突然だが、このキャラクターをご存知だろうか。

知ってる人はもちろん、全く知らない人でもこの画像を見たときに何となくスカッとした気分になるはずだ。

もしスカッとした気分になっても、決して「自分ってなんて酷い奴なんだ…」と落ち込まないで欲しい。あなたの感覚は正しい。

なぜなら彼女はちびまる子ちゃん出てくる天下の嫌われキャラ、前田さんだからだ。

彼女の言動、表情、声、ちょっとした手の動き等、全てが嫌な気持ちになるよう作られていて、あなたの感じたスカッとした気持ちこそが前田さんが生み出すエンタメなのだ。

私はそんな最悪で最高な前田さんの素晴らしさを皆に知ってもらいたい。

 

前田さんとは

まず、前田さんの基本情報はこんな感じである

前田ひろみ(9歳)

・まるちゃんのクラスメイトで掃除係や検尿を集める係をしている

・おばあちゃん子

・自己中心的でクラス一のえばりんぼ?

先述した通り前田さんはクラスメイトや視聴者からあまり好かれていないキャラクターなのだが、分かりやすいようにまるちゃんのクラスの主要メンバーを「人望」性格の良さで表にまとめてみた。

 

(※それぞれのキャラクターが立ち始めた、アニメちびまる子ちゃん1995年〜1999年4月までの作品から私が受けた印象をもとに作成しました。)

まるちゃんは主人公なので色々と判断に迷う部分があるのと、野口さんは底知れない人物なのでこの表には入れていない。

表を詳しく見てみると、ブー太郎を中心にこのように展開されている。

まず性格がよく人望があるゾーンには、クラスのリーダー的存在の大野・杉山を筆頭にお金持ちの花輪君やとにかく優しい長山くん、美人の城ヶ崎さんと笹山さん等、友達になりたい人々が連なっている。

 

人望がなく性格も良くないゾーンとしては、ご覧の通り。

お気付きの方もいると思うが、まるちゃんのクラスは変な顔の児童ほど性格も悪く人望が無いという身も蓋もない構造になっている。

そんな有象無象を差し置いて、最も性格が悪く人望がないのが前田さんなのだ。

なぜ前田さんがこの位置にいるかと言うと言葉で説明するのも難しいので、前田さんが最も輝くエピソードを紹介しようと思う。それも…

 

このお話は1998年11月に放送されたのだが2017年にリメイク放送された事で大きな話題を呼んだ、珠玉の前田さん回だ。

ちなみに『ちびまる子ちゃん 炎上』で検索すると一番にヒットするのもこのお話である。

 

お母さんの給食袋

 

話はたまちゃんととし子ちゃんが、まるちゃんの給食袋が可愛いと褒めているところから始まる。

まるちゃんの給食袋はお母さんが刺繍を施したものなので、お母さんに「たまちゃんととし子ちゃんに給食袋を褒められたよ」と伝えると「3人でお揃いの給食袋を作ってあげる」と提案されます。

翌日3人は大喜びして教室で給食袋の図案を考える。まるちゃんがクマ、たまちゃんがウサギ、とし子ちゃんがネコにしようと話し合っていたところ、単なるクラスメイトである前田さんが登場。

 

 

この言葉で一気に場の空気は変わる。

 

普段は優しいたまちゃんととし子ちゃんですらこんな顔に。

「急に無理だよ」とやんわり前田さんを阻止しようとするが、前田さんは人間の心がよく分かっていないので

「そんなのさくらさんが頼めばいいだけじゃん!私の分は頼めないって言うの!?」

と強引に迫ります。まるちゃんが断りきれずOKすると、前田さんはご機嫌にパンダの給食袋をリクエストするのであった。

まるちゃんが家に帰ってお母さんに話すと「3枚も4枚も変わんないよ」と早速夜から作り出すが、お姉ちゃんは「そんな仲良くない子の為にお母さんに負担をかけるのは良くないから、次は断りな」とまるちゃんに助言。

 

お母さん以外の登場人物全員が前田さんの異常さを分かりやすく言葉や態度で示す為、どんどん視聴者の前田さんに対するヘイトが溜まっていきます。

 

翌日、お母さんが夜遅くまでかかって仕上げた給食袋を持って学校に行くまるちゃん。心の中では自慢に思っている給食袋を皆に渡せるのが楽しみで仕方ないといった感じだ。

学校に着き給食袋を持ってきた事を言うと「おばさん大変だったねぇ」とお母さんを気遣うたまちゃんととし子ちゃん。「話はいいから早く見せてよ!」と急かす前田さん。

皆で完成した給食袋を見て「可愛いねぇ〜!」と褒め合っている中、前田さんが衝撃的な一言を放つ。

 

その瞬間、画面はサイケデリックな色に変わり今までに感じたことのない緊張感の中「後半へ続く」とナレーションが入るのだ。

 

(凄い画面。まるちゃんの呆然とした顔が悲しい)

後半へ続いても前田さんの無神経は止まらない。

 

その言葉にたまちゃんととし子ちゃんは猛反対するが、前田さんは「うるさいねぇ!さくらさんはまた作ってもらえばいいじゃん!」

これにはさすがのまるちゃんも前田さんからパンダの給食袋を取り上げ

「どっちもやらない!うちのお母さんの苦労も分からずつべこべ言う奴にあげる物なんて何も無いね!!バカなんだよあんたは!」

とブチ切れ。

前田さんはバカと言われたことに腹を立て「コノヤロー!!」と叫び、まるちゃんに飛びかかり取っ組み合いのケンカが始まるのだが、注目すべきは前田さんのケンカの弱さだ。

まず前田さんは、かなり殴りにくい体勢でまるちゃんの肩甲骨?あたりを2回ほど叩く。

 

飛び付いてみたはいいもののどう攻撃していいか分からず、とりあえず殴れる範囲で叩いてみたという感じがケンカ慣れしてなさを物語っている。

一方お姉ちゃんとのケンカで鍛えられたまるちゃんは前田さんを突き飛ばし…

 

距離を取った上でグー!

 

 

そんなやり取りがかなりの短時間に詰め込まれている。

 

 

とっ組み合う2人は止めに入った大野・杉山に取り押さえられるのだが、その時に前田さんは大泣きしながら

 

「よくもバカなんて言ったね!!覚えてろよぉぉおおお!!!!」

 

と大絶叫。

結局この日の夕方、前田さんはおばあちゃんと共にさくら家に謝罪に行き2人は仲直り。前田さんはまるちゃんからパンダの給食袋を受け取り、物語はハッピーエンドで終わるのだ。

 

 

以上が「お母さんの給食袋」である。このように前田さんが活躍する話はファンの間で『前田の胸糞回』と呼ばれる事が多い。

ちなみに今回は前田さんに関係するシーンを抽出して説明したのだが、本筋はまる子とお母さんのほっこりエピソードなので興味を持った方は是非ご覧になって欲しい。

 

私はこの話がきっかけで前田さんに興味を持つようになり、色々な前田さん回を調べてみたところ彼女の大ファンになってしまった。その中でもさくらももこ脚本の前田さんが特に素晴らしかったので、次のページでは前田さん回の見どころを紹介したい。

 

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