・三日目
この日の朝食後、尿道に刺さっていたカテーテルを抜くことになりました。
好きで尿道オナニーする人だっているくらいだから、むしろ気持ち良いんじゃねぇのとユルく構えてたんですが、メチャクチャ痛かったです。
「はいゆっくり抜いていきますよ〜」
(ズル、ズヌヌ)
「いっ? イダッ、いだだだ!」
(ズ、ズズヌ)
「我慢してね〜、まだもうちょっとありますからね〜」
(ズヌヌヌヌル)
「痛い! 痛い痛い、ちょ待って!」
(ヌヌヌヌズズ)
みたいな感じ。マジで痛かった。
ただ、薄暗い部屋で美女が尿道から管をゆっくり抜いていくのは、なんかマゾヒスティックなエロさがありました。
看護婦さんも淫靡な笑みを浮かべていた…ように思いましたが、気のせいだったかもしれません。
なお、看護婦さんは何回も「もうちょっとでおわり」とか「あと少しですよ」とか言ってきますが、それはブラフです。
尿道カテーテルって素人が想像してるより3倍くらい長いのでだまされないでくださいね。
カテーテルが抜けるとベッドからおりて歩けるようになります。
といっても傷が痛くて、おじいちゃんみたいにジワ〜っとゆっくりしか歩けないですけどね。
ちなみにジワ〜っとゆっくり病院を抜けだして煙草を吸いに行ったらバレてめちゃめちゃ怒られました。
カテーテル抜きプレイのあとだったからか、軽くムラムラしてしまい、ネットでエロい記事なんかも見てみましたが……画像や映像で下腹部が写ると「その部分の傷と痛み」を同時に思い出してしまうため、何も感じませんでした。
うんこをしたい時にバックでやってる画像を見てもなんとも思わないじゃないですか。あれと同じです。
・四日目
空になったきんたま袋には血が溜まってしまうので、その血を抜くために「ドレーン」というストローみたいなものが刺さっていたんですが、この日はそれを抜くことになりました。
尿道カテーテルを抜く時はちょっとエロい感じだったので軽く期待してたんですが、ドレーンを抜くためにやってきたのはまあまあのお婆ちゃん看護婦だったのでガッカリしました。病院には娯楽が少ないので、みなさんが想像してるよりガッカリしたんです。
作業自体も「ほいっ」というかけ声と共に、一瞬でドレーンがスポッと抜かれ、あとは絆創膏を貼られて終了でした。全然おもしろくなかったです。
夜になると痛みも少しマシになり、足を引きずりながらも、歩けるようになってきました。
そうなると21時消灯とか暇すぎて死にそうですよ実際。
「癌、ヒマ!」
と、ずっと思っていました。
四日目の出来事は以上です。
・最終日
この日は朝からCTスキャンを撮影しました。
CT検査は転移があるかどうかを調べる検査であり、仮に転移があった場合は数ヶ月入院して抗ガン剤などの治療を行うことになるそうです。
つらい治療だし、社会的にも厳しい(会社を数ヶ月休まなきゃいけない)ので、内心かなりビクビクしていたのですが、結果は――
「とりあえず転移はしてないみたいです。良かったですね」
「や、やったー(…とりあえず?)」
心底ほっとしました。
“とりあえず”と先生が言った理由は、ひょっとしたらCTに写らないような小さなガンが進行中かもしれず、定期的に病院で検査を受け、「今回も転移はありませんでした」、「今回も大丈夫でした」、という状態が何年か続いて、はじめて完治となるからだそうです。
とはいえ、とりあえずはこれで退院できるということで、僕もかなり機嫌が良くなり、先生に
「僕ライターやってるんですけど、クリスマスにきんたま摘出したってめちゃめちゃオモロいから記事にしようと思ってんすよーへっへへへ」
と言ってみたところ、
「ギャラクシーさん……」
「この病気はね、自分で睾丸に触ってみたらすぐ異常に気づくんですよ。でも病気のことを知るきっかけがないから、転移するまで気づかない…」
「その意味で、精巣腫瘍を知るきっかけになる記事を書くのは、大変意義深いことですよ…! 私は医師として応援します!」
信じられないくらいマジレスされました。
さあ、あとは退院するのみ。
…とその前に、入院費や治療費を支払うわけですが、はじめに金額を言っておくと諸々込みで12万円でした。もちろん健康保険を適用しての値段です。
普通のサラリーマンなのでかなり痛手ではあるんですが、5日間入院して精巣丸ごと摘出してこの値段って考えるとかなり安いとも感じました。
ちなみに「手術代」のみだとたったの1万4千円。きんたまってスニーカーくらいの値段で摘出できるんですね。
病院の外に出ると、入院時には街中に溢れていたクリスマスの飾り付けが跡形もなく取り外されていて、まるで何年も眠っていたような気分でした。
電車に乗って住み慣れた自分の家に帰り、ニコニコ動画でゲームの実況プレイ動画を見ていると、そのタイミングでやっと
恐ろしくてずっと考えないようにしてたんですが、
と実感して、体中の力が抜けました。
同時に、お世話になった人への感謝がふつふつと湧いてきました。
担当の先生や、家族、友人、会社のみんな……。
そして特に、朝から晩まで献身的に世話をしてくれた看護婦さんの存在は、本当に助かりました。
この感謝は一生忘れません。ありがとうございました!
というわけで退院したその日の夜に、痴女ナースが次々と患者を手コキしていくエロ動画でオナニーしました。メチャクチャ興奮しました。
こうして、僕の長い5日間は終わりました。
今では手術の傷跡もふさがり、ほぼ普通に生活できるようになりました。
以前と少し変わったのは……邪魔なものが無くなったからか、歩いてる時に左に曲がりやすくなったことくらい、です。
おわり
手に持っているのは摘出された左きんたま。今までありがとな!
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この記事を書いたギャラクシーが、精巣ガンのエッセイ漫画で有名な武田一義先生と対談しました