わんこ形式なら私のほかにプレイヤーがもう1人と、お椀におかわりを入れてくれる給士さんが1人必要だ。
そこで2人に声をかけさせていただいた。
プレイヤーとしてお声がけしたのは、よく一緒に甘いものを食べに行くモンゴルナイフさん。
給士役は、かまどさんにお願いした。パティシエの服を着てもらった。パティシエとして寄り添ってもらうことでプレイヤーの気持ちを高めるのが狙いだ。
かまどさんが完全にパティシエそのものの風貌になったので、モンブランクリームを絞ってもらうことにした。眼福だ。プロ(みたいな恰好の人)が絞ったモンブランを食べられるなんて嬉しい。
細い穴からクリームを絞り出すのにけっこう力がいるらしい。
ケーキ作りは力仕事が多いと聞いたことがある。絞り袋を握る先生のたくましい腕を見るとそれも納得だ。
おや……白子……? ポン酢かけていきたくなる見た目をしている。
どうやらペーストの練りが甘かったらしい。栗の粒が穴に詰まってスムーズに絞り出せないようだ。先生、すみません……!
チョロチョロとしか出ないモンブランクリームに渾身の力をこめる先生
ああ、でもいいですね、なんとかひねり出ていますね!
なるほど、たまに爪楊枝でツンツンすることで詰まりが解消されるのですね。押してダメなら引いてみようという!
脇をしめて精一杯モンブランを絞る先生
ああ! せ、先生っ!!
バズーカー砲のごとく飛び出すモンブラン
先生のまぶしい笑顔
モンブランバズーカーが発射されて不思議と「いいものを見たな」とお得な気持ちになった。先生、ありがとう。
モンブラン用の口金を使うのは難しいので、絞り袋に直接穴をあけて絞り出すことにした。モンゴルナイフさんも手伝ってくれてありがたい。
かなり地道な作業だったが、みんなが協力してくれたおかげでなんとか準備が終わった。
※この記事は緊急事態宣言以前に撮影したものです。
わんこモンブランの開催
ついに夢のようなわんこモンブランが始まった。
やったー! 食べるぞ!!
思いっきりオフィスだが関係ない。今ここは紛れもなくわんこモンブランの会場だ。
薬味も用意した。左上から時計周りに、カリカリ梅、粒あん、甘栗、ナッツとドライフルーツ、ごま塩、イチゴ。
酸味、香ばしさ、塩気、果汁などをモンブランの合間に挟むことで箸を加速させる計算だ。
それではいただきます!
「おいしい!」
ひと口目からかなりいい顔をしてくれるモンゴルナイフさん。うれしい。
お箸で食べるモンブラン、趣があって良い……!
が、お蕎麦のようにひと思いにずずっと飲みこむのは難しかった。つい口の中で栗の風味を味わってしまうのだ。
なるほど、だから世間ではモンブランをわんこそばスタイルで食べないのかもしれない。
それにしてもパティシエの存在がなんて心強いことか。
完全に無意識だったが、私たちが自分でおかわりのお椀に手を伸ばしてしまうので、給士係としてやることがなかったようだ。
でもパティシエが腕を組んでそこにいてくれるだけで私たちは励まされた。
たまにトッピング(たまごパン)を入れてもらった。
中盤になって薬味もフル活用である。個人的に一番お箸が加速したのはゴマ塩だった。
んん、あれ、おなかがいっぱいだな……
テーブルの上のお椀が半分に減ってきたところで、私は満腹になってしまった。
自分でも驚くほど早すぎるギブアップ、理由は明白だった。
準備の段階で味見に精を出しすぎたのだ。ボウルに残った生クリームを見逃せなかった自分の弱さが憎い。
急遽、私の代わりにヤスミノさんに着席してもらった。ここはオフィスなので普通に仕事中のはずだが、近くをうろうろしていた。甘いもののにおいを嗅ぎつけたのだろう。期待のピンチヒッターである。
その間もモンゴルナイフさんの箸は止まらない。お椀の山がどんどん高くなっていく。
ヤスミノさんも負けていない。あんこもお皿に盛り付けずに缶から直にいく豪快さ!
パティシエは生気を失いつつあった。みんなが積極的にセルフおかわりをしてしまうから。本当に謝りたい。みんなモンブランに夢中になりすぎた。
わんこモンブランを完食
完食が存在しないはずのわんこをすべて食べ尽くした。私たちの胃袋はわんこシステムを超越してしまったのだ。
一番食べてくれたのはモンゴルナイフさん、27杯。
私は味見で食べすぎてしまい9杯と情けない結果になってしまったが、とても満足だ。
おめでとうございます! とモンゴルナイフさんに声をかけようと近づいたら薬味をそのまま食べておられた。これこそがまぎれもない勝者の風格。
わんこスタイルで食べるモンブランはおいしくて楽しかった。
お蕎麦みたいなモンブランを出すお店でも是非わんこスタイルをやってほしい。
人には「お蕎麦みたいなモンブランを無限にすすりたい」という気持ちがどこかにあるから。
お店のかた、よろしくお願いします。