どうもこんにちは、オモコロ編集部です。
日々様々な表現を模索しながら記事を制作しているオモコロですが、そんなオモコロに対して言われる一つの言葉があります。
大変恐縮なのですが、記事を見た方から「なんか現代アートみたいですね」と言われる事があるんです。
もちろん我々はそのような気持ちで記事を作っているわけではありません。
しかし言われたのならばやってみたい…
一度だけでも芸術作品として評価されたい……
というわけで……
アート作品を作ってみたいと思います!!!!
挑戦するのはこの5人。
記事内でテーマを与えられて何かを作ることはありますが、今回は自由なテーマで自らの考えをそれぞれの表現手法で作品として形にしてもらいます。
しかしアートの見方に関する知識のないオモコロ編集部では、それぞれの作品に対するコメントができないので…
画家・美術作家として活躍するプロの方をお呼びしました。
三杉レンジ
多摩美術大学絵画科油画専攻卒業、Bゼミスクール修了グラフィックデザイナー、広告ディレクターなどを経た後、中学高校の美術教師として15年間勤務。2009年より西洋美術史を軸とした世界標準の美術教育の場を目指して 絵画教室ルカノーズ 設立。都内各所で「美術史7万年を1日で学ぶ講座」など講義多数。また芸能人への絵画指導、テレビ・ドラマ等の絵画制作多数。
美術教師としても勤務した経験もあり、現在は自らの表現活動の他にも絵画教室の先生も務めるレンジさんは
His.1 (from Lascaux)
1枚の紙(折り紙)で西洋美術史における作品の形を抽出。
美術の「進化のグラデーション」(S字)を可視化する試み。
このような作品や
Beyblade Painting(初号機)
日本のおもちゃを絵画材料に。
こどもたちとと一緒に描くことでコミュニケーションツールでもある絵画。
ベイブレードを使って制作した作品など、常識にとらわれない表現活動をしています。
それでは『オモコロ芸術展覧会』開催です。
一人目:加藤の作品
まず最初の作品は、独特な感性で意味不明な言動を繰り返し社内では「何を考えているのかわからない」「あいつの言っている事は話半分で聞け」などと言われている加藤です。
そんなオモコロきっての狂人は、いったいどんな作品を作り上げるのでしょうか?
これが僕が作った作品です
いきなり訳が分からない作品が出てきた
作品名、なんて読むの?
トラットリア蝱喰坊(あぶじきぼう)です
?
作品について説明をさせてもらいます。アートってなんでしょうか? ぼくにはまったくわかりません。その「アートってわけわからんな」という気持ちを形にしてみました
青い粘土に爪楊枝が刺さっているだけ…
僕は「アートってこういうものだと思うけどまったく違うと思う」と思いながら作ったものが、果たして「作品性」というものを持つのだろうか? と考えました
作品の中に「ぬれし」という言葉とともに、醤油皿と筆を置いています。普通であれば、横暴な口調の指示があり、まったく意味がなさそうな行為であれば、誰も塗らないでしょう。ですが、「これはアートなのかな?」という前提条件があれば、「これを塗ったら作者がどういう意図で作ったのかを体感できるかも」というバイアスがかかり、塗る人が出てくるかもしれません
たしかに塗ってみたくなっちゃうかも!で、塗ったらどうなるの?
まったく何も考えていません。これを作品とも思っていないので、そもそもぼくは作者足り得るのかもわかりません。それでもし塗った人が何かを感じ取ったら、それはアートになるのでしょうか?
アートに対する問題提起だ…
作品名の「トラットリア蝱喰坊」にはどんな意味が?
トラットリア蝱喰坊(あぶじきぼう)、アブだけを食べる破戒僧が開いたイタリアンレストランです。意味は………ありません
意味のない事を熱く語らないでくれ
先生、僕の作品はどうですか?
なるほど…。少しインターネットなどで勉強しました?
いえ、まったくです。僕はロボットアニメとポメラニアンのトリミングにしか興味がないので
全く何も考えてない…といいつつも、醤油、爪楊枝、水引(のしぶくろの紐)、和紙、など、和の素材に統一しつつ、鑑賞者も作品に参加する事で成立する先端の現代アートのようなところも取り入れてて、逆に戦略的にも思えます
本当は現代アートについて調べたんじゃないですか?加藤さん!!
いえ、僕はロボットアニメとポメラニアンのトリミングの事だけを考えてこの歳まで生きてきたので…
それもすごい。先生、これは現代アートと言えるんでしょうか?
まず、「アート」と「現代アート」という言葉のちがいを説明すると「アート」という言葉はかなり広い意味で使われていて、子供の絵だって制作者がアートと言えばアートだと思います。しかし「現代アート」となると<新しい見方、考え方など、美術史上に新たな一歩を踏み出す意図>があるかどうかが重要になってきます
つまりこの作品は?
アートと言えばアートと言ってよいと思いますが、このままだと変人の作った変なモノ、いや、自称発明家おじさんみたいなノリで現代アートとしては…
でも現代アートって変人が作った変なものですよね?
純粋な目で失礼なことを言うな
謝るなら今のうちだぞ
今のは聞かなかったことにしましょう。現代アート作品が「わからないもの」と言われるのは、今まで美術史上になかった新しい提案になるので、大衆からしたら違和感があるのは当然です。印象派だって当初は現代アートでした。(「印象しか描かれてないじゃん」と批判されて命名された名前)
先生優しい!
でも、この作品も十分に新しいと思いませんか? 蝱喰坊派(あぶじきぼうは)として美術史に名を刻むはずです!
その根拠のない自信はどこからくるんだ…
「新しい」と言いましたが、新しいだけじゃだめなんです。例えて言うと、美術史は連載継続中のマンガのようなもので、現代アートは最新号のジャンプのようなものです。
世界中の何百万人という現代アーティストたちが最新号を描いていて、美術史という単行本に掲載される一握りのワクのために命がけで勝負しているという感じです。
なので前号を読んでない人が、脈絡なしに新しいマンガを描いても、トンチンカンになるのと同様、新しいだけだと変な人がただ描いただけの作品になってしまいます
わかりやすい例えだ
だからこそ、何を表現したくて作ったのかという背景がとても大事なんです。しっかりと美術の歴史を調べたり自分の目で見たり体験しなければ、その作品には説得力が生まれません。
自分が生まれた場所、自分の仕事。どんな生活をしていてどんな問題を抱えているのかなど、加藤さんはまずしっかり自分と向き合ってください。作品作りはまず自己との対話から始まると僕は思っています
だそうですよ加藤さん!!
加藤さ……
……はい
泣いちゃった?
加藤さんのカウンセリング?
別に悪いことじゃないですし、最初はそういう部分からアートの世界に入ってもいいです。でも、いろいろなことを学んで、自分がなぜそれを作るのかを深く考えられるようになってくださいね
安易な考えで現代アートを制作した加藤。先生の言葉によって自分自身を見つめ直すいい機会になったのかもしれません。
二人目:マンスーンの作品
次は工作系の記事を得意とするマンスーン。よく自分の部屋に閉じこもって機械をいじっていたので母親から「この子は将来”爆弾魔”になるのでは」と恐れられていたらしいです。
そんなマンスーンが作った理系ならではの作品がこちらです。
これが僕の作品「幽霊のいるところ」です
ちょっと!!!マジのやつ!?これってオモシロ抜きのマジのやつですよね!?
オモシロ過敏症だ。でも今回はそういう場。謎の物体が動いてるけどいったい何が起こってるんだ
説明しましょう。まず上部にカオス理論に基づいて動作するアームが設置されていています
そのアームの先にはマウスの基板が取り付けられていて…
下に設置されているのはディスプレイでドローイングソフトが起動しています。カオス理論の動きとレーザーマウスの不安定な物理的挙動によってディスプレイ上で動くマウスが自動的に絵を描くという作品です
やっぱマジのやつじゃんって!!!!
僕は絵を描きたいけど絵が下手すぎるという悩みがあって、ならば僕の代わりに僕が好きな機械に描いてもらおうと考えました。でも機械も人が作り出したものです。だから人の意識が及ばない完全な機械の絵を目指しました。そしてガワを剥がれたマウスの基盤が光るディスプレイの上を動く様を見て、まるで機械の亡霊がさまよっているかのように思えたのでこのタイトルをつけました
それでいったいどんな絵が描かれるの?
自動的に描かれた絵1
自動的に描かれた絵2
このように、人間には描くことの出来ない機械の味のようなものが垣間見える絵が生まれます
あ、でもアリかも……マジ過ぎて若干バカにしてたんですが撤回します。
全部正直に言わないでくれ。 先生、僕の作品はどうでしょうか?
非常に良いと思います。ディスプレイの使い方や見せ方もおしゃれですし、どこまでが人の意思でどこからが機械の意思なのか曖昧な部分もいいですね
やったー!
シュルレアリスムという芸術活動にオートマティスムというものがあって、要は偶然性によって人の意識下にあるものを作り上げるという手法なんですが、その展開のように思えました
こういう事やっている人は昔からいるということですか?
はい。ラジコンで絵を書いたり、最近だとルンバにペンキのローラーを付けて描かせるという事をやっている作品もあります。今のままだとストレートすぎるので、そういう先駆者達との違いをどう見せるのかというのが今後の課題ですね
たしかに、マウスの動きばかりに気を取られていてそれ以上の事を考えてなかったです…
例えばこの作品の後ろに為替市場のグラフがリアルタイムで動いていて、この作品と連動させたらどうですか?
素晴らしい!!まさしくそういうバックグラウンドにあるストーリー性や社会との関わりというのもアートの大事な要素です
勉強になります
動きのある作品で先生からもなかなか高評価なマンスーンでしたが、動きや見た目だけに囚われて作品の持つ意味については今ひとつでした。
三人目:長島の作品
続いては、ダンディな見た目にも関わらず「BIG KANSYA!(感謝しているという意味)」「嬉しっぴ」など独特な言語センスを持ち、更には芸術大学で音楽を専攻していて、ピアノが弾けるという芸術的センスも持っている長島。
そんな意外な事だらけの長島の作った作品がこちら。
あちゃちゃちゃちゃ〜〜〜〜〜〜〜!!!
やっちゃった
完全に”””やった”””
真っ白なキャンバスに「カラフルな世界」というタイトル…
お疲れ様でした
まず説明を聞けって!
ぼくは色弱なので、色がはっきり識別できる人がどのように世界が見えてるのかわかりません。
ただ、色弱のぼくでもこの世界がめちゃくちゃカラフルなことはわかります。街並み、ファッション、食べ物に至るまで、いろいろな色が存在しています。
そんな、色に溢れたこの世界だったら、白だけでも美しい作品が作れるのではと思いました。なぜなら、周りのほとんどが白じゃないからです。
なので、今回は白だけで作品を作ってみようと思いました
そこで、意識的に白を注目してみると、白にもいろいろな白があるとわかりました。道路とかを見るとわかりやすいのですが、「とまれ」の標識でも、経った年数によって、交通量によって、白の色味が違います。
また、絵の具を買いに行ってわかったのですが、白にも、ふつうの白だけでなく、ミキシングホワイト、チタニウムホワイト、水彩の白、油絵の白など、白といってもいろいろあるんです
今回は、12種の白の絵の具(アクリル、ポスタカラー、水性アキルド樹脂、油絵の具、布絵の具、水彩絵の具、またそれらをミックスしたもの、水やペンチングオイルなどの組み合わせ)で様々な白を彩りました。
それをその日の気分によって、少しづつ「塗り」ではなく、丁寧に「タッチ」していくように様々な白を重ね合わせて作り上げたのがこの「カラフルな世界」です
す…すごい……
ここまで練られていたとは…
てっきりここに七色のウ○チを塗りたくるパフォーマンスを始めるのかと思ってました
いや〜、まず率直な感想ですが、正直言ってかなりグッときました
本当ですか!!嬉しい!!
でもこういうのって“やりがち”というか、正直誰にでも出来ると思ってしまうんですが…
もちろん白だけで描く画家というのは多いです。でも長島さんのように様々な白の素材の違いをコンセプトにした作品はあまり見たことがないです。すごく目の付け所がいいですね
白いだけなのに!?
それに作品のプレゼンがとても上手でした。
プレゼンも大事なんですね
もちろんです。アート業界では作品の言語化は前提として必要不可欠なものです。
作品の説明にコツみたいなものってあるんですか?
“言い過ぎない事”ですね。語らなすぎてもその作品のバックボーンが見えてこないですし、全部語りすぎると逆にすぐ消費されてしまいます。だから余白をどう残すのかをアーティスト達は試行錯誤しているんです
この作品、よく見ると虫がついているんですが、さすがにこれはマイナスな部分ですよね
虫さんも僕のカラフルな世界に見惚れちゃったのかな?
作品を褒められておかしくなった
いいと思います。この作品が機械的で無機質なものではなく、きちんと人の手によって作られたことがわかりますから
嬉しっぴいいいいいいいい!!!
これはやらかしたとみんなに思われていた作品ですが、先生からの評価は非常に高かった長島。本人曰く「この作品を20億円で売る」と豪語していました。
ただアート作品って、ものすごくいい作品が1つだけあっても価値は上がりません。いくつも作品を作り続けていくうちに多面的な評価として価値が付与されるんです。あと見せ方についてはもう少し工夫したほうがいいと思います
悲しっぴ…
次ページは原宿とARuFaです。
いったいどんな作品が出てくるのでしょうか?