「ヒモのテクニックは無限」―ヒモックマ販売戦略
――「ヒモックマ」は総合ランキング2位にまで上り詰めましたが、実際のところ、どれくらい利益が入ってきたんでしょうか?
セブ山:
これは本当にいろんな人に訊かれるんですが、みんなが思っているよりはだいぶ少ないですよ。
――そうなんですか?
セブ山:
僕自身、ランキング2位になったとき、ワクワクしながら売上リストを見てみたら「あ、こんなもん?」って驚いたくらいでしたよ。もちろん、けっこうな大金ではあるんですけど、一般的な「LINEスタンプで一攫千金」のイメージからは遠いと思います。
――意外です。ゴールドラッシュの時期は過ぎて安定期に入っているのかもしれませんね。
セブ山:
でも実態を知らない人はそう思わないんです。ウハウハだと思ってるんです。ヒモックマが売れたあと、以前ちょっと会ったことあるだけの女性複数人から「久々にご飯でも行こうよ~」とか誘われました。ヒモに奢らせる気マンマンですよ! 適当なスタンプを送って無視しました。
適当なスタンプ
――なるほど、だからこれ見よがしに「儲からない儲からない」って言うんですね。
セブ山:
いや、本当なんですって。ただ、LINEスタンプで長期的に大きな利益を出している人はいるみたいです。そういう人たちは、スタンプをシリーズ化して、何種類も売ってるんですよ。相乗効果で第二弾、第三弾と売れていくんですね。僕はそこで出遅れてしまった感があります。
――では、ヒモックマもシリーズ化を?
セブ山:
はい。慌ててヒモックマスタンプの第2弾を出しました。
――すぐに描けるものなんですね。
セブ山:
40個描くと、だいたい丸一日かかります。これは制作速度としてはめちゃくちゃ早いんですが、僕は絵が得意じゃないし、スタンプもWindows標準の「ペイント」で描いてるから大変です。でも、おかげさまで第2弾もそこそこ売れて好調ですね。
――2つ出したらスタンプが80個ですが、よくネタ切れしないですね。
セブ山:
ヒモのテクニックは無限ですから。最近、第3弾も出しました。宇宙がテーマの「ヒモックマ スペースバトル編」なんですけど。
――ネタ切れしてませんか?
セブ山:
していません。無限です。
――でもヒモと宇宙関係ないですよね?
セブ山:
関係あります。これから第5弾まで出すつもりです。
第3弾に収録されているスタンプのうち、宇宙に関係があるものは2つ程度
――ヒモックマスタンプは、やはりヒモの人たちが使っているのでしょうか?
セブ山:
どちらかというと、目に入ってくるのは若い女の子の使用者です。彼女たちはヒモをただのキャラとして見ていて、仲間内でギャグっぽく送り合っているみたいですね。
――ヒグマの凶暴性を知らない人が熊のぬいぐるみを可愛がるような感じですね。
セブ山:
彼女たちにとってヒモはファンタジーなんでしょうね。リアルな存在なのに……。女の子以外だと、主夫をやっている旦那さんに奥さんがプレゼントしたりとか、ホストが客とLINEするときに使っていたりもするようです。どれも想像していたような使われ方とは全然違っていて、意外でしたね。
世界共通語「HIMO」を目指して
――ヒモックマの今後の展開は?
セブ山:
実は、ぬいぐるみ作家のせこなおさんに、ぬいぐるみを作ってもらいました。かなり出来が良くて、お腹を押すと「働ける人が働いたらよくない?」とかしゃべるんですよ。
ヒモックマぬいぐるみ。中にボイスメカが入っているという
セブ山:
その他グッズも今まさに作っています。今後どんどん展開していく予定です。意外とヒモックマはグッズと相性がいいんですよ。「フタがなくて貯まらないヒモックマ貯金箱」とか「家から追い出さないでと懇願するヒモックマのドアストッパー」などを考えてます。特にお金が絡むグッズはヒモックマ向きじゃないかなと思います。
――正直に言って「よくこのキャラの人気が出たな」と思います。
セブ山:
最初はネタで買っても、だんだん本当に可愛く見えてくるみたいです。スタンプ単体で一攫千金は難しくても、そこからグッズ展開に繋げていけるというのは大きなチャンスだと思います。
セブ山:
グッズ以外では、書籍化も計画中です。宝島社さんから声をかけていただきました。一冊まるまるヒモックマが活躍するムック本で、夏頃発売予定です。ゆくゆくは海外にヒモックマを輸出していきたいですね。ただひとつ問題があって、海外には「ヒモ」を表す言葉がないらしいんです。でも、逆に考えればチャンスですよね。「HIMO」という言葉ごと世界に広めれば、ヒモの先駆者になれるんですから。
――骨の髄までしゃぶりとるつもりなんですね。
セブ山:
しゃぶりとります。
――これからスタンプを作る人にアドバイスするとしたらなんでしょうか?
セブ山:
そうですね……。もともとヒモックマのコンセプトは「ヒモ専用スタンプ」だったんです。なのに、逆にそのニッチさがうけて、女の子を中心に広がっていきました。売れているスタンプを見ていると、「漫画家の締め切りを追い込むスタンプ」とか「タカシに送るスタンプ」とか、ニッチなものが結構多い。ちょうどいい制約をユーザーが逆に活かしてくれる時代なのかもしれません。
――最後になりますが、やはり「ヒモックマ」の売上げは、セブ山さんを今まで世話してくれた女性に還元するのでしょうか?
セブ山:
え?
――売上げ金は養ってくれた女性に渡すのでしょうか?
セブ山:
いや、それは関係なくないですか? たしかに今までに世話してくれた女の子たちにはすごく感謝はしてますけど、それはそれで、全然別の話ですよね? スタンプを作ったのは僕だし、スタンプを作るのを手伝ってもらったわけではないじゃないですか。そういうところはきっちり区別しておいたほうが僕はいいと思うんですよね。別に感謝してないわけじゃないですよ。ただ、僕の労働で得た利益は僕がいただくという基本的なところと、女の子への感謝の気持ちは分けて考えるべきじゃないですか? これはヒモとか関係ないですよ。ビジネスとして、ちゃんと一線を引いておくべきだと思います。
――ありがとうございました。
ヒモックマ人気の理由。それは偶然と戦略が絡みあった結果にあった。セブ山氏はこれからも新しいスタンプを作り続けていくという。彼が創りだすものに、今後も目が離せない。
さて、7/9(土)7/10(日)と2日に渡り、秋葉原から徒歩10分の「3331 Arts Chiyoda」にてLINEスタンプの祭典『LINE Creators Festa 2016』が開催される。
こちらは「個人の創作活動の支援」と「クリエイターの活動に焦点を当てる」がテーマのユーザー参加型イベント。描きおろし限定スタンプの無料プレゼントや、人気クリエイターによる「スタンプ講座」、「スタンプライブペイント」など、催しは盛りだくさん。
さらに、「スタンプを作ってるんだけど、これって審査に通るのかな?」という方のために、「出張! スタンプ審査室」も開設! スタンプが承認されるかどうか、プロから直接意見を聞くことができる。作りかけのスタンプがあるなら持って行ってみるといいだろう。
ちなみに、セブ山氏にLINE Creators Festa 2016への参加予定はあるか訊いてみたところ「ゴメ~~ン! そのときちょうど海外旅行~~~~!!!!」との返答が来た。
残念ながらイベント当日の彼に石を投げる機会はないが、LINEスタンプクリエイターの方々だけでなく、LINEスタンプを普段から使っているユーザーでも十分楽しめる双方向イベントだ。当日は数量限定の来場者プレゼントも配布するという。入場料は無料なので、7/9、7/10に時間のある人は足を運んでみてはいかがだろうか。
LINE Creators Festa 2016
LINE Creators Festa 2016 -スタンプの祭典- | |
期間 | 2016年7月09日(土)10:30~19:00(最終入場:18:30) 2016年7月10日(日)10:30~18:00(最終入場:17:30) |
会場 | アーツ千代田3331 |
主催 | LINE株式会社 |
入場料 | 無料 |