ワニ肉を食べよう

俺、ジャンボタニシと同棲してたっけ?

 

ワニの腕をいじくり回すこと数時間。涼しげなドブ川のフレーバーが台所に充満し、目を閉じると完全に「屋外」です。コロコロコミックの描き文字の幻覚が見えてきました。

 

しかし逃げ出すわけにはいきません。

 

このワニ肉を美味しく頂かなくっちゃなあ!!!

 

ワニ肉クッキング –材料-

・ワニの腕

・塩胡椒

・醤油

・酒

・ニンニク

・生姜

・ローズマリー

 

ベースは和風の醤油味ですが、臭み取り要員がニンニクと生姜だけでは心もとないのでローズマリーも使いました。(ローズマリー醤油は普通の牛肉にも合うのでおすすめです)

 

実は皮を剥ぐ間、肉が痛まないようにキンキンの氷水で手を冷やしながら作業していました。

あと、そのまま熱を加えたらガッチガチに固まって地獄を見る気がしたので、あらゆる箇所に大量の切れ込みを入れてあります。(写真は撮り忘れました)

 

3時間ほど調味料に漬け込んだワニを粉まみれにしたら

 

シュシュワシュワシュワシュワシュワ

 

それは唐揚げっ

 

ちょっとちょっと、めちゃくちゃ美味そうじゃないですか? (衣のせいで「正体不明の肉」感が増した気もしますが)

 

手掴みしたら筋力補正C 技量補正Eって感じの見た目になりました。かぶりつきます。

 

ぐァつ ぐァつ ぐァつ

 

を痛めました。本当なんです。信じてください。

 

そんでもって美味い!!!

鶏肉と牛肉の中間みたいな味ですが、奥の方にどことなく「水属性」を感じます。

なんでだろう。ゼラチン質が多いからかも。しつこそうな見た目に反して、全然あぶらっこくないというか、むしろ水っぽいのが不思議。

 

下処理に力を入れたからか臭みはほとんどありませんでした。かなりイケます! (ジビエが苦手な人はさすがに厳しいかも)

 

 

完食!!!

(剥き出し前腕骨が想像以上に人骨だったのでフィルターをかけました)

 

一応フィルター無しでどうにかできないか模索してみましたが、野良犬に好かれそうな綾波が誕生しただけでした。

 

剥製を錬成する

 

一週間後

 

防腐剤がデカビタ色になったので頃合いでしょう。嗅いでるだけでエナジーを減衰させる臭いがします。(皮が2枚あるのは撮影の合間にもう1本剥いたからです)

自室の机に置いて毎日様子を眺めていたのでかなり愛着が湧いています。完成したら一緒に散歩でも行こうな。

 

浴室で乾燥させます。洗濯物と一緒に干したら柔軟剤の香りが移ってフローラルになりました。ちょっとドキドキします。

 

乾き切ったらいよいよ最終工程の「詰め物」です。

鳥類や小型哺乳類の剥製では綿を入れるのが一般的。せっかくだからとユザワヤで一番ふわっふわのぬいぐるみ綿を購入してきましたが、爬虫類は鱗がガッチガチに硬くなるので全くの徒労でした。

 

さて、過去の俺に押し付けられたタイムカプセルを開ける時が来てしまいました。

とはいえ切開した指の腹を繋ぎ合わせるだけですからね。元はくっついてたんだから楽勝に決まってます。いけるいけるいけるいける

 

いける…か……?

 

乾燥させたら隙間が大きく広がってしまいました。力を込めて引っ張れば若干は伸縮するのですが、それにしても距離が離れすぎ。RTA走者が「この崖はダッシュジャンプで簡単にショートカットできるので皆さんも試してみてください」って教えてくれるグリッチくらい対岸が遠いです。

そこで用意した秘密兵器がこちら。

 

かわいいどうぶつたちの紙粘土です。全員何かしらの薬品にどっぷり浸かってる目をしてるので、さっき防腐剤から上がったばかりのワニさんもきっと仲良くなれますね。

 

骨に見立てた紙粘土の柱に皮と爪を接着剤で固定します。

そして

ついに

 

 

完成!!!

 

剥製作り、想像していたよりもずっとシンプルで楽しかったです。

作業しているうちに無骨なワニの手がどんどん可愛く見えてくるんですよね。どんな工作も少なからず愛着が湧くものだとは思いますが、生き物の体を使わせていただく剥製は、「大切に扱わなきゃ」という気持ちがはたらく分のバフが掛かる気がしました。

 

こちらは手のひら側。切開した部分はやはり完全には復元できず、余った皮をつぎはぎしたので見栄えが悪いのですが、それも味ということでひとつ。

 

手首の切断面は紙粘土で蓋をしています。それだけでは寂しいのでチェーンを埋め込んでキーホルダーにしました。せっかく外に出たからこのまま散歩しちゃおう。

 

桜が綺麗だなあ。春は出会いと別れの季節だけに、良くも悪くも強烈な思い出が桜に紐づいている人は少なくないと思います。愛憎と郷愁を養分に咲いている感じがして、桜は大好きな花のひとつです。

……。

え? 折って持ち帰ろうとするなって? 言われなくてもそんなことしないよ!

 

(……こいつの手……こんなに小さかったんだ……)

 

あ、新生活セールだ。ちょっと寄ってみる? これから俺んちに住むわけだし。

 

と思ったら靴屋でした。関係なかったね。

 

……。

花屋? 入りたいの? 

………。

え、プレゼント?  もしかして……!

 

Ending No.5 異世界転生じゃなくてラブコメ妄想エンド