欲望を解放して思いっきりトッピングしたい
前々から思いっきりトッピングしてみたいと狙っていた食べ物がある。
それで最後にひと花咲かせたいと思う。
ラーメン屋でおなじみの幸楽苑。
まずはシンプルに醤油ラーメンを注文。
醤油ラーメンが運ばれてきた。
シンプルな具、透き通ったスープ。まさに定番の醤油ラーメンだ。
そこに半熟煮卵を乗せてみるとどうだろう。美味しそうだ。
しかも、ちょうど目みたいになったし可愛い。
……ああ、だめだ。可愛いけど足りない。
そんな生ぬるい飾りではまだまだシンプルな醤油ラーメン。
これまで咲かせてきた牛丼の花や、レギュラーバーグディッシュの花を思い出す。
もっと派手に、欲望のままにトッピングを。
そうだ、もしもあじさいだったら間違いなくこう叫ぶはずだ。
「すみません、煮卵7個ください!」
大輪の醤油ラーメンの花が咲いた。
ラーメンを見て泣きそうになったのは初めてだった。
煮卵が本物の花びらのようだ。しかし、この花びらはあくまで飾り。
こんなに刺激的で圧倒的な存在でありながら、本質は醤油ラーメンにある。
本質って一体なんなんだろう。
美しいガクで隠れて見えない雌しべと雄しべが、あじさいの本質?
この食べ物の本質は、鮮やかな煮卵で隠れて見えない麺やスープ?
大量の煮卵を投入することで、「煮卵をトッピングした醤油ラーメン」は「醤油ラーメンをトッピングした煮卵」になり替わるかもしれない。
じゃあ今食べているこれの本質はどっちなんだ。醤油ラーメン? 煮卵?
ねぇ、本質って一体なに……?
……と頭がおかしくなりかけながら、煮卵を堪能した。
あっという間に食べ終わった。夢のような時間だった。
勇気を出して注文して本当に良かったと思う。
店員さんに「なぜそんなに煮卵を?」みたいな顔されたけど、私は幸福感でいっぱいだ。
みなさんも自分の欲望を開放して、一度思いっきりトッピングを施してみてはいかがだろうか。
お会計の時、煮卵のトータル金額に目が飛び出そうになった。
(おしまい)
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