ハンドアウト・民俗学者

あなたは定命の者ではない。あなたは生まれついての不死者だ。

あなたの正体は悠久の時を生きる「吸血鬼の真祖(しんそ)」である。

 

【表の顔】

「私は民俗学者◯◯。土着の神話を求めて日本全土を渡り歩くフィールドワーカーだ。学者というより旅人のような生活をしていて、もう何十年も自分の研究室に帰っていない気がするよ。「不死の秘術」の使い道? 考えたこともなかったな。私はただ、その背景に潜む“超常の存在”をこの目で見たいだけさ。」(外見の年齢:35歳~45歳)

 

【裏の顔】

あなたは不死者。世界にただ一人の「吸血鬼の真祖(しんそ)」である。血を吸われた人間は数時間の仮死状態を経て復活、あなたと同じ不死の吸血鬼に生まれ変わる。ただし、吸血鬼を増やせる吸血鬼は真祖であるあなただけだ。

復活した吸血鬼はあなたの命令を忠実にこなす「眷属(けんぞく)」となる。この神社にやってきた目的は2つ。①眷属を増やすため。②巫女の血を吸うため。

人里離れた辺鄙(へんぴ)な神社ならば、誰かが急に仮死状態になっても騒ぎにはならないだろう。加えて、高い霊力を持つ巫女の血は吸血鬼の力を高めてくれる。あなたは民俗学者の立場を利用し、フィールドワークと称して地方の神社に出かけては、こうして眷属を増やしてきた。

悠久を生きるあなたは孤独だ。どれだけ眷属を増やしたところで、彼らは命令に従うだけの操り人形である。あなたの友や家族になれはしない。

ゆえにあなたは、あえて眷属に「私の素性を探るな」と命令する。もしも命令に逆ってあなたの居場所を調べ、目の前に再び現れる眷属がいたならば……。彼(彼女)はきっと永遠の孤独を分かち合うパートナーになれる。あなたはそれを心から願っている。

 

儀式前日の行動・民俗学者

儀式前日:12時(正午)

S県の山間部。道なき樹海を歩くこと数時間。あなたの目の前に人工的な広場が現れた。広場入り口の鳥居をくぐると、立派な本殿に向かって石畳が続いている。本殿の隣には離れの建物があり、こちらは神主たちの住居として使われているようだ。

あなたは手がかりを求めて、まずは本殿を参拝してみる。作りは一般的な神社と同じ。賽銭箱があり、鈴があり、しめ縄があり……。ただ、その奥にある本殿の扉は固く閉ざされていて、中に何が祀られているのかは分からなかった。

 

儀式前日:13時

本殿の裏に足を伸ばすと、噂に聞く乳白色の湖が広がっている。湖に見入っていると、背後から若い女性に声をかけられた。「参拝者の方ですか? それとも儀式を見学しに?」。振り返ると巫女服の似合う美しい少女が立っていた。

「ええ、不死の秘術に興味がありまして」。あなたがそう答えると、巫女は「でしたら今夜はぜひ泊まっていってください」と離れを指し示す。既に何人かの参拝者が宿泊しているとのことだった。

巫女の後ろには宿泊者の1人らしき女性が立っている。どこかで顔を見た覚えがある。確か有名な作曲家だったか。あなたは作曲家を湖に残し、巫女と2人で離れへ向かった。しばらくして、湖の方から何かが水に飛び込む音がかすかに聞こえた気がした。

 

儀式前日:19時

夕食の時間。5人の参拝者は簡単な自己紹介を済ませた後、揃って巫女が出した食事を取っていた。ただし、医師だけは「ベジタリアンなんだ」と言って、自分で用意した弁当を食べるために自室へ戻った。

食事が終わった頃、入り口の扉から巫女が現れる。巫女の後ろには40歳前後と思しき神主の男が立っていた。

「この神社は私たち親子2人だけで守っておりまして、ろくなおもてなしもできずに申し訳ない」

そう言って神主が頭を下げる。

「代わりと言ってはなんですが……」

「みなさまの求める不死の秘術はたしかに存在します」

巫女と神主は交互に説明を続けた。「ですが、不死の秘術——ぐあらきさまの寵愛を受けられる方は1人だけです」「みなさまには不死者となる方を投票で決めていただきます」「儀式は明日の夕刻。満月が昇ると共に開始いたします」

不死の秘術……眉唾かと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。仮の姿とはいえ、民俗学者としては非常に興味をそそられる。明日はせいぜい楽しませてもらうとしよう。

だが、その前に真の目的を果たさねば。今晩にでも巫女を眷属に変えてしまうか。

 

儀式前日:20時

解散して自室に戻った。

 

儀式前日:24時(午前0時)

皆が寝静まった頃、あなたは布団から体を起こし、忍び足で自室を出た。部屋と廊下を仕切る扉は全てふすまになっていて、鍵はかけられない作りだ。

巫女の寝室へ向かい、ゆっくりとふすまを開ける。部屋は真っ暗だが吸血鬼は夜目が効く。巫女はぐっすり眠っているようだ。あなたは腰を下ろし、巫女の首筋にそっと噛み付いた。……が、すぐに吐き出しそうになる。

腐ったような味。こんなにまずい血を飲むのは初めてだ。あなたは苦々しい表情を浮かべながらハンカチで口元をぬぐった。

とはいえ目的は果たした。この娘は仮死状態となり、目覚めた時には忠実な眷属となっている。仮死状態の間もあなたの命令は深層心理に届く。巫女の耳元で「私の素性を探るな」とささやいた。

 

儀式前日:25時(午前1時)

自室に戻る途中、物凄い形相で巫女の寝室へ向かうグラビアアイドルとすれ違う。こんな時間に何をしているのだろう? あなたは疑問に思いながらも自室に入った。

あなたは鞄からノートを取り出すと、「旧荒鬼の巫女:腐ったような味」と書き止めた。飲んだ巫女の血を記録し、度々読み返すのがあなたの密かな楽しみである。まあ、今日の血の味は思い出したくもないが……。

 

儀式当日の朝

目が覚めると、入り口のふすまに1枚の紙が挟まれている。紙には「あなたは吸血鬼ですか?」と書かれていた。まさか巫女が書いたのだろうか? だとしたら、彼女こそあなたの求める命令に逆らえる眷属なのかもしれない。

あなたが期待に胸を震わせたそのとき、泣き叫ぶ神主の声が建物中に轟いた。

 

 

あなたの目標・民俗学者

・あなたの孤独を癒してくれる「命令に逆らえる眷属」を連れ帰る。20pt

定命の者から自分の正体を隠し通す。あるいは自分の正体を知った定命の者を全員殺害する。15pt

不死者の体はどんな大怪我を負っても念じるだけで再生する。ただし、腕力は定命の者と変わらない。もしも正体がバレたら捕らえられ、不死の秘密を探る被験体にされてしまうだろう。

・「吸血鬼」について記された文献を手に入れる。10pt

・「血が付着したもの」を2つ以上手に入れる。5pt

 

 

あなたのスキル・民俗学者

エンディング時に発動できる。

①あなたは定命の者を1人選んで眷属に変えられる。②眷属に命令を出せる。(例:「◯◯に投票しろ」「自害しろ」)

 ※①と②は両方発動してもいいし、片方だけ選んで発動してもいい。

 

 

あなたの持ち物・民俗学者

民話の調査記録:各地の神社で集めた土地神の情報がまとめられている。「ぐあらきさま」と似た伝承は記録されてない。

血の付いたハンカチ:白いハンカチ。隅にうっすら赤い染みがある。口元の血を拭いた跡に見える。

謎の調査記録:各地の神社で集めた秘密の情報がまとめられている。一番新しいページには「旧荒鬼の巫女:腐ったような味」と書かれている。

 

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