恐山と申します。
みなさんは、小学校に行ったことはありますか? 私はあります。
「ある」という方に質問です。小学校でこんな出来事に遭遇したことはあるでしょうか。
☑ 「みんなが静かになるまで○分かかりました」と言う先生
☑ 朝礼の校長先生の話をだれも聞いていない
☑ ひとりはいる「ちょっと男子!」と仕切りたがる女子
☑ 缶ペンケース禁止令
☑ 先生を「お母さん」と呼んで恥をかく男子
いわゆる「小学校あるある」です。
みなさんの通っていた学校では、こんなことはありましたか?
なんだか、ついつい笑ってしまいますよね。
いかがでしたか?
「あるある」と思ったらぜひシェアしてくださいね。
……すみません。帰らないでください。まだ終わりじゃないです。
「小学校あるある」といえば、こんな出来事に遭遇したことはありませんか?
「教室がうるさくて怒った先生が職員室に帰ってしまう」です。
これだけなら単なる「あるあるネタ」ですが、今回はもう一段階掘り下げてみたいと思います。
そのとき、先生は何を考えていたのでしょうか?
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小学校の先生に話を聞いてみた
というわけで、現役の小学校教諭の方にお話を伺ってみました。
顔出しNGなので写真は匿名かつ、見た目も緑色の物体に加工してあります。
本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします!
A先生
都内の公立小学校教諭。現在は高学年の担任を受け持っている。教師歴は5年。
では、単刀直入にお尋ねします。A先生は、授業中のクラスがうるさかったとき、怒って職員室に帰ったことがありますか?
はい、あります。
おおお! ついに当事者に会うことができて感激です! ちなみに、帰ったのはいつでしょうか?
私が小学3年生の担任だったときです。1度だけ授業中に職員室に帰りました。
そのときの状況を詳しくお聞かせください。
書道の授業のときですね。私が所用で少し教室を離れることになったとき「絶対この子たち、新聞紙で遊ぶだろうな」と思ったので「ちょっと出るけど、絶対、新聞紙を投げたりしないでよ」と釘を刺しておいたんです。
で、数分して戻ってきたら……児童が3人くらい新聞紙を丸めて投げたりして遊んでたんですね。
その忠告だとネタ振りに聞こえなくもないですね。それを見てA先生はぶち切れた、と。
いや、面白くて仕方なかったです。「ホントにやってるよ」と思って……。
私の場合、児童相手に本気の怒りを感じることはないですね。指導のために怒った素振りは見せますけど。怒る先生の眉間にシワが寄るのは、実は笑いをこらえてるからだったりします。
A先生もムカついて怒ってるわけじゃなくて、叱るべきタイミングで怒ってるんですね。児童が新聞紙で遊んでるのを見たあとは、どう言って叱ったんでしょうか?
真顔で「ふざけるなよ」と言いました。
うーん、怖い。
「だったらいいわ。せっかく注意したのに遊んでるってどういうこと?じゃ、こっちも授業やんないわ」と言って、職員室に戻りました。
あ~……! そのあとの教室の、シーンとした気まずい空気がありありと目に浮かびます……。やだなー。
で、本当に気になるのですが、A先生はこのあと職員室でどうしてたんですか?
本当に怒っていたわけではないので、職員室にいた他の先生に「うるさいから戻ってきちゃったよ~」とか言ってました。ただ、内心ではわりと不安でしたね。もしこのまま誰も謝りにこなかったらどうしよう? って。
先生も不安だったんですね……。それで、児童は謝りに来ましたか?
来ませんでした。
おしまいじゃないですか。
しばらくして、私から教室の前に様子を見に行ったんです。すると、ちょうどクラスのちょっとボンヤリした児童がトイレに行きたくて教室から出てきたところでした。「この状況でよくトイレ行けるな」と感心しつつも「使える」と思い、その子をつかまえて「先生に謝りに来たってことにしてくんない?」と交渉しました。そして「○○くんが謝りに来てくれたので戻ってきましたー」と言って、無事に授業に復帰しました。
なんて政治的なんだ……。
残された児童はかなりショックを受けていて、新聞紙を投げて遊んでいた子は泣いていました。指導効果は抜群でかなり静かになったと思います。ただ、「職員室に帰る作戦」は何度も使えるような手ではないです。うかつに使うと逆効果になることも多いです。高学年になるとそういう芝居は見抜かれちゃうし、学級崩壊してるようなクラスだと、先生がいなくなっても「ラッキー」でおしまいですから。
結構リスキーなんですね。保護者の捉え方によっては授業放棄とみなされてしまう場合もありそう。
そうかもしれないですね。
ただ、小学生はまだ精神的に未成熟なので、人の話を聞く習慣を作るところから教育が始まります。気持ちの上では、勉強よりも生活指導を重視しているくらいです。だからしっかり怒るのも授業の一環だと考えてます。
「静かになるまで○秒かかりました」
「職員室に帰る」という叱り方は最終手段で、わりと賭けでもあると思います。普段のちょっとした粗相はどうやって叱っていますか?
たとえば授業中、アニメの話をしている子がいたら「ん? なになに? 質問? 質問あるなら手を上げて言ってみ?」と迫ります。「ドラえもん? ドラえもんがどうかしたの? 聞かせて」とか「しゃべるなら代わりに授業やる?」とか。
うわー! そのバツの悪い感じ、なにかすごく身に覚えがある! やられたほうはシュン……ってアサガオのツボミみたいになりますよね。
シャイな子の場合は悪目立ちすると傷ついてしまうので、教室内を見回りながら本人だけに伝わるよう机を小さく叩いて注意したりもします。使い分けですね。
あれは今でも言うんですか? 「静かになるまでに○秒かかりました」ってやつ。
言いますよ。
加えて「教室がザワついてきたら逆に黙って、静かになるまで睨みつける」という手もよく効きます。
やっぱり言うんですね!
「黙る先生」もいたなあ。だいたい「やっべ」みたいな空気がザワッと伝わって潮が引くみたいに静かになってきますよね。
あと小2だったら「1年生からやりなおす?」って言うとメチャメチャ効きます。
あ~!! その言葉も絶対どこかで聞いたことあります。言われて世界の終わりが到来したみたいな気持ちになった記憶があるので、効くでしょうね。
そういう叱り方はどこで学んだんですか?
先輩の先生に相談したり、自分で考えたり、ですね。私自身、そういう叱り方をされたこともあります。
「あるある」な叱り方って、やっぱり一定の効力があるからこそ今なお受け継がれてるんでしょうね。
「ちょっと男子~!」は仕組まれていた?
せっかくなので、他の「あるある」についても聞いていいですか? たとえば「先生をお母さんと呼んでしまう男子」とか。
私も1度だけ呼ばれたことがありますよ。
思ってたより少ない! でも、まだ「お母さん」と呼ばれるような年齢ではないですものね。
初めて言われたときは「ついに……!」と感慨深かったです。
「仕切り屋の女子がクラスに1人はいる」というのはどうなんでしょう。「ちょっと男子~、ちゃんと掃除しなさいよ~」みたいな子。
これも実際によくありますが、理由があります。クラスに1人になるよう、クラス替えで決めてるんです。
え、そうなんですか!
クラス替えはランダムではなく、児童どうしの人間関係を考慮した上でシャッフルするんですよ。だから、仕切るタイプの子はなるべくバラけるように配慮してます。
高学年にもなると、人間関係のトラブルで悩む子も増えてきますし、最近は「ゲーム機のカメラで勝手に写真を撮られた!」みたいなトラブルもあります。友達にケガをさせた児童の親に連絡したら「男の子ってのはそういうもんだろう!」と逆ギレされたことも……。クラス替えでは親どうしの人間関係を鑑みることもありますよ。
ただ勉強を教えるだけじゃなくて、そんなところまでケアしていくのは大変でしょうね。
本当に大変です。特に、今受け持っているクラスは40人もいるんです。これは法律が定めた限界の人数なので「誰かが転校して来たら40人を超えるからクラス数が増えてラクになるのに!」ってよく思ってます。
そういうの、やっぱり飲み会で愚痴ったりするんですか?
若手同士で飲んでるときはしますね~。
小学校の先生の飲み会ってどんなこと話してるんですか?
ネットメディア系の飲み会だと、誰かが冗談を言ったとき「それバズった!」みたいなメチャクチャしょうもない内輪ネタが飛んだりしてます。
先生の飲み会での会話は普通ですよ。クラスであったこととか、恋愛のこととか……。
あ、でも先生の間だけで通じる内輪ネタみたいなのはあります。教員がやらかす職務上の重大な失態……たとえば「体罰」とか「わいせつ行為」とかを「服務事故」って呼ぶんですが、お酒飲みながらおしぼりを落とした先生を指さして「はいそれ服務事故~!」って囃し立てたり。
小学生みたいだな。
ちなみに服務事故の罰則規定や事例は東京都教育委員会のサイトで見られます。先生が強盗や覚醒剤に手を染めると懲戒免職だそうです。当たり前か。
「小学校の先生」という仕事
「校長の朝礼での話が長くて退屈」というのもあるあるネタですよね。子どものころは退屈でしかたなかったですが。
先生も退屈だなと思って聞いてます。
やっぱりそうなんですね。そもそも、なんで朝礼のお話なんかあるんでしょう?
それはですね。本来、学校では校長先生が全ての児童を指導しなければならないことになってるんです。でもそんなの無理ですよね。だから、教員が代理で児童を指導している体(てい)になっているんですよ。
そういう建前がある以上、「校長先生がみんなにお話をする場」が必要なわけです。
ええー! 校長先生って本当に「校の長(おさ)」だったんですね。
校長先生はかなり忙しいですよ。日常的な事務作業には全部目を通さなければならないし、もちろん責任も重大だし。さらに、校内でいちばん忙しいのは教頭や副校長です。校長が処理しきれない仕事が降りてくるし、教員たちの指導もしなければいけないしで……。なりたがる人はあんまりいないですね。
「副」校長という役職ができたのも、まさに校長の代理という側面が大きいからです。
てっきり校長や教頭はヒマなのかと……。
ところで普通の会社員には「ヒラ→係長→課長→部長」のような出世コースがありますが、先生の場合はどうなってるんですか?
いわゆるヒラの先生が「教諭」で、キャリアを積むと「主任教諭→指導教諭・主幹教諭→管理職」など、学校全体の管理に携わる職務に昇格するタイミングが来ます。ですが、実地指導を望む先生も多いので、ずっと教諭のままなのは全く不自然ではありません。
そうなんですね。先生は「教諭」ですが、忙しいですか? 私は小学生のとき、先生は学校に住んでると思ってました。
忙しいですね。ときには朝7時ごろに出勤して、21時すぎまで残っていることもあります。最近は情報漏えいや紛失のリスクがあって持ち帰り仕事ができないんです。
でも逆に、そのおかげで仕事量の負担自体は減ったかもしれません。持ち帰りできないと余計なプリントを作ったりする余裕もなくなりますからね。「音楽会」「学芸会」「展覧会」みたいな年中行事も、今では3年毎にローテーションを組むなどして数を減らしてます。それでもかなり仕事は多いですが……。
児童の面倒を見たり、授業の準備をしたり、親と連絡取ったり、先生はやることが山積みですものね。先生をやっていて感じるストレスには、他にどんなものがありますか?
幸い、今はあまり問題は抱えてないんですが……。休みのサイクルが学生とまったく同じなので、安い時期に旅券が取れないことでしょうか。あと、遊園地などに遊びに行くと「教え子と会ったらどうしよう」と思っちゃいます。
私は小学生のとき、保健の先生が男と手を繋いで歩いているところを目撃したことがありますから、その気持ちはなんとなくわかります。
逆に、どんなときに先生は喜びを感じますか?
やっぱり、教え子の可愛さですね。もともと、別に子ども好きだったわけではないんですが、自分の教え子がすくすく育ってくれるのは本当に嬉しいです。
といっても私は5年目なので、卒業まで見届けたことはまだないんですけどね。
いずれ児童たちも卒業して、大人になって戻ってくるかもしれませんね。
今回は本当にありがとうございました。
最後にひとつだけ教えてください。ずっと気になっていたんですが、どうして小学校では缶ペンケースが禁止されてるんですか?
落とすとうるさいし、子どもはよく物を落とすからです。
完全に理解しました。ありがとうございました。
…というわけで「職員室に帰ってしまった先生」から貴重なお話をたくさん伺うことができました。
あなたが子どもだったときに職員室に帰ってしまった先生も、生徒のことを考えた末に「職員室帰り」を選んだのかもしれません。
そうじゃないかもしれません。ただ本当にぶち切れていただけの可能性もあります。
話しながら感じたのは、先生もひとりの人間だ、という当たり前の事実です。
今でこそ苦労が少しはわかりますが、当時は何もわかっていなかったな……と思いました。先生すみません。ありがとうございました。
もしこれを読んでいる小学生や中学生がいたら、なるべく先生には協力してあげてください。
ところで、この記事はレオパレス21がリリースした『ダイナミック帰宅アクション お部屋に帰ろう』のPR記事です。(終了しました)
こちらはスマートフォン向け横スクロール式アクションゲーム。異常に高い難易度がどこかノスタルジーを誘います。
ゲームを通じて全力で「帰る」体験を楽しめるので、スマホ環境がある方はプレイしてみてはいかがでしょうか。(終了しました)
※ちなみに、この記事でも使用した「いらすとや」さんのイラストは小学校の掲示物でも大活躍だそうです。いらすとやさん、ありがとうございます。