機械の扱いにおいては一般的には女性より男性のほうが強いとされているが俺はというと天性の説明書読まずゆえ、家庭内の機械関係の操作、維持、調整関係にしたって殆ど妻が仕切っており俺は何かあったときだけ「壊れたぞ!」「効かないぞ!」などと騒ぐだけの機械音痴なのである。妻が関与しない俺だけが触る家電に限ると、その殆どが元来持てる性能の10%程度の機能しか発揮出来ていないものが大半だと思われる。

それもそのはず、新しい家電を買ったとしても、電源のオン・オフ、何かを調整するための強弱のコントローラーといった最低限の機能だけにまっしぐら。最低限の使い方を理解すれば開梱して3分で使用開始、それ以降は説明書も読まず本来持てる残り90%弱の性能、パフォーマンスには目もくれず惰性で使い続けるだけで、購入して2年ほど経ったある日、自分だけが今更気づいた機能に驚き、興奮しては「大発見や~!」などと新大陸を発見したコロンブスのような驚きようでそれを迎え入れるマヌケが俺なのである。

こう書いてみると我ながら機械云々に関係なくただのズボラなダメ人間にも思えてくるが、今までもこうしたスタンスで生きてきて困ったことが殆どないという自信が俺に説明書を読む気を起こさせないようである。

しかし転機はいつ訪れるか分からんもので、先日寝室に置いてある加湿器のボタンがどうにも機能せずに困っていつものように「壊れたぞ!」とひとり騒いでいた時のことである。

ちょうど近くを歩いていた5歳の息子をチョイチョイと呼びとめ、お前まさかこの加湿器壊してないだろうな、などと自分の息子を頭ごなしに疑うなどして、今思うと濡れ衣もよいところなトラディショナルなダメ親を地で行くような子育て珍プレーを披露してしまったのだが、それを聞いて長男曰く、

 

 「チャイルドロックが掛かっているんじゃないの」

 

 などとチャイルドのくせに作動しない加湿器に荒れ狂う父親とは真反対のクールな返しでそれに応じるわけである。

 

 「お前にはチャイルドロックのはずし方が分かるのか?」

 

息子のその堂々たる返答に幾らか虚をつかれた父親はそんな返ししかする術もなく、息子にチャイルドロックの解除方法を尋ねるしかない。

息子、それに返して曰く、

 

「このボタンを3回押せばいいんだよ。やってごらん。」

 

「こくり」と頷き、息子に言われた通りのボタンを3回、ピッピッピと黙って押してみると見事にチャイルドロック解除に成功というわけである。というか、そこに思いっきり「チャイルドロック」「3回押す」と書いてあることを息子に言われてようやく知るという体たらく。息子が漢字を読めるようになっていたことよりチャイルドロックに締め出される自分にビックリである。

それにしてもチャイルドにチャイルドロックの解除方法を教えてもらう36歳を皆さんはどう思うだろうか。説明書というか、せめて機械本体ぐらいには興味を持とうと思った次第である。

 

 

 

 

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