こんにちは、オモコロ編集部です。
ライトノベル作品のタイトルってちょっとすごくない? と思うわけです。例えばこんなの。
俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件
前提がすごい。
男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。
どういうこと?
ざるそば(かわいい)
え?
このように近年「飛ばしてくる」ことが前提になったライトノベル作品ですが、この感じで成立しちゃうほど懐が広いのであれば、我々オモコロのアイディアも受け入れてくれるのではないでしょうか?
過去に新書のタイトルを考えた実績もあることですし(書籍化したわけじゃないけど)、今回はオモコロなりに「売れそうなライトノベルのタイトル」を考えてみたいと思います。
と言っても、普通にウンウン唸って考えたのでは普通の枠内にとどまってしまい、既存のライトノベルの跳躍を超えることはできません。例によって頼りにするのは「偶然の力」。
オモコロではお馴染みの手法となりました、「シャッフルシリーズ」で今回も作っていきます。
こちらの「ライトノベルBOX」には、ライトノベルのタイトルとして可能性がありそうな単語の書かれたカードがおよそ300枚ほど入っています。
これを微妙な表情で引き、出てきた3つの単語を組み合わせてライトノベルのタイトルを生み出すというわけです。
まとめますと……
こんな感じです。そして今回の出場者はオモコロ編集部よりこちらの三名!
果たしてどんなライトノベルが生まれるのでしょうか?さっそくやっていきましょう!
原宿の一冊目
原宿が一発目に引いたカードはこちらの3枚でした。これを組み合わせて1つのタイトルにしてもらいます。
これをライトノベルにしなきゃいけないってなかなか酷では? まぁでもやってみます。
「おまいらモーガン・フリーマン 極度に発達したモーガン・フリーマンはしなびた柿と見分けがつかない」
ただの悪口だろ。最初なんだから少しはラノベに寄せろよ。
「おまいらモーガンフリーマン」ってなんですか?
小池一夫/池上遼一先生の「クライングフリーマン」みたいで語呂がいいなって……。
どんなストーリーなのか全く想像できないので、ライトノベルのタイトルとしては失格です。
これカードのヒキで全部決まりません? 運ゲーすぎる。
恐山の一冊目
続いては、作家としての顔も持つダ・ヴィンチ・恐山のトライです。
わりとフィクションっぽい単語を引くことができたので、素直にいきます。
「パイロットにジョブチェンジした魔王さまが新千歳空港で殺人事件に遭遇しました」
お、異世界転生モノですね。
もう魔王が現代に来ちゃう話はありふれてるんですよ。だからもっといろんな要素も混ぜてみよう、と。
ファンタジーと航空と推理が一緒くただから話の軸が定まらなくてグダグダになりそうだな。
「六花亭のバターサンド……なんだこれは、魔界にもこんな旨いものはないっ!」ってシーンがありそう。
永田の一冊目
ライトノベルにおけるキラーコンテンツ、「お嬢様」を引くことができました。これはもうこうでしょ。
「学園一のお嬢様がカインズホームで棚おろししててワロタw」
いいね! 学園祭の準備にホームセンターにきたら、なぜか校内一のお金持ちのお嬢様がバイトしててさ。「その重みを支えるのであれば、こちらの素材が良いかと…」ってDIY豆知識を教えてくれるの。
「淑女たるもの社会勉強も必要!」みたいな家訓で働かされてるんでしょうね。
ラブコメも楽しみつつ、実用的な知識も身につきそうでよいと思います。「ワロタw」は古いけど。
みんなカードのヒキがよくていいな……
原宿の二冊目
「ヌーブラヤッホー」ってもえやんのギャグの?誰だこんなカードを入れたのは……
「デスゲームで最弱のヌーブラヤッホッホーを引いちゃった俺のスレが意外と伸びた話」
これは「バトルロワイヤル」的なあれです。最初に支給されるアイテムが、絶対デスゲームで機能しなさそうな「ヌーブラ」なんだけど、やってみたら意外と生き延びちゃって……という。
それは良いけど、なんでそれをスレ立てしてるんだ。
確かにデスゲームの序盤から「ヌーブラヤッホー」を踊り狂っていたら、「あいつを殺すのは後回しでいいか」と思われるかもしれませんね。
そうなのよ。それで油断させて、後ろに回ってヌーブラで鼻と口をふさいで殺す。
絶対そんなに何回も使えないわ、その手法。
恐山の二冊目
「ニートなオレが今ではやげんナンコツ仮面になって毎日オーガズムに達してます」
「キック・アス」的な、ダメ人間がヒーローになる話かな?
いえ。ニートが改造手術を受けて、やげんナンコツのコリコリ感だけで性的に絶頂してしまう体質にされる話です。
ニートに別方向のどうしようもなさが加わっただけじゃねえか。
仲間は「もも貴族」。
それは鳥貴族のメニュー。
永田の二冊目
「屁の味」が邪魔すぎるなあ。
「救世主だったらドラゴンの屁の味を知ってて当たり前だってぇ!?」
ニオイ版の『ダンジョン飯』ですね。
幻の秘薬の材料のうち、「ドラゴンの屁」だけが足りないからしぶしぶ探しに行く話。
死ぬと屁をしてくれなくなるから、倒さずに背後に回ろうとがんばるんでしょうね。
意外と盛り上がりそうでいいな。白眉は屁じゃなくてウンコが出てきちゃって、「室井さぁん、なんで現場にドラゴンウンコが流れるんだ」って叫ぶシーン。
踊る大捜査線にするなって。
原宿の三冊目
おいひどすぎるって。なんだよ「巨排便」って。そんな言葉ないだろ!
シンゴジラの「巨災対」のウンコ版?
「俺の20人の妹の山盛りウンコが巨排便ゴーレムとしてダンジョンを守るわけがない」
確かにそんなわけがない。
汚えなあ。でも意外とこれだけ設定がぶっ飛んでた方が、今の時代は埋もれなくていいのかもしれません。
主人公はスカトロ趣味なんで、本当は妹たちの山盛りウンコを自分だけで楽しもうとしたのよ。そんな黒い欲望がスカトロダンジョンを統べる闇の王・ブリリガンディスに利用され……
やっぱり埋もれさせておきましょう。
恐山の三冊目
おお! 「とある」きた! これをつければだいたいライトノベルっぽくなるからね。
そういうもんなの?
「とある落語家の老害圧力(パワーハラスメント)」
主人公が大御所落語家に弟子入りするんだけど、めっちゃくちゃにイビられる。それだけの話。
リアルに起こってる嫌なことじゃねえか。
泰葉が最近ブログで言ってたのってこれ?
よせって。
永田の三冊目
さっきからウンコとか小便ばっかだな。
「くのいち忍者の小便の色を知りたいだけの青春って間違ってますか?」
間違ってます。
でも、なんかストーリーの広がりは感じる。
しがない尿マニアだった主人公が、ひょんなことから「小便」を介してめちゃくちゃ強くなる特殊能力に目覚める。ヒロインのくのいちは恥ずかしいけど、毎回おしっこを見せて主人公の力を利用する。
「くっ、変態め……。しかしこれも任務のため、主のためなら耐え忍ぼう……」
エッチだけど、ぎりぎりアニメ化されそうなラインをついている気もする。
ラスボスとの戦いでは「くのいち忍術・金糸の滝」で排出された美しいおしっこを見た主人公のリミッターが解除され、おしっこバーサーカーとしてムキムキになってさ。あ、敵側の女騎士のおしっこを見て、敵側に利用されるって展開もアリだな。
本当に内容を考え出すな。
原宿の四冊目
なるほどなるほど…なるほどね!
「チリ人ズ ~ロバのペニスにおまかせあれ!~」
待ってましたのピクサー最新作!!
この「ズ」をピクサーがやることは一生ない。
そしてライトノベルでもない、ただの怪文。
恐山の四冊目
お、ふたたび無職モノ。ライトノベル作家自体が無職の一発逆転みたいな部分もあるから、これは期待できますね。
怒られるぞ。
「無職のオレが転生して土偶みてぇなブス専門退魔師になったけどなぜか懐かれる件」
無職が異世界転生して無双する! これは好形ですぞ。
その世界ではブスが魔物扱いされて迫害されてるんですよ。でも持ち前の優しさからブスたちに好かれてしまって……?
最終「人間の美とは何か?見た目とは何か?」を問いかける深い作品になりそう。
アニメ化は無理だろうな。なぜならヒロインが土偶みてえなブスだから。
永田の四冊目
「僕は友達がチリトマトヌードルと金玉メンチカツしかいない」
「チリトマトヌードル」と「金玉メンチカツ」はあだ名です。
めちゃくちゃ冴えないやつらなんだろうね。より詳細にヤバイ「僕は友達が少ない」。
これならいっそ誰も友達いない方がマシ。
「主人公をピンチにしろ」というのはエンターテイメントの鉄則ですからね。ここからどう巻き返すかをお楽しみください。何も妙案が思いつかないけど。
原宿の五作目
「ぬしと朝寝が…」ってなんですか?
高杉晋作が歌ったとされる都々逸(どどいつ)ですね。
(脚注:「三千世界の鴉を殺し、ぬしと朝寝がしてみたい」)
オタクが好きな言葉です。
バカにしてる?
他二枚もかっこいい言葉だったので、マジでかっこいいライトノベルを作ってみました。これです。
「オルタナティブ・ホライズン ~無限ループの空の下 ぬしと朝寝がしてみたい~」
どう?
………。
………。
「シュタインズ・ゲート」もあんだけウケたし、ループ物ってやっぱ人気だしさ。どお?
………。
………。
なんとか言えって。
恐山の五冊目
「学園は前世で階級が決まっているそうです。『ようこそ!1年-病気の雄ヤギ組へ!』」
前世が「病気の雄ヤギ」だった奴しかいない最下層クラスが一致団結する怒涛の快進撃です。
他のクラスの前世は「キマイラ」とか「レッドドラゴン」なのに、自分のクラスだけ病気の雄ヤギ。
「俺たちなんてどうせ前世が病気の雄ヤギだぜ…?」って卑屈になるクラスを叱咤する主人公。落ちこぼれクラスが巻き返す話って人気があるから、やりようによってはウケるかもしれない。
何がラノベらしいのかだんだんわからなくなってきたので、次で最後にしましょう。
永田の五冊目
最後の最後でラノベらしさ皆無のカードしかないじゃねえか。
転生したら公共料金の支払い終わってこれから寿司食いに行くリウマチ持ちのババアになっていた件
おなじみの異世界から現代に来ちゃうパターンね。魔王と戦ってたはずがいつのまにか団地住まいのババアになってた。
かつてこんなにワクワクしない異世界転生ものがあっただろうか。
まずは魔法でリウマチを治すところから始めて、異世界知識を活かして無双するんでしょうね。
日本が抱える高齢化問題もあぶり出せていいね。ファンタジーの視点から「人はどのように老いるか?」を描く社会派ライトノベル。
ライトノベルではそういうの読みたくないかもしれません。
優勝は……
以上、出揃った15作品の中から三人が協議を行い、優勝作品(読みたいライトノベル)を決定します。
優勝作品は、実際に本が出版されることを想定してイラストをつけ、表紙を作ってみました。
優勝は………
「くのいち忍者の小便の色を知りたいだけの青春って間違ってますか?」(作・永田 イラスト・凸ノ)
よっしゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
やはりタイトルを聞いた瞬間に、序盤・中盤・終盤のストーリーがぶわっと広がってきたのが評価のポイントでした。ギリギリいけるぐらいのエッチさがあるのもいい!
タイトルからの「読んでみたさ」と「読んでいることの知られたくなさ」のバランスが、ラノベとして絶妙だったと思います!
「くのいち忍者の小便の色を知りたいだけの青春って間違ってますか?」の出版予定は今のところありません。
しかし、今回の特集で出た題名アイデアは自由に利用可能です。この記事をご覧になっているライトノベル作家様や出版社様の中にもし「書きたい」という方がいたら、是非オモコロ編集部にご一報ください!
(おしまい)
~ボツ作品~