奇妙なチャットレディ業界
セブ山 先ほど、「本登録」って言ってましたが、チャットレディを始めるにはそういう登録が必要なんですか?
Aさん いえ、登録といっても、そのお姉さんの「箱」に登録するものなので、チャットレディは始めるための登録とは、またちょっと違います。
セブ山 そのお姉さんの「箱」に登録するものって何ですか? 箱って?
Aさん そもそもチャットレディって、ネットの配信サービスを使うわけなので、配信するためにはアカウント開設の手続きがあったり、Webカメラなどの設備を買いそろえないといけなかったり、とにかく、まあ面倒臭いんです。個人でやろうとすると。
セブ山 うんうん
Aさん そこの面倒臭いのを全部、お姉さんがやってくれる上に、そこに揃っている設備を自由に使えるので、初期費用なく始められるっていうのが「お姉さんの箱に登録する」ってことでして、要するに「箱」っていうのは「芸能プロダクションに所属する」みたいなものですね。
セブ山 はー、なるほど。そんな仕組みになってたんだ。
Aさん その代わり、配信で得た売り上げの1割はお姉さんが持っていくって取り決めになっています。
セブ山 1割なら良心的かもね。でも、それって「箱」に所属しちゃうと、月々のノルマが決まったり、この日とこの日は配信してねっていうシフトを組まれたりしちゃわないの?
Aさん そういうノルマとかシフトは一切ありません。その部屋(渋谷のマンションの一室)の鍵を渡されているので、自分の好きな時間に行って、自分の好きな時間だけ配信するって感じです。
セブ山 その部屋は一体、何なの? スタジオ?
Aさん いえ、そこはお姉さんの部屋です。お姉さんはそこに住んでます。
セブ山 どういうこと?? そのお姉さんは結局、何者なの??
Aさん そのお姉さんはチャットレディを本業にしていて、私たちを取りまとめてくれている箱のリーダーですね。
セブ山 チャットレディ1本で渋谷の高級マンションに住んでるんだ…! すげぇ…!
Aさん うちの箱は「稼ぐ箱」って言われてるんです。
セブ山 稼ぐ…箱…?
Aさん よその箱でトップを張れるような子たちが集まっている箱(チーム)なんです。
セブ山 なるほど、要するに人気キャバクラ店みたいなことだ。他にもそういうチーム…いわゆる「箱」はいっぱいあるの?
Aさん ありますよ。チャットレディの通(つう)は、女の子ひとりひとりではなく、箱で追っかけたりします。
セブ山 これがホントの「箱推し」か…!
Aさん でも、あくまで女の子は「自分のお部屋から配信してまーす!」っていうフリをする暗黙の了解があるので、誰と誰が同じ箱とかは一切、公表はされてないんです。
セブ山 え、じゃあ、どうやって同じ箱だって認識するの?
Aさん ずーっとチャットレディを見てたらわかってくるんです。部屋の背景の感じで「お、この子とこの子は同じ箱だな」って。
セブ山 この世にはまだまだ知らない世界があるんだなぁ…。ちなみに、同じ箱の子同士は仲いいの? そこはやっぱりライバルってことになるの?
Aさん 仲良しですよ。他の子の配信を見て「ナイスオナニー!」って褒め合ったりしています。
セブ山 そんな褒め方がこの世にあったとは…
Aさん 「この焦らし方いいね、私もマネしよう!」とか、お互い刺激しあって、良き仲間でもあり、良きライバルでもあるって感じです。
セブ山 なんか、さっきから聞いてると本当にアイドルグループみたいな感じですね、箱って。
Aさん そうかもしれません。チームプレーもあったりするので。
セブ山 チームプレー?
Aさん たとえば、A子さんが有料配信に移行するタイミングで、B子さんが無料配信をはじめるとするじゃないですか。そうすると、A子さんの有料配信にいかなかったお客さんたちが、ちょうど始まったB子さんの無料配信に流れるんですよ。
セブ山 なるほど、その人たちは、A子さんでは課金しなかったけど、B子さんでは課金するかもしれないので取りこぼしがないようにお客さんを回すってことかぁ。よく考えられてる。
こういう人はチャットレディに向いている
セブ山:
なんか想像していたより、風通しの良い職場なんですね。
Aさん:
でも、チャットレディって長く続ける人がほぼいないんですよね。
セブ山:
それは高齢になってくると需要がなくなり、儲からなくなってくるからってことですか?
Aさん:
いえ、そういう意味ではなく、(チャットレディって)何年も続けられる人と、1、2回やってすぐやめちゃう人のどちらかなんですよね。
セブ山:
へぇ、それはどうしてなんですか?
Aさん:
単純に、苦痛だからなんだと思います。
セブ山:
苦痛?
Aさん:
辞めていく子たちはやっぱり「つらい」って言ってやめていきます。
セブ山:
何がつらいんですか?
Aさん:
「知らない誰かに、ひとりエッチを見せるのがやっぱりつらい」って。
セブ山:
まあ、そうですよね…
Aさん:
そういう意味では、「ひとりエッチしている姿を見られても平気」という子は、チャットレディに向いていると思います。
セブ山:
なるほど…。
Aさん:
あとは、「画面越しに話ができる人」ですかね。
セブ山:
おしゃべり上手ってことですか?
Aさん:
いえ、ただ会話ができる人ではなく、「画面越しに」っていうのがポイントです。
セブ山:
ほう
Aさん:
たくさん流れて来るコメントの中で、本当にお客さんが求めているものだけを拾ってリアクションをできる人が強いと思います。
セブ山:
なるほど、ネット配信に大事な能力ってことですね。僕はイベントとかで司会をやらせてもらうことが多いんですが、やっぱりリアルなイベントとネット配信は全然違うと感じていたので、すごく附に落ちました。
Aさん:
あそこにディルドを突っ込んでいる時も、前から見せてという要望に応えるのか、後ろから見せてというコメントに従うのか、靴下は履いておいてという意見を拾うのか、いやいや靴下も脱いでという意見に乗っかるのか、つねにどっちの選択をすればより多くの視聴者が残るのかを考えながらひとりエッチをしています。
セブ山:
すごい…
課金されるためのテクニック
セブ山:
Aさんが、チャットレディ業界において「稼げる子」というのがよく理解できました。
Aさん:
そう評価していただけると嬉しいです。ありがとうございます。
セブ山:
せっかくなので、これからチャットレディを始める子たちのために課金されるためのテクニックなんかを教えていただきたいのですが。
Aさん:
あの…
セブ山:
どうしました?
Aさん:
私が言うのも変ですが「これからチャットレディを始める子たち」に向けて、そんな後押しするようなこと書いていいんですか?
セブ山:
ダメですかね?
Aさん:
こういうのって普通、「チャットレディの闇」みたいな感じで、チャットレディが悲惨なもののようにレッテル貼りして、女の子が性産業に進まないように啓蒙したりするんじゃないですか?
セブ山:
たしかに、そういった社会派な記事にした方が「考えさせられる」とかそれっぽいコメントをつけて説教臭いジジイが拡散してくれるんですが、僕はそういう社会的意義にはまったく興味がなく、むしろ、もっともっと可愛いチャットレディが増えればいいなと思っているので、その辺は全然大丈夫です。
Aさん:
そんなこと言って、セブ山さん、説教臭いジジイに説教されたりしませんか?
セブ山:
俺は俺の利益のためにしか記事は書かないって決めているからいいんです。社会のために書こうなんて思ったことは一度たりともない。
Aさん:
カッコイイのかカッコ悪いのか…
セブ山:
というわけで教えてください! チャットレディが課金されるためのテクニックを!
Aさん:
わかりました…といっても、そんな大したことは何もしていないんですよね。しいて言えば「プロフィール」ですかね。
セブ山:
プロフィール?
Aさん:
生配信する女の子は、自分のプロフィールを設定しておくんですが、そこに私は「Cカップです」って書いているんです。
セブ山:
ほう、Cカップ。
Aさん:
本当はDカップなのに。
セブ山:
ん? 本当はDカップなんですか? あえて小さく書いているってことですか?
Aさん:
そういうことです。
セブ山:
なんで? 普通、サバを読んで大きく書く方がいいんじゃないの?
Aさん:
グラビアアイドルとかだとその方がいいかもしれませんが、私たちは最終的に本当におっぱいを出すので、その時にCカップって書いていたのに実際はBカップだったら「なんだよ…(ちぇっ)」ってガッカリされちゃうんです。
セブ山:
ああ、なるほど!
Aさん:
でも、Cカップだと思っていたら実際はDカップだと「意外と大きいんだね!!!」というお得感をお客さんに味わってもらえるんですよ。
セブ山:
かぁー、なるほどね! 大事だわ、その予期せぬラッキー感!
Aさん:
あと、視聴者の男性は彼女らしいことを求めているので、そういう一面を出すようにしたらウケると思います。
セブ山:
どういうことですか?
Aさん:
生配信をしていて書き込まれることが多いコメントは「脱いで」とか「乳首見せて」とかなんですが、それと同じくらい多いのが「〇〇君(視聴者自身の名前)って呼んで!」「〇〇君(視聴者自身の名前)大好きって言って」というリクエストなんです。
セブ山:
キモイけど、なるほど!
Aさん:
だから、そういう疑似恋愛的なことを多く取り入れるといいかもしれません。
セブ山:
めちゃくちゃ勉強になる。
リスクの話~顔バレは怖くないの?~
セブ山:
チャットレディをしていて、何か怖い目に遭ったことはないんですか?
Aさん:
う~ん、それがないんですよね。たまたま私がツイてただけかもしれませんが、怖いおもいをしたことは一度もないんです。
セブ山:
そうなんですね。
Aさん:
でも、しいて言うなら…
セブ山:
しいて言うなら…?
Aさん:
ディルドの挿れすぎで、あそこがヒリヒリした時は怖かったです。
セブ山:
…こちらが想定していた答えとは違うベクトルの回答でした。
Aさん:
「今日、がんばりすぎた~とほほ~」と半泣きでお股に軟膏を塗りました。
セブ山:
あまり、ご無理なさらないよう…。いや、でも、「何か怖い目に遭ったことはない?」って聞いたのは、顔バレのリスクについて、どう考えているのかなと思いまして。
Aさん:
あ、そういうことですか。う~ん、それに関しては、知らないところではバレているかもしれないけど、実害はないからOKって感じですね。
セブ山:
顔バレして「言いふらされたくなかったら…」って脅されて、セックス奴隷になれと強要されたりは…?
Aさん:
エロ漫画の見すぎです。そういうのはないですね。
セブ山:
そういう話やウワサを聞いたりもない?
Aさん:
ないですね。
セブ山:
でも、そういう悪い奴らはいないにしても、もしも、友達や家族にバレたらどうしようって考えたりしませんか?
Aさん:
考えますけど、別にバレてもいいかなと思っています。
セブ山:
いいんですか!?
Aさん:
実際にバレたら「あーあ」とは思うけど、「まあ、いっか」で済むと思います。
セブ山:
そのあたりは、あまり深刻に考えたりはしていないんですね。
いつまでチャットレディを続けるのか問題
セブ山:
チャットレディはいつまで続けるつもりですか?
Aさん:
う~ん、いつまでだろう? 先輩で35歳のチャットレディの方がいるので、まあ、それくらいまでやれたらいいですけどねぇ。
セブ山:
最近の35歳は綺麗ですからね。
Aさん:
まあ、その方はお直してるんですけどね。
セブ山:
お直し…?
Aさん:
整形ですね。
セブ山:
なるほど。
Aさん:
あ、でも、「結婚するまで」って感じですかね。
セブ山:
結婚したらやめる?
Aさん:
やめます。
セブ山:
今、彼氏はいますか?
Aさん:
今はいないです。最近、4年付き合った彼氏と別れちゃいました。
セブ山:
ってことは、彼氏がいる時もチャットレディはやってたってことですよね。
Aさん:
あっ…、そう考えると、やめられないかも。彼氏に内緒でやってたし、旦那さんに内緒でやっちゃうかも。
セブ山:
人妻チャットレディ、楽しみにしています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
セブ山:
聞きたかったことは以上です。長々とお時間いただきまして、ありがとうございました。
Aさん:
いえいえ、こちらこそ楽しかったです。
セブ山 最後に、これだけは言っておきたいってことや伝えたいメッセージってありますか?
Aさん:
………何でもいいですか?
セブ山:
何でも大丈夫です。どうぞ。
Aさん:
あの…えっと……(*>_<*)
セブ山:
はい?
Aさん:
今度、あそこの毛を剃る「剃毛生配信」をしようと思っているので、セブ山さんもよかったらぜひ見てください(*^_^*)
セブ山:
ぜ………
セブ山:
ぜ、ぜ、ぜ………
セブ山:
絶対、見ます!!!!
後日、剃毛生配信でめちゃくちゃシコリました。
取材後記
というわけで、現役アダルトチャットレディのインタビューをお送りしました。
実際に会話をしてみた印象は「どこにでもいる元気な女子大生」「育ちのいい女の子」という感じでした。
取材前はチャットレディに対して、ネガティブなイメージを持っていましたが、「楽しみながらやっている」と明るく話す彼女を見ていると、なんだか自分の気持ちが少し変化しているのがわかりました。
さて、あなたはチャットレディという職業について、どう思われましたか?
「自分には無理だ」と思った方や、「私もやってみたい」と思った方。
「恋人がもしチャットレディをしていたら…」という彼氏目線や、「娘がチャットレディをしていたら…」という親目線で読んだ方。
いろんな視点からの感想があると思います。
もちろん、否定的な意見も……
何が正しいのかはわかりませんが、ただひとつだけ断言できるたしかなことは、僕は今日もチャットレディでシコるいうことだけです。
(ピロンッ♪)
おっと、お気に入りのチャットレディ嬢から、今から生配信するという通知メールが来たので、今日はこのへんで。
ごきげんよう。
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