海外デビューの苦労その1「ダンスレッスン」
―何がそんなに大変だったんですか?
「まず、CM撮影にあたり、ダンスを覚えないといけなかったことです」
―今までダンスの経験はあったんですか?
「まったくありません。ダンスの経験がないどころか、ダンスの才能も一切ないので、僕に踊りを教えてくれた黒人ダンサーの女性は“これは大変な仕事、引き受けちゃったなぁ…”という顔をしていました」
―結局、本番ではちゃんと踊れたんですか?
「いや、もう、全然ダメでした。だから、急遽、カメラの向こう側でダンスの先生に一緒に踊ってもらって、僕はそれをお手本にしながら踊るという緊急措置がとられました」
―そもそも、なぜダンス経験のないセブ山さんが踊ることになったんですか?
「たぶんですが、向こうの方々は、僕のことを日本のエンターテイナーだと思っていたんでしょう。“コメディアンなんだからダンスぐらい踊れるだろう”と想定していたと思うのですが、僕はご存知の通り、ただのいちライターなので、このようなギャップが生まれたんだと思います」
―なるほど。怖いですね。
「なので、僕と同じようにバカなことをしていて、海外からオファーがあった場合、みなさんは、ちゃんと自分が何者なのか説明するようにしてください。その方が、あとでラクです」
―すごくニッチなアドバイスですね。
海外デビューの苦労その2「夏場にセーター」
―他にも苦労したことはありますか?
「あとは、季節が夏だったということですね」
―ロンドンの夏は涼しいって聞きますが、暑かったんですか?
「たしかに木陰に入ると涼しくて過ごしやすかったですが、僕はセーターを着て、しかも、ダンスを踊るわけですからね。めちゃくちゃ暑かったです。海外で熱中症で倒れるのも、保険とかどうなるのかよくわからなかったので怖いし、水をガブガブ飲みまくりました。じゃあ次の日、お腹を壊しました」
海外デビューの苦労その3「裸足で撮影」
―まだ、苦労したことがあるんですか!?
「まだ、あと2つあります」
―次の苦労話は何ですか?
「汚い道路で裸足で撮影しないといけなかったということです」
―どういうことですか?
「これは、もう完全に僕が悪いんですが、チキンマンというキャラクターは基本的にセーターしか身に着けてないんですね。だから、CM撮影中は、ずっと裸足でいないといけなくて、しかも、撮影場所は、人通りの少ない道を選んで撮影されたので、あんまりキレイな道じゃないんですよね。2回ほど、ちっちゃいガラスが足の裏に刺さって、もしかしたらロンドンで破傷風で死ぬんじゃないの?とドキドキしていました」
―まさか、ロンドンで靴のありがたみがわかるとは。
「なので、これから何か自分のオリジナルキャラクターを作ろうと考えている人は、ちゃんと靴を履いているキャラクター設定にしておいた方がいいと思います」
海外デビューの苦労その4「衣装合わせ」
―最後の苦労話は、衣装合わせということですが、これはどういうことですか?
「日本から飛行機で12時間かけてロンドンに到着してすぐに、向こうの広告代理店のオフィスに挨拶に行ったんですが、事前の説明では、その日はそのまま休めることになっていたんですよ。でも、“ちょっと衣装合わせに付き合ってよ”っと言われまして…」
―セーターは日本から持っていかなかったんですか?
「もちろん、持っていってましたよ。僕もおかしいなぁと思いながらも、ちょっとだけならいいか、と思いながら了承したんです。そのあと、フッと床に置いてあった段ボールを何気なく見たら、そこには大量のピンクのセーターがありました」
―え? どういうことですか?
「僕も意味がわかりませんでした。新しいセーターを支給してくれるのかな?と思って、ソファに座って待っていたら、衣装担当と名乗る女性2人がやってきて、そのセーターを僕に着せて、ハサミでジョキジョキ切り出したんですよ」
―何ですか、その展開は!?
「僕も状況がよくわからなかったのですが、どうやら、今回のCM撮影のために、特注のチキンマンスーツを作っているみたいなんですよね」
―え、ちょっと待ってください! チキンマンが面白いのは、セーターを無理矢理、逆さまに着ているからであって、身体にフィットする特注のスーツを作ったら意味なくないですか!?
「僕もそう思いましたよ。そう思って、抗議しようとしたら……」
「“長旅ご苦労さま! まあ、ビールでも飲んでよ! HAHAHAHA!”って無理矢理、ビールを飲まされて、もう全部どうでもよくなっちゃったんですよね…」
―えー! 大丈夫だったんですか!? 無事にCMは完成したんですか!?
「……見ますか?」
―見ます! 見たいです!
「そこまで言うなら……」