ーお菓子の家。

 

子供なら一度は憧れる夢のような建造物。

涼しくなり少しずつクリスマスの気配が近づいた今、ふと思い出します。

 

憧れと言いつつも食べたことのないまま大人になってしまった。

このまま衰える前にお菓子の家を作り、食べてみたい。

 

しかし大人になりしばらく経つ私の体には確実な変化が起きていた。

和菓子っていいよなあ。

煎餅や餡の魅力への気づきは突然にやってくる。

↑異様に美味しいお煎餅

子供のころは煎餅なんて「家にある、お腹が空いたら仕方なく食べるもの」くらいにしか思っていなかったのに今かなり嬉しい存在になってきています。しみじみと、確実に。

今まで圧倒的に洋菓子>>>和菓子だった脳内勢力図が肩を並べようとしている。

 

もちろん今でも生クリームもバターも大好きだけど、和菓子の家があってもいいんじゃない?と思えてきた。

どちらかに住めと言われたら和菓子の家のほうが長く付き合えそうな気がするし。

 

やってみよう。和菓子ハウス。

 

一旦普通にお菓子の家を作る

とはいえ全くの初心者なので一度クッキーにて基本のお菓子の家を作ってみた。

すごく微笑ましい出来ではあるがこれでも丸3日ほどかかってしまっている。

お菓子の家専用のクッキー型を使ってみたものの、くり抜くときに生地がくっついて破れたり、焼きの段階の膨らみで歪んでしまい思うように組み立てられない。こんなにシビアなものなの!?

あぁ〜〜ん?

お菓子の家ってめちゃくちゃ難しいかもしれない、そんな不穏な風を感じつつも和菓子の家にとりかかる。

 

和菓子の家をつくるぞ

ざっくりとイメージを作る。どうせなら日本家屋風の見た目にしてみよう。

素人の腕前で見栄えと可食性を両立するのは難しい。普通の工作とは訳が違う。

しかし絶対美味しく食べたいのでこのラインは守る。大福の中身を引きずり出して餡子を使用するなどの行為はしないので安心してください。手もちゃんと洗うので。

 

<基礎部分を作ろう>

クッキーの壁を和菓子に置き換えるとしたら、まず煎餅が思いつくだろう。

最初に言うとこの記事の制作に費やした時間の9割がこの部分です。

お時間の無い方はここから完成系を見てね。

煎餅は上新粉という粉を水で練って作るらしい。

そういえば煎餅って網焼きの映像のイメージはあるけどそれ以前の工程は印象がない。

 

参考にするレシピによってある程度差はあるものの、だいたい以上のような過程を経るとのこと。

練って、茹でて、ちぎって、乾燥させて焼くと……。

プワ〜ン♡じゃないんだよ。

なんで膨らむの!全然そんな予兆ないのに!!!

そういえば市販の煎餅もあまり真っ平なイメージがない、まがり煎餅は美味しい。

詰んだ、おしまい。

煎餅が膨らんだことでこんなにも絶望している人間は私だけ。

天啓ーー。

俺にしなよ。

同じ材料で八つ橋が作れるらしい。確かに八つ橋は煎餅に比べてもなめらかでフラットだ。

茹でる過程を省き、なるべく生地中の水分を減らすことで膨らみを減らせるかもしれない。

頼む!

 

今思えばオーブンが無くトースターで焼いてるところにかなりの敗因があるような気がするが、この時はそんな金銭、そして心の余裕があるはずもなく……。

油分と水分を減らすと割れるんだねえ!

慌ててひびを継ごうとした貧相な跡が涙を誘う。

お菓子づくり、なんて繊細なの……。

この頃の検索履歴は必死。私の経験値の無さや無鉄砲な手法が問題かもしれないが、こんなに運ゲーな制作になるとは。

 

生地を練って、寝かせて、焼いて膨らんだら失敗、割れたらやり直し。

昼は会社員、夜はぺちゃんこ煎餅研究家としてのダブルワークの生活が2ヶ月続いた。

私はただ和菓子の家を建てたいだけなのに。

 

~数日後~

 

日夜研究を続け、ようやく形にできる展開図たちが出揃った。

材料はこのメンツ。

この図の通り、きちんと測っていないから失敗し続けているのは事実なので真似しないで欲しいし責めないで欲しい。全部わかってるから。

 

最後のメンバー・はちみつが油分と水分だけでは繋ぎきれない粘りを演出。ナイスプレー!

クッキー型での成形が難しいことに気づき、途中でレーザーカッター (データ通りに木材やアクリル板をカットできる工作機械)にてカット線をマーキングし、包丁で切り抜く手法に切り替えた。

注:レーザーカッターは本来食べ物の加工用の機械ではありませんが、個人の機材を自己責任で使用しております。使用する際は前後でよく掃除しよう!

CADソフトで軽く設計図を確認し、グラフィックソフトで図面を起こし、生地に焼きを入れていく。

甘ったるく焦げ臭い、大人な煙が部屋を充たす。

私は和菓子の家を建てたいだけなのに。

 

切り抜いたあとは模様をデコペンやアイシングシュガーで入れる。

日本家屋といえば障子。

レーザーでマーキングした箇所にアイシングシュガーを流してみたが障子の認識が間違っている気がしてならない。ぷっくりしててかわいいね……。

お菓子の家の接着剤にもアイシングシュガーが使用されることが多いらしいが、乾燥を待っていられないのでホワイトチョコで代用。チョコは「冷え」で固まる安心感がある!

耐震強度ゼロの家、組み立ってくれ!!!!

 

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ボヤの起きた納屋が完成。

2ヶ月かけて建てた大事なお家、納屋だったらしい。

かろうじて縁側パーツと玄関の庇(ひさし)が家らしさを保ってくれている。

あと屋根のトッポ、すごく大事。この円筒があったかどうかでだいぶ雰囲気変わってたはず。トッポは和菓子じゃないけどこれは許して欲しい。

 

きっと素敵なパティシエならもっと素晴らしいお家を建てられただろうが、素人にはここが限界であった。ぎりぎりこのお家は一晩なら過ごせないでもないけど……、

流石にここでは終われない。

 

日本家屋といえば立派な!作るぞ庭!

作った。家を飲み込むくらい池がでかいけどいいじゃないの。

もし家が立たなかった時に脚を差し込むための保険として皿一面に寒天を流し込み、知育菓子の「お菓子で作る日本庭園」から石チョコや池のモールドなどのパーツを一部拝借した。

池が寂しいのでアーモンドフィッシュくんを放流。何かすごく禁忌を犯している気分になる。

そして土壌が寒天のため抹茶パウダーが水分をみるみる吸って雨上がりの地面に変化していく。

まあそれも風情があるよね。

どうにか賑やかにはなったものの、あまりにも「華」を池周りの色味に頼りすぎているような気がする。

和菓子の家と名乗ってはいるもののほとんど煎餅でしか構成されていないし、乾物が多い。

 

しっとりとした餡や餅が欲しいよ。

せめて大好きなミニどら焼きも仲間入りさせてあげたいがあまりにも唐突すぎる。うれしい置き配?

どうにかして馴染ませることができないだろうか……。たすけて…、

ドラちゃん……。

練り切りのドラえもんに来訪いただいた。

練り切りづくりは面白い。粘土細工と同じ道具・要領で作っているのに、失敗したパーツはそのまま食べられるのでいきなり狂ったみたいで自分の行動に笑ってしまう。

これでどら焼きが説明のつく世界に。

どちらにせよ座っていただくスペースがなかったので「庭仕事中の宅配に気づかないドラえもん」になってしまった。誰の家なんだ。

 

でもこれで見た目と食感のバラエティはバランスが取れた気がする。和菓子の家、私のアンサーはこちらでお願いします。

今年のホリデーシーズンは和菓子の家でヘルシーに過ごすぞ!

 

 作る際は市販の材料をうまく使うことをおすすめします。

 

 

(おしまい)