母の写真

 

 

2度目の手紙の内容は、
お腹を痛めて産んだ子どもと離ればなれになりながらも
強く生きるお母さんからの叱咤激励だった。
 
 
 
 
人様に迷惑をかけずに、苦しみ、楽しみながらも
一生懸命に生きること。
 
 
 
 
漫画や小説、映画などの中でしか聞いたことがないような台詞も
実の母親から言われるとやけに刺さるなぁ。正直、泣いた。
 
 
「お母さんは、子どもを捨てた罪悪感を持っているはず」
 
 
こんな勝手な想像をしたのは間違いだったようだし、
男女の関係はそんな簡単なものでもないのかもしれない。
母親、父親、それぞれの事情があって仕方なく選んだ選択肢なんだろう。
 
 
その結果、20年離ればなれに暮らすことになったとしても
お母さんは、今でもお母さんのままだった。
 
 
何より同封された写真を見て、
「うわー!似てる!」と色濃いDNAを感じた。
息子は母親に似るってホントなんだなぁ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
タレ目の角度がそっくりだった。
 
 
これまで顔を思い出すこともできなかったけれど、
写真を見ていろいろな記憶が甦ったような気がする。
 
 
底抜けに明るいお母さんだった。
そして“苦労”を糧にした強いお母さんだった。
 
 
何より57歳という年齢を感じさせない
キレイなお母さんだったことがほんの少しだけ嬉しかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
第7回コメント紳士
 
 

 

 

 

 

 

 

 

母から届いた小包

 

 
ある日、大きな荷物が届いた。
 
 
「え、いきなりなんだろう?」
 
 
ダンボールに貼り付けられたラベルを見てみると、
そこにはお母さんの名前が書かれていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・大量のみかん
・5kgほどのお米
・熊本のさつまいも
・ほうれんそう
・パイナップル
・コーヒー、砂糖など
・Mサイズの肌着、ボクサーブリーフ
 
 
 
 
 
ダンボールにギッシリと詰め込まれた食料品、
そして一生懸命選んでくれたであろうMサイズの下着。
 
 
20年間会っていない息子のために、
あれば助かるものを選んでくれたような『はじめての仕送り』だった。
 
 
「必要以上に送ってきて困る」や「野菜を送られても食べない」など
母親からの仕送りに対して迷惑そうに話す友だちがいたけれど…。
 
 
はじめてだったこともあるし、どこか憧れていたこともあって、
この仕送りは涙が出るほどに嬉しかった。
 
 
前回の手紙や写真だけじゃない。
少しずつ親子の距離が縮まっていくような感覚。
 
 
もう手紙のやりとりだけじゃ
この心から溢れる気持ちを消化することはできなさそうだ。
 
 
 
 
 
 
この日、僕は決意を固めた。
 
 
 
 
 
 
 
第8回コメント紳士