ハァ…… ハァ……
ハァ……
ハァ………
ウッ・・・・!
ガクッ
ドサッ……
「来週三者面談かー、将来の夢とかいきなり言われても困るよなー」
「ってアレ……」
「人だっ!!」
「人が倒れてる!!」
「た、大変だ」
「大丈夫ですかっ!!」
「いやーありがとう。本当に助かったよ」
「僕、タクヤってんだ」
「ぼくは江ノ島」
「江ノ島兄ちゃんはどうしてあんなところに倒れていたのさ」
「それが……ネタ出しをしてたらご飯を食べ忘れちゃってて、いやー恥ずかしい」
「ネタ出し?」
「うん、今度書く記事のね」
「記事って…もしかしてお兄ちゃんライターさんなの!?」
「まあね」
「どこで書いてるのっ!?」
「スーパーマンスリーポータルXX(ダブルエックス)って知ってるかい?」
「うーん、あんまり聞いたことないかも」
「月に一度だけ、珠玉の記事を公開するすごいサイトでね、ぼくはそこの新人なんだ。」
「pvも広告収入も関係なく、時間をかけて練り上げた最高の記事で勝負する。僕はね、そんなサイトで書けることを誇りに思っている。」
「そして来月はいよいよ僕の初めての記事が載る番。そのために10年間、電波の届かない山奥にこもって最高のネタを考えてきたってわけさ」
「10年も!?すげー!!どんなことやるの、教えてよ!」
スッ・・・
「いいよ!タクヤにだけは特別に教えちゃおう」
「例えばタクヤ、河原に落ちてる石ころに注目したことはあるかい?」
「石ころ?えー…別に気にしたことないなー」
「それをね、磨くんだ。ひたすら。8時間。」
「え!?そんなことを記事に出来るの!?」
「やってみないことにはわからないけど…、そこにおもしろさがあると思うんだ」
「他には、他には!?」
「そうだな……、タクヤはサカゼンって行ったことあるかい?」
「あの石ちゃんが宣伝してる?ないよ、僕には大きすぎる」
「じゃあ、あそこには僕よりももっと大きいサイズの服があることも知らないわけだ」
「えっっっっ!!江ノ島兄ちゃんが着てもダボダボの服がこの世に存在するってこと!?」
「それを着る記事。どうだ、おもしろそうだろ」
「うん!!他にはどんなことするの!?もっと教えてよ」
「こういうのはどう?『外でホワイトボードを使う』ってやつ」
「どういうこと?ぜんぜん想像できない」
「ホワイトボードってのはさ、基本的に会議室だったり家だったり屋内で使うものだろ?それを外に持ち出すことで新たな発見があるんじゃないかと思ったんだ」
「例えば?」
「傘の代わりにするとか……、あとは翼みたいに羽ばたいて空を飛んでみるとか……」
「ホワイトボードで空を飛ぶ!?アハハハハハハハハ!!だめだおかしすぎておなかが痛いよ!!」
「あとは~……」
「アハハハハハ!!待って、ちょっと待って!!」
「江ノ島兄ちゃんのアイデア、どれもすごいおもしろいからさ、早くマンスリーポータルの人に見せに行った方がいいよ」
「それがさ…そのつもりなんだけど……少し困ってることがあって」
「え?」
「編集部が、マンスリーポータルのオフィスが見つからないんだ。前はこのあたりにあったはずなのに。連絡先もわからないし、どうしたらいいのか……」
「えっ!?」
「…そうだ! 俺のいとこもライターやってるらしいからなにか知ってるかもしれない。聞きに行ってみようよ!」
「本当かい、助かるよ!何から何までありがとう!!」
「まぁ、いっぱい笑わせてくれたお礼ってことでさ」