みなさん、パフェはお好きだろうか。

私は大好きだ。

 

 

パフェは自由自在だ。ジャンルを問わないところがいい。

和でも洋でもパフェでまとめると安定しておいしい。

 

 

甘いものと甘いものが積み重なった地層をスプーンでざくざくと掘り進める。

この時の興奮とときめきは、パフェならではの感覚ではないだろうか。

 

 

冒険心をくすぐる食べ物、それがパフェだ。

 

 

そんな魅力いっぱいのパフェだが、詰まっているのはワクワクだけではない。

時にパフェはつらく悲しい気持ちにもさせてくる。

グラスの底にスプーンが行きついた時、誰もが感じるはずだ。

 

パフェの食べ終わりを、どうしようもない絶望感を。

 

物事には終わりがある。パフェも同じだ。食べ終わる瞬間は必ず訪れる。

 

 

それにしたってつらい。楽しい掘削はあっという間だ。もっともっとパフェを掘っていたいのに。

おかわりしたい。1杯と言わず2杯目を。

でも、パフェをおかわりするのは恥ずかしい。

 

いっそスプーンが届かないぐらい長いグラスだったら。

だめだ、それも恥ずかしい。そびえ立つパフェに中腰で挑むことになってしまう。

 

 

パフェを食べる度に、もっと食べたい衝動と乙女の恥じらいで感情がめちゃくちゃになる。

この葛藤から解放されたい。

私はパフェが大好きだが、いつもそんな思いを持っている。

 

 

 

 

 ある日、おいしいパフェをテイクアウトした

 

編集部のオフィスの一角にちゃぶ台を置かせてもらった。今日はここでパフェを食べたい。

 

 

なぜこのようなスペースを設けたかというと、私がこの世で一番おいしいと思うASAKO IWAYANAGIのテイクアウト用のパフェを買ったからだ。 

簡素なプラスチック製の容器だが、中身は一級品である。 

 

 

パフェを食べるお相手にオモコロ編集部のヤスミノさんに声をかけた。

この機会にパフェをテーマにした対談をやってみたいと思う。ヤスミノさんは何事も真剣に喋ってくれるので、パフェについてどう思っているか色々聞いてみよう。

あとヤスミノさんは想像の1.5倍ぐらい体が大きくて、すごく窮屈そうだったし、固定カメラからずっと顔面がフレームアウトしていたので謝りたい。

 

 

さっそく向かい合ってパフェに手をつけた。

「これ、うまいっすね」

ヤスミノさんは自宅でホイップした生クリームをボウルごといく日があるらしい。頼もしい甘党だ。

そんな人に持ってきたパフェを褒めてもらえると自分のことのように嬉しい。

 

 

「この緑色の抹茶クリームが濃厚ですね」

 

うんうん、と頷くヤスミノさん。

緑色のやつは抹茶じゃなくてピスタチオクリームだ。

 

 

 

今日はせっかくなのでパフェの写真をプリントアウトして持ってきた。

おいしいパフェを食べながら「こういうパフェっていいよね~」と夢心地で語らいたいと思ったのだ。 

 

 

様々なパフェを見ながらあれこれ言い合ってみよう。 

 

 

「パフェグラスに高さがあると嬉しくなっちゃいませんか?」

私が尋ねると、ヤスミノさんは首を傾げた。

大きなパフェを見ると「大きいな」と思うだけとのことだ。山を見た時と同じ感想だ。

同じ甘党といえどもパフェについて思うことはそれぞれ違う。

 

 

「パフェにバナナは必要ないと思います。 

口の中がモサつくというか、バナナって存在が目立つじゃないですか。

ぼくは「パフェ」を食べたいのにバナナがすごく支配的なんですよ」

 

ヤスミノさんは昔バナナと揉めたことでもあるのかもしれない。無情なほどにバナナをばっさりと切り捨てた。

私としてはバナナの存在感に割と好感を持っている。バナナが入ることでパフェの輪郭がはっきりする気がする。

ただヤスミノさんの意見も分かる。バナナは強い。支配的、そういうとらえ方もあるのだな。

 

 

「これは食べてみたいですね」

ヤスミノさんが興味を示したのは、モンブラン系のパフェだ。クリーム派のヤスミノさんは、どうやらケーキテイストが好みらしい。

これもすごく分かる。ケーキの重みとパフェのライブ感を同時に味わえるのはとてもありがたい。

 

 

そうこうしているうちに、私のパフェが空っぽになってしまった。

始まってしまった。あれだ、絶望タイムだ。

もっと食べたい。2杯目をおかわりしたい。

いや、だめだ。

「自分で持ってきたお土産なのに、おかわりするんですか?」ってヤスミノさんから指摘されて、私もバナナのように切り捨てられるに違いない。こわい。でも食べたい。

 

いつもならここで絶望して胸をかきむしっている。

だけど今回は違う。私はこの葛藤から解放されるために準備をしてきていたのだ。

 

 

ちょうどヤスミノさんが抹茶パフェの写真に目を奪われている。

「天かすですか?」

パフェに入った小粒のあられを天かすと言っている。天かすではない。

 

私は動いた。

……今がチャンス!!

 

 

 

 

 

ふーーーーーーっ 

 

 

 

にょきにょきにょき

 

 

 

私はパフェを生やした。

テーブルの脚の中に新たなパフェを仕込んでいたのだ。こうすることで、相手にバレることなくパフェをおかわりできる。

 

 

 

私がパフェを生やしたその時、ヤスミノさんの時間が完全に停止していた。 

 

 

(あれ、かとみさんのパフェ、さっきから全然減ってないな?)とか思っていたのだろうか。

それとも全てを見ていたのだろうか。彼の目が何をとらえたのか私には分からない。

ただはっきりとこれだけは言える。私はゾクゾクしていた。

 

 

中身がたっぷりと入った私のパフェをただじっと見つめていた。なぜそんな悲しそうな目なの。

 

 

恥ずかしい思いをすることなくパフェをおかわりできたおかげで、精神が強くなった気がする。

勇敢にスプーンをふるった。すぐに2個目も食べ終えそうだ。この勢いは誰にも止められない。

 

私はパフェをもりもり食べながら、ヤスミノさんに畳みかけた。

 

「ヤスミノさん、写真の最後のページにパフェの豆知識をメモしたので、それを読んで締めましょうか」

 

 

「ほんとだ、何か書いてある。……パフェの起源とは……?」

 

 

 

よし、文字に気を取られてる!

今だ!!!

 

 

 

穴から3個目のパフェを取り出して 

 

 

 

 

テーブルの穴をふさぐ白い厚紙を敷き

 

 

すっとした顔で3個目のパフェを手にした。またパフェをおかわりできてしまった。ああ、なんていい日なんだ。 

 

 

ヤスミノさん、今日はよくその顔するね。なんかつらいの? 大丈夫?

 

 

澄んだ、冬の湖のような瞳だった。

バレていようがバレてなかろうが、もう関係なかった。

私はパフェを無限におかわりできて、とても気持ちよくなっていたからだ。

 

 

 

こうして私は恥ずかしい思いをせずに欲望のままにパフェを食べることができた。

みなさんもパフェを食べる際は、是非この仕掛けをやってみてほしい。ゾクゾクできます。

 

 

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