おまけ取材:街中で爆破ができるロケ地
今回の福岡・金田駅での撮影は、「筑豊アクションプロジェクト」さんにご協力いただきました
筑豊アクションプロジェクトでは、地元企業の協力のもと、
電車を動かして追いかけたり、
駅前で爆破したりなど、街中でアクション撮影ができる環境を提供。
ロケ地として観光資源に繋げることを目指しているそうです。
こちらがプロジェクト主宰の映像作家、永芳健太さんです。
今回は茶番にご協力いただき、ありがとうございました
とんでもないです!楽しかったですよ
最初は「辞める記念に爆破したい」と思って、単に爆破撮影できる場所を探していたのですが…….お話しするうちに「電車を動かせる」とか「駅で銃撃戦ができる」とか教えてもらい、いろいろやりたくなっちゃって。あんなことやっていいんですね
はい。全然OKです
普段はどんな撮影が多いんですか?
CMやドラマ、バラエティ番組が多いですね。岡田さんのように個人からのご依頼もありますし、自治体のPR動画を撮ったりもしてます
今回びっくりしたのが、撮影場所でした。街のど真ん中の駅前でしたよね。爆破撮影って、誰もいない山の中とかでやってるイメージがありました
家々が背後に見える
そこがまさに我々の特徴であり、目的でもあるんです。そもそも日本って、規制が厳しくて、アクション撮影がしづらくて。それができる場所を、ここ筑豊で実現したいと思っています
記事にはしていないですが、
「駅の地下通路で、プロボクサーを銃撃する場面」など、他にもいろんなシーンを撮らせてもらいました。自分でお願いしておいてなんですが、なぜこんな意味不明な撮影ができるんですか?
プロボクサーはよくわからなかったですが、駅や電車については、地元の平成筑豊鉄道さんにご協力頂いているからですね
鉄道会社が!ていうか駅、営業中でしたよね
金田駅は実在する駅。この日も営業中でした
そうですね。電車の本数も都会ほどはないですから、邪魔にならない時間帯を選んではいます。ただこの駅を利用される方々にとっては、見慣れた光景かもしれません
すごい日常風景だ
ほかにも地元のイオンで爆破したり、
地元の病院で爆撃戦をしたりもしてるのですが、
これもすべて地元の方々のご協力あってこそです
爆破されるイオン、見てみたかった
もちろん撮影は警察や消防、行政の許可をとって、プロのスタッフが十分な安全対策をした上で行なっているのですが、やっぱり協力してくださる地域の皆さんがすごいですね
なぜ協力してくれるのか?→たくさんお願いしたから
でも、なんで地元の人たちはそこまで協力してくれるんでしょう?
企業の方も住民の方も、「この地域をどうにか盛り上げたい」と思ってらっしゃる方が多いからだと思います。岡田さんが「この地域はハンコで栄えていたが衰退した」という設定を作ってましたが、実際はかつて炭鉱で栄えたエリアでした
ハンコじゃなくて炭鉱だった
ただ炭鉱が次々と閉鎖になって、人口も流出していって……それで鉄道会社さんもそうですが、特に地元企業の方々は、集客に悩まれていました。そこでロケ地にするのは面白いアイデアだ、って乗ってくださって
とは言え、いきなり「街中で爆破したいんです」って言ったらビビりますよね。最初はどうやって実現したんですか?
それはですね……
たくさんお願いしました。
シンプルだ
筑豊アクションプロジェクトは2019年に始まったのですが、その2年前から企画書を作って、いろんな人と話をして回っていました。企業さんだけじゃなく、警察や消防もそうですし、地域の住民の方々もそう。どんな問題がありそうか、というのを一つつ一つ一緒にクリアしていって、それで徐々に賛同してくださる人が増えてきた、という感じですね
地道な活動が身を結んだんですね
岡田さんの撮影日にも、朝から近所の方々や近隣の学校へご挨拶に伺いましたし、イオンでの撮影の際は250軒のお家に伺いました。そういう地味なことを積み重ねていくことで、信頼関係を築くようにしています
モデルガンに火薬をつめる永芳さん
挨拶って大事だ。今回も、塀越しに下校中の中学生が見物してましたね
近くに学校があるんですよ
爆破音は意外とそこまでもなかったですが…….それでも東京の学校で聞こえたら、通報されそうな気がします
みなさんのご理解があるのがひとつ。それにプラスして、地域性もあるかなと思っていて。私自身がこの地域で生まれ育ったのですが、炭鉱の街だから、爆破による採掘がいまでも日常的に行われているんですよね。だから爆破に関しては、東京よりは抵抗が薄いと思います
炭鉱の街だから、爆破音に寛容なのか……!
地元の警察署主宰のイベントに呼んでもらって、爆破を撮影したこともあります
警察署のイベントにて
寛容を超えている
爆破は土台づくり
ただ、爆破はひとつのきっかけにすぎないんです。電車やカーチェイスもやってますが、ほかにもヘリコプターを低空飛行させたり、アクション映画を撮るためには、いろんなシーンが必要になるので
普通の映画よりも、アクション映画はロケ地としてのハードルが高いってことですね
はい。だからこそ、地方にチャンスがあると思っています
意地悪な質問ですが、日本の映画ならわかるんですが、例えばハリウッドのような海外の作品は、本当に日本で撮りたいと思ってるんでしょうか?
撮りたがってますよ!わざわざアメリカで、巨額を投じて日本風のセットをたくさん作ってますからね。最近でも某スパイ映画の大作含め、規制のために日本での撮影を諦めた作品がたくさんあると言われています。ハリウッドでは、「日本は規制が厳しくて、アクションのロケはできない」という噂もあるようで……
でも、規制したくなる気持ちもわかるかも。いきなり道路が通行止めになったら困るし、自分の住む街で派手な撮影が始まったら、少なからず不安になりますよね
おっしゃる通りです。規制の厳しさは、日本の治安の良さの裏返しですし。それにいまは内閣府がロケの誘致活動を先導しようという動きもありますから、変わりつつあるとは思います
レベルは全く違いますが、僕も今回の撮影で「爆破は何度も撮り直せない」というプレッシャーを知りました。絶対失敗しないための入念な準備が、撮影する方とロケ地の双方に必要なんでしょうね……
それがアクション撮影の難しいところです。だからこそ、まずはそこに住む方々との信頼関係なんですよね。
駅前の爆破撮影は、そのわかりやすい事例作りなんですね
はい。まずはアクションとしてわかりやすい場面を、より日常に近い場所で撮影できるようにする。爆破はあくまで土台作りですね
ロケランのセッティング風景
ちなみに映画のロケ地になったら、どれくらい儲かるんですか?
作品によっても変わりますが、数十億円*がその街に落ちる、という試算はあります。(※筆者注:なお映像産業振興機構の2023年の調査によると、直接効果で数十億円、総合効果で数百億円と試算されています)
そんなに!
大規模な撮影となると、数百人単位の撮影スタッフが長期で街に滞在します。彼らが食べたり泊まったりするだけで、まずかなりの経済効果があるんです
これまたレベルの全然違う話ですが、今回の撮影でも「シンプルなワンシーンを撮るだけで、こんなに色々考える必要があるんだ!」という驚きがありました。銃撃戦では銃を発火させるタイミングと、血糊を爆発させるタイミングを合わせなければいけなかったり、電車の撮影では、速度や揺れをうまく調整する必要があったり….
だからスタッフも大所帯になるんですよね
事前の打ち合わせも何度もやりましたよね。まさにチームで撮るんだなあと
撮影前の打ち合わせメール
あとは経済効果で言うと、撮影を見学できるようにしたり、公開後の聖地巡礼的なことだったり….。ただ重要なのは一過性で終わらせずに、業界に名前が知られてまた次の依頼が来る、という循環を生み出すことです
それに成功した都市はあるんですか?
たとえば『トランスフォーマー』などの撮影が行われているシカゴは有名な事例です。あとはブルガリアに、産業が停滞した地域全体をロケ地として活用している街があって、ハリウッドの大作やインド映画など、世界中からの誘致に成功しています
さっきの「炭鉱が閉鎖して…」という話となんか似てますね
筑豊には、観光客が楽しめるような施設を、新しく作るような余裕はなかなかない。だから乗り物や施設、道路など、既存のインフラをもっと使えないかなと思っています。街も田園風景も、温泉もあって、海外が撮りたい絵が詰まっていますし
今後が楽しみですね!
でも、映画はまだ先の話。まずは「ロケ地での撮影ってこういうことをやるんだ」というのを地域の方々に知っていただくのが大事です。地道に岡田さんのような撮影を、ひとつひとつ積み上げていきたいですね
今回の撮影が、そんな大きな構想へ繋がっているとは…….退職した甲斐がありました。めちゃくちゃ楽しかったし
楽しんでいただけたなら何よりです!
これからアクション映画を見る目が変わりそうな体験でした
個人向けの撮影体験なんかもやっているので、ご興味のある方はお問い合わせください!
日常風景の中で、アクション撮影ができる筑豊アクションプロジェクト。
みなさんも派手な退職をしたくなったら、筑豊へ訪れてみてはいかがでしょうか。
ロケラン打つのって気持ちいい〜
動画版はこちら