
オモコロ特集
それは月に一度訪れる、審判の時である。

あるものは何千何万もの人々から喝采を浴び、
またあるものは大いなる生き恥を晒す。
記事を書く誰もが皆、ウケることを願い、
スベることに恐怖した。

ある人はこう語った。
「スベった記事はなかったことになる」
と。
しかし、
そんな甘い言葉を真正面から受け入れられるほど、
インターネットの人間は素直ではなく、
強くもないのである。


「そんなこと言われてもさー、今全然記事足りてないんだから。手の空いてる人に書いてもらわないと困るわけよ」

「は、はぁ・・・」

「それと最近は料理記事も増え過ぎだから、そういうのもしばらくは禁止で頼むよ。ウチはおもしろのメディアなんだから」

「そ、そんなぁー・・・」

「じゃあ週明けまでに書いてきてちょうだい。そういうことで、よろしく!」

「そんな、急に・・・」

「そんな・・・」


「料理以外の記事・・・、それに5日で書けなんて、あの人ほんと無茶苦茶だよなぁ」

「そんな簡単に面白いことがポンポン浮かぶんなら雇われのライターなんてやってないんだわ!」

「あー、全然思いつかないな。もう」
「なんかおもしろいこと、おもしろいこと、おもしろいこと」
「オモロオモロオモロオモロオモロオモロオモロオモロ………………」


「・・・」
「なにも思いつかなかった・・・」
「編集長になんて言えばいいんだ・・・・・・」



「ここが“いい病院”か・・・。記事も書かずにこんなところに来て大丈夫なのか?」
ガチャ・・・

「聞きましたよ。最近眠れないんですって?」

「その、あの、えっと・・・」

「・・・はい、まぁ。 あとは、面白いことがぜんぜ」

「うんうんうん、大丈夫、めちゃめちゃ良いお薬がありますから。もう効き目バツグン。寝る30分前に1錠、飲めばあっという間にグッスリ。ほんともう大丈夫だから」

「は、はぁ・・・」

「記事が書けてない問題はひとつも解決してないんだけどな・・・」

「でも、別にもういっか・・・・・・」
「ゴクっ・・・」






「はっ! えっ、ここは・・・・・?」

「ここは。夢の中。」
「お前は?」

「私はモアイ星人。お前は、おもしろ記事を書き上げるまで永遠に目覚めることはない。」
「なんだって? どういうことだ!」

「教えてやろう。オモコロ編集長、原宿。彼は我々モアイ星人の手先だ。」
「記事を落としそうなライターをこの夢空間に閉じ込め、強制的に締め切りに間に合わせる。」
「そうすることで何十年もの間、ただの1度も記事を落とすことなくオモコロは運営されてきたのだよ。」
「そ、そんな」

「思い出してみろ、お前が過去に書いた記事のことを……。」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ頭がっ・・・・・・!!」

「それらは全て、この空間でお前に書かせたもの……。」

「う、ウソだぁーー!!! あれは全部俺が書いたはずなのにうわあああああああぁぁあーーーー!!!!!」

「そう。お前が書いたことに変わりはない。」
「だが、そのどれもが締め切りの日の朝、気づくと書きあがっていたものではなかったか……?」

「そんな、まさか。あれも、これも、この前の記事も、まさか、全部!? 嘘だあああああうわああぁぁあーーーー!!!!!」
「それにもう本当に面白いことなんて思いつかないよー!!! 本当に無理なんだ助けてっ!! ここから出してくれえええぇぇえ!!!!」

「助けを呼んでも無駄だ、ここには誰も……。」

カッ!

グン
グン
グン

ジュワッ

チャッ




ジュ…
ワッ!


「ふわぁぁぁぁ、よく寝たなぁー」

「よく眠れたけどやっぱ記事は間に合わなかったなぁ、編集長に直接謝りに行こう」




ゴウゥーーーーン……
ピン
ポン


「えっ!?」

「えっ・・・? どこよ、ここ」

「あれは・・・」


「モアイ・・・?」

「これ」
「なんのモアイだっけ・・・?」

夏
草
や
兵
ど
も
が
夢
の
跡
モアイ星人の野望は打ち砕かれ、
オモコロも消えてなくなってしまいました。

しかし、
そのことに気付いた人はほとんどいません。
なぜなら、現在の日本の識字率は8.7%
文章コンテンツを楽しむ人は今や少数派。
インターネットのほとんどの人にとって、
娯楽とはyoutubeを指す時代になったのですから。


山下ラジ男

オモコロ編集部
岡田悠
たかや
めいと
雨穴
サイケ蟹光線
JET
彩雲
梨








