ハンドアウト・医師

あなたは定命の者ではない。あなたは神社に来る前から不死者だった。

あなたの正体は人肉を食らう「ゾンビ」に近い存在である。

 

【表の顔】

「僕は◯◯。臓器手術が専門の医師だ。できるだけ多くの命を救うことが自分の使命だと思っている。「不死の秘術」がもし実在するのなら、医学転用の可能性を探りたい。だけどその前に、まずは自分が不死になろうと思う。永遠に救いを与え続ける存在、それが禁忌だと理解はしているよ。」(外見の年齢:30歳〜40歳)

 

【裏の顔】

あなたは不死者。未知の病原体に感染した「ゾンビ」に近い存在である。歳を取らなくなり、どんな傷を負っても念じた瞬間に再生するようになった。代わりに時折、あなたは堪らなく人肉を食べたい衝動に駆られる。

こんな体になったのは19年前ある河口で発見された「謎の巨大な触手」の調査メンバーだったあなたは、触手の先端でうっかり指先を傷付けてしまう。ただのかすり傷。そう思っていたあなただったが、次第に食欲が旺盛になり、人肉の味が気になるようになった。

あなたの勤務先は大学病院だ。手術を執刀するたびに、マスクの裏では唾液が滝のように流れ出る。いつしか病院の死体安置所で“食事”を摂ることが日課となった。

そして現在。食欲は年々増加し、舌の好みに合う患者(20歳前後の女性があなたの好物だ)を食うために医療ミスで殺したことも一度や二度ではない。罪悪感はある。元の体に戻りたい。触手が手に入ればワクチンを作ることも可能かもしれないが、正体不明の財団が数億円で買い取ってしまい、現在の所在は闇の中だ。

あなたの願いに反して、衝動は抑えきれないほど膨れ上がっている。死体の味にはもう飽きた。寝ても覚めても、内なる声が頭の中で鳴り響く。「生きた人間を喰らいたい」と。

旧荒鬼神社にやってきた目的は、外部から断絶された小さな神社ならば誰にもバレずに「食事」できると考えたからだ。もちろん「不死の秘術」の調査も忘れてはならない。もし永遠の飢えから解放される手段が見つかるならば、それ以上の幸福はないのだから。

 

 

儀式前日の行動・医師

儀式前日:11時

S県の山間部。道なき樹海を歩くこと数時間。あなたの目の前に人工的な広場が現れた。広場入り口の鳥居をくぐると、立派な本殿に向かって石畳が続いている。ここが「旧荒鬼神社(ぐあらきじんじゃ)」に違いない。本殿の隣には離れの建物があり、こちらは神主たちの住居として使われているようだ。

あなたは手がかりを求めて、まずは本殿を参拝してみる。作りは一般的な神社と同じ。賽銭箱があり、鈴があり、しめ縄があり……。ただ、その奥にある本殿の扉は固く閉ざされていて、中に何が祀られているのかは分からなかった

「参拝者の方ですか?」。後ろから声をかけられる。振り返ると美しい巫女が立っていた。が、巫女はあなたを見た瞬間に「えっ……どうして?」とつぶやき、驚いたような表情で固まっている。

何かまずいことでもやらかしただろうか。「怪しいものではありません! 私は儀式の見学に来た医師です」。あなたは慌てて名刺を巫女に渡す。巫女は少しだけ考え込むと、どこか納得したような顔をして、「宿泊できる客間がございます」とあなたを離れに案内した。

「どこか自分に似たものを感じて驚いてしまいました」。巫女は妖しげな表情であなたに囁いた。彼女の言葉が頭の中で反響する。なぜなら、あなたも同様に謎の親近感を感じていたから。

 

儀式前日:12時〜18時

あなたが神社に到着した後、4人の参拝者がやってきた。中には“好み”に近い女性も2人いたが、どちらも有名人だ。世界的作曲家や人気グラビアアイドルが行方不明になったら世間が大騒ぎになる。あなたは巫女を食うことに決めた。

離れの西側には参拝者用に5つの客室が設けられていて、東側には巫女の寝室と神主の寝室がある。部屋と廊下を仕切る扉は全てふすまになっていて、鍵はかけられない作りだ。皆が寝静まった後なら、巫女の部屋に侵入するのは簡単だろう。決行は今日の深夜だ。

 

儀式前日:19時

夕食の時間。5人は簡単な自己紹介を済ませた後、揃って巫女が出した食事を取っていた。しかし、あなたはメインディッシュが楽しみで暴走寸前である。まともな食事は味を感じない。こんな時のために、あなたは弁当箱に人肉を入れて持ってきている。あなたは「ベジタリアンなんだ」と適当な嘘をついて、自分の部屋で弁当を食べた。腹がいっぱいになるのも勿体無いと感じ、半分はそのまま残してしまったその後、再び他の参拝者に合流した。

食事が終わった頃、入り口の扉から巫女が現れる。巫女の後ろには40歳前後と思しき神主の男が立っていた。

「この神社は私たち親子2人だけで守っておりまして、ろくなおもてなしもできずに申し訳ない」。そう言って神主が頭を下げる。

「代わりと言ってはなんですが、みなさまの求める不死の秘術はたしかに存在します」

巫女と神主は交互に説明を続けた。「ですが、不死の秘術——ぐあらきさまの寵愛を受けられる方は1人だけです」「みなさまには不死者となる方を投票で決めていただきます儀式は明日の夕刻。満月が昇ると共に開始いたします

その言葉は、あなたの耳を右から左へ素通りしていく。不死の秘術は気になるが、今は巫女の肉、胸の肉、腿の肉、尻の肉、肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉 儀式前日:20時 肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉 儀式前日:21時 肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉 儀式前日:22時 肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉 儀式前日:23時 肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉 儀式前日:24時 肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉 儀式前日:25時 肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉 儀式前日:26時 肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉 儀式前日:27時 肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉

 

儀式前日:28時(午前4時)

肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉、肉、肉の味が口いっぱいに広がる。やわらかい。死後硬直を経た死体とは全く異なる噛み心地。ああ、幸せだ……。我に返ると、あなたは真っ暗な空間に座っていた。次第に闇に目が慣れ、ぼんやりと視界が開けてくる。

ここは巫女の寝室だ。目の前の布団には巫女が安らかに横たわっている。内臓を撒き散らし、両手の指を失った状態で。さらによく見ると、首や胸、腿や尻に食いちぎられたような噛み跡があった。

 

儀式前日:29時(午前5時)

あなたは巫女の寝室を抜け出すと、そのまま湖へ向かい、体中に付着した血を洗い流した。血まみれの上着は湖畔の茂みに捨てた。

あなたが体を洗っている最中、周囲を深い霧が包み込んだ。濃霧は神社の敷地全体を覆っているようで、目を凝らさなければ足元すらよく見えない。こんな視界で樹海に逃げ込めば、遭難は必至だろう。あなたは大人しく離れの自室へ戻ることにする。

 

儀式前日:30時(午前6時)

帰る途中、急な吐き気に襲われる。あの巫女の肉、食感は確かに最高だったが、味は最悪だった。腐ったような味離れのそばの地面に胃の中のものを全て吐き出してしまった。

吐き気から解放されたあなたは、自分の吐瀉物の近くにキラリと光る何かを捉える。それは血のついたサバイバルナイフだった。誰かが落としたのだろうか?

 

儀式当日の朝

ようやく自室に帰ってくると、ふすまに「あなたは吸血鬼ですか?」と書かれた紙が挟まれている。意味がわからない。無視して布団に寝転ぶ。眠気で意識を失いかけたその時、泣き叫ぶ神主の声が建物中に轟いた。

……腹が減る。永遠の飢えは未だにあなたを逃さない。

 

 

あなたの目標・医師

・永遠に満たされない飢えから解放される。あるいはその手段を持ち帰る。20pt

定命の者から自分の正体を隠し通す。あるいはの正体を知った定命の者を全員殺害する。15pt

不死者の体はどんな大怪我を負っても念じるだけで再生する。ただし、腕力は定命の者と変わらない。もしも正体がバレたら捕らえられ、不死の秘密を探る被験体にされてしまうだろう。

スキルで誰かを殺害する。10pt

・「ぐあらきさま」に関する文献を手に入れる。5pt

 

 

あなたのスキル・医師

エンディング時に発動可能。指定した定命の者を1人殺害できる。使用には「医療道具」が必要だ。

 

 

あなたの持ち物・医師

医療道具:メスや麻酔が入っている。使われた痕跡はないようだ。※スキルの使用に必要。

医療ミスの記録:3人の患者のカルテ。20歳前後の女性だ。医師の医療ミスで亡くなっている。

弁当箱:何かの生肉が入った弁当箱。半分ほど食べた痕跡がある。

 

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