オモコロ

※実際の明るさを再現しているため、ここから写真がかなり暗いです

これは、私が高校に入ったばかりの頃の話です。
ゴールデンウィーク前の中間テストが終わって、いざ休みに入る直前の大掃除があって。私は1階の工作室を掃除してたんですね。

もういい感じだな〜、5月の、休みに入る直前のソワソワした感じ！

床を掃いていたら、窓の外から「おーい」って声が聞こえて。

いや、やっぱちょっと怖いかも。暗いとこで聞くと。

振り返ってみたら、中庭越しの廊下の窓から身を乗り出して、こちらに手を振ってくる女の子がいたんです。

ｺﾞｸﾘ……

服装からして同じ1年生みたいで。その子が言うんです。「あなたがジュンちゃんでしょー！？」って。

高校入りたてだから、まだ知らない同級生がいるんだ。

「誰？」って思いながら、そうだよって返事すると、
「現社のテスト、何点だったー！？」って。

！？
素直に点数を答えたら、「そっかー、次は負けないからー！！」って言って、どっか行っちゃったんですよね。

テストの点数を聞きにきたの！？

そのとき偶然私の点数がよかったのを、共通の友人から又聞きして確認しに来たらしくて。
それで、その子といまだに仲良いです。

え！！！？？

高校一年生って15歳とかでしょ！？　テストの点数がきっかけで10年以上仲良いってこと！？

一緒にタイに旅行したし、このあいだポケモンスリープのフレンドコード送られてきました。

本当にめちゃくちゃいい話じゃん。

最高すぎる。社会の点数が良かったおかげで……

ﾌｯ

2週目ともなると、暗いね。

窓に暗幕貼っちゃいましたからね。蝋燭全部消えたらなにも見えなそう。

僕の番ですね。
3週間くらい前に、めっちゃいい日があったのでその話をします。

けっこう最近の話だ。

その日は10時くらいに起きて、朝食がてら野菜ジュース飲んでから日比谷に映画観に行ったんですよ。
日比谷ってあんま行ったことなかったんですけど、階段にクッションが敷いてあって、そこでビール飲めるスペースがあったりして。

あるね！　フードコートみたいになってるところだ。

そこでしばらく休んでから、衝動的に1,000円カットのお店に入って、髪切ってもらって。

いいね〜。

映画見てから予定なく散髪するの、面白いだろうな。

そのままいい気分で銀座まで散歩に出て、途中で見つけた煙草屋さんに入ったらジュースも売ってたんですよ。三ツ矢サイダー50円とかで。

安！！　銀座で？

三ツ矢サイダーは賞味期限が切れててその値段だったんですけど、それも含めて銀座っぽくなくて、なんかいいなって。

銀座の穴場を見つけたんだ。

そろそろ帰ろうかなと思ったら途中で偶然お祭りやってて。よさこいみたいな……踊ってる人がいて、出店があって、その時点でまだ17時とかそのへん。

夏の17時なんてまだ昼間だよ

お祭り見てから公園でシーソーして遊んだり、その辺に転がってたボールでサッカーして汗だくになって、ヘトヘトだからそのまま帰っても良かったんだけど……なんかスーパーに寄って。
んで、家に帰って、一回も座らずにカレー作りました。

映画→ビール→散髪→散歩→祭り→サッカー→カレーってこと？　夏休みの理想型じゃん。

しかも、カレーは玉ねぎ飴色にするところから始めて、カレールー使わずにカレー粉で。

手が込んでる！！

すでに完璧な1日だから、もう外食で済ませちゃっていいのに。俺だったらセブンに行く。

だから、おれ、ここでカレー作るんだ。って。誰かに言いたくて。

いい……。

そういう日って不思議と、頑張った感じもなくできちゃうんだよね。

翌朝起きてから「昨日なんか良かったな」って思うやつ。

そう、次の日の朝起きるとカレーがあるんですよ。それが嬉しすぎました。

間違いなく最高の1日だ……。

フッ

カレーで思い出したんだけど、肉屋に勤めてたとき、販売期限が切れた肉を持って帰っていいことがあったんだよね。

タダで貰えんの！？

そう、「お客さんに説明しなきゃいけないから味を覚えなさい」って。高くて売れない飛騨牛のサーロインとか、上級の黒豚とかをもらえることもあった。

いいな〜。

高い肉であえてカレーを作って、ワイン飲みながら昼やってるよくわからん番組を観て、「気持ちがいいな」……って。

「仕事の関係でタダでもらえるもの」って、異様に嬉しいですよね。

そうそう。他にもメーカーさんから試食用のサンプルもらって、鮮魚担当の人と持ち寄って試食会したり、食堂のおばちゃんに「あの商品美味しかったよ」って教えてあげたり。

いいなあ……

ぜんぜんなんてことない話なんだけど、あれすごくよかったかもなって思い出しました。今。

無料の肉がよくないはずがない。

フッ

いよいよ最後だ。

俺の番か……。

娘の話なんだけど……ある日2人で夕方くらいに歩いてたら、「パパ、いっぽんひらがなって知ってる？」って訊いてきて。

いっぽんひらがな？

知らない、なにそれ。流行ってるの？　って訊きかえしたら、「流行ってるとかじゃなくて、自分で考えた」って。

お子さんが発明した遊びなんだ。

見せてよって言ったら、「いっぽんひらがな、はじまります」って言って……

ｽｯ

ｽｭｰﾝ

ｸﾞｭｰﾝ

全身で、「あ」を書いたの。

全身を使ってひらがなを書くことを「いっぽんひらがな」って呼んでるんだ！

よすぎ……。

かわいい……。

衝撃を受けたのが、「小さい「つ」もできる」と。

小さい「つ」は難易度高くないか……！？

おお、どうやるの、見せてよって言ったら……こう、

手を顔に当てて、小さく「つ」を書いて「ひげのアザラシです」って言ったの。

ひげのアザラシ……！？

ひげのアザラシ↑

ひらがなはともかく、ここでアザラシを出すことに衝撃を受けて。
ちっちゃく書こうとして手をここに付けた瞬間「これはアザラシだ」って思ったんだろうね。

全部が良すぎる……

原宿さんはなんて返したんですか？

「それは番組になるぞ、ワンコーナーいける」って言った。

Eテレとかでね！

「いっぽんひらがな、はじまります」で始まるコーナー。

観たい……

いい話すぎる

じゃあ、最後の1本消しますよ。

最後の火が……

ﾌｯ

……。

……暗いね。

暗幕だけでこんなに真っ暗になるとは。

あのさ、八物語しながらずっと考えてたんだけどさ。

？

百物語は最後の蝋燭を吹き消すと、何かが起こるって言うじゃん。

よくないことが起こるから、全部消しちゃダメだって言いますよね。

本当にやっちゃいけないのは怖い話じゃなくて、「話をして、蝋燭を吹き消す」って行為自体だとしたら……？

…………。

…………。

…………明かり、付けましょうか。

そうだね、今スイッチつけるから待って。

パチッ

やったー！！！やった！！！やった！！！やった！！！やったー！！！やったー！！！やったー！！！やったー！！！やったー！！！やり！！！やり！！！やり！！！やり！！！やったー！！！やったー！！！やったー！！！やったー！！！やったーーーー！！！

ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。ごくり。。。