「ネット上で話題になってる」、「ネット上で評判が良い」との噂を聞く作品は数多くありますが、ごく一部の人間しかやってないネットの世界でいくら評判が良くても、現実の世界ではどうだかわかりません。僕等インターネットの住人たちはすぐにネット世界の尺度で物事を決めがちですが、たまにはネットをやらない人たちと直接触れ合い、温度のあるコミュニケーションの中で作品の真の価値を見定めていくことも必要なのではないでしょうか?
フジテレビの人気ドラマ「リーガルハイ」。現在第2シーズンが放送中ですが、ネット上での評判もよく、「長台詞を物凄い熱量で淀みなく演じきる堺雅人がスゲェ!」と各所で話題になりました。
↓話題になった堺雅人の超絶演技シーン
しかしここ、巣鴨ではどうでしょうか? 巣鴨のおじいちゃん、おばあちゃん達には「リーガルハイ」の面白さは届いているのでしょうか?
「リーガルハイ」の真の実力を調査するべく、今回は巣鴨のとげ抜き地蔵前にて、スケッチブックに登場人物の写真を貼り付けた質素な道具で色々聞いて回りたいと思います。やるぞ~!
-「リーガルハイ」人気調査開始 –
「この人ご存知ですか?」
「知ってるよ。半沢直樹」
「(やっぱりそっちが出ちゃうか…) も、やってますよね。これはフジテレビのドラマなんですけど」
「フジ…? ガリレオ?」
「でもないんですけど。フジテレビ、水曜の10時からと言えばなんでしょう!」
「10時じゃダメだわ。あたし薬飲んで9時には寝ちゃうから」
「じゃあ見れないですよね! すいません、ありがとうございました」
「この人ご存知ですか?」
「堺…何とかって言ったかしら。菅野美穂の旦那さんよね」
「そうなんですよ! この人が今フジテレビでドラマをやってるんですが、何てタイトルだかわかりますか?」
「うーん…知らないわねぇ…」
「勘でもいいんで! パッと見の感じでいいんで!」
「うーん………未来……伝説?」
未来伝説。
「リーガルハイ」、全然知られてない。やっぱりネットの評判なんて、巣鴨じゃあてにならないのでしょうか? しかし実験はまだ始まったたばかり。きっと今に「リーガルハイ」を知ってる人が現れてくれるはずです。
「この人をご存知ですか?」
「テレビでよく見る人だねぇ。名前はちょっとわかんないわ」
「とあるドラマの出演者なんですけど…ドラマのタイトルとかって出てこないですかね?」
「ちょっとわかんないわ、ごめんね」
「じゃあこの人の名前、何だと思いますか? 外れててもいいんで、自分が名付けるとしたら」
「うーん……」
「………」
「ぷうた? わかんないわ!」
※正しくは弁護士の「古美門 研介」です。
「この人の職業ってなんだと思いますか?」
「うーん…刑事かしら」
「何ていう名前の刑事だと思います?」
「モンキー刑事」
※正しくは弁護士の「古美門 研介」です。
「じゃあじゃあ、モンキー刑事とこの女の子の関係は何だと思います?」
「そうねぇ…やっぱり相棒かしらね。この子、 桑野みゆきに少し似てるわね」
「(誰…?) なるほど、相棒ですか。モンキーの相棒である彼女の名前は何だと思いますか?」
「うーん………」
「………」
「チーター?」
※正しくは弁護士の「黛 真知子」です。
「モンキー刑事とチーターはどんな犯人を追ってるんですか?」
「やっぱり泥棒じゃないかしらね。うちに入った泥棒も捕まえて欲しいわ」
「え! 泥棒に入られたんですか? 何を盗まれたんですか?」
「電気自転車をね、2台」
「2台も…。カギとかかけてなかったんですか?」
「自宅のガレージに置いてたから、カギかけなかったのよ。でもシャッター開けて入られて、そのまま持ってかれちゃったの。怖い世の中ですよ、あなたも気をつけなさいね」
「戸締まりだけはしっかりしたいと思います。ありがとうございます!」
自分が何のアンケートを取っているのかよくわからなくなってきたので、蒸したての酒まんじゅうを食べて一旦リセットする。巣鴨で「リーガルハイ」を知ってる人とはまだ会えません。ここは少し目先を変えて、「リーガルハイ」の出演者で、高齢者に知名度バツグンのあの人のことを聞いてみたいと思います。
里見浩太朗です。「リーガルハイ」には主人公である古美門の弁護士事務所の事務員・服部として出演しています。巣鴨であれば、この人を知らないという人に会う方が難しいはず!
「この人をご存知ですか?」
「里見浩太朗だな」
「そうです! 実は今里見さんが出演しているドラマが放送中なんですが、ご覧になったことありますか?」
「知らねーなー。水戸黄門しか知らない」
「水戸黄門ではないんですよね…」
「水戸黄門またやればいいのになぁ。ああいうのが一番わかりやすくってさ。お兄さん、また水戸黄門やってよ」
「僕は水戸黄門にGO出す立場の人間じゃないんですが…。実は今、里見さん『リーガルハイ』というドラマに出演してるんです」
「へぇ。見たことない」
「弁護士が主人公のドラマなんですが、おじさんは誰か訴えたい人っていますか?」
「うーん? 訴えたいような悪い奴はいねぇなぁ…」
「有名人でもいいんですけど。悪い奴」
「じゃあキム・ジョンイル」
「(死んでる!)」
「里見浩太朗さん、この写真で上を指さしてますよね?」
「指してますね」
「これ上に何かあるんじゃないかと思うんですが、里見さんの上に何があると思いますか?」
「え? いや…わかんないですね…」
「多分でいいんですけど」
「多分…うーん……友達…?」
いよいよ「リーガルハイ」が何のドラマなのかよくわからなくなってきました。里見浩太朗の友達は忍びか何かなのでしょうか? 巣鴨にいると、「リーガルハイ」というドラマが本当に放送しているのかすら怪しく思えてきます。しかしまだまだ諦めるわけにはいきません。
堺雅人さんと一緒に線香の煙を浴び、巣鴨へのリベンジを誓います。やられたらやり返す、倍返しだ!(←一番混同しちゃいけないやつ)
「この人たちが出てるドラマをご存知ですか?」
「ごめんなさい、ちょっとわからないな。でもこの人は堺雅人さんだね」
「そうなんです! 堺さんの役、どんな職業だと思いますか?」
「うーん…呼び込み? なんだろう、わからないね」
「この人はどうでしょう? この人もドラマの出演者なんですが」
「この人は知らないなぁ…」
「じゃあ自分がこの人にあだ名つけるとしたら何てつけます? おい、○○!って呼ぶつもりで、あだ名をつけるとしたらなんでしょう?」
「うーん………………。ギョロ目」
※正しくは古美門のライバル、弁護士の「羽生 晴樹」です。
「あ、でもギョロ目の人は弁護士バッヂをつけてるね。これ弁護士のドラマでしょう?」
「おお! 正解です。今放送中の『リーガルハイ』っていうドラマなんです。ではギョロ目が弁護士だということがわかったところで、ギョロ目と堺雅人との関係はなんだと思われますか?」
「関係? そうだねぇ…。あれじゃないかな、居候」
「なるほど、タモリと赤塚不二夫みたいな関係ですかね。亡くなった時に弔辞も読むような」
「うん、あれはよかったね。そうしましょう」

「『リーガルハイ』は裁判のドラマなんですが、お父さんは裁判に出たこととかありますか?」
「私ですか? 私はないですねぇ」
「誰か訴えてやろうと思ったことはありますか?」
「医者かな…」
「え?」
「誤診をされたことがあってね。自分でも何か変だなと思ってたんだけど、他の医者に聞いてみたら『ありえない』って言うような診断をされて、ちょっと揉めたの。まぁ訴えても病気が治るわけじゃないから、別に訴えたりはしませんでしたけどね」
「そうですか…そんなことがあったんですね…」
「生きてると色々なことがありますからね」と優しい笑みで語るお父さん。裁判の場で意見を戦わせるよりも、もっと尊いことがこの世の中にはあるのかもしれません。いやそれじゃ困るよ! 「リーガルハイ」見てよ!
そんな心優しいお父さんに、「リーガルハイ」とは何の関係もありませんが、たまたま持ってきていた「プレデター」の画像も見せてみました。
「すいません、これなんですけど…」
「………」
「………」


※別に聞く必要もありませんでした。
本筋に戻り、「リーガルハイ」の知名度調査を進めます。雲一つしかない晴天の中、ベンチに腰掛けて気持ちよさそうに缶ビールを傾けているお父さんにお話を伺いました。
「すいません、このドラマってご存知ですか?」
「…ちょっとわからないね、私テレビ見ないから。散歩して家に帰って寝るだけの暮らしですからね」
「奥様と暮らされてるんですか?」
「いや、家内はもう死んじゃってね。独り身です。年金で慎ましく暮らさせていただいております。ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ…。今、ご趣味はあるんですか?」
「無趣味な人間ですから、食べて、飲むぐらいですかねぇ、ハハハ。ほんとに食べ物が美味しい時代になったからね。飽食の時代ですよ、ほんと。今は何を食べても美味しいでしょう?」
「はい、大体美味しいですね」
「私、池袋の人間なんだけど、戦時中はあの辺も空襲にあってね、ほんと地獄だったんです。食事もひどいもんでね」
「何を食べてたんですか?」
「トウモロコシとか芋とか…。お米はまず食べられませんでしたね」
「じゃあ今は幸せな時代ですね…」
「ほんと平和な時代ですね。私はもう1人で死ぬのを待つだけだけど、あなた達はこれからも頑張ってね。ご苦労さまです」
「………」
「すいません、これ『リーガルハイ』ってドラマなんですけど、最後にこのドラマについて一言いただけませんか?」
「優秀!」
(「若い人たちはみんな優秀だから」だそうです)
※巣鴨の方達の話を聞いて完成した「リーガルハイ」
巣鴨では残念ながら「リーガルハイ」を見ている人はいませんでしたが、本当の内容はあなたの目で確かめてください! 一部完結のドラマなので、今から見ても楽しめます。