
ドラゴン退治、憧れますよね。
屈強な冒険者が集まる酒場で羨望と嫉妬のシャワーを交互浴したいですよね。
異世界オモコロにありがちな導入からスタートしてしまい恐縮ですが、現代日本に生きるみなさんも妄想の中では日夜モンスター退治に勤しんでいることと存じます。

こんにちは。戸部マミヤと申します。
かくいう私も布団に入ったらまず脳内で異世界を救わないと心穏やかに入眠できません。
しかし問題がひとつ。こんなにも覇気の無い目をした男が何度生まれ変わったところで巨大な竜に立ち向かえるはずないのです。
仮に倒したとて、誰がこいつの言うことを信じてくれるでしょうか。まあ証拠に体の一部でも持ち帰れば話は別だと思いますが……
……いや待てよ? 逆に考えるなら証拠さえあれば戦わなくてもちやほやされるのでは? 我々ヘタレが異世界に持ち込むべき現代知識は、竜を殺す方法ではなく、竜殺しの証を捏造するスキルなのでは!?

というわけで1000回戦ったら1回くらいは勝てる可能性がありそうなワニの手の剥製を作ります。
「ライターから冒険者になった俺 ~序盤の沼地でエンカウントしたトカゲの爪をアクセサリーにしたら伝説のドラゴンスレイヤーと間違えられたんだが?~」というわけです。ここまでがワンセンテンスだ。よろしいか?
ワニ皮を剥ぐ

Crocodile meat
はい。食用ワニ肉(¥3,500)を用意しました。オーストラリアからはるばるようこそ。今日はお前の手首から先を剥製にしていきます。

看板に牛や鳥のポップなイラストを描く焼肉屋は数あれど、こんなに眼光鋭い「これから食われる動物」の絵は初めて見ました。

そもそも剥製とは、防腐処理した動物の皮に綿などを詰めて作る標本のこと。
何の知識もない素人がいきなり挑戦して上手くいくのか不安ですが、今回は一匹丸ごとではなくパーツのみ。ビギナーにもどうにかなるハクセシビリティ(剥製のしやすさ)ではないでしょうか。
おおよその流れはさかなクンの動画を参考にしつつ、魚とワニでは体の構造が全く違うため、細部は勘でやっていきます。
①皮を剥ぐ
↓
②薬液に漬ける(防腐処理)
↓
③乾燥させる
↓
④詰め物をする
剥製作りの流れはざっくり4ステップ。遊戯王のバトルフェイズと同じですね。

ステップ① 肉から皮を剝ぎ取ります。手袋みたいにぺロロンと脱がせられたら夢みたい。試してみましょう。

ペロロローム
……すみません。嘘です。この状態まで2時間かかりました。
実際は肉と皮が終電間際の改札前でイチャつくカップルみたいにへばりついていて、腕力で引き剥がすのはおよそ不可能。おとなしく駅員さんを呼びましょう。

というわけでまずは筋肉を切断します。
最初はキッチンハサミで挑戦したのですが、ぶりっぶりのワニ肉に全く刃が通らず腱鞘炎になりかけたため、薄い鉄板とか裁断する用の万能ハサミに装備を更新しました。
小豆洗いを彷彿とさせる小気味良いサウンドに合わせて筋繊維が裂けていきます。ショキショキショキショキ。
で、先ほどの動画のように手の甲までの皮は剥げたのですが、ここで予期せぬエラーが発生。

ハサミ、でっけすぎ

指、細っせすぎ
なんと指の中まで刃が入りませんでした。
……え? それくらい予想できただろって?
いつか必ずヤバいことになると分かっていても、知らないフリをしている間は何も起こらないのと一緒じゃないですか。怠惰な奴にとって「無知の知」とは「先送り最高!!!」の意味です。ありがとうソクラクズ。
でも限界が来ちゃったので解決策を考えましょう。
いっそ指を切開してしまうという力技もあるのですが、後々縫合しなきゃいけなくなると考えると、どうにか皮を傷つけずに済む方法を模索したいところ。考えろ、考えろ、考えろ……。


考えた結果なーんも思いつかなかったので力技で乗り切りました。切開した部分は後でどうにか繋ぎ合わせます。
頑張れ、未来の俺。読者に届け、行き当たりばったりのライブ感。
というわけで……

たいへんセクシーな感じになりました。

爪も取っちゃいます。これも未来の俺がどうにか付け直してくれるはず。現在の俺は全力でミラクルライトを振るだけです。


皮の裏側に残った肉片を取り除いてあげたら、最初のステップ「皮の剥ぎ取り」が完了。このまま「防腐処理」も行っちゃいます。

大きめの器を用意したら、以下を混ぜた水溶液に一週間ほど漬け込みます。上手くいきますように……!
・水:400ml
・ミョウバン:小さじ2
・塩:小さじ4

イヤッ イヤッ

戸部マミヤ








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