あぁ…

 

したいなぁ……

 

論破、したいなぁ……

 

 

誰しも「気に入らないやつを言葉でメッタメタのボッコボコに打ちのめしたい」という欲望を持っているはず。

 

 

そんな「言葉」を使いこなすのが得意そうな人といえば

 

 

 

ディベート部

 

ではないでしょうか。

 

ディベートとは、ある論題に賛成・反対の立場で分かれ、スピーチによって第三者を説得する競技。

毎年開催されている全国中学・高校ディベート選手権では中高生たちが「言葉」を武器に戦っているそうです。

 

そこで、こう思いました。

 

もしもディベート部に議論で勝てたら、めちゃくちゃ気持ちいいのでは?

 

 

しかしド素人が普通にディベートをしてもコテンパンにされるに決まっているので、今回は素人に有利な特別ルールを用意してディベート対決を実施します!

その名は……

 

 

 

ハンデ付きディベート対決!

 

 

通常、ディベートの論題(テーマ)は

 

●救急車は有料にすべきである。是か非か。

●小学校から英語教育を導入すべきである。是か非か。

 

といった微妙な問題を選び、ディベーター個人の意向とは無関係にランダムで賛成・反対の立場をとります。

 

が、今回のテーマは……

 

 

 

論題

ペットに向いているのは 犬か? ダニか?

 

こちらです。

 

明らかに偏ったカスみたいな論題で、

「犬派」にディベートのド素人を、
「ダニ派」にディベートのエキスパートを配置!

このハンデを駆使して上級者に圧勝したいと思います!

 

 

 

この記事は「言葉」で戦う共闘ことばRPG『コトダマン』の提供でお送りしています!

 

 

 

 

ディベートはド素人の犬派チームは、屁理屈の腕には覚えのあるオモコロライター2名が参戦。

 

永田

雀荘バイトに入り浸って大学を2回留年したが口喧嘩は得意な言葉のナイフ使い。慶應義塾高等学校・大学出身。

加藤

参加するだけで全ての会議を長引かせることのできる混乱の魔術師。アレルギー体質の元・肉屋。

 

 

ふたりともディベートは未経験ですが、論題は圧倒的に有利。果たしてこのハンデを有効活用できるのか。

 

 

 

対するディベートエキスパートのダニ派チームはこちらの2人。

 

井出さん

慶應義塾大学1年生。今年3月まで慶應義塾高等学校ディベート部の主将を務めていた。2016年のディベート甲子園全国大会でベスト8、2017年は全国優勝を果たす。

川下さん

北海道大学1年生。長崎の青雲中学・高等学校ディベート部出身。参加した4回すべてでディベート甲子園全国大会に出場し、第19回の九州大会ではベストディベーター賞を獲得。

 

 

冗談抜きで全国トップレベルの経歴。アイコンの上に「ダニ」と書いてあってバカにしてるみたいになってるのが申し訳ない。今回は圧倒的に不利な条件下でどこまで戦えるのか?

 

 

 

勝敗を決めるジャッジはあずささん、さかまきさん、しかばねちゃん(仮名)さんの3名。いずれもディベート経験者のため公正な判断が期待できます。

 

 

まずディベートの基本を知る

 

せっかくなので、まず川下さんと井出さんにディベートに関する素朴な疑問を尋ねてみました。

 

 

 

Q 高校ディベート部って、普段何やってるの? 大会とかあるの?

「ディベート甲子園」という全国大会が8月に行われるので、出場を目指してスピーチや議論の練習、資料集めなどをしています。

ディベートのテーマはいつ発表されるんですか?

その年の3月です。6月と7月の予選もずっと同じ論題で試合を続けます。

えー! じゃあ半年近く同じ論題でやることになるんだ。

だから、資料集めがすごく重要なんです。試合直前まで自分がどっちの立場になるかわからないので、論題に関係するあらゆる資料を読み込んで、どんな方向からでも主張と反駁(はんばく)ができるように鍛えておきます。博士論文の参考文献よりも多く資料を集めてる、なんてこともあります。

資料ってWikipediaじゃダメ…?

Wikipediaは信用性がないので「参考文献」を資料集めの足がかりにするくらいしか役立ちませんね。書籍・新聞記事・判例・論文・世論調査などのアーカイブをなるべく多くかき集めます。

同じことを他校のディベート部もやってるんだよね。情報戦だ……。

そうですね。統計等の資料では最新のものほど正確だと考えられるので、こちらが2015年の資料を用意していたとき、相手が2017年の資料を出してきたりするとすごく焦ります。

 

 

Q 性格悪くなりそう。普段も論破とかするの?

よく勘違いされていますが、ディベートは論破するための競技ではありません。あくまで、客観的な事実を述べて第三者を「説得」するためのものです。ネットの「論破コピペ」のようなものは、ディベートとして見ればほとんど論外ですね。

喧嘩腰で相手を挑発するような態度は対話の姿勢にふさわしくないのですよね。ディベートをやったから性格が悪くなるということはなく、むしろ冷静で中立な視点を培えると思います。

紳士じゃん…。

 

 

Q ディベートの何が面白いの?

こういう言い方は変ですが、カードゲームのような面白さがあります。僕は「第1反駁(はんばく)」という論じ返すパートを担当することが多いのですが、集めておいたカード(資料)の中に、相手の出した攻撃を封じられる強力なカードを発見した瞬間は凄まじく興奮しますね。「専門家の知見」という強力なカードで叩き潰して焼け野原にできるので。

急に物騒になったな。

僕は「肯定側第2反駁」という試合最後の反論パートが好きなんです。何が楽しいって、僕のあとはもう誰もしゃべれないんですよ。「お疲れ様でした~、あとは僕が全部まとめま~す」という感じで全部かっさらえたときの快感がたまらない……。

やっぱ性格悪くなってない?

 

 

 

 

ハンデ付きディベート対決のルールは、ディベート甲子園・高校生試合ルールに準拠します。

まず犬派が「立論」で主張を述べ、それにダニ派が「質疑」を行います。ダニ派が立論したあとは犬派が質疑をし、それらを踏まえて反論したり自分と相手の説を比較したりして自サイドの優位性を示す「第1反駁(はんばく)」を展開。これを互いが「第2反駁」まで行ったらゲーム終了です。ジャッジが勝敗を判定します。

 

 

 

それではハンデ付きディベート対決、スタート!!

 

犬派 立論(6分)

 

犬派の立論。持ち時間は6分。以下、やり取りはダイジェストでお伝えします。

 

 

 

・犬はかわいい

え~、みなさん。まず最初に言っておきたい。犬はかわいい! それに対して、ダニは気持ち悪い

それに犬は愛情を注げばなつく家族ですが、ダニは愛情をいくらそそいでもなつかない! あれは有害な小虫にすぎません! あんなのを家族扱いしてたら変人です!

そうだそうだ!

 

※本来のディベートでスピーチ中に合いの手を入れてはいけません

 

・犬はペットとして人気がある

さらに犬はペットとして非常に人気があります。大昔から人間とペットとして共存してますし情操教育にも良い。それにひきかえ……ダニの人気のなさ……これは酷いですねぇ~。

あちゃちゃちゃ…。

 

・ダニはデメリットがいっぱい

それに、ダニはさまざまな病気を持っていて、人間に大して大きなデメリットを与えます。最悪死にます! 不潔でいいことありませんね!

 

だから私は声を大にして言います! ペットにするなら犬であると! ダニの「ダ」は「駄目」の「ダ」だと!

よく言った!

……あと3分30秒残っていますが、以上です!!

 

 

 

~ 6分経過 ~

 


 

大幅に時間を余らせて席に戻ってしまった犬派・加藤。「言うことすぐなくなる」と言っていましたが、これは余裕の現れなのか?

 

 

 

1分間の準備期間ののち、立論を踏まえたダニ派による質疑が始まります。

 

ダニ派 質疑(3分)

 

 

「犬がかわいい」と「ペットに向いている」はどう関係しているのでしょうか?

かわいかったら、飼うでしょ。

…わかりました。次です。犬を家族として扱うことはどうして良いと言えるのでしょうか?

いろんな人がそう言ってるからなぁ……。

次です。犬がペットとして人気があるのはわかりますが、だからといってなぜペットに向いていると言えるのでしょうか?

人気があるなら向いてるでしょ。人気司会者は実力があるから人気なんです。人気デートスポットはカップルが楽しめるから人気なんです。キミは女とデートしたことがあるのか?

それは関係ありません。

 

~ 3分経過 ~

 


 

主張の根拠を求められるもフワフワした返答で煙に巻こうとする犬派チーム。下調べの不十分さが目立ちます。

 

ダニ派 立論(6分)

 

対するダニ派の立論。持ち時間は同じく6分。果たして今後の人生で6分間もダニについてしゃべることがあるのか。

 

 

 

まず、この論題は「犬とダニのどちらがペットに適しているか」と解釈してよいでしょう。その基準として「どちらが可愛いか」といった主観的要素は人それぞれになってしまうため適していません。そこで、ダニが犬よりもペットに適している3つの客観的な根拠を提示します。

 

 

・ダニは導入コストが低い

1つ目は導入コストです。ダニは自然界に多く存在し、入手が楽で、費用もかかりません。特別な設備もいりません。

対する犬は入手する際に様々なコストがかかります。子犬代、ワクチン代、犬の登録代、去勢・避妊手術代、グッズ類を合わせて初期費用を示します。日本スクウェアズ株式会社による概算によれば、初期費用として小型犬で26万円、中型犬で28万円、大型犬で30万円が必要です。この点でまず犬よりもダニの方がハードルが低く、ペットに適しているといえます。

 

 

 

・ダニは維持コストが低い

2つ目は維持コストです。ダニは少量のエサで十分で、特別なものは必要ありません。場所も取らず匂いもせず、鳴くこともありません。

犬はエサ代がかかりますし、近隣住民に騒音や糞尿の害で負担を強いることもあります。この観点からもダニの方がペットに適していると考えられます。

 

 

・ダニは廃棄コストが低い

3つ目は廃棄コストです。ペットは飼えなくなった場合のことも考えるべきです。

その点では、自然界ありとあらゆるところに大量にいるダニは採取した場所に返せば問題ありません。

しかし捨て犬は深刻な社会問題です。保健所による犬の保護・処分は税金で賄われていますし、野犬による環境破壊もあります。環境省が発表した平成28年度の犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況によれば、殺処分されてしまった犬は41175頭です。これは、人間が犬をペットとして飼おうとさえしなければ発生しなかった問題です。

 

 

 

以上の3点をまとめます。ダニは飼うためのハードルが非常に低く、まず問題が発生しないといえます。
一方の犬は、飼い主に多くの金銭的負担があるうえ、近隣住民にとっても迷惑で、飼えなくなった際の社会的コストも膨大です。つまり、犬は飼うためのハードルが高く、飼い主が責任を持てない規模の大きな問題が容易に発生する可能性があるということです。以上より、犬よりもダニの方がペットに適しているといえます。

 

~ 6分経過 ~

 

すげ。ピッタリ6分使い切った。

語りますねぇ……。どうせ高速でスクロールされて読まれないのに……。

 

 


 

まず「”かわいい”は主観」と犬派の切り札をバッサリ切り捨て、コスト面から客観的にダニの長所を述べたダニ派チーム。6分間途切れなく続いた弁舌に感嘆の声が上がりました。ほんとに先月まで高校生だったの……?

 

 

 

犬派チーム、机に足を乗せるな。

 

犬派 質疑(3分)

 

 

「ダニを飼っても近隣住民に迷惑をかけない」って言ってたけど、ダニを飼ってるやつが隣に住んでたらイヤじゃないですか?

僕は犬が苦手なのでダニを飼っている人のほうが好ましいですし、主観ではなく客観的な根拠を挙げるべきだとすでに述べました。

でも、大量発生したら迷惑ですよね。迷惑じゃなかったとしたら、あなたの布団にこれからダニを大量に撒きますけど、いいんだな?

はい。家の中だけで数百万から数億のダニが生息しているので、撒かれても実害はないと思われます。

くっ……! 「ダニはそこらじゅうにいるから飼いやすい」って言うけど、じゃあわざわざ飼う意味なくないですか?

いえ、特定の固体を識別して、特別な感情を抱いてさえいればそれはペットだと思いますし、意味があると思います。

 

~ 3分経過 ~

…時間ですが最後にひとつだけ。あなた、おいくつですか? 高校は?

もうすぐ19になります。高校は慶應義塾高等学校です。

俺は今年32歳で慶應義塾高卒です。…大先輩だぞ、生意気な口を利くな。わかってんだろうな?

 

 

 

わかってんだろうなぁ!?

オイ!!!!!!

 

 

 

苦笑。

 

 

ダニ派 第1反駁(4分)

 

大人げない怒声が響くディベート対決も後半戦。ダニ派による第1反駁(はんばく)が始まります。

 

 

 

 

●「犬がかわいい、ダニは気持ち悪い」への反駁

犬にかわいいという価値観を認めるならダニにも認めるべきです。社会的なコストは犬の方が大きいし、「育犬ノイローゼ」など精神的なリスクもあります。犬を家族として扱うかどうかは犬とダニを区別する論拠にならず、情操教育につながるという根拠も示されていません。

 

●「犬はペットとして人気がある」への反駁

ペットに向いているという価値そのものに具体性がなく、犬が人気というだけでダニとの優劣を決するには根拠も議論も不十分です。歴史の話が出ましたが、直接的に犬がペットに向いている証拠にはなっていません。むしろ1万年前程度であれば、愛玩より狩猟や番犬の意味合いが強かったのではないでしょうか。

 

●「ダニは感染症のリスクがある」への反駁

有害なダニは種全体に対しごく一部です。有害なダニを選択的に飼わなければいいのです。「有害なダニでなければペットにならない」と言うのでなければ、この論点は無効です。また、カプノサイトファガ症やパスツレラ症などの、犬の常在菌による感染症もあります。犬に比べれば大多数のダニ種のほうが安全性のアドバンテージがあります。以上です。

 

 

~ 4分経過 ~

 


 

ダニ派の第1反駁で、犬派が挙げたメリットがほとんどブッ潰されました。ピンチです。

 

 

 

準備時間中に携帯をいじる犬派チーム。いまさら論戦に使える資料を調べているのでしょうか。

 

 

 

犬の画像を見ていました。

 

 

※試合中に電子機器を使用して通信を行うと敗戦、または大会失格になるおそれがあります。

 

犬派 第1反駁(4分)

 

迎え撃つ犬派の第1反駁。

 

 

 

●「かわいさは主観。ダニをかわいいと思う人もいる」への反駁

「そう思う人もいる」という母数の少ない話のほうが客観性に欠ける。君は犬よりダニのがかわいいと思うのか? ただ犬が人気というのがわかればいい。ダニとの優劣はそこでついている。

 

●「犬の飼育のほうがリスクが大きい」への反駁

たとえば育犬ノイローゼは、ペットとして犬が向いているから問題が生じているのだ。育ダニノイローゼがないのは単にダニに人気がないから。周囲への迷惑の話ならダニも迷惑をかけるのでは? 犬は鳴き声がうるさいと言うが、鳴けないようにしろというのか。酷いな、君は。

 

●「ほとんどのダニは無害である」への反駁

不快な外見の生物と暮らして体調に変化がないと思っているのか? 無害なダニも、有害なダニのエサになって呼び寄せるかもしれない。結果的に人へ害を成すなら害なのだ。

 

~ 4分経過 ~


 

あからさまな詭弁を織り交ぜつつそれっぽいことを言う犬派チーム。ジャッジはこれをどう見るか?

そして、次はいよいよ最後のフェーズ、第2反駁です!

 

 

 

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