「もう会社行きたくねえなあ、死にたいわ」

 

 

「全員の残業がヤバすぎるからなんとかならないか直訴しに行ったら、『お前みたいな社会不適合者を雇ってやった上に役職や部下まで与えたのにクーデターを起こすのか。そんなに会社に対する愛が無いなら死んでしまえ』とか言われたのよ。その会議室にいたらだんだん本当に死んだほうがいい気がしてきたわ」

 

 

 

「4年もやってきたのにそこからなんかすごい風当たり強くなってきてさ、もう死にたいわ」

 

 

 

 

 

 

「終電そろそろだ。……やーごめんね久々に会ったのにこんな話で。うん、また落ち着いたら飲み行こう」

 

 

「ありがとう。いやでも飲みすぎちゃって頭痛いしホント死にたいわ(笑)。じゃあねー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グワアアアアアアアアン

 

 

 

 

 

ガタン……ゴトン……

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタン……ゴトン……

 

 

 

(……?)

 

 

 

 

 

 

(ここは……?)

 

 

 

ここは、どこだ。俺の知っている電車じゃない。

終電のはずなのに誰も乗っていない。変だ。

どこなんだ。俺はさっきまで友達と飲んでいて、解散して、それで……

 

 

ダメだ、思い出せない。飲みすぎたのか。

 

何があったんだ。思い出せ、思い出せ……

 

 

キイイ……

 

 

おや、電車が止まる……?

 

 

 

 

御花畑、駅……?

 

 

 

俺、死んだ……?

 

 

 

 

電車で三途の川を渡っていたとは驚きだ。渡るのは穴の空いた銅貨が6枚必要と聞いていたが、もう今は電子マネーで渡れるのか。

そうだよな、5円玉6枚なんて普通絶対持っている事無いもんな。ああ、真田幸村の家紋ってそういう意味だったんだ……

 

 

 

 

 

扉が開く。

この電車には俺しかいない。

 

少しの時間が流れる。まるで俺が降りるのを待っているかのようだ。

ダウンもシワッシワだ。買い換えよう。あ、でも死んだなら関係ないか……

 

 

 

 

降りよう……

 

 

 

 

 

ホームに降り立つ。

ようやく自覚し、思っていた言葉を口にした。

 

 

 

 

「俺、死んだんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

導かれるように降りたその駅には、もう次の電車はやって来ないようだった。

どうやら、ここが俺の終着駅のようだ。

気温はぴったり0℃。ここは全てが止まっているように見える。命さえも。

 

何故、俺は死んでしまったのか。

 

この町を歩けば思い出せるだろうか。

 

 

 

辺りに人影は無く、嫌な空気が流れている。

骨の駅という歌を思い出す。

生きてた時、あの歌好きだったな。

 

 

 

 

 

「あーおーいーくうーきは ほねが すき」

 

 

口ずさみながら死の町を歩く。

誰もいないから、歌いながらでもいい。

 

 

 

 

当然水は出ない。いつから使用禁止なのだろう、ずいぶんと古い木の板だが……

不思議と喉も乾いていない。きっとお腹も空かない、そんな気がした。

 

 

ふと、心臓を触ると、脈打っていた。

 

生きている……?

 

いや、そんなはずはない。だとしたらこの町の説明がつかない。

きっと死がデフォルトだから、脈打っているのが普通なのだろう。

 

俺は死んでいる。そしてここは死の町、御花畑だ。

三途の川の向こうが、古い言い伝えの時と比べて発展しただけだ。

 

 

 

 

その証拠にあり得ない遊具を見つけた。

顔が無い双頭の合成獣だ。誰がこんなの乗るんだ。

鵺(ぬえ)の遊具など、普通の世界にあるはずが無い……

 

ここはどこなんだ。いつまでここにいなくてはいけないんだ。

 

 

 

 

……帰りたい。生きていたあの時に、帰りたい。

 

どうして死にたいだなんて、願ってしまったんだ。

 

死ぬ必要なんてなかった。会社は辞めればいいだけだった。世の中には色んな仕事があるはずなんだ。

ブログとか始めてみるのもいいかもしれない。どうして死にたいなんて思ったんだ。

 

元の世界に、帰りたい。

 

鵺に座ってみても、心がちょっと揺れるだけだった。

 

 

 

 

トイレがあったので入ってみたら、めちゃくちゃに腐食していた。

当然といえば当然かも知れない。死んでるのだから。

 

トイレに行きたいと思えるのは、死んでないからなのではないだろうか。

元の世界への帰りたさに、自分が生きている可能性を考え出していた。

笑ってしまいそうだ。こんな町にいるというのに。

 

 

死んだとしたら、死因があるはずだが、思い出せない。

駅で解散して……どうしたんだったか。

 

最寄り駅について家まで歩いてた気もするし、そのまま電車に飛び込んだ気もする。

誰かに殺された気もするし、トラックが突っ込んできた気もする。

 

わからない、考えるほどに混乱していく。

 

 

 

 

歩いていたら不思議な祭壇を見つけた。

 

その瞬間、脳内に記憶が入り込んできた。

 

 

 

そうだ……俺は、普通に電車に乗って、家まで歩いていたんだ。

 

そしたら……

 

ガサッ……

 

え、なんだ……?

 

誰、ちょ、おい

 

 

うわあっ!

 

 

 

 

うう……

 

 

誰……

 

 

くそ……

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだったのか、普通に通り魔にやられたのか。

死にたいと願ったところとか全然関係なかった。

 

 

だとしたらなおのこと戻りたい。

嫌なこともあるけどなんか生きているあの世界に戻りたい。

 

 

戻りたい!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「もどりたい……もどりたい……」

 

 

 

(おわり)(2ページ目へ)