね……。みりんかな。

みりん。

あと、調理酒、醤油、ざらめを買いそろえます。すき焼きをいつでもできるように。

おばあちゃんみたいなこと言ってる。

『三千円の使いかた』でも、奇跡的に同じこと言ってるかもしれないな。

 

 

刷数は……?

では、刷数をチェックしましょうか。

『三千円の使いかた』から行きましょうか。これは新しいから、ちょうどいいはず……。

22刷!

おおーっ! 読み通り!

初版は2021年でした。1年半足らずでめちゃくちゃ売れてますね。

たしかに、共感しやすいテーマだからなぁ。

続いてはこれ。『思考の整理学』。これは100刷以上でしょう。ええと……

128刷!!!

すげー!!!!

大ベストセラーだ!

あっ!

 

そもそも背表紙に刷数が書いてありました。

 

おい!!!!

ルール違反じゃないですか!?

タイーホです。

いやいやいや! 平積みだったから背表紙見えなかったし、そもそも普通ここに刷数なんて書かないでしょ!

怪しいけど、まあ今気づいたならOKとしましょう!

 

でもヤバいんじゃない? ここまでで150刷だから、『ナウシカ』が60刷以上だとドボンだよ。

これはもう無理でしょ!

漫画はちょっと刷数の基準が違う、とかそういうのあるはず! 見てみます!

ひゃ、167刷!! 

うわあああああああああ!!

超えまくってるー!!!

初版が1983年……! 40年も刷られ続けてくるとこうなるのか……。

 

 

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