それは一通のLINEから始まった……
オモコロ編集長の原宿から突如送られてきたこのメッセージ。
正直言ってマラソンになんて全然興味が無いんだけど、
「フルマラソンを走る」っていう経験は人生で一度くらいしておいても良いのかなぁと思って、
あんまり深くは考えずに返信してしまったのであります。
そしてこれが後の地獄を産む事になる。
とは言え、東京マラソンって抽選めっちゃ厳しいんじゃなかったっけ。
「どうせ申し込んでも受からないだろ」とたかをくくって過ごす事数日……
おや…?これは…? pic.twitter.com/wvMXGU1l1n
— ヨッピー (@yoppymodel) 2015, 1月 26
何故か当選したんですけど。
おお……! マジで42.195キロ走るのか……!
「書類が届いたら連絡して」と編集長の原宿に言われていたのでさっそく確認のメールを入れる。
「そのまま来れば良い」と言われたので言葉通りそのまま行く事にする。
結局僕は届いた封書を開けることもせず、馬鹿正直にマラソン当日を迎えたのでした。
後で聞いたところ、東京マラソンの抽選に当たった人は、
本来であれば事前に決められた場所にゼッケンを受け取りに行かなきゃいけないらしい。
もちろんそんなルールをマラソン初心者の僕が知っているわけもない。
その事実にこの時気がついていれば……
東京マラソン当日
そんなわけで迎えた東京マラソン当日、2月22日(日)の朝。
小雨がパラつく空模様でしたが、スタート地点の東京都庁前にはランナー達が大集結。
何と言っても、36000人のランナーが東京を駆け抜ける一大イベントですからね。僕もほのかな緊張とともにスタートの時を待ちます。
スタート地点は凄い混雑ぶり。さっそく僕も行列に並ぼうとすると、編集長の原宿に止められました。
「あ、ヨッピーのスタート地点はこっちだから」
「これこれ。これも大事なやつだから忘れないでね」
「え?なに?どういう事?」
「まあまあ、とりあえずこれ持ってよ」
「はい、これね」
本日は東京マラソンを盛り上げるため、「勝手に東京マラソン 人は42.195キロ背負って42.195キロ走れるか」ということで、ヨッピーが重りを背負って東京を走ります!ご声援お願いします! pic.twitter.com/EiTWbeqQ4D
— オモコロ (@omocoro) 2015, 2月 21
こいつら頭おかしいんじゃねえか
その場でヒザから崩れ落ちる僕。
42.195キロを背負わされる
嫌がる僕を無視して、どっさりと並べられた42.195キロ。その内訳は……
2.5キロ分の鉄の重り…8個(20キロ)
体に着けるパワージャケット(6キロ)
腕に着けるアンクルリスト(3キロ)
足に着けるアンクルリスト(8キロ)
両手に持つダンベル(2キロ)
お米(2キロ)
大根(1キロ)
のしいか(110g)
酢漬けイカ(85g)
計…42.195キロ
最後の195gを、おつまみで調整すんな。
「ちょっと待って。こんなの全然聞いてない。今日は東京マラソンに出るんでしょ!?」
「え。今更何言ってんの? ちゃんと確認してくれる?」
「ほら、良く見て」
「東京のマラソン、とは言ったけど、東京マラソンとは一言も言ってないよね」
「なんだよそれ!東京のマラソンって聞いたら普通は東京マラソンだと思うじゃねーか!」
「それはそっちが勝手に早とちりしたんでしょ!嘘は言ってない」
「じゃあ重りの件はどう説明すんだよ。それは完全に聞いてない!」
「またまたぁ~!こっちも事前にちゃんと説明してるからさぁ~!」
「ほら。ちゃんと確認取ってるじゃん」
「42.195kmとは一言も言ってないよね。キロってkgの事だもん」
「そんなのアリか……!」
「じゃあ、家に届いた書類はなんなの?」
「あれはマジで当たった人に提出する書類だけ抜いて一式貰ったやつを転送しました」
「そこまでやるか」
嫌すぎるけど、一応装着してみる。
鉄の重り20キロ分は全てバックパックの中に入れ……
「重いよ届け」と書かれた、しょうもないハチマキを頭に巻かされ……
いざ立ち上が…!
れない。
これはヤバい。どう考えてもヤバい。無理すぎ。
「筋肉番付」で挑戦する企画じゃん。僕ただの無職のおっさんなんですけど。
「あの、これ普通に無理じゃない?」
「でも何か背負って東京マラソンに出場する人もいるみたいよ。ほら、あそこ」
なにあれ。
この方は東京マラソンの公式スポンサーでもあるカゴメの社員・鈴木さんで、今回「ウェアラブルトマト」という装置を背負って東京マラソンにチャレンジするらしい。そうすることで、トマトの疲労回復効果を広く世間にアピールしたいんだそうだ。なるほど。
※編集部注…運動をすると体内の活性酸素が過剰に増加して疲れの原因となるが、リコピンを摂取して抗酸化力の高い体を作ると、運動で疲れにくくなる効果があることがわかっています。
「僕、これから東京マラソンとは全く何の関係もなく、42.195キロ背負って42.195キロ走らなきゃいけないんですよ」と鈴木さんに言ったら、哀れみのこもった目で見られた後で、トマトをくれました。多分呆れられてると思う。
トマトの疲労回復効果が高かろうが低かろうが、こっちの企画には大して意味がないと思いますが、とりあえずいただいたトマトを食べて出発したいと思います。
※鈴木さんも出演する「ウェアラブルトマト」の動画。ただ走りながらトマトを食べるだけなのにめちゃくちゃ壮大です。
果てしない旅路へ
42.195キロを背負い、東京都庁→歌舞伎町→大久保→池袋→大塚→巣鴨→赤羽→三ノ輪→鶯谷→上野→浅草→錦糸町→東京ビッグサイトの約42キロを東京マラソンと同じ7時間以内に完走します!ヨッピーが普段お世話になってる夜の街を回ります。 pic.twitter.com/JJr4s1SXaU
— オモコロ (@omocoro) 2015, 2月 22
42.195kmは、地名の字面で何となくどういう場所かわかるこのコースで行くらしいです。正気なの? ほんとに行くの?
何mか歩いただけで、こうして背筋を休ませないといけないレベルの圧力が体にかかってきてるんですが、とりあえずこの企画の愚かさを証明するためにも行けるところまで行ってみたいと思う。
東京マラソンをひと目見ようと集まった観衆を横目に、しずしずとスタートする僕。当たり前だけど、誰も応援してくれねえ。
午前9時10分には本物の東京マラソンがスタート。
バックパックが重すぎて肩の血流が止まってる僕の横を、ランナー達が次々と走り抜けていく。
そしていつも思うんだけど、やってることの異常な大変さに比べてこの絵ヅラの地味さはなんなの?
写真からは伝わらないかもしれませんが、マジで一歩進むごとに体力がブラックホールに吸い込まれていく感覚があります。
歌舞伎町周辺までくると、青梅街道をたくさんのランナー達が通過していく壮観な光景が。
いいなー! 僕もこっちに出たかった!
ランナーとハイタッチしようと、沿道から手を差し出す僕。
イエーイ!!!
痛(つう)ッッッッ…………!!!!!
腕につけた重りのせいで、ハイタッチされただけで肩にダメージが…! もうほんとやだ。
ちなみにドラゴンボールの亀仙人のじっちゃんとこの修行で悟空が最初に背負った亀の甲羅が20kgだからな。
— ヨッピー (@yoppymodel) 2015, 2月 22
悟空とクリリンでも苦労したあの修行を、一般人にやらせてる時点でダメだと思う。
とりあえず開始20分くらいで、一番目の目的地である歌舞伎町には到着。この時点でまだ42.195kmの中の1.6kmしか進んでない。絶望とはこのこと。
本来の東京マラソンには時間制限があり、9時10分のスタートから7時間後の16時10分で終了となるらしい。
「東京マラソンとは一切関係がないこっちの企画でも7時間以内で42.195km完走を目指したいな~。まぁヨッピーならいけちゃうかな~?」
「殺すぞ」