第三次世界大戦がどのように行われるかは私にはわからない。
だが、第四次世界大戦が起こるとすれば、その時に人類が用いる武器は菓子盆だろう
アルベルト・アインシュタイン
「お菓子チョイスのセンスで、その人の全てがわかる」をモットーに開催されてきた菓子盆選手権。
菓子盆選手権とは「盆に好きなお菓子を盛りつけ、そのセンスを競い合う」という競技。
「盛り付け」の一言で済む行為をそれっぽく仕立て上げた娯楽の成れの果てです。
ルールは単純「盆にお菓子を盛り付けるだけ」
しかし、その出来を見れば「その人の人間性が浮かび上がる」と言われています。
これは嘘なんですが、菓子盆の起源は古代中国にまで遡り、当時の王朝では国政を左右する占いとして使われていたそうです。
さて、今回で13回を迎える菓子盆選手権のお題は…
今回のテーマはケンカした彼女と仲直りするときに出す菓子盆!
果たして男女のギスギスを打開する彼氏力を見せつけるのは誰なのか?
↓ベースとなる菓子盆選手権のルールはこちら。
今回も、審査員を務めるのはこの男!
不鮮明な写真ですみません。菓子盆選手権の審判、ダ・ヴィンチ・恐山です。
日中に活動するのは稀な生物なので、これは活動的な様子を伝える貴重な一枚です。
ちゃんとした写真ありました。失礼しました。
品田遊名義で作家としても活躍する彼は、菓子盆を評価できるライセンスを持つ唯一の男。動いていない姿を撮影したのはこの写真が業界初と言われています。
そして、今回初の試みとして、菓子盆選手権の様子をYouTube動画でも公開中!
記事の終わりにリンクを掲載しているので、記事と合わせてお楽しみください。カメラを向けられて緊張している面々を見逃すな!
それではさっそく、「ケンカした彼女との仲直り盆」スタートです!
エントリーNo.1 ヤスミノ
一人目の挑戦者は今回初挑戦のヤスミノ。
革命的な農法を取り入れている胡散臭いトマト農家みたいなツラですが、菓子盆の腕は未知数! 一体どんな盆を見せてくれるのか?
今回の菓子盆選手権にかける意気込みを聞いてみましょう!
「仲直りするための盆は、僕の気質にぴったりのお題でした。初挑戦ですが自信があります」
今回のテーマは彼女との仲直りなので、それぞれ「ケンカのシチュエーション」を想定してもらいました。
ヤスミノが想定したシチュエーションはこちら!
妙にリアルな場面設定ですね。
菓子盆一つで、この険悪なムードを一掃できるのでしょうか?
初挑戦のヤスミノが魅せる渾身の仲直り盆とは!
●バウムクーヘン(マッターホーン)
●いちごをまるごとチョコで包んだストロベリーチョコ(ファミリーマートコレクション)
●薫り豊かなスモークチーズ(ファミリーマートコレクション)
●えだまめあられ(セブンプレミアム)
●濃厚な味わいのチョコラスク(セブンプレミアム )
「最大の特徴は、このバウムクーヘンです。これは名店『MATTER HORN』のもので、すぐ売り切れてしまい簡単に買うことができません。僕は開店前から並んで買いました。
安易と言われようとも、僕は行動を伴っていない謝意よりも気持ちが伝わると考えています。
ただ『名店のお菓子』で示す謝意は、ある意味では暴力的ともいえます。相手の許しを強制させてしまう可能性もあるからです。
しかし、これは菓子盆。その他の菓子の『個』をあえて消失させることも可能…」
「バウムクーヘン以外はコンビニで購入可能なもので統一しています。はっきり言って、この盆に僕のイデオロギーやポリシーは反映されていません。バウムクーヘンの強い謝意を埋没させることに徹しています。
喧嘩をした時は自己の主張を抑え、相手への心遣いを優先する。これが良好な関係性をキープする秘訣です」
~ 会場の反応 ~
「色彩センスが完全におじいちゃん」
「熟年夫婦の仲直り盆?」
「おばあちゃん家の縁側で食べる菓子盆だったら満点」
初挑戦とは思えないほど老成しきった菓子盆を作り出したヤスミノ!
みなさんはケンカしている恋人からこれを出されたら許しますか? 審査員の講評を聞いてみましょう。
ヤスミノさんによる「謝意を埋没させる」盆です。
確かに、ある意味で謝罪は暴力と表裏一体です。「申し訳ない」と頭を下げれば自分を「悔い改める罪人」にして、許すか許さないかという決断を押し付けることができてしまうのですから。
マッターホーンの高級バウムクーヘンが盆上に鎮座ましましている「圧」を消すため、あえて埋没させる。これはかなり奥ゆかしい盆技(ぼんぎ)であると言えましょう。
ですが、高級バウムを隠す目的のために、その他の菓子への目配せが甘くなっている印象は拭えません。「結末が面白いから」という理由で導入部の手を抜く映画が名作にはなりません。盆というスクリーンに無駄な被写体などあってはならないのです。
他の菓子がオトリなのであれば、オトリとして最大限のパフォーマンスを発揮する盆が作れたはず。残念ながらこの盆がそうだとは言えません。
たとえば、バウムクーヘンを引き立てるために「味の濃いチョコラスク」は果たしてふさわしいといえるでしょうか?
いともたやすく詰めの甘さを看破されてしまいました。
菓子盆界の厳しい洗礼を受けたヤスミノ…。しかし、勝負は全ての菓子盆が出揃うまで分かりません。
この調子でどんどんいきましょう!
エントリーNo.2 かまど
2人目の出場者は、ライターのかまど!
これまで2度の出場経験がありながら優勝経験はナシ。本人は「無冠の帝王」を名乗っていますが、いや、単純に無冠なだけです。
そんなかまどの意気込みは…
「僕は実際に同棲している彼女がいるので、その彼女に贈るつもりで菓子盆を作りました」
実在の彼女にモデルにして盆を作ったかまど! その選択が吉と出るか凶と出るか、注目です。
かまどが想定したケンカのシチュエーションは……
うっせ〜〜〜〜〜。
ケンカの一つもしたことないなんて、それは真のコミュニケーションと言えるのでしょうか?
愛する彼女に贈る、かまどの仲直り盆はこちら!
●スヌーピー チョコディップスティック(ベストカンパニー)
●ロリポップ(鈴商)
●ハリボー ミニハッピーコーラ(三菱食品)
●M’s BAR ラム・オ・レ(明治)
●こんにゃくせんべい 紀州梅味
(ダイシンフーズ)
●カルディオリジナル 抹茶のリーフクッキー(キャメル珈琲)
「キーワードは『いつもよりちょっと特別』です。僕と彼女の間にはいつも食べる定番お菓子があるんですが、今回はその定番からあえてちょっとズラしたものを選びました。
おなじみのチュッパチャプスかと思ったらロリポップなど。2人の定番を知っているからこそ、あえてワンランク上のチョイスを見せて『あれ? いつもと違うね!』と会話を引き出すことができます」
「中でも、ヤンヤンつけボーは僕たち2人の間でもおなじみのお菓子なんですが、先日それと似たコンセプトの「スヌーピー」バージョンを発見。
これを見れば険悪なムードもどこへやら。『こんなのよく見つけたね〜!』と会話が弾むこと間違いなしです。この上位互換作戦に彼女もメロメロになるでしょう」
「あとはこのラムレーズンのチョコ。彼女が好きなんですけど、僕はラムレーズンが苦手なので普段はなかなか2人で食べることがないんです。ただ、今回は特別に…。
いつもとは一味違う菓子盆から、彼女に対する僕の想いが伝わると思います」
~ 会場の反応 ~
「しょ〜〜〜〜もねえノロケ盆」
「これ彼女からしたら『私の好きなお菓子を間違って覚えてる…?』って思われそう」
「なんか肝心の彼女の気持ちを無視した独りよがりな盆に見えるな」
「実際に付き合っている彼女」という具体的なイメージをぶつけてきたかまど!
相手の好みを知り尽くしているからこその菓子盆ですが、審査員の評価はどうでしょうか?
「少し特別な盆」ということで、まず見た目の違和感がとてもいい方向に作用しています。ともすれば無感動に消費されてしまいがちな菓子盆にとって、あざとさを滲ませずに注目を集めるのはなかなか難しいのです。
「なにかいつもと違うかも」という「引っ掛かり」が相手の心に生じるのは確かです。
しかし問題は、その引っ掛かりが果たして「よいほう」へと傾くのかどうか、ということです。
振り返ってよく考えてみてほしいのですが、定番のお菓子には、それが定番になる理由もあったのではないでしょうか。それらをすべて「特別」なものに換装することには疑問があります。
菓子に「上位」や「下位」のような相対的序列はありません。菓子を選ぶ理由は、菓子そのものにもあるべきです。定番菓子が親しまれてきた理由を検討したうえで変えたと、かまどさんは自信を持って言えますか?
あと、ロリポップって舐めます??
14ポンドのボーリング玉並みの存在感
「いつもより特別に」という気持ちが上滑りしている点をズバッと指摘! 今日も恐山の審美眼はたしかなようです。
ちなみにロリポップは「美味しいけど大きい」という評価でした。