菓子盆は、考える者にとっては喜劇であり、感じるものにとっては悲劇である
―ホレス・ウォルポール
「お菓子チョイスのセンスでその人の全てがわかる」をモットーに行っている菓子盆選手権。
「ただお菓子を盆に盛るだけ」の、全ての娯楽がこの世から消失したとしても何かもうちょっと他にすることあるだろ、という内容の記事ですので、この回からお読み頂いても全然問題ないのですが、よろしければ過去6回分も上部リンクからご覧ください。
この企画、やってることは単純なのですが、なぜか「自分の好きなお菓子を盆の上に盛るだけで人間性が浮き彫りになってしまう」という不思議があります。
この謎を解明するために日本の官僚達は今日も働いているとの噂です。
さて、今回は菓子盆選手権の第七回の模様をお届けしたいと思います。
今回はお題はこちらです。
今回はバレンタインデーにちなんだお題です。お題の都合上、出場者は可愛らしい女性に扮してもらいます。
さらに、今回は特別ゲストとして、現役女子大生の方に出場して頂きます。
「現役女子大生×バレンタインデー」という凶悪な組み合わせに、果たして菓子盆ファイター達は勝てるのでしょうか?
↓ベースとなる菓子盆選手権のルールはこちら!
そして、菓子盆選手権の審査員と言えばこの人しかいません。
Mr.菓子盆審判ことダ・ヴィンチ・恐山です。今回はなんと、椅子に座って登場!!!
品田遊名義で作家としても活躍する彼は、現在日本で唯一の1級審判ライセンス保持者です。そのライセンスを売れば人生7回は遊んで暮らせるほどの大金を得ることができるそうです。
それではさっそく、「片想い中の先輩に贈るバレンタインデー菓子盆」スタートです!
エントリーNo.1 モンゴルナイフ
一人目はモンゴルナイフ! いきなり「可愛らしい女性に扮してもらう」という前提を崩して申し訳ありません。
「OLが会社の同じ部署で横のデスクに座っている憧れの先輩にバレンタインに贈る菓子盆を作りました。
私の会社ではバレンタインは、女子社員でお金を出し合って男性社員にまとめてチョコを買う協定が組まれているので、自分だけ抜け駆けしてチョコを渡すと大変なことになります。
しかも私は会社でモテモテのマドンナで、特定の誰かにチョコを渡すと嫉妬に狂った男性社員たちが文房具を武器にオフィスが戦場と化す可能性があるので、あくまで”さりげなく”菓子盆に乗せてチョコを渡します」
愚にもつかない妄想を語り続けるモンゴルナイフの菓子盆はこちら!
●チーズおかき梅しそ味(ブルボン)
●マンダリンオレンジ(ファミリーマート)
●カシュー&アーモンド(ファミリーマート)
●リンドール(リンツ)
●スターバックスvia (スターバックス)
●パイ&クッキーミックス(無印良品)
「先輩に好きって言いたいけど、同じ仕事をしている仲間なのに告白して失敗して気まずくなるのは嫌、だから本命チョコを堂々と渡したりはできないし、協定があるから義理チョコも渡せない…。
でもバレンタインに先輩にチョコを渡したい! あわよくば私のこと好きになってもらいたぁい…あわよくばキスしたぁい…あわよくば…。そんな切ない女ごころがこもっています」
「3時くらいの疲れてくる時間に『先輩、菓子盆でも食べて一息いれませんか?』と自然な流れで菓子盆を差し出し、私のハートを送り出します! 出来る女なので、チョコに合うコーヒーも一緒に置きました。
何気なく置いてあるチョコですが、これはと〜〜っても美味しいチョコなので、周りのお菓子たちはチョコを邪魔しないけど、うまく引き立ててくれるものを選びました」
~ 会場の反応 ~
「ダルい妄想を聞き流せば、良い菓子盆ですね」
「『まとめてチョコを買う協定』とかのOLリアリティがすごい」
「関係ないけど眼鏡割っていい?」
と、全体的に好評でした! 果たして審判のダ・ヴィンチ・恐山はこの盆をどう見るのでしょうか?
「バレンタイン」がテーマの「菓子盆」となれば、これはもうどうしても「チョコレート」に主眼が置かれるわけですが、全体の調和を重視する菓子盆においてはバランスが崩れるリスクがあるのが難しいところです。
その点、トップ盆を飾ったモンゴルナイフさんの盆はリスクをうまく回避しています。もしこれがバレンタインに盆でなければ何気なくスルーされる佳盆だったでしょう。ですがひとたび偽装のカラクリに気がつくと、チョコに込められたドロリとした情がオーラを放つのです。
芳香剤として脱法ハーブを売るかのように、法の目をくぐり抜けた菓子盆。彼女にとっては盆は恋成就の踏み台なのかもしれません。モンゴルナイフ。ズルい女です。
出ました!! シャ乱Q以来の「ズルい女」!! これが出るということは、今日のダ・ヴィンチ・恐山は一味違います…。
エントリーNo.2 長島(初出場)
2人目の出場者は初出場! イケてるしヤバい男・長島。妙なセミナーによく出没する胡散臭い詐欺師にしか見えませんが、一応女装です。菓子盆の腕は全く未知数ですが、何やら自信があるとのこと。
「今回は他の女子と圧倒的な差をつけることを意識しました。
ぼくは『イケてるしヤバい男長島』という企画でバレンタインチョコを200個くらいもらったことがあるので、もらう側の気持ちはとてもよく理解してます。やっぱり、人の“印象に残して”“勝つ”ためにはセンスの違いを見せることが大事なんですよね。
バレンタインのブルーオーシャンを狙う、そういう意味ではビジネスの世界によく似ていると考えてます。菓子盆で勝つ自信はあるかと聞かれたら『自信がある』と言わざるを得ません」
●和楽の里ミニ羊羹煉(米屋)
●千菓子詰め合わせ(御菓子司 塩芳軒)
「面識はあまりないけど、ずっと好きで憧れている高校の先輩に渡す菓子盆です。本来、バレンタインを菓子盆でなんか渡しません。ただ、逆に、菓子盆で渡した時点で他との差別化は完全にできます。なので、あとは菓子盆が最大限に映えるような美的センスを散りばめればいいだけです」
「菓子盆というのは、“粋”と“間”を演出することで深い味わいが出ます。高校生だとオシャレなモノをinstaやFacebookとかにも投稿したいでしょうから、これだと良い感じに投稿できますね!『いいね!』のビッグバンが起きるかと思います」
~ 会場の反応 ~
「スプーンに載ったうんこ」
「はじめての検便祝いじゃん」
「バレンタインデーにこんなことしてくる女子高生がいたら保健所に連絡する」
「ちょっと待ってください! 説明はまだ終わってません! こちらのスプーンが置かれてるペーパーを広げるとLINE IDが書かれてます。見た目で安らぎ、ちょっとしたサプライズで非現実感を楽しむ。彼の思考を占有すること間違いなしです。
今回、最終ゴールは『付き合うこと』です。そこに向かってマイルストンを引いたとき、バレンタインは非常に重要な日になるので、しっかりリソースを割いて取り組みたいですね!」
~ 会場の反応 ~
「こいつやっべぇな…」
「キッッッッッッショ」
「翌日の黒板に貼り出されて晒し者にされかねない」
長島さんは色男とうかがっていたので、盆にもその豊富な経験を活かした女性観が反映されているのだろうと思っていました。それで出てきたのがこれです。なんですかこれは。お供え物?
器となる盆を初めて目にした人は、必ず「思ったよりも小さい」と言います。直径20cmほどの広さにお菓子をどう敷き詰めるかというのが、菓子盆選手権の醍醐味です。
長島さんの盆はどうでしょう。たった直径20cmの円の中の空間から寒々しい広さを感じます。隙間風が吹きすさぶ盆です。意図せずして長島さんの荒涼とした心象風景を見てしまったような気がして少しゾッとしてしまいました。
紙にLINE IDを書く手法も、この盆においてはガワだけをなぞった空虚なメソッドのように思われ、長島さんの使う菓子盆恋愛工学に背筋の冷える思いでした。
やはりド酷評でした。しかし、そのあまりのキショさは逆に「我々は新たな菓子盆スターを見つけてしまったのでは?」という気持ちにさせてくれます。長島の2回目の出場は確定といっていいでしょう。(もっとキショい盆が見たいから)