エントリーNo.3 かまど(福岡)
続いては福岡出身のかまど! 「福岡県民に見られても恥ずかしくない盆を作りたい」ということで並々ならぬ気合の入りようです。
「せっかくの福岡お菓子なのでHKT48のバッグに入れて持参しましたよ!」と、しきりに福岡づくしアピールをしていましたが菓子盆の評価には一切関係ありません。
オフ会ではしゃぐオタクみたいな空回り方ですね。
「日本三大都市のひとつである福岡の誇りにかけて、負けるわけにはいきません。どんな手を使ってでも勝ちます」
●博多通りもん(明月堂)
●めんべい プレーン(福太郎)
●柳川うなぎめんべい(福太郎)
●博多よかいも とっとーと(如水庵)
●博多の女(二鶴堂)
●筑紫もち(如水庵)
「福岡ご当地盆とあらば、福岡土産の王者『博多通りもん』は外せません。
お土産にこれを会社に持っていくと一気に職場でヒーローになれますからね。あの瞬間は、福岡出身者だけに許された至福のひとときです」
「他にも、福岡土産の新定番『とっとーと』で、ありがちな博多弁トークに花を咲かせるきっかけを作りました。
また、『博多の女(ひと)』は福岡に新幹線が通る前からある懐かしの味。意外と知られてませんが、羊かんバウムクーヘンって感じでバリ美味です」
「口の中が甘くなったら、明太子のおせんべい『めんべい』をどうぞ。僕の地元『柳川うなぎめんべい』も添えて、二種類の味が楽しめるようにしています。
ちなみに、盆が汚れないように敷いている紙は福岡の人気銘菓『筑紫もち』の包み紙。ほんの遊び心ですが、こんなところからも福岡の人情を感じてください」
~ 会場の反応 ~
「筑紫もちの包み紙はさすがに狙いすぎ」
「手前にスペースが空き過ぎじゃない?」
「なんでもいいから早く通りもんを食わせろ」
「おっと、ちょっとお待ちくださいね。実は、まだ完成じゃないんですよ。
さあ、最後の仕上げにこれを……」
「ククク…」
●DECOチョコ 西鉄コンプリートセット(チロルチョコ)
「そぉら御覧じろ! 福岡の鉄道『西鉄電車』の全駅名がプリントされた『DECOチョコ 西鉄コンプリートセット』だぁ〜!
期間限定&数量限定でめちゃレアな代物なんですが、たまたま手に入ったんですよ! いやぁ〜ラッキーでした!」
「ということで! 西鉄チロルをちょいと添えて、天下無敵の福岡盆の完成です! ドヤァ!」
~ 会場の反応 ~
「確かに西鉄チロルが入ることで盆が引き締まった」
「ノリがうっとうしいけど、完成度は高いかも」
「ごちゃごちゃうるせえ。早く通りもんを食わせろ」
かまどのプレゼン自体は煙たがられつつも、菓子盆はなかなかの高評価! グルメ都市の福岡なだけあって期待値も高かったようです。
さて、気になる味は……
「あ、食べるんですか?」
「じゃあ西鉄チロルは回収しますね」
は?
「これ彼女から借りてきたんですよね。限定品だし、食べたら怒られちゃうでしょ?
見せ終わったし、写真も撮り終わったし。もうよくない? 味も多分、普通のチロルチョコよ?」
~ 会場の反応 ~
「こいつは菓子盆を冒涜した」
「永久追放にした上で指を切り落とすべき」
「自分で何が悪いか分かってないのが一番怖い。更生の余地なし。一生独房で暮らして欲しい」
西鉄チロルチョコはまさかの看板!? あまりにトリッキーなかまどのスタンドプレーをダ・ヴィンチ・恐山はどう見るのか?
福岡はグルメとおみやげの豊かさにかけてはトップクラスの県。地力を最大限に活用した盆のお出ましです。
言わずとしれた「博多通りもん」を贅沢に4枚構えた布陣は、さすが「元寇」を凌いだ土地といったところ。メジャーな銘菓から「こんなのあったんだ」という銘菓まで幅広く取り揃えているあたりからも強者の余裕が感じられます。
特に「チロルチョコ 西鉄コンプリートセット」は茶飲み話を盛り上げるのに最適……と思いきや、まさかの見せるだけ宣言。これには首をかしげざるを得ません。
菓子盆は物産展でもなければアンテナショップでもありません。盆の上に「サンプル」が乗る余地などないのです。いつしか郷土の誇りを驕りと混同してはいないでしょうか。
しっかりと怒られました。菓子盆に悪の栄えた試しなし。
ちなみに、福岡盆でひときわ華やかだった「博多の女(ひと)」というお菓子。
かまど以外は誰も知りませんでしたが、食べてみると意表をつかれるくらい美味しかったです。かまどが余計なマネをしなければ…。
エントリーNo.4 たかや(長野)
続いても初登場! 長野県出身のたかやです。
農業を通した社会復帰プロジェクトに参加する引きこもり少年かと思いましたが、どうやらご両親からの送られてきたダンボールとのこと。
「ご当地菓子盆に出場するにあたって、実家から長野のお菓子を送ってもらいました。
この日のために親と何度も電話で打ち合わせをした上で厳選した長野菓子! 絶対勝ちます!」
家族の想いを乗せたたかやの長野盆はこちら!
●雷鳥の里(田中屋)
●市田柿
●巣ごもり(いと忠)
●おやき(のざわな味&かぼちゃ味)
●ジャイアントプリッツ<信州りんご味>(グリコ)
「まず、ぜひ食べてもらいたいのが南信州を代表する特産品の市田柿(いちだがき)。
僕も小学生時代は干し柿農家の軒先に吊るされている柿の色の移り変わりを眺めながら登下校をしていました。長野県民は干し柿と共に育ってきたと言っても過言ではありません」
「さらにオススメしたいのが長野を代表するお菓子「巣ごもり」です。黄身餡をホワイトチョコレートに包んであり、食べると口の中でホロホロと甘さが広がります。
過去にはあの大食いタレントのギャル曽根さんもTVで大絶賛したこともあるほど! 一度食べたら病みつきになります」
「他にも長野名物『おやき』や長野の県鳥である“雷鳥”をモチーフにした『雷鳥の里』、想像以上にりんご感が強い『プリッツ りんご味』など、長野の良さを存分に表現した盆となっています!」
~ 会場の反応 ~
「はみ出すぎ。おやきをプリッツ支える重しにすんな」
「ご当地盆じゃなくて仕送り盆じゃねえか。自立しろ」
「柿も気になるけど、この紙は何?」
あ……これは……
家族からの手紙ですね……。
『たかやへ。元気でいますか? 父さんも母さんも元気にしています』
『ご飯は食べていますか? お米送ります。体にだけは気をつけなよ』
『じいちゃんもばあちゃんも元気で畑仕事しています。たかやのこと心配しています。たまには声を聞かせてやってな』
『東京でもがんばって! 父より』
父ちゃん……っ!!
~ 会場の反応 ~
「俺達は今、何を見せられてるの?」
「やっすい三文芝居で凌げるほど菓子盆は甘くねえぞ」
「ほろり…」
郷土愛だけでなく家族愛すら見せつけるたかやの菓子盆! その評価やいかに?
これが目の前にドスンと差し出されたときはお地蔵様にでもなった気分でした。
とにかく「干し柿」と「おやき」の存在感がすごい。というか野沢菜のおやきって菓子ではなくないですか? おいしいけど。
しかし「郷土」らしさ、地元愛という観点では、おそらく本日最高ではないかと思います。「あのギャル曽根さんが絶賛した菓子」という半オクターブずれたアピールにも浮き足立ったローカルの特徴がよく出ていますね。
故郷からの手紙については、菓子盆のありかたとしてやや疑問を覚えました。この盆は誰のための盆なのでしょう? あくまで菓子盆は「もてなし」であるはずです。
お涙頂戴の展開には惑わされない! 今日もダ・ヴィンチ・恐山の審美眼は確かなようです。
長野盆のMVPはこの「巣ごもり」! しっとり甘くて絶品でした。
みなさんも長野県民と仲良くなって、ぜひ安定した供給ルートを確保してください。
エントリーNo.5 永田(東京)
続いては東京出身のシティボーイであり、菓子盆選手権ではこれまで3度の優勝経験を持つ永田。
菓子盆界屈指の実力派が見せる東京盆とは?
「東京が最も優れていることなど自明。
さて、軽~くひねってやりますか」
●冨貴寄(銀座菊廼舎)
●ひよ子(東京ひよ子)
●紅茶ひよ子(東京ひよ子)
●ごまたまご(銀座たまや)
●木の葉あげ餅 わさび(麻布十番あげもち屋)
「銀座菊廼舎さんの冨貴寄で彩りを添えて、みなさんご存知のひよ子をメインに据えました」
「麻布十番あげもち屋さんの木の葉あげ餅をかきわけると、ごまたまごが顔を出します。
まるで春の不忍池。暖かな陽光を思わず感じてしまいますね。盆全体で見ると、和モダンな東京を存分に表現できたと思います」
~ 会場の反応 ~
「ちょっと待て。ひよ子って福岡銘菓だろ!」
「これは致命的なミスでは?」
「確かにひよ子は福岡が発祥ですが、使用したのはあえてです。東京でひよ子を販売しているのは福岡の会社とは別で、社名も『東京ひよ子』としているのです。
さらに『紅茶ひよ子』は東京ひよ子限定で福岡では買えません。このように東京は他の都市の良いところを吸収して、洗練していくのです。良いものは自然と東京に集まるというわけですね」
「それにお前らはお国自慢どうだこうだの前に、そもそも上京してるだろ。地元を捨てて東京を選んだ人間が郷土愛を語るな、クズが」
~ 会場の反応 ~
「最悪の人間」
「高価なブランド物を盆にぶちまけただけ。金にものを言わせたまさに東京モンの盆」
「この盆からは思い入れも郷愁も感じられない。ショーウィンドウに飾られた模造品のようでゾッとする。あ〜ヤダヤダ」
参加者の郷土愛を否定するような永田の発言に批判が噴出! 肝心の審判員の目には、どう映ったのでしょうか?
地元愛に引きずり回され「あれも、これも」と欲張りたくなる今回のテーマを前にしてグッと自制し「盆の美」を追求する永田さん。首都に生まれ育ったがゆえのブレの無さでしょうか。まずはそこに称賛を送るべきでしょう。
「ひよ子」をメインに据え、その他の菓子はあえて脇に寄せる。華やかなお祭りのような盆に対して「侘び寂び」を感じさせるシックな佇まいは、葉のざわめきとせせらぎが微かに聞こえる古池を連想させます。
もはやここに「ご当地」などという概念はなく、ただ目前の美と向き合う盆師のストイックな発想が盆を作り上げたのでしょう。テーマを内部から破壊する危険性を秘めた盆というのは穿ち過ぎでしょうか。
オーディエンスの批判をよそに盆をしっかり高評価! 盆外の情報には惑わされない冷静な審査です。
さあ、残るは二人となりました! まだまだ勝負の行方はわかりません!