「おうタクヤ!よく来たな」
「よッス!あのさ、ちょっとおじさんに紹介したい人がいて」
「おいおいおじさんはやめろって。で、紹介したい人って?」
「ん、あの人。江ノ島兄ちゃん、さっき仲良くなったんだ」
「ど、どうも」
「ふーん……、どうやらワケアリみたいだな」
「うん、実は江ノ島兄ちゃん、スーパーマンスリーポータルXXってとこのライターさんで……」
「マンスリーポータル?ずいぶん懐かしい名前だねえ」
「おじさん!何か知ってるの!?」
「へ、編集長……、すみません」
「別にいいよー。まあ知ってるっていうか5年も前に閉鎖したサイトの名前を久しぶりに聞いて懐かしいなと思っただけなんだけどさぁ」
「閉鎖した……?」
「へ、閉鎖したって! いったいどういうことなんですか!!」
「スーパーマンスリーポータルXXは! この世で一番面白くて、最も誇り高い、完璧なウェブメディアだ!! 潰れるなんて絶対にありえない!!」
「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと落ち着いて!!」
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
「大丈夫?落ち着いた?じゃあ説明するね?」
「ハァ……ハァ……ハァ……」
「残念だけど、マンスリーポータルは今から5年ほど前に閉鎖した。」
「……!!」
「まぁ……、あそこの記事面白かったけどさ、どうやって採算取ってるか謎だったし、あそこまで続けられたのが奇跡だったんじゃないのかな……。」
「そんな…そんな……そんな」
バサッ・・・
「……失礼しました。」
「ちょ、待ってよお兄ちゃん!」
「マンスリーポータルが……、閉鎖してただなんて……、そんな……」
「この10年間、ぼくは何のために……」
「これから、どうすればいいんだ」
「今日はもう、疲れたな。」
―――――翌朝―――――
「兄ちゃん!!兄ちゃん!!大変だ!!!」
「兄ちゃん大変だ!!とにかくこれを見てっ!」
「なんだよ、朝から……」
「こ、この記事はっ!!」
「あの野郎っ!!絶対にゆるさないぞ~~~~!!!!!」
ドン!
ドン!
ドン!
「おい!開けろ!!責任者を出せ!!」
ガチャ・・・
キィ………
「あれ、誰かと思えば昨日のお二人さんじゃない。どうしたのそんな怖い顔して」
「とぼけないでくださいよ!どういうことですかこの記事は……」
「説明してください!」
「あっ、今日出たボクの記事。ふたりも読んでくれたんだ!うれしーなー!で、どう?面白いでしょ!?」
「ふざけんなよ!お前、兄ちゃんのアイデアを盗んだんだろ!返せよ!このパクリ野郎!」
「ちょっと待ってよ、それは本当にどういうこと?」
「しらばっくれやがって! じゃあそこにある兄ちゃんのネタ帳はなんだよ!!」
「あの記事はそこに書いてあった『河原の石をとにかく磨く!!』のパクりだろ!!」
「あ~…」
「そうそう!コレ昨日君たちが落としってったからさ、返そうと思ってて!でも、中は見ちゃ悪いと思って開けてないんだよね。だってマル秘って書いてあるしさー!もう落としちゃだめだよ。」
「えっ……」
「もしかしてそこに今日の記事と似たアイデアが書いてあったってことか~。うーん、こればっかりはな。」
「ネタ被りってやつは長いことやってるとたまに起こるもんでさ。ボクも若い頃は君みたいに『パクりだ!』なんて周りに当たり散らしたときもあったっけね。」
「でも……でも……」
「それにほら、考えてみてよ。昨日盗んだアイデアを今日記事に出来ると思うかい?」
「……」
「ま、君にもそのうち分かるようになるさ……、ね! さーて、せっかく来たことだし一緒にお昼でも食べ行く?」
ツーーー
「どうして、どうしてそんなに優しいのさ……うっ……うっ……」
「でも……、そしたら兄ちゃんはどうしたらいいのさ!帰る場所もなくして!目的もなくして!アイデアすらも被って!ウワーーン……!」
「え、ちょっと、え、どうした?」
「ごめんごめん。なんか悪いことしちゃったかな」
「ウワーーーン……!!」
「・・・」
「タ…タク、ヤ……」
「タクヤ……タクヤ、ガ…………」
「ウ……………ア……ア…ウウウ……」
ドクンッ……ドクンッ………
ウ、ウガ……ガ………ガ………ダメ、だ………!
逃、ゲロ………ッ!!!!!
アアアアァァァァァァァァァァァァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!
「な、なんだっ!!」
「眩しッ……」
「兄ちゃん!!」