もう無理だ
……。
……。
……。
……。
いや…
いや酷暑!!!!
酷暑だった。
この日の東京の最高気温は36℃を超えていた。酷暑も酷暑のド酷暑だ。
呼吸をするたびに体力が削られる。
熱風が毛布のように重くのしかかる。
めちゃくちゃ水分補給する
ペットボトルの消費スピードだけが速い。
当初は「小学生の下校なんだから、自販機は禁止」みたいな縛りも考えてはいたけど…。
そんなことも言ってられない。水は遠慮なく飲もう。
はぁ…はぁ…
はぁ…はぁ…はぁ…はぁ……
ザバッ
ハ~~ア! ハハァ……!
ザバッ
ハァ!!!!!!!!!!!!
ハ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~アッ!
はァ…。
ハァアアアア
どんだけやんだよ。
ペットボトル一本使い切っちゃう。
…あ。
「水ぶっかけ屋」って儲かるかもしれない。
……なに?
いや、こういう暑い日、頭から水を被りたい人もいると思うんだよね。そういう人に、50円くらい貰って水をぶっかける仕事。
この人は何を言ってるんだ…。
絶対に需要あると思う。
編集長の頭の中に、新たなビジネスモデルが生まれた瞬間だった。
ドン引きしながら見守る2人
彩雲さん、汗やば…。
まぁ、こんだけ暑いとそりゃね…。
顔も白ッ…!
これは元からなんで大丈夫です。
そ、そっか…。
家ではサソリのウォッカを飲んでいるので、血の気が少ないのかもしれません。
なに言ってんの…?
スタートから約3分。距離にして、まだ100mも進んでいない。
にもかかわらず、早くもギブアップ寸前の一同。
当初の予定では、夏の道中を楽しむ素敵な撮影になるはずだったのに……。
暗雲立ち込める状況で、この男が声を上げる
皆さん。このままでは人命にかかわります。
野田さん…。
使いましょう。
タクシー。
……はい!
本来ならば、企画者の自分が言うべきことなのに…。彼はいつだって頼もしい存在だ。
まぁ、僕は熱中症とかならないんですけど。
「せいぞ」なんで。
最後のカードと思っていたタクシーを、開始3分で使うことになった。
今年の夏も、蝉が一番元気だ(ウゼ~~~!)
涼む
ロイホ!!!
涼し~~~い~い
タクシーに乗った我々は、曳舟駅付近まで向かい、そのまま最寄りのロイヤルホストに駆け込んだ。
タクシーを使い、そのままロイヤルホストで飯を食う。
完全に、富裕層の家庭に生まれた小学生の下校だ。そんな小学生と仲良くなれる気がしない。
ロイヤルホスト「黒×黒ハンバーグ」
美味ッ!!!!
あ! 見て下さい。このハンバーグ、肉汁がけっこうはねるんですけど、そんなときは
水泳マントで防げる。
だからどうしたよ。
強引に水泳マントを活用させてる。
タクシーでショートカットしちゃった分、水泳マントの撮れ高も少なくなったから。
外の暑さが収まるまで、ロイホで体力を取り戻す。
豪華な通やぶ※だった。
※通やぶ……決められた通学路から外れて寄り道することだよ。僕の小学校ではそう呼んでた。
下校再開
暑さも落ち着いたころを見計らい下校を再開。
スカイツリーまであと1.2キロ!
半分以上の距離をタクシーで済ませてしまったが、もう半分は小学生らしく歩いてみます。
大通りばかり歩いてもなんなので、路地裏に入ってみる
ここら辺は下町の雰囲気を感じられていいですね。
ですねぇ。
ただ、なにか発見があるかと言われたら難しいかもな…。
ん!?
ジブリ映画の1シーンが貼られてる家がある…。
ほんとだ。
なんか、ジブリの1シーンを印刷して貼ってる店とかたま~にありません?
たしかに。僕の地元でもあった気がする。
ああいうの、どういう目的があってやってるんだろう。
いや、そんなことより、皆さん…
?
「千と千尋」に、こんな場面ありませんよね?
!?
言われてみれば、こんなシーン見たことない。
どういうこと??? 未公開シーン?
「千と千尋」の未公開シーンって出回ってたっけ?
本物のタッチに精巧に寄せた二次創作なんですかね。
それにしては似すぎじゃないですか?
そもそも、なぜここに貼ってあるの? スタジオジブリの場所って東小金井だし。
っていうか、ここ、なんの建物!?
………なんか、急に怖くなってきた。
あるいは、僕たちいま、別次元の「千と千尋」の世界線に迷い込もうとしてるのかも。
どういうこと?
ハハハ。やだな彩雲さん。いくらなんでもオカルトすぎますって。
……となりのトトロ、死後の世界説。
…ッ!
………………。
………………ッ!
結局、この「千と千尋」がなんだったのかは今もわからない。
これ以上深追いすると記事のテイストが変わってしまいそうだったので、我々は逃げるようにその場から立ち去った。
あ、神社がありますね。
寄ってみましょう。
おむすび柄にペイントされた石がたくさんある
おむすび神社?
いまスマホで調べたんですが。この神社の御祭神が高皇産靈神(タカミムスビノカミ)と呼ばれる神様で、それにちなんでおむすびがあるみたいです。
縁を「むすぶ」みたいな意味があるのね。
せっかく立ち寄ったので、「おむすび神社」で参拝してみる。
神社と水泳マント。なんだか良い組み合わせだ。
良縁、仕事運、健康運……。この歳になると結んで欲しいものがたくさんある。
それぞれが思い思いの「むすび」を神様に託します。
このとき、メンバーがどんな願い事をしていたかは、この下校が終わったあとに聞いてみよう
▼あとで聞いたそれぞれの願い事▼
「娘がせかさなくても食事を食べてくれますように」
「永遠の命が欲しいです」
「色々なことがなんとかなりますように」
「全Webライターの中で、おれが一番幸せになりたい」
路地裏に入る前に、コンビニでアイスを買ってたので、境内で食べる。
ようやく、僕が再現したかった「あの頃」の夏になってきた。
コレなんだよ。
友達と水泳マントを羽織って帰宅し、途中でアイスを買って、夕方の神社で寄り道。
あとはゲームボーイアドバンスでもあれば完璧だ。
あの頃はよかったね。ポケモン言えれば天才だったね。
通信ケーブル持ってきたやつは勇者だったもんね!
それなんですか?
飲むヨーグルト「スーパーカップ味」です。
小学生が帰りに「のむヨーグルト」飲むかな…。
ラストスパート(ここら辺からスタンドバイミーの曲を流してもらえないでしょうか)
神社をあとにし、いよいよ下校もラストスパート。
たった数㎞の帰路なのに、やたらと長く感じる帰路だった。
大人なら小学生の通学距離も楽勝だと思っていたけど…。全然そんなことなかった。
水泳後のクタクタになった身体。蒸し返る暑さ。
その道程は、平均年齢30.5歳の我々にはあまりに厳しいものだった。
だからといって、あの頃の下校が楽しいだけのものかと言われたら…そうでもなかった。
思い返せば、あの頃だって、普通にキツかった。
車で帰る同級生を羨ましく感じたし、通学路途中にいた外飼いの犬が美味しそうに水飲んでるのを「俺にも寄こせ」と眺めてた。
過去は美化してしまいガチだが、あの頃の下校だって、同じように大変だった。
それを思い出せただけでも、この下校に意味があったと信じたい。
でっけ~。
うん。でかいわ。
スカイツリー、でかいですね。
みんな疲れてコメント考える余力も無くなってる。
そして…
ゴール!
こうして、困難続きだった僕たちの下校が幕を終えた。
疲れた……。
下校ってこんなに疲れるもんでしたっけ…。
「疲れた」って感想しかない。
散々だな。