伝説のハンコを求め福岡へ
そして二週間後。僕は辞表と期待を胸に、福岡の博多駅に到着した。
友人にも、カメラマンとして同行してもらいました
同行させられました
筑豊地区の「金田駅」に金田神社があるので、これから電車で向かいたいと思います
神社に着いたら、派手に伝説のハンコを押してもらいましょう!
神社で派手なシーンが撮れるのかな
電車に揺られること2時間。目的地が近づいてくるにつれ、僕の心は高揚していた。
だがもう少し、というとろでトラブルが発生。金田駅の一つ手前の駅で、電車が急に動かなくなったのだ。
あと一駅なのに、電車が全然出発しない
地方の電車ってたまにあるよね
早く伝説のハンコをもらいたいのにな〜
…..
にしても動かなすぎ!乗り換えが必要なのかも。ちょっとあそこの人たちに訊いてみるか
僕は車内にいた他の乗客に話しかけた。
すいませ〜ん
怪しい風貌をしていたが、話しかけてしまった手前、引き下がるわけにもいかない。
電車が動かないんですが、何か知ってます?
この電車は、動きません
え、やっぱり乗り換えが必要なんですか?
イヤ….
お前がいるから、ウゴカナイ
???
そう言ってサングラスを外した彼らの瞳は、
まるでハンコを押したように赤く染まっていた。
ウ”ア”ア”ア”ア”アア”アア”アア”ア
?????????
これは!!!
僕は永芳氏から聞いた「ハンコの呪い」を思い出していた。
これは永芳さんが言ってたハンコの呪いだ!!!
ちょっと待って……
なんか始まった???
ハンコの呪いなんです!
なにのなに?
退職、ユルサナイ
電子化、ユルサナイ
なんか言ってるけど
僕が電子印を推進してしまったばかりに、ハンコの呪いに襲われてるんです!
全くついていけてないけど、DXで呪われることあるんだ
辞表にこのハンコを押シテヤル…….
やばい!呪いのハンコに、
「不承認」って書いてありますよ!
どういうこと?
この呪い、僕の辞表を不承認にする気です!きっと僕の退職を止めに来たんだ!
大企業みたいな呪いだな
こうなったら、やるしかない….
なにを?
こんなこともあろうかと、護身グッズを持ってきたんです
護身グッズ?
これです
!?!?!?
マシンガンじゃん
おいおいおい……
バババババババババババ
ババババババババババババババ
嘘だろ
グアアアアアアア
何が起こってるんだ
やった….
やりすぎだろ
『彼岸島』読んどいてよかった……
彼岸島にこんなシーンあったっけ?
全く理解が追いついてないので、ちょっとイチから説明してもらえますか
えっと、いま僕はピンチなんです。ハンコの呪いが、退職を妨害しにきた。だから撃退したわけです
説明されてもわからなかった
電車も発車しないし、どうしよう….
……でも、とりあえずこれでハンコの吸血鬼を撃退したってことだよね?
ハンコの呪いです
どっちでもいいよ
それに、まだ安心できません。ハンコの呪いは、他にいるかも
まさか他にも人を用意してるの?
用意ってなんですか?
いや、なんでもないです
どうしようかな…
あれ、なんか人の気配が……
ん?
うわあああ!!!!
え、この人って….
上司だ!!!!!!
ウァァ….アア
上司が呪われちゃった!!!!
わざわざ福岡まで!?
フショウニン….
上司も不承認のハンコ持ってる!!
上司は持ってそうだよね
ウァァ….アア
窓から入ってくんな!!!!!行儀悪いだろ!!
行儀の問題?
フショウニン…フショウニン…
「不承認」が鳴き声なんだ
まずいですね、こうなったら….
電車を出しましょう!
?
電車を出すってなに?
電車を出して逃げるんです
車を出すみたいに言うな
動かないな…..
動くわけない
あっ
動いた
動いた???
!?!?!?
なんで!?!?!?!?
なんで動くの!?
これで撒いたはず……
電車って「出せる」んだ……
あれ!?
まだ追いかけてきてる!!!
ウァァァ….フショウニン…ァァァ…
やばい!!
すごい上司だ
ハァハァ…フショウ…ニン…ハァハァ…ハァハァハァ…..
めちゃくちゃ息あがってるけど
やはり護身グッズが必要か……
ほっといたら力尽きそう
次の護身グッズはこれだ!
護身の範疇を超えてるんだって
ピッ
シュッ
ドガーーーーーーーン
上司が爆発した
グアアアアアアア
殺ったか……
上司を殺るな
あ!そうこうしてたら目的地に着いたみたいです!
展開がずっと急すぎる
金田駅だ〜!!
駅は実在したんだ。ここに金田神社があるんだね
早く向かいましょう!
チョットマッタ!!!
???
あれは!!
まさか…..
もう一人の上司だ〜〜!!!
退職ユルサナイ….
ご苦労様です
めちゃくちゃでかい不承認のハンコ持ってる!!!
辞表よりでかい
あ、これ『彼岸島』で丸太を持ってるキャラじゃない?
「師匠」ですね。師匠は手強いぞ!
師匠って味方じゃなかったっけ?
フショウニン…フショウニン…
にしてもハンコがでかすぎる。これはちょっと勝てないんじゃない?
でかいハンコに対抗するには……
でかい護身グッズだ
マジかよ
チュドーーーーーン
チュドーーーーーーーン
上司にロケラン撃ちやがった
グアアアアア
死んだ…..
あとで一緒にお礼言おう
じゃあ、金田神社に向かいましょう
ここが金田神社か〜
なんで神社が線路にあるんだ
あそこで伝説のハンコを押したら、退職完了です!
机の上にあるのが、伝説の承認印だな
保管が雑すぎる
では、辞表にハンコを押したいと思います!
自分で押すスタイルなんだね
いや〜ついにだな。緊張しますね……
そうですね
仕事では電子サービスを作ってたけど、こういうハンコにはやっぱり趣がある
まあそれはわかる。ハンコを押す行為自体が儀式的というか
まさに節目にぴったりだ。では、いよいよ押します….
ちょっと待った!!!
あ!この人は!!!
さっきロケランで爆撃した上司!
本当にご苦労様です
ご退職、おめでとうございます!
爆撃されて、呪いが解けたみたいですね
どういう仕組みなんだ
ちょうどよかった。辞表を叩きつけるので、ハンコを押してください!
もちろんです
では読み上げます
「この度、一身上の都合により、誠に勝手ながら、退職させていただきます。」
「何卒よろしくお願い申し上げます。」
「2025年1月、岡田悠。」
お世話になりました!
辞表を叩きつけます!!!
ダーンッッッ!
お疲れ様でした!
承認します!!!
!?!?!?
ドカーーーーーーーーーン
10年間ありがとうございました!
派手すぎる
※この記事はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません(退職したのは本当です!)
というわけで、辞表を無事に叩きつけられました
最後におまけとして、撮影にご協力いただいたロケ地へのインタビューを掲載します。電車を動かし、駅前で爆破できる理由とは…?