原作者への怒りがピークに

背景がないと舞台設定がわからず読者が困惑する。人物の下描きが済んだら背景の作業に移った。

 

ネームによると今回の主な舞台は“深夜の公園”。もっと詳細な情報が欲しかったので、原作のみくのしんに相談した。

 

「みくのしんさん。公園のモデルになった場所か、参考資料ってありますか。」

「う~ん…。僕も適当に描いたので…。じゃあ、ネットで見つけたフリー素材の公園の画像送りますね。」

 

 

「これでお願いします」

 

 

この1枚の写真だけが送られてきた。

…これだけ?????

お前が作ったネームにはこの景色以外にもいろんな公園のカットがあるんだよ?

 

原作者のいい加減さに怒りが込み上げてくる。

 

あとさ、いくらネームとはいえ

こんな公園ある?

 

 

公園こんな感じになってるの? 界王さまの家?

 

俺だって素人なんだからこれだけの情報で描けるわけないだろ。

 

締切も迫り、気持ちに余裕がなくなり、原作者の些細なミスにもイラつくようになってきた。

 

 

漢字の誤字にもムカつく。

なんだ「景気」って。

たぶん「景色」なんだろうけど、みくのしんは全てのコマで「景気」と間違えていた。日経平均株価のグラフでも描けばいいのか。殺すぞ。

 

コンビを組んだら楽になるかと思いきや、今のところデメリットしかない。

 

そんなこんなで下書き作業も完成した。この作業だけで丸2日潰れた。なのにまだ進行度は50%くらい。

もう嫌だ…。全部投げ出してハワイとかに行きたい。

 

 

 締切まであと5日 

 

 

いよいよラストスパート!ペン入れ

ついに最後の段階まで来た。「ペン入れ」だ。

ネーム → 下書きと進み…また白紙からのスタート。漫画家の先生って毎週、毎月こんなことしてんのかよ。

 

まずは下書きの線を原稿用紙に複写する作業。

 

たぶん専用の道具があるんだろうが、調べる余裕も資金もなかったので窓に用紙を当てて日光を頼りに複写していく。

…悲しくなってきた。俺はいったいなにをやってるんだ。あと、腕が吊りそうになる。

 

これから漫画家を目指す人は、資金に余裕があれば是非とも『トレス台』という蛍光灯が仕込まれている製図の台の購入をオススメします。

 

 

複写した鉛筆の線をペンでなぞっていく。めちゃくちゃ神経に気を使う。

ペン先を上手く扱えるか不安だったが、思ったよりもスイスイ線が引けて楽しい。

 

と、思った矢先…

 

あ!!

 

ああああああああああ!!!!

小指の側面に付着していたインクのせいでぶん殴られたあとみたいになってしまった

 

トラブル続きで疲弊する僕を見かねて、原作者みくのしんもベタ塗り(指定されている範囲を黒色に塗りつぶすこと)作業を手伝ってくれた。ありがたい。

さっきは「公園の資料足りねぇんだよハゲ!」とか怒っちゃってごめんね。いざという時、こんなに頼りになるなんて…。

 

「どうせ黒く塗りつぶすから」とふざけて鎖かたびらみたいにされた。脳にGペン突き刺してやりたい。

 

原作者から「星空のカットも欲しい」と頼まれた。ググってみたら絵筆にホワイトインクを染みこませ、息を吹きかけるとインクがいい感じに散って満点の星空ができる「スパッタリング」という手法があるらしい。

 

簡単そうだったので、チャレンジしてみた。筆先にホワイトインクを染みこませて…ブッ!!

 

息の吹き方が悪かったのか、星空ではなく「技を発動する瞬間の超能力者」になってしまった。

難しい…。

 

マンガで欠かせないものと言えば「スクリーントーン」だ。等間隔に網目が配列された薄いシールのことで、これがあるのとないのでは全然違う。

 

トーンを貼ってみた。

すげえ! これもう漫画じゃん!

一番興奮した瞬間だった。

 

それでもトーン貼りも難しい(難しいことしかない)。

トーンは薄い材質なので、カッターで切りぬく際に力を入れすぎると破けたり欠けたりしてしまう。クソッ!

A4サイズで1枚300~500円もするので、失敗すると焦る。

 

あと、一番面倒くさかったのが背景美術! クッソだるい。

例えばベンチ一つ描くにしても、いちいち定規で線引き→清書。

 

やっと完成しても次のコマでもまた同じベンチを描かなきゃいけない。地獄だ。物の少ない夜の公園でもこの手間である。「学校の教室」とか描くの想像したくない。

 

一コマが完成した

下書き → キャラクターのペン入れ → 背景・小物の書き足し → ベタ塗り → 消しゴムかけ → トーン貼りを経てやっと1コマが完成

これまで漫画を読むときは何気なく見ていた1コマだけど、こんなとてつもない工程で描かれていたのか…。

 

何度でも言うが、漫画家って本当に凄い。

 

それでも作業を進めていき、だんだんマンガの形に近づいていく…。

ていうか、作中の時間を夜にすんな。いちいちトーンを貼らなきゃいけないだろ。

 

コマが変わるたびにキャラの表情が別人になってる…

 

表現がお粗末すぎて2コマ目とか女性が巨人みたいになってる
 

時間が無さ過ぎて細かいミスまで気を配る余裕がなかった。

 

 

「お! このコマは凄いじゃん!」と思ってくれそうですが
実際には写真を線画加工にしただけ。でもプロの方もやってる手法な気がするし…。

とにかく一から建物を描くなんてとてもじゃないが無理だった。「AKIRA」の大友先生、頭おかしすぎ…。

想像だけで街の風景を描いたので後ろとかバグが発生した感じになった

 

「レントゲンのエコー写真」が必要なコマも素人の技術の限界を超えてるのでフリー素材を貼って誤魔化す。

そもそも「最新のスマホでレントゲンが見れる」ってなに? 頭悪すぎない?

 

 

超 末期」という小学生が作ったような言葉。原作者の頭が超末期だ。

 

 

画力の限界で首の角度がお化けみたいになってるコマもあったりしたが…

 

遂に…

 

  締切日が来た  

 

4月17日(イベント当日)

マンガ完成!!!!

 

☆製作期間…約1か月(3月15日~4月17日)

☆ページ数…22P

☆かかった費用…約4600円

 (内訳)

 ・アイシー漫画原稿用紙(40枚入り) 約550円

 ・デリーター「お試しペンセット」 約600円

 ・パイロット証券用インクブラック・ホワイト 約430円×2

 ・スクリーントーン 約400円×4

 

…もちろん、完成したといっても所詮は素人が付け焼刃で描いただけなので、なんとか形になっただけ。

それでも疲れた…。本当に疲れた。マンガ製作ってこんなにも時間と体力が削られるのか…。

 

それに僕たちは原作と作画に分かれたので作業量も分散されたけど、当然すべて1人でやっている人達もいる訳で、化物かよ…。

 

 


 

今回、素人がゼロから漫画を描いてみて気付いたことはこんな感じ。

 

●模写は大事(自分に自信がつく)
●1日中ずっと座ってるので足が痛くなる
●コマが変わるたびにキャラの表情が変わってしまう 
●ワク線を引いたり、トーンを貼ったときはマンガっぽくなるので嬉しい
●トーン貼りが大変すぎる
●原稿を汚さないために手袋をつけた方がいい
●服にシワがないとのっぺりして見える
●舞台や背景は資料がないと困る
●母親をモデルにしない
●一コマを完成させるだけでもめちゃくちゃ大変
●ネーム→下書き→ペン入れって漫画家の先生って毎週こんなことしてんのかよ

 

一コマ、一冊にとんでもない量の技術と情熱や時間が込められていることがわかったので、よりマンガへの愛が深まった気がします。

マンガって本当に凄い!

 

イベントでは…

そしてイベント本番。死ぬほど恥ずかしかったけど自分達が描いたマンガをお客さんの前で発表しました。

みくのしんの原作の酷さや、僕の作画の細かいミスなど笑ってもらい、2人で作ってよかったなと思いました(別にウケるために描いたわけじゃないけど)。

 

お越しいただいた皆様、本当にありがとうございました!!!

 

ただ僕達は死ぬほど疲れたのでもう2度とやりません。

 

おわり

 

 

僕たちが初めて描いた作品「恋にこがれて」、下のリンクから全ページ公開させていただきます。

拙い作品ですが、興味のある方はぜひご覧ください!

 

 

「恋にこがれて」