午後。

 

上野公園に男たちはいた。

 

 

最近、『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』という映画を観まして。

 

今!? あれって、2015年の映画だよね。

なんか今になって観ちゃって。でも、とってもいい映画でした。

まぁ確かに面白かった。「アイアンマン」でハッピーの役をやってるジョン・ファブローが監督・主演でね。

 

 

シェフ 三ツ星フードトラック始めました

シェフ 三ツ星フードトラック始めました (吹替版)

あらすじ

ロサンゼルスの有名レストランで総料理長を務めるカールは、ある日オーナーとケンカして店を辞めてしまう。心配する元妻イネスの提案で、息子パーシーを連れて故郷のマイアミを訪れたカールは、そこで食べたキューバサンドイッチの美味しさに驚き、フードトラックでサンドイッチの移動販売をすることを思いつく。

 

 『ザスーラ』とか『アベンジャーズ』の監督もやってる人なんですよね。

めちゃくちゃ大作映画を当ててきた人だけど、この「シェフ」は一転、低予算映画なんだよね。

 

俺はこの映画、オモコロの話だなって思いました。

え? オモコロの話?フードトラックの話でしたよ。

主人公は一流レストランのシェフなんだよね。腕が良くて、わざわざ遠くから料理を食べに来る人がいるくらいの人気シェフで。

そうですね。

 

でも、自分の店を持ってるオーナーシェフじゃないわけ! 雇われシェフなのよ。

ダスティン・ホフマン演じるオーナーに雇われてる。ここの葛藤があるんですよねえ。

主人公はすごい革新的な料理で新しい道を開きたい、面白いことをやりたいと思ってるけど、オーナーは昔からのお客さんを大事にするべきだ、料理はいつもの定番でいいと思ってる。

そうそう。意見が食い違う。

だからお店に有名な食通ブロガーが来るって時に、革新的な面白いコース料理を出してびっくりさせてやろうって思うんだけど、オーナーからは「うちのメニューを変えるな!」と釘を刺されるんですよ。

ここはオーナーである俺の店なんだから、いつもの名物コース料理を変えずに出せと言われて、主人公は雇われだからそれを突っぱねられないんですよね。

 

ここなのよ! オモコロも最近はチームとして記事とか動画を作るスタイルが中心になってるけど……

 

みくのしんもそう。

おれも?(カメラマンとして撮影に同行してくれているみくのしんさん)

集団とかチームとか組織の中で色々やる時に、100%自分が心の底から面白いと思ってることをやってるか?っていうと、そうとも限らないという……

仕事とか社会人って、けっこうそういう部分はありますからね。

 

お笑い芸人、映画監督、作曲家、テレビのディレクターとかYouTuber、家を作る大工さんとか……まぁモノ作りに限らず仕事ってそうよね。みんな、自分の良さや面白さを信じて振り抜きたいと思ってる。でも結局は組織を維持し続けるために、自分じゃなくて世界に合わせたものを提供してしまう。「シェフ」はそんな板挟みの世界の中で、本当に自分が喜びを感じることは何なのかを再発見する映画なんですよ。

なるほど、そういう話だったのか。

で、結局主人公は自分が作りたくなかった料理を出すことで、食べに来たブロガーにボロクソに批判されるんですよね。これがあなたのやりたかったことなのか、この先ずっとこうやって生きていくんですか?って。

結構な辛辣コメントですよね。

 

それは完全に図星の批判でね、やっぱり自分がやりたくないことって周りにバレるんですよ。

バレるのかあ。

バレる。自分がやりたくないことで生きてたら、結局全て最終的にはバレる。バレざるを得ない。

なんか怖い。

まぁやりたくなさってパッと見で完全にバレるから、当たり前ではあるよね。

まぁわかるか。原宿さんもダルそうにしてる時、「ああ、やりたくないんだな」って一瞬でわかるもん。

 

でもバレる仕事を続けざるを得ない状況もあるし、それで仕方ないというか、グッとこらえて生きていかなきゃいけない部分もあるわけ。組織で働くって、自分を殺して役割に徹するっていうことなんですよ。特にやりたいことが見つからないから、集団でいた方が居心地いいって人もいるし。でもひとたび疑問を持っちゃった時は!? そうだ!「フードトラック」を出そう!

フードトラックを!?

色んな人が関わらないと運営できないレストランじゃなくて、自分だけで好きなことを出力できるフードトラックをやる。そこで自分がやりたかったことを思い切ってやってみようと。

フードトラック=小規模でも自分のエゴを出せる世界って感じですかね。

なるほど、じゃあそこからそのフードトラックの山あり谷ありを描く映画ってことですね。

いや、それは無い。全部まるっと上手くいく。

は?

フードトラック始める所からウイニングランが始まります。

そこからウイニングラン始まったら早くない??

 

これバカみたいに大成功するんだよね。ずーーーーっと客が来まくって「キューバサンドくれくれくれ!」みたいな感じで大行列になってね。

初回からホームランしか出ない野球。

そんなに上手くいくわけないだろ。

そう! 本当は上手くいくわけないんだけど、これはあえてよね、あえて物事の明るい面だけを見せてる。そんなに難しく考えなくていいじゃん!って。

いいのかなあ……。

いや、本当はリスクとかも考えなきゃダメなのよ? フードトラックって色々法律とか制約もあるし。それはそうなんだけど、でも、だからと言って人生の明るい面を捨てなくてもいいじゃんと思うのよね。

はあ。

 

現実って怖いし意味不明だから、明るいことを考えないと人って動けないよと。自分がやりたいことをやるためには、やっぱりどこかで明るく考えることが必要なのよね。意識して明るい面を見ないと。

前向きでないとね。

ジョン・ファブローっていう人も「アイアンマン」シリーズとか大作を撮ってたんだけど、なかなか大きい組織の論理とうまくいかず、それがイヤでこの「シェフ」を自主制作で作ったんですよ。

 

へー、それは知らなかった!

大作映画って自分の都合だけで作るわけにいかないから。これ、「シェフ」と状況が全く同じなんですよね。自分のやりたいこともできないのに映画を作る責任を負わされて、結局駄作だって叩かれたらたまんないっしょ!って。

監督の願いが込められた映画なんだ!

そう! かつ、「シェフ」はめちゃくちゃヒットしたのよ。

 

すごい! 自分の撮りたい映画を作ってウケたんですね!

フードトラックとおんなじことが、映画でも起きたんだ。

それがお見事&お見事。

大成功の男じゃん。

いい話だなーーーーーー。勇気づけられる。

でも本当にフードトラックビジネスをやる時は気をつけた方がいい。あれはフードトラックの中で調理すると見せかけて、拠点で下ごしらえするのが必要で……

(※この後、原宿がフードトラック起業の注意点について受け売りの知識を語っていましたが、本筋に関係ないので省略します)

 

あとは、何といっても「金玉コーンスターチ映画」でもある。

お、ついにその話が出たか。

え? 金玉って言った?

金玉にコーンスターチをふりかける。映画史に残る名シーン。

あれは衝撃だった。

 

フードトラックでアメリカの州を旅してキューバサンドを売るんだけど、季節が夏だってこともあって暑いんですよ!

湿気がすごいって台詞で言ってましたね。

主人公の舎弟みたいなやつが金玉が蒸れてしょうがないと、まぁ男って夏はそうなるじゃん? 

それはまぁ分かるけど、コーンスターチって?

 

だからパンツを開けてコーンスターチをね、金玉に振りかけるんですよ。

とうもろこしの粉末です。

そんなことしていいの!?

多分ダメでしょうね。

 

それをやるとベビーパウダーみたいに金玉がさらさらになって気持ちいい!と。そしたらシェフも「俺にも貸せ!」って金玉にコーンスターチかけて、「フウ!!」みたいな。

何をしてんだよ。

かぶれそう。

このシーン、まったく意味がないんですよ。

いや、でも2人ともこのシーンが印象に残っているということは必要だったんじゃない? 映画に関係なくてもやりたいことをやった結果なんじゃないですか?

 

あ、そういうことか! 確かに「常識を打ち破れ」みたいなメッセージだったのかも。

金玉コーンスターチにそんな意味が。

映画なんて別に何してもいいじゃんというメッセージ。「金玉コーンスターチ」っていうタイトルでもよかったのかもな。

それじゃあさすがにウケてないよ。

 

まぁあとあれね、一番大事なのはキューバサンドの美味そうさね。

キューバサンドってこの映画で初めて知りました! ローストポーク、ハム、チーズとかをパンに挟んで両面に油塗ってプレスして焼く食べ物なんですね。

美味そうなの?

めーーっちゃうまそう。

 

お腹空くよね。できあがったローストポークをみんながつまみ食いしちゃったりして。仕込みなのに無くなっちゃうよ!みたいな…

え?

 

噴水出た。

ってことで、今日は「シェフ」に出てきたキューバサンドを何個か食べよう!

前置きが長かったけど、そのために上野に集まったんだった。

 

 

 

次のページからやっと、キューバサンドを食べるぞ!