人は誰しも、バンドマンに憧れます。
楽器に触れたこともないくせに、学園祭で演奏する自分を想像し、かっこいいバンド名を研究し、「アルバムジャケットはこんな感じでいくか」と、自分のCDがタワレコに並んでいるイメージまで妄想するものです。
そのアルバム、妄想の中だけに留めておくのは勿体ないとは思いませんか?
というわけで、今回はこちらの5人に集まってもらい、それぞれが妄想するバンドと、架空のアルバムについて、思う存分 発表し合うことにしました!
メンバー紹介
宇内一童(ライター)
中学時代、ドラマ「ロングバケーション」で主演のキムタクが演じるピアニスト・瀬名に影響されてピアノを始める。すぐやめた。
山下ラジ男(ライター)
高校時代、文化祭のステージで演奏することを夢見てGreen Dayのコピバンをやっていたことがある。
ギャラクシー(ライター)
バンドブーム真っ只中に育ったが、友達が一人もいなかったため、教室の隅で寝たふりを続けるだけの学生時代を送った。
ダ・ヴィンチ・恐山(ライター)
ロックと金髪は不良のものだと思っている。好きなバンドは『キリンジ』と『P-MODEL』。
原宿(オモコロ編集長)
高校時代に「弾くのが一番楽そうだから」という理由でベースを買ったが、そんな動機では長続きするはずもなく、すぐ指先が痛くなってやめた。
ちなみに、誰の妄想バンドが一番良かったのかは、後日 本物のミュージシャンに順位をつけてもらいます。
(左)『オワリカラ』のタカハシヒョウリさん、(右)『THEラブ人間』の金田康平さん
嘘だろ……ってくらい有名なお二人に点数をつけてもらったのでお楽しみに。
ただそれは後日(3ページめ)のこと。まずは5人だけで行われた発表会の模様をご覧ください!
では、ここに―
第一回『妄想バンドのアルバムジャケット選手権』の開催を
宣言いたします!
妄想バンドのアルバム紹介|宇内一童
「トップバッターの僕からは、こちらのアルバムを紹介します!」
BUDDHA SOUND SYSTEM/『平和がいちばん怖い……。』
【メンバー】
宇内一童(vo & gt)
宇内百童(ba)
宇内万童(dr)
「BUDDHA SOUND SYSTEMの幻の名盤、『平和がいちばん怖い……。』です」
「実際ありそう! インディーズバンド界では“知る人ぞ知る”みたいな位置づけなんだろうな」
「音楽的にはブランキー・ジェット・シティっぽいバンドです」
【曲目】
1.もしかしてエイドリアン
2.魅惑のエイドリアン
3.ぼくはバルボア
4.平和がいちばん怖い……。
5.無名の三流
6.アポロの豪邸
7.敗戦
8.復帰戦
9.もしかしてエイドリアン PARTⅡ
「曲が全部ロッキーなの何でだよ」
「ボーカルの宇内一童は、普段ロッキーの話しかしないから、愛称がロッキーなんです。ブランキーのボーカル・浅井健一も、映画『グローイング・アップ』の主人公・ベンジーに似ているから愛称がベンジーなんですが、そのエピソードに酷似しています」
「長いけど浅いエピソードだなぁ」
「宇内一童、百童、万童というメンバーは、兄弟ですか?」
「宇内一童は本名ですが、それ以外は芸名です。一童と百童が幼馴染みで、万童とはバイト先で知り合います。ビルの非常階段で立ちバックをしている万童を発見し、そのリズミカルな腰さばきに感銘を受けてバンドに誘うんですよ」
「無理におもしろくしようとすんなって」
「万童がドラムに加わってやっとバンドが始動したんですよね? 結成秘話とかはないの?」
「う~ん、結成秘話ねぇ。実際バンドって……意外と、そういうのないんですよね……」
「バンド組んだことないだろ」
「『平和がいちばん怖い……。』というタイトルからすると、政治的なメッセージ色が強いバンドなんですか?」
「いや、すべての歌詞に意味はないです。日本語のリズムの美しさだけを意識した歌詞になってるんです」
「ないのかよ」
「何もないバンドだな」
「でも逆に、ファンの間で『あの歌詞はこういう意味じゃないか』って考察されたりして話題になるんですよ。エヴァンゲリオンみたいな」
「めちゃめちゃなメンヘラが聴いてそう」
妄想バンドのアルバム紹介|山下ラジ男
「続いては僕がおすすめするバンドを紹介しましょう」
「ラジ男くんはバンドをやったことは?」
「実はちょっとやったことがあります。今回は唯一のバンド経験者として妄想バンドを考えてみました」
The American Spirits/『Music Farm』
【メンバー】
ジェロニモ(vo & gt)
ブル(vo & gt)
C・ホース(ba)
ゴール(dr)
「The American Spiritsの『Music Farm』というアルバムです。タバコと自然を愛するネイティブアメリカンの末裔……という設定のバンドですね」
「アルバムジャケットは結構良い気がする!」
「うん、かっこいい」
「ありそう感がハンパない」
【曲目】
1.Intro (※スタジオで録音に入る前の雑談が入ってる)
2.アパッチ・ロード (※重厚なリフが特徴的なミディアムロックナンバー)
3.ナチュラル&オーガニック (※2分の曲だがライブ版だとイントロとギターソロで遊ぶのでなんだかんだ5分くらいかかる)
4.リトル・ビッグ・ラブ (※大ヒット曲、ジェロニモがアコギを弾く)
5.ターコイズ (※繰り返されるベースのフレーズが頭に残る7分の大作)
6.嘘 (※泣ける歌)
7.Columbus has no eggs (※虐殺されたネイティブアメリカンの怒りを歌った曲)
8.ビッグチーフの誓い (※最後に水飲み台を豪快に投げ捨てるMVが有名)
9.ウィリアムテル 序曲(cover) (※ローンレンジャーのテーマのカバー)
「音楽のジャンルはどういう感じなんですか?」
「ガレージロックバンドです」
「まあそれ以外に選択肢ないよね」
「デビューアルバム『Music Farm』は当初まったく売れなかったんですけど、音楽雑誌『snoozer』で田中宗一郎さんに『洋楽っぽい』と言われてから、めちゃめちゃ売れます」
「ありそうな嘘をつくな」
「4曲目の『リトル・ビッグ・ラブ』が最大のヒット曲なんですが、いわゆる売れ線の曲です。メンバーは流行りすぎてうんざりしているので一時期ライブでは全く演奏されなかったらしいですね」
「ファンは求めてるのに!」
「セールス的には3枚めのアルバムが一番売れたんですけど、その頃はメンバー間の関係が最悪に冷え切ってて、普段ほとんどの楽曲を書いているジェロニモが一曲しか参加してません」
「そのアルバムが売れたってことは、今まで曲を作ってたジェロニモに才能がなかったということでは?」
「まぁ、そういうことを言う人も多くて、メンバー間の対立を結果的に深めてしまい、解散に至るわけです。個人的な意見を言うと、The American Spiritsはやっぱりジェロニモありきのバンドだと思いますよ」
「個人的な意見も何も、個人の中にしか存在してないバンドだけどね」
「メンバーは解散後どうなったの?」
「ジェロニモはソロで活動します。ギターとベースはスタジオミュージシャンとして生計を立てていきます。そしてドラムはアパレルブランドを立ち上げて、それなりに成功します」
「ありすぎるわ」