リサイクルショップ、古本屋など中古品を扱っている店が好きだ。置いてある物が全て「誰かが所有していたけどなんらかの理由で手放したもの」であるというところに強い魅力を感じる。

 商品を眺めながら勝手に「誰かがそれを手に入れてから売ることになるまで」を想像する遊びをよくやる。

 

 リサイクルショップで変な外国の置物を見ては「海外旅行で浮かれて買ったけど冷静に考えたら邪魔だったんだろうな」と想像したり、中古CDショップでアイドルのCDが急にフルコンプされて並んでいたりすると「熱心に追いかけていたけどショックなことがあったのだろうな」と想像したり、そんな具合だ。

 

 ある日そんな想像遊びをしながらブックオフのDVDコーナーを見ていた。長編シリーズがまとめておいてあったり筋トレ指南DVDなんかがおいてあったりすると想像遊びが捗る。

 ふと、ある一本が目に止まった。聞いたこともないタイトル、いかにもクソ映画といった雰囲気のパッケージ。当然このDVDも誰かがなんらかの理由で手に入れて、そしてブックオフに売ったのだろう。なんとなく気になってその場で調べてみたが案の定あまりヒットしない。数少ないレビューではボロクソに書かれている。

 

 有名な作品でもない、パッケージの段階でいかにもつまらなさそう。そんなDVDを誰かがなんらかの理由で買って、ブックオフに売った。

 

 ……なぜだろう。

 

 単純に面白そうだと思って買って、つまらなかったから売ってしまったのかもしれない。

 しかしDVDは安い買い物ではないはずだ。買うほどとなると、気に入った作品かよほど面白そうな作品に限るだろう。そもそも見てもいない映画のDVDを買う人は少ない。

 

 では見た上で面白いと思ってDVDまで買って、収納スペースかお金に困って売った説はどうだ。これならあり得る。面白くなさそうとはいえ感性は人それぞれだ。

 しかしDVD一本なんてそれほど場所も取らないだろうし、言っちゃなんだが大した値段にもならなかったはずだ。気に入っていたらそもそも手放さないだろう。

 何なんだこれは。なぜここにあるんだ。気になるぞ。

 

 気がついたら俺は自宅でそのDVDを再生していた。買ったのだ。見れば何かがわかると思ったのかもしれない。

 

 ……本当に面白くなかった。面白くなさすぎて内容も覚えていない。

 

 見終わる頃には“誰かの理由”などどうでも良くなっていた。DVDはそれから長いこと部屋の棚の隅で眠り続けることになった。

 

 数ヶ月後引越しをすることになり、荷物減らしがてら良い機会なので「もう二度と見ないだろうな」というDVDをまとめてブックオフに売り払った。買取レシートにはあのDVDの名前もあった。そこでやっと気が付いた。

 

 

 “あれ”は、そういう存在なんだ。

 

 

 俺のようなやつとブックオフの間を、永久に往復し続けているんだ。

 

 

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