筆者はかつて、短期間だけテレビ局の関連会社で働いていたことがある。

 

その際、とある飲み会の席で、キー局のプロデューサーを務める人物と顔を合わせる機会があった。

バラエティー番組のプロデューサーを歴任していた彼を、仮にPさんとする。

 

Pさんとはその後もしばしば酒席を共にした。

そのうちの一回、畳敷きの老舗小料理屋の一角で、突然こんなことを言われた。

 

「お前、怖いのとか好きだったよな。うちの局でお蔵になった素材あるけど、見たい?」

 

お蔵とはすなわち、何らかの理由で放送ができなかった”お蔵入り”の素材というわけだ。

前のめりに頷いた筆者に、プロデューサーはその場でタブレットを取り出し、いくつかの映像を見せてくれた。

曰く、彼もかなりの怖いもの好きで、局内で不思議な映像が撮れたという噂を聞くたびに、こっそりと収集していたのだという。

 

職業倫理的にどうなんだ、という問題はさておき、その日からそれなりの年月が経つが、見せられた映像のうち、いくつかの内容は不思議と記憶に残っている。

何らかの形で世に出せないかと思い、久しぶりにPさんに連絡を取ってみたところ、二つの条件を満たせば記事として公開してもよいと承諾してくれた。

 

一つは、特定不可能にすること

固有名詞はすべて伏せ、フェイクの情報を交えて、局も、番組も、出演者もすべて特定不可能な状態にしてほしい、とのことだ。

至極当然の頼みである。そのため、これから掲載する”お蔵入り”映像の描写に関しては、徹底的に情報をボカし、ズラしていることを承知いただきたい。

あえて別の番組を想起させるような文言も交えているため、元番組やテレビ局の特定はできない状態になっているはずだ。

 

二つ目は、これだ。

 

 

 

今から書くことは全部嘘です!!!!!

 

これまでに書いたことも全部ぜーんぶ嘘でーす!!!

 

筆者はテレビ局の関連会社で働いていたことなんてありませーーん!!!!

 

Pさんなんて人も存在しませーーーん!!!!

 

全部想像で書いてます!!!!!!

 

こんなんあったら怖いよなあとか考えながら、適当にでっち上げてまーーす!!!!!

 

 

はい。

ということです。

 

では条件をしっかり守ったところで、実際に筆者が見た映像の文字起こしを見ていただこう。

 

 

① 密着ドキュメンタリー 若者の貧困

 

【前提となる情報】

レギュラー放送されていたドキュメンタリー番組

毎週ディレクターがカメラを片手に様々な現場へ向かい、リアルな声を拾うという建付けだった。

この回では、当時社会問題になっていたネットカフェ難民を取り上げていた。

 

完パケ素材(放送用の完成した映像)まで作られていたが、後述するとある事情によりお蔵入りになり、その週は過去に放送された回の再放送が行われた。

その後、担当ディレクターが映像を見返していたところ、不可解なものが映り込んでいることが判明。

局内で一部話題になり、Pさんの耳にも届いたのだという。

 

以下は、その問題の部分のみを、筆者が記憶をもとに書き起こしたものである。

 


※フリー素材によるイメージ

 

====以下、書き起こし====

ナレーション:Fさんもまた、この店に救いを求めてやってきた一人だ。

グレーのパーカーを着た男が、ネットカフェのドリンクバーで炭酸飲料をグラスに注いでいる。

顔にはボカしが入っており、テロップで「Fさん(28歳)」と書かれている。

 

F:専門学校出てからは、ずっとフリーターです。

ドリンクバーの前で話し始めるF。音声も加工されている。

 

F:アパートが信用のアレで借りられなくなっちゃって、ここに来て……もう、三か月くらいですかね。

Fがネットカフェ内の狭い通路を歩いていく。カメラがその背中を追う。

ナレーション:(ネットカフェの店名)が、長期滞在者を格安で受け入れている。その噂をアルバイト仲間から聞いて、ここへやって来たのだという。

 

Fがブースの扉を開けて中に入っていく。

カメラがついていくと、2畳ほどの広さの、フラットタイプの個室が見える。

奥には起動したままのパソコンがあり、アーム付きのライトがブース内を明るく照らしている。

床には下のマットが見えないほどに、大量の衣類やタオル、ビニール袋などが積み重なっている。

 

画面が切り替わる。

ブース内に座ったFが、画面やや右寄りに映っていて、画面奥にはパソコンが、そしてFの左後ろには座るスペースを作るために無理やり押し退けたのか、大量の衣類で作られた山が見える。

テロップ:ここでの暮らしは――?

F:まあ、十分ですね。トイレもシャワーもきれいだし、光熱費もかかんないし……。仕事もこれで(背後のパソコンを指さし)探せるんで。

 

癖なのか、Fは両手で、両側の頬をこすりながら話している(厳密には、顔にボカしがかかっているので、こすっているように見える、という方が正しい)。

 

テロップ:夜はここで寝ている?

F:ええ、はい(笑) 他にどこでって話じゃないですか? いびきうるさい人とかいて、最初はちょっと……って感じでしたけど、これ(ヘッドホンを手に持つ)してれば、まあいいかなって。

そう話しているFの左後ろで、衣類の山から何かが突き出してくる。

カメラのピントがFに合っているため不鮮明だが、それは、人間の手のように見える。

 

テロップ:荷物はここにあるものですべて?

F:ここに来る前に、全部捨てちゃいました。こたつとか、冷蔵庫とかあったんですけど、まあいいかなって。

背後に映った手は、青白い、というか、青みがかかっている。が、霊的なものというよりは、確かな実体を持ってそこに存在しているようでもある。

 

F:これもバイト先で知り合った人なんですけど、廃品回収?みたいなのしてる人がいて、まとめて預かってもらって。

衣類の山から、手首から先が出ていて、天井に向かってまっすぐ屹立している。微動だにしないために、作り物のようにも見える。

Fとの位置関係を鑑みると、成人した人間の手にしては、明らかに小さい。

 

テロップ:ここの暮らしを抜け出したい?

F:やっぱ楽っちゃ楽なんで。いろいろと都合もいいし、まあ、しばらくはいようと思ってます。

なおも話し続けるFの声の音声が切られ、ナレーションが被せられる。

ナレーション:Fさんと同じような暮らしをしている若者が、この店舗だけで……

 

ナレーションの声が流れ続けるなか、取材が終わったのか、カメラがFを映したままで、ブースから出ていこうとする。

Fは何かを言いながら頭を下げている。

青い手は変わらずそこにある。

カメラがブースから完全に出るその瞬間、青い手がゆっくりと左右に揺れる。

 

====書き起こし終わり====

 

【その後の顛末】

お蔵入りになった理由は、放送直前にFが逮捕されたためである。

アルバイト中に同僚を殴りつけ、その後の捜査で違法薬物の所持が見つかったそうだ。

犯行と、青い手との関係性は、わかっていない。

 

 

② 浮気芸人をとっちめろ!妻が考えたガチドッキリ

 

【前提となる情報】

改変期の特番内で行われた、一企画の映像である。

当時、男前芸人として売り出し中だったOが、共演者の女性芸能人にやたらとちょっかいを出しているとして、彼を懲らしめるという建付けのドッキリが企画された。

Oは既婚者であるため、彼の妻と、番組MCが共謀して計画を立てた。

とある偽企画で共演することになったグラビアアイドルに、Oとメールアドレスを交換させ、その後Oが彼女を口説こうとしたら”黒”であると断定し、お仕置きをするという段取りだった。

問題となったのは、ドッキリのネタバラシをする直前の場面である。

 

またこのコーナーは本編集がされる前にお蔵入りが決まった。

そのため筆者が見たのは、オフライン編集と呼ばれる素材を繋いだだけの映像であり、まだテロップやBGMは入っておらず、ナレーションもスタッフの声と思われる仮のものが挿入された状態だった。

 

※フリー素材によるイメージ

 

====以下、書き起こし====

 

アパートの部屋。

入ってくるOグラビアアイドルDが映し出される。

複数の隠しカメラで撮られたと思しき映像が、リレー形式で切り替わっていく。

体に触れようとするOをグラビアアイドルDは巧みにあしらいながら、リビングへと入っていき、ソファに並んで腰かける。

 

別室の映像。

車の中らしき場所で、番組MCと、ゲストの俳優Oの妻が並んでモニターを見守っている。Oの妻は、怒りを表情に滲ませている。

 

番組MC:どうですか、(Oの妻)さん。今の、ご覧になって……。

Oの妻:最悪なんですけど。うわっ、って感じです。

番組MC:本番は、このあとですからね。(Oの妻)さんの声を聞いて、Oが正気に戻って何もせずに帰る可能性もありますから。

Oの妻:うーん……。

ゲストの俳優:いやあ、もうこれ無理でしょ(笑)

 

アパートの部屋に画面が戻る。ソファに座った二人が親し気に会話をしている。

 

仮ナレーション:Oには、最後の審判が待ち受けている。

仮ナレーション:このあと、(グラビアアイドルD)が適当な理由を付けて席を立つ。そのタイミングで、(Oの妻)さんからOに電話をかけるのだ。

 

真っ白な画面に「イラスト挿入予定」という文字だけが映る。

 

仮ナレーション:(Oの妻)さんの声を聞き、Oが浮気をやめて家を出ればセーフ。だが、逆に浮気を継続した場合は、きっつーい天罰が下される!

 

車中。

番組MC:じゃあ、そろそろ始めましょうか。指令を出します。

番組MCが耳に手を当て、手元のマイクのスイッチを入れる。

番組MC:(グラビアアイドルD)ちゃーん。一旦、席を立ってください。

 

部屋の映像に切り替わる。

グラビアアイドルDの耳元は髪で隠れているが、イヤホンが付けられているらしい。

グラビアアイドルD:ねえ、ちょっと汗かいちゃったから、シャワー浴びてきてもいい?

O:え、ああ、うん。

グラビアアイドルD、Oの手を軽く握ったまま立ち上がり、Oと視線を交えたまま離れていき、画面の外に消える。

 

車中。

番組MC:すげえな。これもう半勃起ですね。

ゲストの俳優:ちょっとちょっと!

番組MC:じゃあ(Oの妻)さん、いよいよです。お電話を、お願いします。

Oの妻:……はい。

Oの妻が携帯電話を取り出し、操作する。

 

部屋。

ソファに一人残されたOが、無表情で、背筋をまっすぐ伸ばして座っている。

番組MCの声:Oはあれですね。このあとのことを考えて、精神統一中ですね。

携帯電話の振動音が鳴り始める。が、Oは気にした様子もなく、微動だにしない。

ゲストの俳優の声:あれ、(電話を)取らないですね。

番組MCの声:まさかの無視?

 

Oが立ち上がる。携帯電話の振動音は鳴り続けている。

Oは無表情のまま、キッチンへ向かって歩き始める。隠しカメラが、リレー形式でOを追いかけて切り替わっていく。

仮ナレーション:なぜか、キッチンへと入っていくO。何かを探しているようだ。

O、キッチンの戸棚に手をかけると、ためらいなく開け放つ。

 

車中。

番組MC:えっ、何してんの?

ゲストの俳優:怖い怖い!

Oの妻、怪訝な顔で画面を見つめながら、耳に当てていた携帯電話を下ろす。

 

キッチン。

Oが、戸棚から何かを取り出す。

蛍光灯の光が手に持った何かに反射して、一瞬画面が白飛びする。

画面が元に戻り、Oの手元がはっきりを映る。

包丁を持っている。

 

番組MCの声:は?

ゲストの俳優の声:えっ……。

Oは三秒ほど、無表情で包丁を見つめたあと、ソファへと戻っていく。

 

車中。

番組MCと、ゲストの俳優が唖然とした表情で顔を見合わせる。

Oの妻は口を真一文字に引き結んで、眉間に皺を寄せている。

 

部屋。

包丁を持ったままOはソファへと戻ると、ソファに置かれていたクッションを手に取る。

クッションを持ち上げて、その下に包丁を置くと、上からクッションを置いて隠す。

そのまま、クッションにもたれかかるようにして、腰を下ろす。

再び、無表情で背筋を伸ばして座った状態に戻る。その目はまっすぐ正面を見つめている。

 

車中。

ゲストの俳優:えっ……。これ、どういうこと?

番組MC、言葉を探すように口をパクパクさせている。

Oの妻が何かを呟いているように見えるが、聞き取れない。

ゲストの俳優:(番組MC)さん? えっ、これ(スタッフに向かって?)どうします?

番組MC:……えー、中止です。ネタバラシ行きましょう。

 

====書き起こし終わり====

 

【その後の顛末】

Pさん曰く、この直後に番組MCらが部屋にネタバラシの看板を持って突入。

Oは包丁について聞かれ「ドッキリと気付いて、逆ドッキリをしようと思った」と弁明したらしい。

該当コーナーは話し合いの末にお蔵入りとなり、代わりに過去の素材を繋ぎ合わせた「傑作選」が放送された。

 

Wikipediaベースでの確認にはなるが、OとグラビアアイドルDはこの収録を境に表舞台から姿を消している。(両者とも、当時の所属事務所のタレント一覧からも削除されていた)

その理由がこの番組と関係しているかは不明だ。

 

Oの妻の発言が聞き取れなかった箇所を、音量を大きくして聞き直してみたところ、非常に不明瞭ではあるが、こう言っていたように聞こえた。

 

「え、じゃあ、あのときの血って……」

 

③ 夕方の情報番組と不明男児

 

【前提となる情報】

Pさんの勤める局には、地方にネットワーク局が複数存在する。

次に紹介するのは、そのうちの一局(仮に、X県のXテレビとしよう)で制作された情報番組の1コーナーの映像である。

 

その情報番組は平日の夕方に毎日放送されていて、ある曜日には地元出身のお笑い芸人Kが、県内の注目スポットを紹介するコーナーが存在していた。

問題があったのは、そのコーナーのロケ中の一幕だ。

 

映像自体には特段おかしなところはなく、完パケした素材はそのまま放送で使われる予定だった。

しかし、放送直前にディレクターの一人が問題に気付き、急遽その部分のみ、素材の差し替えを行うことになった。

 

※フリー素材によるイメージ

 

====以下、書き起こし====

 

道の駅らしき建物の前で、スーツ姿の芸人Kが、マイクを手に持ち話している。

入り口横には「本日開店」と書かれたのぼりがはためいており、画面右上には「新スポットへオープン初日に突撃!」というテロップが表示されている。

 

K:いやあ、まだまだ盛りだくさんなんですけども、ちょっと来場されてる方たちのね、お話しを聞いてみたいと思います。

 

K、遠巻きに見ていた中年夫婦と思しき二人組に近寄っていく。妻らしき女性が破顔する。

K:お母さん、今日はどちらから?

女性:X市からです~。うわあ、いつも見てます。

K:あら、ありがとうございます! 何買ったか見せてもらえますか?

 

女性が手に持っていたビニール袋の中身を取り出して、野菜や乾物をカメラに見せていく。

夫らしき男性は、恥ずかしそうに少し俯きながら、その様子を見守っている。

 

K:そしたらね、引き続きお買い物楽しんでくださいね。

Kが夫婦から離れ、周囲を見回す。カメラも一緒に、彼の視線を追う。

 

K:もう一組くらい話を聞いちゃいましょうか。あ、ボク?

 

視線の先では、建物の角に半ば隠れるようにして、十歳くらいの男の子が佇んでいる。

黄色いゲームキャラの描かれたトレーナーに、カーキ色のハーフパンツを履いた姿。

Kとカメラが、男の子に近づいていく。

 

K:こんにちは~。Xテレビの(番組名)だよ。わかるかな~?

男の子が無表情で頷く。

 

K:よかった~。ねえ、ボクは何歳かな?

男の子は答えない。

 

K:お父さん、お母さんはどこ?

男の子は答えない。

 

K:今日は、お買い物に来たのかな?

男の子は答えない。

K:(カメラの方を向いて)完全に、怖がられちゃってます。

「焦」という文字が大きく表示される。

 

K、しゃがみ込んで男の子と視線を合わせる。

男の子は無感情にKを見つめ返している。

 

K:おじさんのこと知ってる?

男の子:…………おばあちゃん。

K:おばあちゃん!?

 

男の子の視線は、Kの後ろに向けられている。

Kが振り返り、カメラもそちらを向くと、腰の曲がった小柄な老婆がゆっくりと向かって来ている。

 

K:ああ! この子のおばあちゃん!

老婆:すみません、うちの子がご迷惑をおかけしました。

老婆が、甲高い声で言う。男の子の前まで来て、彼の手を取る。

 

老婆は男の子と手を繋いだ状態でKとカメラに向き直り、

老婆:皆さまに、よいことがたくさん、訪れますように。

と甲高い声で言って、深々と頭を下げる。男の子もそれに倣う。

 

K:ええっ、あーすごい。ご丁寧に……。ありがとうございます~!

Kが困惑したように、二人と、画面の手前(おそらくスタッフがいる)を交互に見る。

 

K:ええ、では、現場からは以上でした! 皆さんもぜひ、週末のお出かけに来てみてくださーい!

Kが明るい声で言う背後では、老婆と男の子が頭を下げ続けている。

 

====書き起こし終わり====

 

【その後の顛末】

ディレクターが素材の差し替えを行った理由は、この映像が、とある事件と関係していると気付いたからだった。

 

放送の数日前に、X県在住の少年Sくん(10)が行方不明になっていた。

報道されていた失踪時の服装は、黄色いゲームキャラのトレーナーにカーキ色のハーフパンツというもので、顔立ちも含めてVTR中に映っていた男の子と特徴が一致していた。

 

ディレクターは事件への影響を鑑みて該当部分の放送を取りやめ、すぐにVTRを警察と自局の報道室へと渡した。

なお、Sくんの祖母は、父方、母方ともに逝去しており、映っていた老婆の正体はわからなかったという。

また問題の映像は、なぜか報道では一切使用されなかった。

その後も懸命な捜索が続けられたものの、Sくんは数日後に遺体となって発見された。

 

ちなみに、かなり古い事件であるにもかかわらず、Sくんの失踪事件の情報は、まだネット上でも閲覧できた。

筆者としても気になったため、いろいろと検索ワードを変えながら調べてみたものの、老婆に言及する記事などは発見できなかった。

また、時系列についても、少し不可解な部分があった。

あくまでネットで拾えた情報ベースにはなるが、事件のタイムラインは下記の通りだ。

 

n月1日 Sくんが失踪

n月7日 番組に映っていた道の駅(仮)が開業。Kが収録に訪れ、Sくんらしき男の子が映る

n月11日 番組の放送日。ディレクターが映り込んだSくんに気付き、該当部分をカット

n月13日 Sくんが遺体となって発見される

 

遺体発見後に発表されたSくんの死亡推定日時は、n月3日~5日にかけてとのことだった。

 

 

④ 二人いた

 

【前提となる情報】

とあるゴールデン帯のバラエティー番組の、スペシャル回での出来事。

二時間の放送枠におけるメインの企画で、番組のレギュラー出演者チームお笑い芸人チーム、次クールに放送予定のドラマの出演者による俳優チーム三つ巴で、ゲームの対決を行っていた。

 

問題となったのは、番組終盤の1カットである。

編集スタッフは異常に気付かずスルーしてしまい、出演していた人気俳優Hの所属事務所からの指摘で、問題が明らかになった。

 

番組自体はそのカットを差し替えて、無事に放送された。

 

※フリー素材によるイメージ(画像素材:PIXTA)

 

====以下、書き起こし====

 

煌びやかなセット上に、チームごとに異なる色のツナギを着た3チームの出演者たちが並んでいる。

画面左から、レギュラーチーム芸人チーム俳優チームの順番。

 

レギュラーチームの寄りのカット。

番組レギュラーの芸能人七名が並んでいて、中央に番組MCがいる。

番組MC:さあ、(ドラマタイトル)チーム。ここで頑張れば一発逆転も可能です。

 

俳優チームの寄りのカット。

ドラマの出演者七人が並んでいる。

俳優M:ここは絶対、点を取りに行きます。だよな、みんな?

俳優Mがチームメイトを振り返り、各々が威勢のいい声を出す。そのなかに、俳優Hもいる。

 

レギュラーチームの寄りのカット。

番組MC:最終ゲームは、誰が行きますか?

 

俳優チームの寄りのカット。

各々が不安そうに顔を見回し合う。

 

芸人チームの寄りのカット。

芸人W:おい、早く決めろよ!

 

引きのカット。

笑う一同。番組MCが、芸人Wを叩きにいく。

 

俳優チームの寄りのカット。

俳優M:ここはもう! 主演なので、僕が行きます!

俳優Mの背後には、俳優Hが立っている。

 

レギュラーチームの寄りのカット。

番組MC:素晴らしい! では準備お願いします!

番組MCの背後には、俳優Hが立っている。

 

引きのカット。

派手な音楽が流れ始め、各人が移動を始める。

番組MCの背後には、俳優Hはいない。

 

====書き起こし終わり====

 

【その後の顛末】

複数台のカメラで撮られた映像は、編集前に同期が取られており、別時間軸の映像が紛れ込むことは基本的にあり得ない。

また、スタジオではレギュラーチームと俳優チームは十メートルほど離れた位置に立っていたので、往復には走っても数秒の時間がかかる。

つまり、瞬時に切り替わった二つのカットに、俳優Hが同時に存在できる可能性は限りなくゼロに等しい。

 

二人の俳優Hは、どちらも同じ衣装を着ており、同じような笑顔で立っていた。

外見上の違いは、ほとんど見受けられなかった。

 

関係があるかは不明だが、この番組の放送から約四か月後に、俳優Hは週刊誌にアイドル女優との熱愛を報道されており、事務所を通して否定のコメントを出している。

また俳優Hは、現在も第一線で活躍を続けている。

 

以上です

 

ちなみに、この記事を出す前にPさんにチェックを依頼したところ、「確認したら責任が生じるから絶対に見たくない」と言われてしまいました。

 

ので、この記事は今後、何らかの理由で予告なく削除される可能性があります。あらかじめご了承ください。

 

全部嘘なので、そんなことにはならないと思いますが。

 

(おわり)