エリアの騎士
2006年~2017年(週刊少年マガジン)
主人公の逢沢駆は、サッカーの天才である兄と自分の力の差を感じ、マネージャーになる。
ある日、主人公と兄が事故にあい兄は脳死、主人公も心臓を移植しないといけない状況に。
亡くなった兄の心臓を移植してなんとか一命をとりとめた主人公は、兄の意思を継ぎサッカーに打ち込みます。
徐々に目覚める駆の才能と、周りの個性あふれるキャラクターが魅力の作品です。サッカーのリアルな戦術についても詳しく図つきで解説する場面が多くあり、サッカー好きにはたまらない一作!
45巻 【アウェー故に取られた疑惑のハンド】
©講談社/原作:伊賀大晃/漫画:月山可也「エリアの騎士」45巻より
日本対クウェートの試合。
キーパーの真弓がペナルティーエリア内でボールをキャッチしてゴールを守りますが、これにペナルティーエリアの外でボールに触れた、との判定でイエローカードが出てしまいます。
©講談社/原作:伊賀大晃/漫画:月山可也「エリアの騎士」45巻より
「明らかにエリア内だっただろ!」と真弓が抗議すると、その抗議に対して二枚目のイエローカードが出され退場になってしまうという踏んだり蹴ったりのハンドです。
アウェーでの判定の厳しさに気をつけよう! という啓発シーンですね。
「エリアの騎士」でのハンドシーンはこれ1回だけなのですが、個人的にグッときたシーンとして「ヒロインが線審をやる」という場面を上げさせてください。
©講談社/原作:伊賀大晃/漫画:月山可也「エリアの騎士」30巻より
部活のサッカーでも「ラインズマン(線審)」というのが必ず必要で、オフサイドという反則をとったり、ラインからボールが出た時にどちらのチームがボールを出したかを確認したりしなければいけないのです。サッカー部あるあるなんですが、正直言って面倒くさいので誰もやりたがりません。
このラインズマンをヒロインの奈々が手伝わされるという細かい描写あるのが良かったです。
合計ハンド…1回
ホイッスル!
1998~2002年(週刊少年ジャンプ)
主人公のサッカー少年・風祭将は、名門の武蔵森学園中等部でサッカー部に所属しますが、背が低いという理由から3軍に回され、雑務である球拾いしかさせてもらえません。
「試合に出たい!」という強い気持ちから転校し、桜上水中のサッカー部に入ることに。しかし、「名門から転校生が来たぞ!」と周囲の期待とは裏腹に結果を出せない将。
最初からサッカーの天才というわけではない努力タイプの主人公が、徐々に才能を開花させていくストーリーに共感を覚えます。
さて、累計ハンドは1回。
©集英社/坂口大輔:「ホイッスル!」文庫版7巻 P.192、193より
7巻文庫版 【勝つための反則はしていいのか投げかけるハンド】
シゲがゴールを決めますが、直前に実は手がボールに触れていたことが副審のジャッジにより判明、ノーゴールになってしまいます。ハンドに気が付いていた将は「今のはわざと?」とシゲに聞くと、「わざとだったら、どうするんだ?」と返されてしまいます。
さらに動揺を隠せない将に「どうしてもこの試合に勝ちたいのか、そうじゃないのか、はっきりさせないとこの試合には勝てない」とシゲは言い放ちます。
他校の監督も、「これが部活としての楽しいサッカーか、あくまで勝ちにこだわるサッカー選手としての未来を見据えたサッカーかの分かれ目だ」とコメントし、反則をしてまで勝ちにこだわるべきかどうかを読者に疑問を投げかける展開となります。
この後の試合の展開も非常に面白いので、ぜひ続きはご自身の目で確かめてください!
「ホイッスル」におけるハンドシーンはこれ1回でしたが、「未遂に終わるハンド」というのも出てきます。
14巻文庫版 【バスケの記憶が蘇って】
九州選抜チームでバスケ部出身の高山がボールをクリアする際につい、バスケと同じ要領で手を使ってボールをキャッチしようとするが、チームメイトに「ばか! ハンドや!」と注意され、慌ててヘッドでクリアします。
合計ハンド…1回
アオアシ
2015年~連載中(ビッグコミックスピリッツ)
Jリーグのユースチームが物語の中心になる、ありそうで無かったタイプのサッカー漫画。
愛媛県の公立中学でFWをしていた青井葦人は、フィールド上を俯瞰で見る能力とサッカーへの情熱を評価され、「東京シティ・エスペリオンFC」というユースチームの入団テストを受けることに。
周囲とぶつかりながら徐々に才能に目覚めていく主人公というドラマ部分もさることながら、緻密な戦術解説なども本格的で、「現代サッカーを理解するならこの漫画を読むべし!」と自信をもっておすすめしたい一本です。
2巻 【覚醒の鼓動】
葦人を含むユース候補生vs正メンバーの試合でハンドシーンが登場します。
圧倒的な能力を誇るユース選手の前に圧倒される候補生ですが、対戦相手がハンドを犯し、絶好の位置でのフリーキックを得ることに。
直接ゴールには決まらないものの、その後の展開で葦人の「俯瞰」の能力の片鱗が示されるシーンがあり、読者をワクワクさせます。
この漫画、現在も連載中なので詳しいネタバレはできないのですが「うわっ!そうなるのか!」という展開もあり、本当に今読んで欲しいサッカー漫画と言えます。最高!
合計ハンド…1回(2019年2月時点)
BE BLUES!
2011年~連載中(週刊少年サンデー)
将来を約束された天才サッカー少年の主人公、一条龍。
その天才的なテクニックで埼玉では伝説となるものの、あるとき親友を助けるために事故に遭い、サッカーができなくなってしまいます(サッカー漫画には事故が多い)。
リハビリの末にサッカーができるようになったものの当時の切れのある動きは失われ、新たなプレイスタイルで奮闘することに。
主人公の龍がキリッとしていて、性格も男前でかっこいいです。サッカー漫画の主人公はだいたい天然タイプな感じなので、目新しさがありますね。
8巻 【龍の勝負強さを見せるためのハンド】
大浦東中 対 麻倉キッカーズの試合。麻倉キッカーズに1点リードされ迎えた後半戦、残り時間はわずか2分!
守りを固める麻倉キッカーズからなんとか奪ったボールを、大浦東の宮崎が空いていたシュートコースに蹴りこみます。すると、ボールを止めようとした麻倉キッカーズの8番の手に当たりハンドになり、絶好の位置でフリーキックを獲得。
このフリーキックを「決めるべき時に決める男」龍が決めて同点に追いつきます。
試合を拮抗させるために発生させたであろうハンドですね。
26巻 【桜庭のずる賢さがわかるハンド】
龍は武蒼高校というサッカーの名門高校に進学。そんな武蒼 対 大浦南の選手権準決勝です。これまた試合時間残りわずか3分、ここで武蒼高校はドリブラーである桜庭を投入します。
この桜庭、テクニックはあるものの自分勝手なプレイをするジョーカー的存在でかなり良いキャラクターです。
ドリブルで敵陣を突破しようとするも、ディフェンダー4人に囲まれる桜庭、このままではボールをとられてしまう! そこをあえて敵の密集地に向かってドリブルで突っ込み、蹴りだしたボールを相手のディフェンダーの手に当ててハンドを誘いペナルティーキックを獲得します。
桜庭というキャラクターの狡猾さも現れた、いいハンドシーンです。
「BE BLUE」でのハンドシーンはこの2回でしたが、他にも桜庭関係でいいファールシーンがありました。
10巻 【桜庭の性格を見せるためのファール】
武蒼 対 赤城中央の試合、ドリブル中の桜庭を止めようと服を引っ張る藤原を桜庭は払いのけます。
すると払いのけた手が藤原の顔に当たりファールに。
「あっちが服を引っ張ったんだ!」と抗議する桜庭は、イラだってボールを地面に叩きつけます。
その行為にさらにイエローカードまで出されてしまう、桜庭が怒りっぽい性格であることを表現するファールシーン。
この漫画はなんといってもオレ様野郎の桜庭が面白いですね。
合計ハンド…2回
オフサイド
1987~1992年(週刊少年マガジン)
なんと主人公がゴールキーパー! サッカー版ドカベンと言っていい作品です。
Jリーグ創立前の高校サッカーをじっくりと見せてくれる青春サッカー漫画。
連載時期が「シュート!」とかぶっており、週刊少年マガジンでは同時期にサッカー漫画が2作品連載されていました。当時のサッカーブームの過熱ぶりがうかがえます。
「キーパーが主人公なら絶対どこかでハンドはあるだろ!」という邪な気持ちで読み進めたのですが、なんと……
ハンド0回
「うっかり手が出てしまった!」とか、そういうのがあると思ったのですが……
合計ハンド…0回
Jドリーム
1993~1999年(週刊少年マガジン)
こちらもオフサイドの作者、塀内夏子先生が描いた作品です。
主人公の「赤星鷹」は16歳という若さで三菱浦和レッドダイヤモンズに入団、高校には行かずにプロとしてサッカーをすることに。
この鷹がサッカー漫画には珍しいタイプで、普通サッカー漫画の主人公といえば「素直」「純粋」「ひたむき」が鉄板なのですが、鷹は破天荒で小生意気です。先輩とかにもため口でなれなれしい。
しかしサッカーの天才で誰も文句を言えず、鷹がチームをかき回しながらも勝利に進んでいく様は読んでいて痛快で面白い!
この作品には、この主人公ゆえに生まれた素晴らしいハンドシーンがあります
Jドリーム文庫版1巻 【PKに望みを託すためのハンド】
©電書バト/塀内夏子「Jドリーム」文庫版1巻より
浦和レッドダイヤモンズ 対 読売日本サッカークラブの試合にて、鷹がゴールを守るために手を使って相手のシュートを阻止します。審判には「ついうっかり出ちゃったんだ。ワザとじゃないよ」と弁解しますが、ペナルティエリア内だったので当然PKになります。
手を使ったことに対して怒るチームメイトに、鷹は「今のは絶対に間に合わなかったんだよ? ペナルティキックならゴールキーパーがとめてくれるかもしれないじゃないか!」と反論。
そして驚くべきなのは、この時のハンドが伏線となって後のストーリーでもまた生きてくることです。
Jドリーム文庫版3巻 【国際戦の厳しさを思い知るハンド】
©電書バト/塀内夏子「Jドリーム」文庫版3巻より
ワールドカップ1次予選日本 対 UAEの試合。鷹は17歳ですでに日本A代表のメンバーに抜擢されています。すごすぎ。
試合は0対0のまま後半へ、この試合に負けるとワールドカップ出場は絶望的という負けられない戦いでUAEのラフプレーが目立ち、鷹はいらだっています。
そんな隙を突かれ、UAEのカウンター攻撃を受けた日本は絶体絶命! 放たれたシュートを止めようと鷹が必死に飛び込みます。
しかし間に合わないと悟った鷹は手を伸ばしてこのシュートを阻止! そう、1巻で見たあのハンドだ!
しかし今回は故意のハンドが厳しくとられ、一発レッドカードが出されてしまいます。
「前やったときはペナルティキックだけだったのに……」の反論も受け入れられず(当たり前)、鷹は怒りながらフィールドを後にします。
鷹というプレイヤーの破天荒なスタイルがにじみ出る面白いハンドシーンでした。
合計ハンド…2回
12作品、約500冊読んだハンドの合計は……
この調査のため、短期間で500冊近くのサッカー漫画を読みました。
いくつもの青春が始まっては終わっていき、頭がおかしくなるかと思いました。
12作品に出てきたハンドは計16回!
意外と少なかったですね。
ハンドという強力な反則はゲームの展開を一転させるのにうってつけです。それゆえ、使い方を間違えると「今までなんだったんだ」ということにもなりかねないので、ストーリーに組み込むのは難しいのだと思います。
ハンドを軸に話を転がすこと自体がサッカー漫画の反則というか最後の手段なのかもしれません。
僕が今回取り上げたもの以外でも、「このサッカー漫画にもハンドがあるよ!」という情報をお持ちの方はぜひ教えてください。
僕のハンドデータベースが潤います。
それにしても、これだけサッカー漫画を読むと、やはりサッカーやりたいなあという気持ちになるものです。
しかしサッカーをやるには11人対11人と審判が3人も必要……更に体力と技術までも……これらを用意しないと誰も僕のハンドをとってくれません。部活をやってるときは、人がいるありがたみに気づいてなかったな……
以上です。
次回は、「野球漫画にデッドボールは何回出てくるの?」 でお会いしましょう!
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