「たいやきって頭としっぽ、どっちから食べる派?」

 

一度は聞いたことがあるかもしれないこの質問。

私はあまり気にしていないが、一説によるとこの判断で心理や性格まで診断されてしまうらしい。たまったもんじゃない。頭かしっぽの2択、もしかしたらお腹や背中派がいるかもしれないくらい程度の選択肢なのに。

 

でも、これならどうだろうか。

「たいやきにがあったとしたら、どう食べてくれますか」

これは、たいやきに骨を入れてみたいし、どう食べるのか見たい。そんな記事です。

 

たいやきに骨をつくりたい

まずは通常通りたいやきを作ってみる。

重曹とベーキングパウダーでサクッと生地になるらしい

以前から思っていた。

たいやきの食べ方論争と、焼き魚の食べ方マナーの話が全く交わらないことへの疑問を。

たいやきに骨を入れることで、今この2つを交わらせるときではないだろうか。

 

粉と卵と牛乳を混ぜて生地を作るよ〜

…いや、そんなことは無理やり出した記事上の建前で、たいやきに骨があったらかわいいだろうな♪という思いつきで骨を作ってみようとしています。動機ってそんなことで良いらしい。良いということにしたい。

 

金型に生地を流し入れて鯛にするよ〜

家にたまたまあったワッフルメーカーのたいやき金型で外身を焼いた。

うん、ツヤっとした表面がかわいい!離型剤として油を塗り、金型を十分に高温にした上で流し入れると綺麗に焼ける気がする。

 

さて、問題はどうやって中の骨を作るかということだ。

それなりに硬さは欲しくて、でも食べ物ではあって欲しくて(プラスチックは危ないし)、硬すぎるのも困るし……飴で作るのが順当でしょうか。

 

実は飴のほかに瓦せんべいのアイデアも出ていたが、以前書いた記事にて綺麗なせんべいの作りづらさに泣かされているので没とした。

せんべいは焦がさず歪ませず割らずに作ることが結構難しいのだ。

↑お時間があればせんべい作りへの愛憎に溢れるこちらの記事も読んでみてくださいね♪

骨の飴を作る

職人さんのように手びねりの飴細工をする技術はないので型取りで骨を作ってみましょう。

粘土で原型を作り、シリコンで複製をすれば安定して骨のパーツを量産できるだろう。

まずはラフを作り、それを下敷きに粘土を捏ねていく。

 

頼りないねえ

意思も強くない上に柔軟性も無さそうな表情をしている。骨の無いヤツ。

ビジュアルよりも折れなさを優先した結果スーパーデフォルメをかけてしまった。あなたたちの中に鯛の骨に詳しい方がいたとしてもどうか見逃してほしい。この顔に免じて。

 

乾かすと硬くなる石粉粘土を捏ねて、紙やすりで軽く処理をして原型を作成した。

ぽってりした立体物になるとこの顔も少し愛嬌があるように見えてくる。手のひらの上に実在するとなんか許せる気持ちになるから私は立体物が好き。

 

いや、実際ラフと立体物で目の位置が全然違うな。別人じゃないの。

 

ブロックで作った枠組みにシリコンを流す

食品作りに使用できる二液性シリコンを使用し、先ほどの骨を型取りしていく。何も理解しない顔のままねっとりと沈められていく姿になんともいえない悲哀さを感じる。

 

シリコン型ができた!

この形状、わざわざ型取りする必要あったか!?の気持ちに気づかれないうちに飴を作りますよ!GOGOGO!

 

飴作りにはパラチニットという、飴細工で使う専用の砂糖を使用した。パラチニットのいいところは煮詰めても茶色くならないところだ!

 

真っ白な骨を作ろうとして練乳やミルクパウダーを使い煮詰めたら一瞬で左のようなカラメル色になり落胆したのでこのパラチニットは本当に革命。

こんな経験をしなければ人生で交わる機会のなかったであろうパラチニットの透明度にメロメロになった。みんなもパラチニットを使って綺麗で透明な飴を作ってほしい。

 

白の食品色素を混ぜた飴の素をシリコン型にそーっと流し込み、冷蔵庫で冷やすと……。

 

ワハハ!つややかな骨の飴がコロンと生まれた!想像していた通りだけど実物で生まれると笑っちゃう。

 

型を作ったので複製も可能だ。これで破損しても怖くない。

 

𝒔𝒐 𝒄𝒖𝒕𝒆…♡

モナカの要領で分割したたいやきに骨を仕込んだ。嘘の標本だ。

私の骨が情けないクオリティで良かった。リアルな骨だったら歴史を改ざんしてしまう可能性もあったし…学術誌とかにフェイクニュースが載っちゃってたかもしれないし……良かったということにしたい。

 

ちなみに、骨を挟んでからホットサンドで熱々に焼いてしまうと骨がドロドロに溶けてしまう。飴の欠点だ。そのため今回はたいやきを冷ましているのがマイナスポイントである。もう割り切ってアイスたい焼きとして展開すべきかもしれない。

 

春の和菓子らしくなると思って桜あんを使ってみたらいきなり「魚肉」になった。すり身のリアリティ。

急に生死の影が浮かび上がってくる

 

この時点で私はもう早くみんなに見せたくてキッチンを飛び出したくてたまらなかった。

みんなどうやって食べてくれるんだろう。編集部オフィスに行けば誰かに食べてもらえるのではないか。

みんなに食べてもらおう

—某日。オモコロ編集部オフィス

バタバタバタ……

バン!

こんにちは〜〜〜

たいやき食べていただけませんか!?

〜〜〜ゾロゾロ

突然のたいやき来訪にも関わらずオフィスから3名の有識者が集まってくれた。

みな甘いものや食べることが好きな頼もしいメンバーだ。

特に説明なく呼んでしまったため全員神妙にたいやきを眺めている時間が生まれてしまった。

 

みなさん、普段たいやきってどこから食べますか?

特に考えたことないなあ。尻尾を持つことが多いから強いて言えば頭からかも

私は尻尾の先のサクサクが好きだから、頭から食べて楽しみを取っておきます

真ん中で割って中心から食べるかも!

本物の魚の食べ方をしようとしてる?

ワタも掻き出して

あんこ引きずり出さないよ

 

みんなの食べ方

通常のたいやきでも三者三様の食べ方や理由があった。予想外のバリエーションにやや前提が崩れ始めたが本題に入ろう。

 

では…たいやきに骨があったとしたら、どうやって食べてくれますか

え?

うわ!たいやきの中になんか硬いものが入ってる!

中身が気になるけどまずは見ないで食べてみようかな

どうします?本物の魚の骨が入ってたら

丁寧な嫌がらせ

メキョッ

頭から行った!しかも骨ごと

鮎の塩焼きスタイル!なんて豪快な!

この骨は飴で出来ているんですね。本来食べちゃいけない部分を食べられるもので作るってスイカバーの種と同じ仕組みだ

 

丸齧りすると骨の断面が生々しい

“髄”って感じがします

 

たいやきを開いて見てもらった

僕さっき歯の治療してきたばっかなんですよ

飴齧りに最も向いてない日に呼んじゃった

背骨からスゥーーっと身をすくように齧ると食べやすいよ!

本当に焼き魚を食べるときの骨の避け方みたい

これなら歯を痛めずに食べられる

骨の隙間からあんこを吸うの面白っ

 

バキッ

ゴリゴリゴリゴリ

歯折った!?

違うけど、もし折れた歯を食ってたとしても気づかないかも

骨は残してもいい想定だったけど食べてくれるの嬉し……

本物の魚でも骨食べます。食べ物を残したくないから

みくのしんさんは一貫して「命を頂く」姿勢で向き合ってる

 

骨が入るとやっぱり「魚食べる」って意識で食べようとしちゃう

焼き魚のように骨を残して背中から食べる派と、鮎の塩焼きのように頭から骨ごと食べる2パターンが見られました

 

口の中で砕いたちっちゃい飴を溶かしながらたいやきを食べる体験、新鮮で面白い

観光地の新しいスイーツにありそう。ビジネスの匂いがする……

ビジネス、お待ちしています。クロックスパンの次狙わせてください

 

 

ある程度予想はしていたが、骨を避けたりむしろ丸ごと齧って食感を楽しんだりと予想以上に「骨ありき」の食べ方が生まれていた。

今回はミニサイズのたいやきだったので手掴みで食べていたが、お店の大きなサイズのたいやきだったら箸やナイフ&フォークで食べる派閥も生まれていたかもしれない。そしてそこには新たな食べ方のマナーが生まれてる可能性がある。

 

その時は私が世界唯一の「骨たいやきマナー講師」にもなりマッチポンプで稼いでいこうと思う。

 

(おしまい)