おまけ:子どもの疑問に答えよう
レファレンスサービスの雰囲気をもっと知るべく、最後におまけとして、子どもたちの疑問に回答してもらいます。
いずれも最近、実際に豊田市中央図書館に寄せられた疑問です。
まずはこちらから。
いきなりすごいのがきた。
小学生からの質問です。
僕も知りたいです。
本来であれば、まずインタビューで詳しい話を聞いていきます。その子はどういう側面から「生きる」を知りたいのか?を探っていくんです。
その中で哲学的な側面から「生きる意味」を知りたいのであれば、例えばこちらの本をご紹介します。
『心を育てる みんなのぎもん 1巻 命のぎもん』
(学研プラス)
「人の命の重さに、ちがいはあるの?」「生きるってどういうこと?」など、命をテーマにしたぎもんに正面から向き合った1冊。
「命」に関する子どもたちの問いに、正面から答えた児童書です。安心しておすすめできる一冊ですね。
ストレートで良さそう。
ほかにも、生きるということを「生命活動」として考えることもできると思います。
『目で見る進化―ダーウィンからDNAまで』
(ロバート・ウィンストン / さえら書房)
進化に関する楽しい知識をたくさん紹介。ダーウィン以降、進化説がどのように発展していったかも紹介。
こちらは写真や絵がたくさんあって、子どもでも読みやすい本です。
「なぜ生きているのか」の答えを、進化論に見つける可能性もあるのか……!
もしくは、生きることを「人間の営み」として、文化的な側面から考えるのはどうでしょう。
『伝え守る アイヌ三世代の物語』
(宇井眞紀子 / 少年写真新聞社)
アイヌの血を引く家族が北の大地で新生活を始め、アイヌ文化を伝え、受け継ぎ、守っていく姿を写真で紹介。
写真家の方がつくった写真絵本です。ひとつの文化を具体例として読んでみることで、関心が深まるかもしれません。
バラバラのジャンルだけど、どれも面白そう……。
まとめとして図を用意したのですが、
図?
福島さん作成
こういった抽象的な質問に対しては、司書はまず「どんな分野が関連しそうか」を考えます。その上で、質問者が本当に知りたいことはなんなのか?を対話を通じて探っていくんです。
司書の頭の中って、こんなふうになってるんだ。答えを探す前に、まず問いを探すんですね。
そうですね。なのでこのプロセス全体が、「疑問①」の回答でした。
続いての疑問はこちら!
僕も知りたいです。
こちらも、まずは睡眠に関する児童書を素直にご紹介します。
『スゴい! 睡眠の力』
(近藤とも子 / 国土社)
なぜ、たっぷり睡眠をとるだけではだめなのでしょう?早寝早起きがなぜだいじなのか、わかりやすく説明します。
他にも『ねむるほん(La ZOO/学研プラス)』や『寝ないとドジるよ、アブナイよ! (神山 潤/芽ばえ社)』などもお勧めですが、こういった本たちを読んでみてると、共通して書いてあることがあります。それは、「良い睡眠を取らないと、朝早く起きれない」ということ。そこから、良い睡眠は取れてるかな?どうしたら取れるんだろう?と会話していくと思います。
複数の本を根拠にされると、なんか説得力があるな。自分で調べると、結局どれが正しい情報なのかわからなかったりするし。
他にも医学的な側面から「本当に起きれない時は、病気の可能性もあるから診てもらおうね」といった本も併せてご紹介すると思います。ただ、それでもしっくりこない場合は……
『漢文に親しもう』
(金の星社)
小・中学校の国語教科書に掲載されている名作の数々を中心に紹介。美しい写真とともに、作品の意味や味わい方を解説します。
漢文!?
この本に掲載されている孟浩然の有名な漢詩に、こういう一説があります。
“春眠暁を覚えず……”
まさか……
日本語に訳すと、「春はぐっすり眠れるから、朝が来ても気づかず寝過ごしてしまう」という文章です。
かなり共感できますね。
いま(※質問が届いた時期)は春だし、中国の昔の偉い人も起きれなかったんだから、そりゃ眠いよね、という回答でした。
起きれない理由は、春だから。
ちょっと変化球ですが、こういう回答も時にはあり得ます。
いいな。ただ「早く寝なさい」で終わるんじゃなくて、これをきっかけに漢詩や中国について興味を持つかもしれないですね。
最後は、結構多いこちらの疑問です。
僕も知りたいです。
定番の回答としては、小学生低学年くらいであれば、こちらの絵本です。
『ともだちや』
(内田麟太郎 / 偕成社)
何だかおかしな格好をしたキツネがやってきましたよ。「えー、ともだちやです。ともだちは いりませんか。」
寂しがりのきつねが、友達を作ろうとして1時間100円で友達になる「ともだちや」を開店するお話です。
発想が現代的だ。
あるいはもう少し大きくなったら、『友だちってひつようなの?(齋藤孝/PHP研究所)』もおすすめです。友達を扱った文学作品を、漫画で紹介しています。
また、中学生くらいになったら、心理学の観点から書かれてた『親友・信友・真友?(石渡昌子/ポプラ社)』も司書の定番です。どれも読みやすいですが、大人が読んでも「友達とは?」を考えさせられる本ばかりです。
全部読みます。
もし保護者の方がお子さんを心配して訊いてきたのであれば、『子どもが孤独でいる時間(エリーズ ボールディング/こぐま社)』もいいですね。
惹かれるタイトルだ。
大人にはひとりになる時間が必要だけど、子どもだって同じだよね、という内容です。
面白いなあ。質問者が誰か、によって回答が変わってくるんですね。
最後に、個人的に好きな本をご紹介させてください。
『天井うらのふしぎな友だち』
(柏葉幸子 / 講談社)
姉弟がひっこしてきた家の天井うらに、時代おくれの、おかしな4人組も部屋をつくって住みつきました。おとうさんにも、おかあさんにも見えない、このふしぎな人物の目的は……。
私自身の話になるんですが、10歳のとき、小学校を転校したんです。それで、一度友人関係がリセットされてしまった。
子どもにとって大事件だ。
すぐには友達ができなくて、その頃から本を読み始めたんです。それでこの本に出会って、友達って必ずしも人間じゃなくてもいいんだって思った。人形でもゲームでも、大切だと思えるものがあったら友達なんじゃないかって。そう思って「慌てることないんだ」と楽になった思い出の本です。
個人の体験談があると、引き込まれるな…。
そんな感じで、さまざまな角度から回答をご用意します。ただ、実際はたくさん本を渡されても読みきれないので、お話ししながら適した一冊を選んでいくことになります。
答えがひとつじゃないような質問に対して、「これが答えだ」って単純に明言しちゃうのは楽ですよね。でもそうじゃなくて、いろんな選択肢を示しながら、本を通じて「好き」を掘り下げていく過程も、レファレンスサービスなんだなあ、と思いました。
司書や図書館を通じて、知ることの喜びを体験していただけたら嬉しいです。
みなさんも、ぜひ図書館を利用してみてください!
“図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。”
「図書館の自由に関する宣言」より