エントリーNo.5 リックェ
しゃらくせえ〜〜〜
すみません。つい本音が出てしまいました。
次なるチャレンジャーはリックェ。彼もまた過去に菓子盆選手権での優勝経験をもつ男です。
結婚詐欺師の見習いみたいなルックスですが、菓子盆の実力は折り紙付き。今回も自信ありげです。じゃなきゃこんなツラしねえ。
そんなリックェの意気込みは…
「近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエは言う『less is more』と。
これは盆上でも同様です。品数を削れば豊かになる。これは強力なセオリーであります。
※less is more…「少ないことは豊かなこと」とする概念
けれど、そのセオリーに身をあずけるのに少々疲れてしまった僕は、今回あえての『more is more』を探しに行こうと思います。そいつを見つけて願わくば盆上でお会いしましょう」
うるせえ〜〜〜
すみません。本音が出てしまいました。
何度読み返しても何を言ってるのかわかりませんが、肝心なのは菓子盆の出来です。ここは目を瞑りましょう。
そんなリックェが想定したケンカのシチュエーションは……
うるせえし知らねえしうるせえ
架空にしては妙にねちっこいリアリティのシチュエーションを持ち出してきました。
このままでは本音と一緒に手が出てしまうので、その前にとっとと菓子盆を見せてもらいましょう!
●ポテコ(トーハト)
●サラダうす焼き(亀田製菓)
●SUNAO チョコチップ(グリコ)
●SUNAO 発酵バター(グリコ)
●ジューシーパイナップル(ファミリーマートコレクション)
●トロピカルマンゴー(ファミリーマートコレクション)
●ストロベリーチョコ(ファミリーマートコレクション)
●ふんわりマシュマロ(ファミリーマートコレクション)
●おいしくモグモグたべるチョコまろやか抹茶(森永製菓)
●おやつで元気フルーツミックス(cut and slim)
●ホワイトロリータ(ブルボン)
●ノワール(YBC)
「『白黒つけることは脇に置いて、2人で虹を描いていこうぜ』という思いを込めました」
「まず白黒パート
“ホワイト”ロリータと“ノワール” そしてSUNAOという名のバターとチョコのクッキー。モノトーンのお菓子を盆の脇に配しました。
これは今までの “less is more”。リックェの理(リ)の象徴です」
「そして虹パート
世界で一番有名な、仲直りの話を知っていますか? そう…『ノアの方舟』です。
カナちゃんいわく、あの物語の終わりに登場する“虹”は『もう大洪水をおこすことはない』と神がノアとの仲直りの証として架けたのだとか。
白黒パートとの対比 “more is more” 内省と挑戦を込めたパートです。
フルーツ系のお菓子の鮮やかさを使って色味を増やしていく道を選びました。過剰な品数でまとまりを欠いても、それ以上に、あけすけさや、新しい道を示したかったのです。
「変わるようがんばってみるから、もう少し一緒に歩いていこうよ」と。
虹は、アポロジャイズ(謝意)ではなくコンプロマイズ(和解)の象徴なのですから」
~ 会場の反応 ~
「ず〜っと何言ってんのコイツ?」
「理屈はゴチャゴチャしてるくせに菓子盆は見事なのムカつくな」
「耳を塞いで菓子盆だけ見れば完璧。リックェが口を開くごとに評価が落ちる不思議な菓子盆」
暴走気味の語りはすこぶる不評でしたが、菓子盆自体はさすがの出来! 審査員の評価やいかに?
本人のごたくの長さとは裏腹に、いつもさりげなく、かつ、巧妙な盆を配置するリックェさん。今回はその実力の本領発揮といったところでしょうか。
いずれの菓子も、それほど物珍しいものは使われていません。また、盆の上の主役といえるような菓子も存在せず、小物の「散らし」だけで構成された菓子盆です。
このような菓子盆はボンヤリと見どころのない印象を与えがちなのですが、ピシッと締まっているのが見事です。下に敷いた紙ナプキンの「三角形」、ホワイトロリータやノワールの「線」、そして盆そのものの「円」という幾何学模様が適度な緊張感を与えているのにお気づきでしょうか。
残念ながら、リックェさんが滔々と語る構想は1割も理解されないと思います。しかし、この美点は言葉を介さず、盆に触れた人に直接伝わることでしょう。
その意味で、この盆が描いているのは「すれ違い」なのかもしれません。作者の手を離れて新たな価値を生み出した一つの奇跡なのです。
長い能書きを無視すればおおむね好感触! 王者リックェの返り咲きなるか!?
次はいよいよラストの菓子盆です!
エントリーNo.6 原宿
最後の挑戦者はオモコロ編集長の原宿。
盆を前衛アートのキャンバスと間違えているのか、いつも放送禁止用語でしか表せない菓子盆ばかりを生み出す悪童です。
毎回真面目にやろうとはしているらしいので、今回こそ正面から向き合ってくれることを願います。
「僕も妻と娘のいる立場です。菓子盆選手権ではいつも気がつくと変な盆を作ってしまうのですが、今日だけは真面目に作りました。夫婦ゲンカを丸くおさめる盆です」
夫婦ゲンカを想定したのは今回初!
他のメンバーとは違う角度からの菓子盆作りに期待が集まります。
原宿が作り出した菓子盆はこちら!
●げんこつ紋次郎いか(一十珍海堂)
●いちごトリュフ 抹茶チョコ(ドン・キホーテ)
「僕のとっての平和の象徴と言えば、やはり地上の誰にも公平に降り注ぐ『太陽』の光です。そこで太陽をイメージした盆を作りました」
~ 会場の反応 ~
「いい加減にしろ」
「誰だよこいつを呼んだの。知らせるなって言ったろ」
「イカがちゃんと美味しいのがまた腹立つ」
公序良俗に反する御神体を作り出した原宿。「名状しがたい」という単語を頑張って名状したら多分コレになるでしょう。
審査員のダ・ヴィンチ・恐山は、この盆に込められた想いをどう読み解くのか!?
破門です。
破門でした。
今日も平常運転です。
優勝者決定!
これで第13回菓子盆選手権「ケンカした彼女との仲直り盆」がすべて出揃いました!
果たして菓子盆仲直り王の栄冠は誰の頭上に輝いたのか…
審査員のダ・ヴィンチ・恐山から、優勝者を発表いたします!
今回の菓子盆選手権の優勝者は……
リックェさんです!
仲直り盆を制したのはリックェ! どのあたりが審査に響いたのか、審査員の総評を聞いてみましょう!
ヒトが言葉を獲得してから何年が経ったかには諸説あるようですが、少なくとも5000年以上前には文字が使われていたそうです。
言葉をあやつるようになって、人が争う機会は減ったでしょうか。むしろ「誤解」や「すれ違い」は、言葉とともに生まれたのではないかと思います。思いが託された記号を読み違えて幻想をいだき、勝手に幻滅するのです。
言葉のある世界で、人はなぜ菓子盆を作り、何かを伝えようとするのか。逆説的に答えるならば、それは菓子盆が言葉ではないからなのです。
言葉には正解があるからこそ、不幸な「読み違え」の余地が生まれます。菓子盆は、言葉としてはあまりに曖昧で、開かれすぎている。どれだけ言葉を尽くして隠された意図を語ろうとも、たやすく盆は「誤読」されることでしょう。しかし、そうやって誤読した言葉がもっとも豊かななのかもしれません。
技巧を凝らした作品も多い中、リックェさんの盆には作者本人ですら読み切れなかったと思われる豊穣な優しさがありました。よって、今回はこの盆に軍配をあげたいと思います。
これで3度目の優勝となるリックェ! 王者が貫禄を見せつける形になりました!
おいも泥棒みたいなツラでありながら、菓子盆の腕はピカイチ。これだから菓子盆は奥が深い…。
さて、オモコロ恒例企画とさせていただいているこの菓子盆選手権。
今後もコイケヤからコラボ菓子が出せるまで活動を続けてまいります。
今後のテーマとして、
「海外のお菓子限定! ワールド菓子盆」
「おばあちゃんに贈る! シニア菓子盆」
「物語に出てくる菓子盆を再現! グレーテルの菓子盆」
などの企画も検討中です。菓子盆が出てくる物語をご存知の方はご一報ください。
そして、今回の菓子盆選手権は動画でも公開中!
記事にはないシーンも盛りだくさんなので、ぜひチェックしてみてね!
それでは皆さん、次回の菓子盆選手権でお会いしましょう!
あぁ〜!
(おしまい)