石川や 浜の真砂は 尽きるとも
世に菓子盆の 種は尽くまじ―石川五右衛門 辞世の句
「お菓子チョイスのセンスで、その人の全てがわかる」をモットーに開催されてきた菓子盆選手権。
「盆に好きなお菓子を盛る」という単純なルールですが、出来上がる菓子盆はまさに百人百様。一つとして同じものにはなりません。
「盆にはその人の人間性が現れる」
そんな菓子盆の奥深さを語り出せば、ちょうど幻冬舎から新書が一冊出せるくらいにはなるそうです。
これまでにも数々の名盆・迷盆が生み出され、その度に、美しい傑作には親指を、忌まわしい愚作には中指を立ててきました。
さあ、今回は一体どんな菓子盆が生まれるのでしょうか?
ということで、菓子盆選手権の第11回をお届けします。
今回のお題はこちら!
それぞれの出身地にちなんだ菓子盆が今日のテーマです。
果たして菓子盆に県民性は生まれるのか? 郷土の誇りを胸にLet’s 盆!
↓ベースとなる菓子盆選手権のルールはこちら。
そして今回も審査員を務めるのはこの男。
菓子盆界の重鎮、ダ・ヴィンチ・恐山!
品田遊名義で作家としても活躍する彼は、現在日本でただひとり菓子盆を評価することができます。
魔弦ウクレレでしつこく状態異常にしてくるタイプの中ボスとしても活躍中!
それではさっそく、「出身地に由来したお菓子を使ったご当地自慢盆」スタートです!
エントリーNo.1 まきの(大阪)
ご陽気なテンションで登場したのは、一人目の出場者まきの。髪型のせいでラテン系のノリにも見えますが、大阪出身とのことです。
「大阪限定のお菓子とナニワ仕込みのおもろで優勝や!」
今回唯一の関西勢! まきのの菓子盆はこちら!
●面白い恋人
●ジャガビーたこ焼き味
●ダニエルのカヌレ
●柿の種プレミアム TANEBITS 天ぷらわさび塩仕立て
●?????
「大阪ならではのお菓子といえばやはり『面白い恋人』でしょう!
ここに大阪限定たこ焼き味のお菓子をあしらうことで『大阪感』を100%出しました」
「手前にはあえて落ち着いた印象があり、かつ大阪でしか入手できないものを配置しました。
まずは洋菓子『ダニエル』のカヌレ。こちらは繁忙期につきオンラインショップでの購入が一時休止されているほど人気のお菓子です。
JR大阪駅ビル『ルクア』の1Fでしか買うことができません(本店は兵庫県芦屋市)」
「その隣にはさっぱりしたもの…ということで柿の種を。
こちらも阪急うめだ本店地下1Fでしか入手できないプレミアムな逸品。ひと味ちがう柿の種をお楽しみください」
~ 会場の反応 ~
「一目で大阪の菓子盆と分かるな〜」
「面白い恋人かぁ」
「限定品をとにかくありがたがってるあたり、大阪のオバちゃんっぽい」
「ちなみに……みなさん、面白い恋人とジャガビーの裏に不自然なスペースがあることに気付きませんでしたか?」
「実はこの二つをどけると…」
「なんと東京ばな奈が隠されているんです!
『コラコラコラ〜〜〜!これは東京のお土産やろがいっっっ!!!!チョイチョイチョイ〜〜!』という超絶おもしろツッコミを引き出して、大阪菓子盆は以上となります。ほなまいど!」
~ 会場の反応 ~
「あ〜ぁ」
「やっちゃったなぁ」
「そういうとこだぞ大阪」
大阪ならではの仕掛けも施されたまきの盆! 会場のオーディエンスには不評のようですが、審判のダ・ヴィンチ・恐山の目にはどう映るのでしょうか?
「天下の台所」大阪が送り出してきたのは、むせ返るほどに「大阪」が詰め込まれたコッテコテの菓子盆。
目立つ位置に袋ごと「面白い恋人」をデンと構えるスタンドプレーには賛否両論が予想されます。むしろ、ちょっと大阪バカにしてません?
とはいえ、菓子の取り合わせは意外にも堅実な印象。甘いものと塩辛いものをバランスよく取り揃え、「新幹線のホームのお土産売り場」のような軽さを存在感のあるカヌレが払拭しています。大阪という役割を演じきった、案外「まじめ」な菓子盆と言えるんじゃないでしょうか。
「東京ばな奈」だけは、大阪の本当に悪いところが出たなという感じですが……。
おおむね高評価ですが、やはり最後の東京ばな奈がマイナスに作用したようです。これが最終結果にどこまで影響してくるのか……見ものですね。
あと、やってみて分かったんですが、このご当地盆選手権、他県民は「へ〜そんなお菓子があるんだ」という発見があってめちゃくちゃ楽しいです。
大阪盆では、この「柿の種プレミアム TANEBITS 天ぷらわさび塩仕立て」がすこぶる好評でした。これを食べられる大阪府民はずるい!
エントリーNo.2 モンゴルナイフ(北海道)
2人目の出場者は北海道出身のモンゴルナイフ! ヒグマに遭遇して生き延びた経験を持つ生粋の道産子OLです。OLが経験することじゃない。
「北海道の有名なお菓子と自分が好きなお菓子で、皆さんをおもてなしします!」
●白い恋人(石屋製菓)
●ピュアチョコレート(ROYCE’)
●マルセイバターサンド(六花亭)
●札幌おかきOh!焼とうきび(YOSHIMI)
●夕張メロンピュアゼリー プチゴールド プチキャリー(HORI)
●ほがじゃ(福太郎)
●霜だたみ(六花亭)
●標津羊羹(標津羊羹本舗)
「北海道には有名なお菓子がありすぎるので、有名どころは数点にしぼり、プラスで自分が好きなお土産を置きました。
どのお菓子も美味しいのですが、一気に全部食べるのは無理かなと思ったので 個包装のものを置くことを心がけました」
「標津羊羹(しべつようかん)は、道東エリアのコンビニ(セイコーマート)にも置いてある道東(の特に東の方)ではメジャーな羊羹。
普通の羊かんと違って、小豆ではなく北海道産の金時豆を使っているので色が薄く、砂糖はてんさい糖を使用しているので甘すぎない優しい味になっています。
北海道のお土産で、羊かん!?となるかもしれませんがとても美味しいので食べてみてください!」
~ 会場の反応 ~
「詰め込みすぎじゃない? 道民に盆は狭すぎたか」
「でも、お菓子の味はさすが北海道といった感じ」
「ヒンナヒンナ」
北海道お菓子のポテンシャルを余すところなく押し出してきたモンゴルナイフ盆。さあ、ジャッジの方はどうでしょうか!
一見すると、この盆は典型的な「菓子に振り回されている盆」に見えるかもしれません。色彩に統一感がなく、手当たり次第に地元銘菓を詰め込んでしまっていると。
しかし、それは早合点だと言いたい。このゴチャゴチャ感は、北海道銘菓のツートップ、白い恋人とマルセイバターサンドをさりげなく提供するための策なのです。
郷土盆は、得てして強豪菓子の一点突破に頼りがちなもの。しかしこの盆では、作者がさながら屯田兵のように味を開拓し、メジャーからマイナーまで実力派を集めてきています。
そのぶん、盆の「軸」がぶれているとも言えますが、それは我々が「試されている」ということなのかもしれません。
なかなかの高評価! 強豪菓子に頼りきらないモンゴルナイフの名采配が光りました。強豪菓子ってなに?
ちなみに、モンゴルナイフがどうしても菓子盆におきたかったという「標津羊羹」。
マジでした。甘すぎない上に、あと味もさっぱりしてるので、まるっと1本いけちゃいます。