3週間後……

 

タトゥーもすっかり消えた3人が再集合。

この間にすっかり気温も寒くなり、袖も長くなりました。

 

ここからは、タトゥーを入れたことで3人の生活にどんな変化があったかを語っていきます。

 

まずは、各々どんな感じで発色したかを見せ合いましょうか。僕はこんな感じでした。

 

2~3日でかなり濃くなりました。で、1週間経ったころには既に薄くなってましたね。

薄くて青い状態から、ちゃんとタトゥーっぽくなるんですよね。私はこんな感じでした。

 

最高。

仮面も相まって、本当にヤバイ人みたいになってるな。

原宿さんはどうですか?

こんな感じよ。

 

 

あーあ。

情報量が多すぎて、タトゥーがまったく目に入ってこない。

 

 

 

……。

 

 

……。

 

 

★周りの反応は……?

お2人のタトゥーは服で隠れる場所でしたが、誰かに見せましたか?

まず入れたその日に、娘をお風呂に入れるときにガッツリ娘に見せましたね。

おお! なんて言われました?

なんというか……「ええ……?」って感じでした。

 

怖がるでもなく、喜ぶでもなく、ただちょっと引いてる反応だ。

そもそもまだ6歳なんで、タトゥーの意味がよく分かっていなかったかも。

知らなければ偏見も生まれようがない、と。

このあと10年くらい謎なんじゃないですか? 「あのときのアレ、なんだったんだろう」って。

 

僕は会社の上司、同僚、友達などなど、いろんな人に見せてみたんですが、ネガティブな反応が8割でした。

えー! ネガティブというと?

みんな大人なんで、あからさまに嫌な顔はしないんですが、「あー…」「へぇ…」みたいな。

「タトゥー入れちゃう感じなんだ……」っていうことですね。

そうです。で、2週間で消えるって説明すると、露骨に安心するんですよ。

”安心”なんだ。不思議ですよね、本当のタトゥーを入れてても別にいいはずなのに。

やはり「タトゥー=アングラ、アウトロー」のイメージが根強いことが証明された気がします。

 

私は基本秘密にしてましたね。同僚のARuFaさんに言ったぐらい。

反応はどうでした?

爆笑されました。

ちょっともう一回画像見せて。

 

面白い。

毎回このひと笑いが取れるなら、入れる価値もあるかもしれない。

 

 

★付ける位置の難しさ

ひとつ難しいなと思ったことがありまして。左右で違う高さに入れたんですけど……

 

目の錯覚で、手の長さが左右で違く見えるようになっちゃったんですよね。

本当だ! 右手が長く見える! テニスやってる人みたい。

本来一生消えないと思うと、こういうミスって致命的だろうなと思ってゾッとしましたね。

 

配置の話で言うと、私の場合は意識して見ないとタトゥーが視界に入ってこないんですよね。なので、基本的にはドクロが入っていたことを忘れてました。

わかる。見えない位置だと日常生活で意識しづらいよね。

お風呂で体洗ってるときにふとドクロを見つけて、「あれ? こんなところにドクロがある! あ、そういえば入れたな~」みたいな。最終的に、存在ごと忘れていって、気づいたら無くなってました。

自分から見える見えないって大事なんだな~。

 

 

★自分の意識は変わったか?

そういう意味では、特に意識の変化も無かったですか?

事前の予想としては、「私にはドクロのマークが入ってるんだぜ」って思いながら強気で街を闊歩できるかと思ってたんですが、弱い自分のままでしたね。

悲しい。

ただこれは見えない位置に入れたからで、首筋とか、周りから見える位置に入れてたらもっと緊張感が生まれてたんだろうなと思います。

加味條さんは周りからも見える場所でしたが、そのあたりはどうでした?

 

意識の変化は、無かったですね……。

えー、そうなんだ!

体力ゲージを目にするだけで元気になるみたいな自己暗示とか、タトゥー入れたったぜっていう解放感とか、自分の中では変化を期待していたんですが、意外と無かったです。その理由は、やはり痛みが無かったからかなと。

なるほど。見える見えないだけじゃなくて、痛い思いしながら、何回も施術に通う行程が必要なんですね。

あと消えないかどうかも大事なのかも。思ったより2週間って短いからね。

 

意識とはちょっと違うけど、筋トレしたくなるかも。筋肉が無いとタトゥーって似合わないというか……。

たしかに、ガリガリでも、ぷよぷよに太ってても微妙かも。

だとすれば、お腹にタトゥーを入れることで中年太りを防ぐことができるかもしれないですね。

タトゥーダイエット?

虎を入れて、「三段腹になると虎がかわいそうでしょ?」ってトレーナーに言われれば、運動する気になるかもしれない。

ライザップとタトゥーパーラーが提携すれば、ビジネスチャンスがあるかも。ライザップの人、見てたらぜひご検討ください。

 

 

★でも、お洒落として楽しい

意識変革は無かったですけど、「お洒落として楽しいな」っていうのはありました。読書中、家事中にもタトゥーが視界に入ってくるんですよ。

 

読書中の視点

皿洗い中の視点

タトゥーがふとしたときに見えると「お!いいな!」って気持ちがあって、ネイルする女の人の気持ちが少しわかった気がします。「期間限定の、自分が見て楽しいお洒落」というんでしょうか。

たしかに、以前にペディキュアをやってみたことあるんですけど、ふいに見えたときに爪に色が塗ってあると嬉しいんですよね。タトゥーシールも同じかも。

僕もネイルサロンで爪をツルツルにしてもらったことがあるんだけど、爪を見るたびに「あらいいわ」っていう気持ちがあったな。そう考えると、タトゥーも自分から見える位置に入れたかったな~。

意外とネイル経験者が部屋の2/3を占めていた

マジのタトゥーを全身にびっしり入れてる人って、そういう楽しさが行き過ぎてるのかもしれない。

身体がキャンパスに見えてくるって話は聞いたことあります。「ここまだ空いてるな」みたいな。

それぐらいたくさん入れる場合って、タトゥーパーラーのクーポンとか貰えるんですかね? 

50ポイントでドクロ1個サービスみたいな?

 

でも、マジタトゥー勢にとっても、タトゥーシールで位置のシミュレーションができるのはいいかもしれない。

たしかに! 僕も失敗しましたからね。雰囲気をシミュレートできて、気に入らなかったらやめられる。そのかわり、一番の醍醐味は味わえない。そう考えるとゲームの無料体験版みたいで良いですね。Inkbox、流行るかも。

そういえば、街で首元にタトゥーを入れている人を見かけて、それがInkboxのサイトで見たデザインだったことがありました。

え、そんなことあるんだ。

「あ、おなじおなじ!」って思って、思わずドクロ見せそうになりました。「私も、私も!」って妙な一体感を感じましたね。

思ったより浸透してるのかもな……。

 

 

★気を遣わせていることに気を遣う

そういえば、一回銭湯に行ったんですよ。ドクロ入れたまま。

おおっ!

サウナとかで、なぜか入る自分が緊張するんですよね。「タトゥー入れたやつが来たぞ」って思われてるんだろうなって思って。

いつも以上に周りの目が気になりますよね。

タトゥーって威圧効果をまとうために入れると思ってたんですよ。でも、実際は逆で、タトゥー入れることで遠慮しちゃうことに気付きました。

というと……?

 

タトゥーがあることで周囲の目線により自覚的になるというか、客観的に自分を見れるようになるんですね。そうすると「あ、今タトゥーがあることで相手に気を遣わせちゃってるかも」っていうことに気を遣っちゃうんですよ。

わかるかも。僕の場合、コンビニでレジに商品を置いただけで、店員さんにタトゥーが見えちゃってたんですよ。そしたら、店員さんの態度が心なしか、よそよそしいように感じて。

なるほど。

「もしかして店員さんに今プレッシャーを与えてしまっているんではないか?」って気が気じゃないんですよね。おつり間違えただけでブチ切れる客だと思われてないか心配になったり。

まさにそんな感じです。1回相手の目を経由した自分が頭の中に入ってきちゃうので、逆説的に傍若無人にはなれないんですよ。

ちなみに銭湯と言えば……

 

旅行先、ホテルの大浴場にあった注意書き。

たまたまタトゥー期間に旅行してたんですが、宿泊先の大浴場がタトゥーお断りで入れなかったことがありました。

それは自業自得。

わざわざ大浴場がある宿を探して予約したのに、部屋のユニットバスに入りました。

そういうときは、タトゥーOKかどうかをまとめたサイトがあって便利ですよ。Tattoo Friendlyでは浴場だけじゃなくプールとかジムの情報も見られますし、サウナポータルサイトのサウナイキタイでもタトゥー可否が載ってます。

へー! 懸垂できる公園一覧のサイトみたいでいいですね!

 

Tattoo Friendlyのトップページ。

意外とタトゥーの可否って、調べてもわからなくて困る場面があったんですよ。ホテルの公式サイトに書いてなかったり。

けっこう、こういう気付きってありますよね。一回マイノリティ側になってみると、それとなく行われてる疎外がわかる

ちょっと違うかもしれないですが、「車椅子に乗ることで、入れない建物に気付ける」とか。

 

 

まとめ

いろいろ考えてきたけど、やっぱり世間的にはまだグレーなのかもな。

入れたい理由にもよると思うんですよね。好きなもの、なりたい自分とか、動機が明確だと受け入れやすいのかもしれないです。

なるほど。その視点なら、何入れたいですか?

なんだろう。桃白白(タオパイパイ)が棒に乗って飛ぶ姿を背中に入れたい。

それは受け入れがたいかも。

それか、オモコロのロゴを編集部全員で手首に入れて、会うたびに見せあう。

秘密結社?

「最悪~」って思うけど、だんだん疑問を抱かなくなりそうで怖い。

 

Inkboxは手軽ですし、またやってみたいですね。

ゲートウェイドラッグ的な、「ここから始めて、だんだん物足りなくなってく」みたいなのはありそうだな。

消えちゃうとちょっと寂しいですもんね。思ったよりすぐ消えちゃいますし。

確実にやってみる前よりタトゥーに興味が湧いたのは確かです。本当に入れちゃうのもアリかもなぁ……なんて。

アリ……かもしれないですねぇ。

いやあ、まさかまさか。

 

 

~1年後~

 

 

 

 

-Ending 4: 雑コラEND-

 

<参考文献・Webサイト>

『刺青墨譜 なぜ刺青と生きるか』斎藤卓志(春風社)
『いれずみの文化誌』小野友道(河出書房新社)
『一滴の黒 Traveling Tribal Tattoo』大島托(ケンエレブックス)
『縄文時代にタトゥーはあったのか』ケロッピー前田(国書刊行会)
How Many People Have Tattoos In America?
https://authoritytattoo.com/how-many-americans-have-tattoos/