【わいわい草原の愉快な仲間たち】

 

 

 

 

●ゲボ太くん

 

わいわい草原のゴミ箱を漁って暮らす、クマなのかイヌなのか判然としない中途半端な動物。好奇心旺盛で、気に入った女性の後をつけ回しては「ハイチュウおくれよう」とお菓子をせびる。左耳をマイク・タイソンに食いちぎられた過去を持つ。

 

 

 

 

 

●トンガリ先生

 

ゲボ太くんの家の近くに住む、変わった頭の形をした人。唾液をつけた虫ピンを、アイドルのグラビアに刺していく作業をライフワークとしている。結構物知りのため、ゲボ太くんから毎回頼りにされているが、肺を患い、医者から「あと半年もてばいい方」と言われている(ゲボ太くんには秘密)。

 

 

 

 

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 「トンガリ先生ー! オイラ倦み疲れるほどセックスがしたいから、合コンの必勝法を教えておくれよー!」

 

 

 

 「あはは、お盛んだなぁゲボ太くんは。教えてあげてもいいけど、今度からそういう用件で夜中の2時に訪ねてくるのはやめてね?」

 

 

 

 「お、オイラ、痛いほど勃起してるっ…!」

 

 

 

 「聞けよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「まぁ、みんな大体こんな感じで席に座ると思うんだけど、こんな風に普通に座っちゃってる時点で、もう合コンという『場』に支配され始めてると思うんだよね」

 

 

 

 「えーっ! 普通に座っちゃダメだったの!? (カチッ、カチカチカチ)」

 

 

 

 「そう。人間っていうのは型にはめられると、型通りの行動しかできなくなるもんでね。入り口からこんなありふれたパターンじゃあ、その後の展開も決まりきってる。女の子たちは、ワンパターンの合コンにはもう飽き飽きしてるんだ」

 

 

 

 「ってことは、最初から型破りな座席のとり方をすれば、これまでになかった斬新な展開の合コンを女の子に提案できるってわけだ! (カチカチカチッ)」

 

 

 

 「そう! 鋭いねぇ、ゲボ太くんは。でも、人の家の金庫を開けながら話を聞くのはやめてね」

 

 

 

 「(ガチャッ)」

 

 

 

 

 

 

●トンガリ先生の合コン席順奥義「鶴翼の陣に対して魚鱗の陣」

 

 

 

 

 

 「例えばこんな席順はどうだろう」

 

 

 

 「すごいや! 広範囲に展開して包囲戦を仕掛ける鶴翼の陣に対して、こちらは戦力を前方に集中させる魚燐の陣で中央突破をはかるんだね!」

 

 

 

 「そう。鶴翼の陣は兵力で圧倒できる時には有効な陣形だけど、合コンは大概の場合男女同じ数で行われるだろう? ならば戦力が分散してしまう鶴翼の陣は逆に不利だ。魚燐の陣や、蜂矢の陣のような、集中突破型の陣形をとるべきだろうね」

 

 

 

 「狙うは大将首ただ一つだね!」

 

 

 

 

 

 

●トンガリ先生の合コン席順奥義「別働隊で敵補給路を断つ」

 

 

 

 

 

 

 「あとこんなの」

 

 

 

 「すごいや! 本隊が敵の主力を引きつけてる間に、別働隊で敵の兵站を分断する作戦だね!」

 

 

 

 「そう。ただ別働隊にはあまり兵力を割けないから、こちらの企みを悟られると一転して窮地に陥る可能性もあるね。本隊には場を盛り上げる能力に秀でた優秀な人材が必要だよ」

 

 

 

 「敵を知るには、まず己から!」

 

 

 

 

 

 

 

●トンガリ先生の合コン席順奥義「白血球が異物を取り込むように」

 

 

 

 

 

 

 「見てご覧ゲボ太くん、男達が増えすぎた女どもを取り込もうとしている」

 

 

 

 「合コンにも自然淘汰があるみたいだね。壮観だな」

 

 

 

 「ある特定の生き物が増えすぎることは、生態系のバランスを崩してしまうことにつながるからね。最近自殺が多いだろう? ひょっとしたら僕等の遺伝子にも、増えすぎた人口を調節するような機能が備わっているのかもしれないね」

 

 

 

 「最近、よく『死』について考えるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おや? 何だか様子が変わったね」

 

 

 

 「男と女が、まるで手を取り合うようにして…」

 

 

 

 「拡大して見てみよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これは……もしかしたら男と女の枠組みを越えた人間という種族自体の意志が、全ての生命を一つにして新しい命を生もうとしているのかもしれない……」

 

 

 

 「生命の営み、そのシステム自体が、一つ上のステージに昇ろうとしている……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あっ! 中心に見えるあれはまさか!」

 

 

 

 「あれが新しく生まれた命のカタチなのか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   「おおお……! 地球 【テラ】 ……!」

 

 

 

 

(原宿)