
一
これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんからきいたお話です。

え? 人出てくんの???
そりゃそうだろ。何を驚いてんだよ
これって「そりゃそう」なの? キツネだけが出てくる物語だと思ってたんだけど???
『ごんぎつね』の初見プレイって、そこからひっかかるんだ

そっか、人も出てくるんだ……。勝手に、森の中の動物たちの物語だと思ってたな
むかしは、私たちの村のちかくの、中山というところに小さなお城があって、中山さまというおとのさまが、おられたそうです。

お城とか出てくるんだね。「キツネの親子は森の中でどうやって生き抜いていくのか」みたいなストーリーでもないんだ
どうぶつ奇想天外じゃないんだから
「子狐のために母狐が見せた驚きの行動とは!? 」でCMいったりしないの?
本の途中でコマーシャル挟んでるの見たことないだろ
その中山から、少しはなれた山の中に、「ごんぎつね」という狐がいました。

きつね出てくんじゃ〜ん!
作中にタイトルが出てきただけなのに、はしゃいでるなぁ
「みんなが言ってたアレだ!」ってワクワクするんだよ。ネットミームの元ネタを初めて見たときと同じ気持ちかも
ごんは、

え? 「ごんぎつね」の「ごん」って名前なの? そういう種類のキツネがいるわけじゃないんだ
キタキツネとかスナギツネみたいな種族名だと思ってたのか
これ、すんなり理解できる人ばかりじゃないだろ。かまどだって、初めて読んだときは勘違いしたんじゃない?
ごんぎつね初見の感想なんて覚えてないよ。もう30年前の話なんだから
ごんは、一人ぼっちの小狐で、しだの一ぱいしげった森の中に穴をほって住んでいました。

「一人ぼっちの」ね。なるほどなるほど、そういうタイプの話か!
だんだん話のテイストが分かってきたみたいだね
要するに、人間とキツネの交流を描くハートフルなお話ってことでしょ?
え? ……あ〜、うん。どうだろうね

俺、こういうギャップのある二人が相棒関係になってる話が好きなんだよ! サトシとピカチュウとか『寄生獣』のミギーとかさ!
……。
凸凹コンビがぶつかり合いながら仲良くなっていく話って、やっぱ昔から定番だもんね!
(……大丈夫か、これ?)
そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出てきて、いたずらばかりしました。

はいはい。やんちゃな子ギツネなのね。「コラ! ごん! またイタズラして!」みたいな感じなのかな
はたけへ入って芋をほりちらしたり、

ごんからすると、しょうがないよな〜。生きていくためには食べ物が必要なんだから
イタズラじゃなくて、食事だと捉えてるんだ
まあ、人間からするとイタズラに見えちゃうのも分かるけどね
菜種がらの、ほしてあるのへ 火をつけたり、

火つけんの???
まあ、イタズラ狐だからね
イタズラのレベル超えてない? こんなの放火じゃん
百姓家の裏手につるしてあるとんがらしを

あ〜、分かるかも。どこで見たのかは分からないけど、「古き良き日本の景色」というイメージだけはある
なんとなく、原風景として印象に残ってる景色だよな

2人がイメージする干しとうがらし
機関銃の弾みたいに唐辛子が装填されてるやつでしょ?
物騒な言い方するなぁ
こういう細かいところで、昔話っぽい雰囲気が伝わってくるね。いいぞいいぞ……
百姓家の裏手につるしてあるとんがらしをむしりとって、いったり、いろんなことをしました。

なるほど……。人ん家に火をつけたり、農作物を盗んだり……

害獣じゃね?
なんてむき出しの言い方だ
思ってたキツネと違うなぁ。このキツネって目がとんがってるタイプ?
それは知らないけども
或秋のことでした。

舞台は秋か〜! いい話じゃん!!
みくのしんって、季節の描写になると途端に笑顔になるよな
俺は季節が好きなんだよ。特に秋なんて最高じゃん。昔話の舞台にはうってつけじゃない?
言われてみれば、昔話ってなんとなく「秋」のイメージあるかも

ただ、秋はいっぱい作物が採れる季節でもあるからな。ごんのいたずらもシャレにならない時期よ?
ごんごつねを農家目線で読む人いるんだ
二、三日雨がふりつづいたその間、ごんは、外へも出られなくて穴の中にしゃがんでいました。

2-3日の間、何も食べてないのか。やっぱり自然の中で生きていくって大変なんだな〜
『ごんぎつね』を読んでて、そういう感想を抱くのは新鮮だな
そりゃあ、人ん家の食べ物にも手を出すよな。人間の都合で害獣扱いしてごめん
雨があがると、ごんは、

……?
ん? なに?
あぁ……「ごんは」か
どうした? 何か分かりにくいところでもあった?
いや、突然「ごんは」って3文字が出てきたんだけど

一瞬「ごはん」って書いてると思って嬉しくなっちゃった
食いしん坊の見本みてえなこと言ってんじゃねえよ
2〜3日メシ食ってないっていうから、当然「ご飯」がくると思うじゃん! ぬか喜びさせないでよ!
ごはんの3文字でぬか喜ぶのもどうかと思う
雨があがると、ごんは、ほっとして穴からはい出ました。

何にしろ、やっとごんがご飯を探しに行けるってことか
空はからっと晴れていて、

いいじゃん! 秋の雨上がりは、「やっと夏が終わって、季節が変わった!」って思えて好きなんだよな〜!
そうなんだ。俺はあんまり感じたことないけど
え〜? それまでの夏と違って、「暑い」じゃなくて「涼しい」ことで晴れを実感するってめっちゃ幸せじゃない?
みくのしんって本当に自然の恵みで生きてるよな
百舌鳥の声がきんきん、ひびいていました。

なおいいじゃん! 秋の雨上がりって、街が早朝みたいな空気になって気持ちいいしさぁ〜! そこに鳥の声が聞こえてくるなんて、めっちゃ絵になるわ!
季節の描写が始まると、みくのしんの中で一気にイメージの描画が進むよな。そりゃあ、人より読書時間かかるわけだ
しかも、これって昔話にでてくるような村の話なんでしょ? ってことは、空気も澄んでて気持ちいいと思うな〜

(本を読みながら深呼吸してる……?)
秋にしてはブルッとするくらい寒い瞬間もあってさ。冬の予告編みたいでソワソワするんだよね!
『ごんぎつね』で、ここまで風景の描写に集中したことなかったな
ごんは、

ッ!!
「ごはん」じゃねえよ
ダメだ。「ごんは」ってひらがなで書いてあると、どうしても「ごはん」だと思っちゃうな
どうしてもご飯だと思っちゃうわけないだろ。腹減ってんの?

あれだけ秋の話されたら、食の話が続くと思うでしょ。こんなの、ひっかけ問題だろ!
新美南吉もそんな罠は仕掛けてないはずだ
俺は季節とメシの話になるとスイッチが入っちゃうの! こんなことで俺を惑わせないでほしい!
なんて欲望に忠実なスイッチだ
ごんは、村の小川の堤まで出て来ました。

「堤」って何? 堤防の「堤」と同じ漢字だけど……
だいたい同じ意味だよ。要は「土手」ってこと
あ〜。子どもたちがザリガニ釣りしてそうな場所ってことか
あたりの、すすきの穂には、まだ雨のしずくが光っていました。

分かる分かる。ブルブルッと水を振る前の傘みたいになってるんだよね。秋の景色って濡れててもサマになるからいいよな〜
みくのしんが読む季節の描写は、生き生きしてるなぁ。本当に季節が好きなんだね
あと、木のデコボコした根っこにも雨水が溜まってそうじゃない? テンションあがって、そこを歩こうとするんだけど、足がズリィッ! とスベって「アブねっ!」って思うんだよな〜!
いよいよ描写のない範囲までイメージが拡がってんじゃん

こういう雨上がりの水って、夏だったらギラギラして見えるでしょ。でもそれが、秋だと落ち着いた光に見えるから不思議だよね
いやまあ、言われてみれば分かるような気もするけど
空気中が見えない「秋」でいっぱいになってる感じがして、風も柔らかい気がしてくるじゃん。そういうときに、「あ〜、季節が変わったんだな〜」って実感するんだよな〜
『ごんぎつね』を読んでて、でここまで季節の移り変わりに思いを馳せる奴も珍しいな
川は、いつもは水が少ないのですが、三日もの雨で、水が、どっとましていました。

あ〜そっかそっか。増水して川の水が多くなってるのか。たしかに、さっき読んだときも、なんとなく「濁った水」っぽい感じがしてたんだよね〜
どういう感覚で文字を読んでるんだよ
ただのときは水につかることのない、川べりのすすきや、萩の株が、黄いろくにごった水に横だおしになって、もまれています。

ほら。濁ってんじゃん
本当にどういう感覚で文字を読んでるんだ
ごんは川下の方へと、ぬかるみみちを歩いていきました。

ぬかるみみち? ……ああ、ぬかるんだ道ってことか
昔はコンクリートもないから、雨上がりはどこもこんな感じだったんだろうね
にしても、ひらがなばっかりで読みにくいなぁ。ゲームボーイのテキストじゃないんだから、多少は漢字で書いてくれていいのに
わがまま言うなよ。漢字にしたら読めないだろ
舐めんなよ。読めるに決まってるだろ

ぬかるみみち
ごめんなさい。読めませんでした。
ほら見ろ
ひらがなは読みにくくて、漢字は読めなくて……ちょうどいい文字ねえのかよ! もう、ひらがなと漢字の中間の文字作ってくれ!
今さら日本語にアプデを期待すんな
ふと見ると、川の中に人がいて、何かやっています。

さっそく人が出てきましたねぇ!!
なんて無垢な笑顔だ
あとはもう、人と狐のハートフルストーリーが始まるだけか。最初は警戒してるけど、そのうち絆が芽生えて、最終回では一緒に暮らすようになったりするんだろうね
……本当に『ごんぎつね』を知らないんだね。正直、半信半疑だったけど、どうも嘘ではないみたいだ

うん、マジで知らないわ。読んでいけば「ここは覚えてる」ってシーンとか出てくると思ってたけど、それすらもない
この年で『ごんぎつね』の初見プレイができるのは羨ましいよ
なんとなく、キツネがお買い物に行く話なのかな〜ってイメージはあったけどね。読んでみたらそれも全然違うっぽいし
(多分、『手袋を買いに』と混同してるんだろうな)
ごんは、見つからないように、そうっと草の深いところへ歩きよって、そこからじっとのぞいてみました。

見つからないように……ね。今はまだ人間に心を許してないから、これくらいの距離感から始まるんだな
「兵十だな」と、ごんは思いました。

兵十……って何? 10番目の兵隊、的なこと?
兵一、兵二がいると思ってる?
全体的にカンタンな日本語で書かれてるけど、昔の話だから気を抜くと「なにそれ?」って言葉が出てくる緊張感があるな。俺、兵十って言葉知らないんだけど……
まあまあ。読んでいけば分かるさ
兵十はぼろぼろの黒いきものをまくし上げて、腰のところまで水にひたりながら、魚をとる、はりきりという、網をゆすぶっていました。

なるほど、人の名前か!「兵十」という人が魚を捕ってるんだね
そうそう。初見で分からなくても、別に問題はないよ
あぶね〜! キツネに知識で負けたのかと思った! 危うく恥をさらすところだったわ!
それは、さっきのごはんのくだりで済んでると思う
はちまきをした顔の横っちょうに、まるい萩の葉が一まい、大きな黒子みたいにへばりついていました。

ずっとキツネ目線で話が進んでるなぁ。これってキツネは言葉が話せる設定なの? どれくらいリアルな話?
みくのしんって、物語のリアリティラインを細かく気にするよな。読んでいけば分かるし、そんなに気にしなくていいよ?
う〜ん。これがマンガだったら、絵を見ればなんとなく作品のトーンが分かるけどさ。文字だけだとノーヒントで雰囲気すら掴めないから、どうしても気になっちゃうんだよ
そういう感覚なんだ。たしかに、物語が進まないとフィクションレベルの当たりがつけられないのって小説くらいなのかも

この話のイメージがアニメっぽいのか、実写っぽいのかすら分からないまま読み続けるのはうっすら不安じゃない?
俺は気にしたことないな。でも、それって作者名とか好みのジャンルとかで、読む前からある程度情報が入ってるからだろうね。みくのしんのようにニュートラルな状態で本を読む機会がなくなっただけな気もする
なんかチャットで「ちょっと話したいから、時間ちょうだい」とだけ言われたときの感覚に似てると思う。いいニュースか、悪いニュースかも分からないままソワソワするように、自分の態度が決められないときの居心地の悪さを感じるんだよ
だから、どれくらいデフォルメされた話なのかを早めに把握したくなるのか。なるほどなぁ

ごめんごめん。ややこしい話になっちゃったね
謝ることないだろ。個人的には面白い話だったよ。だから表紙とかあらすじって大事なんだな〜って思ったわ
本当は、「ファンタジーレベル4:★★★★☆」みたいな目安がほしいくらいだけどね
激辛メニューの表記じゃないんだから
しばらくすると、兵十は、はりきり網の一ばんうしろの、袋のようになったところを、水の中からもちあげました。

で? この兵十って人は、川で魚を捕ってるんだっけ?
そうそう。それを、ごんが草陰に隠れて見てるシーンだね
一人でやってるってことは、仕事じゃないっぽいね。その日の晩飯のための魚を捕ってるのかな?
その中には、芝の根や、草の葉や、くさった木ぎれなどが、ごちゃごちゃはいっていましたが、でもところどころ、白いものがきらきら光っています。

これは魚の腹だろうな〜!
食につながる情報が出てくるとやけに笑顔になるなぁ
魚の腹ってキレイで美味そうなんだよな〜! まだ生きてるのに「美味そっ!」って思っちゃうのは魚くらいだよな!
それは、ふというなぎの腹や、

うなぎ捕れてんじゃん!!!!
読書より漁獲高に夢中になってない?
魚どころじゃねえぞ!!! 川のうなぎ?!?!? めっちゃいいもの釣れたなぁ!!!!!
これが、さっきまでリアリティラインについてマジメに語ってた奴と同じ人間か?
大きなきすの腹でした。

大きなキスまで!?!???
お前の食欲のスイッチ、切ってくれよ
キスの旬は夏だけど、秋口くらいまではまだ美味しく食べられるよなぁ!! 何より、うなぎは秋が旬でしょ!! いいなぁ〜!!!

食いてえ〜〜〜!!!
集中力がなさすぎるのか、ありすぎるのか分からないな
キスは天ぷらにしましょう! うなぎはさばくの大変だけど、蒲焼にするのはどうでしょうか!? お願いします!
兵十は、びくの中へ、そのうなぎやきすを、ごみと一しょにぶちこみました。

今夜の晩ご飯は最高だろうな……ッ! いいなぁ……!!
どんだけメシ好きなんだ。兵十より喜んでんじゃねえか
いやいや、これって昔の話でしょ? ってことは「今日何が安いかな」とか「何を食べようかな」じゃなくて、その日にゲットしたもので献立が決まるんだよ?! それでうなぎが捕れたんだから、兵十はもっと嬉しいだろ!!!

あ、でもうなぎの血には毒があるから。気をつけてね
今そこを気にする奴がいるか
そして、また、袋の口をしばって、水の中へ入れました。

うなぎは刺し身も美味いんだよなぁ。兵十は食べたことあるのかな……さすがに血抜きの技術はもってないか……?
いつまでメシの話してんだよ。さすがに集中力が途切れすぎじゃない?
でも、兵十に血抜きの技術があったらどうする? 全部、刺し身でいく? それとも、半分蒲焼にして、半分刺し身でいく? いや、7:3で刺し身を……
調理配分はどうだっていいから、続きを読めって

食いてえ〜〜〜!!!!
いい加減にしろよテメエ
うなぎが捕れたのに平気な顔して読んでる方がどうかしてるだろ! かまどはうなぎの刺し身を食べたことないから平常心でいられるんだよ!
あったとて、そういうリアクションにはならないんだよ

今度、食べに行かない? 伊豆熱川に美味しい店があるらしいんだけど……
読書中にグルメツアーの予定を立てるな
ごんぎつねを読むために必要な情報かもしれないだろ! 取材のために有給取って食べに行こうや!
読者取材のためにお休みする奴があるか。百歩譲って、物語に「うなぎの刺し身」が出てきてからにしろよ
なんだよ! 頭が硬いなぁ!!

頼む……うなぎの刺し身のシーン出てきてくれ……
なんて不純な動機で読書してんだ
ついでにケンタッキーとタルタルのり弁当も出てこい……!!
胃袋没収するぞ
兵十はそれから、びくをもって川から上り
びくを土手においといて、何をさがしにか、川上の方へかけていきました。

おいおい、うなぎをほっといちゃダメだろ〜! これは、いたずらギツネが黙っちゃいないよ
もう、ごんが手出しすると思ってるんだね
そりゃそうじゃん! うなぎなんてみんな食べたいんだから! これは兵十が不用心すぎる!
兵十がいなくなると、ごんは、ぴょいと草の中からとび出して、びくのそばへかけつけました。

まあ、3日も穴の中で過ごしてたわけだからね。こっちは腹ペコなんだし、しょうがないよな
ちょいと、いたずらがしたくなったのです。

うなぎの血は毒があるから気をつけてね……
それ、キツネにも周知するんだ
ごんはびくの中の魚をつかみ出しては、

魚……ね。うなぎには手を出さないんだ。お行儀のいいつまみ食いだね
つまみ食いにお行儀いいも悪いもないと思うけど
まあ、キツネにとっては普通のお魚でも十分ご馳走だもんな。プリップリのお魚の腹にガブリと噛みついて……
はりきり網のかかっているところより下手の川の中を目がけて、

?
ぽんぽんなげこみました。

何してんの????
何って、イタズラでしょ。さっきそう書いてあったじゃん
食わずに捨てんの??? 俺はこんなに腹減ってるのに???
お前の腹具合は知らないけども
どの魚も、「とぼん」と音を立てながら、にごった水の中へもぐりこみました。

もったいねえ〜〜〜〜!!! どうせ投げ込むなら俺ん家の玄関にしろよ!!!
デケえ声でみっともないこと言うな
どうせ捨てるんなら半分くれよ! この魚を山分けしたあとは、お前の好きにしていいからさぁ!!!
ごんぎつねと共犯になろうとする奴は初めて見たな

まあ、コイツもお母さんいないわけだからね。かまってほしくてやってるのもあるのかな
兵十のことが憎くてやってるわけじゃないだろうね。「ちょいと、いたずらがしたくなった」って言ってたし
ただ、うなぎに手をかけたら絶対許さないけどな。他の雑魚に関しては許す。兵十もうなぎさえ残ってれば文句は言わないと思うし……
一ばんしまいに、太いうなぎをつかみにかかりましたが、

はい、もう笑えませんね
みくのしんの逆鱗に触れちゃった
これは遊びで手にかけていい魚じゃねえんだよ。うなぎで遊んでいいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだろ
こんなところで戦場の理屈を適用するな
何しろぬるぬるとすべりぬけるので、手ではつかめません。

たしかに、キツネの手じゃ難しいよな! うなぎって人間の手でも掴みにくいらしいしね
コイツ、何でこんなにうなぎに詳しいんだよ
昔、うなぎ屋でバイトしてたからね。給料もらいながら、うなぎの匂いが嗅げてマジで最高でした
ごんはじれったくなって、頭をびくの中につッこんで、うなぎの頭を口にくわえました。

血がなぁ……
まだそこを心配してあげてるんだ
正直、ごんと兵十のどっちの味方になって読めばいいか測りかねてるんだよな……

今のところは兵十寄りだけどね。子どもとは言え、うなぎに手を出したらダメですよ
うなぎの扱いに厳しいなぁ
そらそうだろ! 兵十だって、雨上がりの増水した川の中で頑張って魚とったのにさぁ! しかも、うなぎなんて滅多にとれないし……
まあまあ。ごんからしたら、ちょっとしたイタズラのつもりなんだから

ふうん? かまどはキツネ派ってこと?
別にどっちの肩を持ってるわけでもない
じゃあ、かまどはイタズラで人のうなぎに手を出してもいいと思ってるんだな?
俺、ごんぎつねでお前と揉めたくないよ
うなぎは、キュッと言ってごんの首へまきつきました。

バチ当たるの早っ! 自業自得のRTAじゃん
そのとたんに兵十が、向うから、

やばい! バレたッ!!!
(そんなドキドキしながら読むシーンじゃないんだけどな)
兵十はどう出る? さすがに、「こら! まったくもう〜!」ではすまないんじゃ──
「うわアぬすと狐め」と、どなりたてました。

ブチギレじゃねえか!!
爆笑しながら『ごんぎつね』を読む奴があるかよ
もっとトムとジェリーみたいな関係性だと思ってた! 「ごん! お前はいつもイタズラばかりして〜!」みたいな感じじゃねえのかよ!

うわアぬすと狐め!!!!!だって!!!
なにも、そんな迫真の演技を伴わなくてもいいだろ
なにがキツネと人間のハートフルストーリーだよ!!! なんなら駆除しそうな勢いじゃねえか!!
……。
ごんは、びっくりしてとびあがりました。

まあ、いわゆる「出会いは最悪!」ってやつだよね。ここから始まって、最終的に絆が芽生えて……ってことでしょ?
……うん、まあ。そうかもね
『ウォーターボーイズ』とか『ルーキーズ』とかもそうだったよね。最初はケンカばかりだった奴らが、だんだん心をひらいていくから感動するんだもんな
……。
うなぎをふりすててにげようとしましたが、うなぎは、ごんの首にまきついたままはなれません。

で、どうなんの? もう兵十に捕まるの!?
ごんはそのまま横っとびにとび出して一しょうけんめいに、にげていきました。

逃げ切った……! すごいな、この本ってアクションシーンあるんだ……
これをアクションシーンだと捉える人いるんだ
ごんからしたら本当に「決死」の逃亡劇だからね。捕まったら死ぬに決まってるもん
ほら穴の近くの、はんの木の下でふりかえって見ましたが、兵十は追っかけては来ませんでした。

そりゃそうだよな〜! 兵十にしてみれば、こんなの追いかける気も失せるよな!
みくのしんだったら死に物狂いで追いかけるんだろうな
いや、俺でも同じだと思う。やっぱりこの話って、ファンタジーって感じじゃなくて、実写寄りなのかも! これはリアリティあるよ!

こういうときに「こらー!待て待てー!」みたいな追いかけっこはフィクションの中だけ。大人はそんなキレ方しませんよ
そう? うなぎを取り返すために追いかけるのが自然じゃない?
兵十の立場になって考えてよ。タダで手に入るはずのうなぎを、キツネが遊んで捨ててたんだよ?

「ハイ、殺します。アイツ、ゼッテーぶち殺します」ってなるに決まってる
児童文学に「ぶち殺す」って文字列は出ちゃダメだろ
俺も、ベランダで育ててたナスをネズミに食い荒らされたときこうだったもん。人が駆除を決意するときって、こういう顔になるんです
ごんは、ほっとして、うなぎの頭をかみくだき、やっとはずして穴のそとの、草の葉の上にのせておきました。

ここで第一章が終わりなんだって。こんな話なんだ! 全然知らなかったわ!
読む前のイメージとだいぶ違ったみたいだね
でも、読み始めたら「こういう感じの話か」って分かった気がする。本は読んでこなかったけど、マンガとか映画で物語自体にはいっぱい触れてきてるからね

つまり、ここでごんと兵十の因縁ができたってことでしょ? ここから、何かアクシデントを2人で乗り越えたりして、だんだん仲良くなっていくんだろうね
……。
最終的に一緒に住んだりするんじゃないかな。あ、でもネタバレはしないでね? せっかくなら最後まで楽しみたいし
今さらごんぎつねのネタバレに配慮するのも難しいな
二
十日ほどたって、ごんが、弥助というお百姓の家の裏を通りかかりますと、そこの、いちじくの木のかげで、弥助の家内が、おはぐろをつけていました。

二部になったら新しいキャラが出てきたな。次は弥助って人がイタズラのターゲットなのか?
鍛冶屋の新兵衛の家のうらを通ると、新兵衛の家内が髪をすいていました。

新兵衛? 次々と新キャラが出てくるなぁ……

これってオムニバスのいたずらエピソード集なの? ドッキリ-1グランプリみたいな感じ?
それじゃあ、ただの害獣の被害報告書になっちゃうだろ
もしくは、カチカチ山みたいなスタイルなのかな。いじわるギツネを誰かが成敗してくれました……みたいな話?
さあ、どうだろうね。気になるなら続きを読んでみたら?
ごんは、「ふふん、村に何かあるんだな」と、思いました。

「ふふん」だって! もういたずらする気マンマンじゃん!!
「何だろう、秋祭かな。祭なら、太鼓や笛の音がしそうなものだ。それに第一、お宮にのぼりが立つはずだが」

生意気に状況を分析しやがって……。次なるイタズラの一手を考えてんのか?
こんなことを考えながらやって来ますと、いつの間にか、表に赤い井戸のある、兵十の家の前へ来ました。

出た! 兵十だ!!
そんな「待ってました!」みたいな声出されても
いろんなキャラを紹介したあとに、因縁の相手が再登場!? これは盛り上がってきたなぁ!!
『ごんぎつね』で見せる盛り上がり方ではない
その小さな、こわれかけた家の中には、

へえ、兵十の家はそんな感じなんだ。あんまりお金持ってないのかな?
昔の話だし、当時の庶民はだいたいそんなもんなんじゃない?
だったら、なおさらうなぎの一件は後をひくだろうな。俺だったら半年は引きずるもん
大勢の人があつまっていました。

なんだ? ごんにイタズラされた兵十の家に、人がいっぱい集まって……

猟友会?
駆除の意思が固すぎる
よそいきの着物を着て、腰に手拭をさげたりした女たちが、表のかまどで火をたいています。

外で飯作ったり、お化粧してたり……何かのイベントがあるんだろうな
ごんも「秋祭りかな」って言ってたしね
大きな鍋の中では、何かぐずぐず煮えていました。

なんで「ぐずぐず」って怖い表現してんの? 普通、鍋なら「ぐつぐつ」とか「コトコト」とかだろ
たしかにね。少なくとも、美味しそうに表現する意図はないんだろうな

……な〜んか、不穏な雰囲気じゃない? これから嫌なことでも起きんの?
(ここで不穏な空気を察知してるんだ。めちゃくちゃなようで読むところはちゃんと読んでるんだな)
鍋の煮えてる音とか、食器がカチャカチャ鳴る音だけが響いてるというか……。ここで急にBGMがとまった感じがするんだよな〜
BGM鳴らしながら本読んでたんだ。なんて感覚型の読書だ

考えすぎかな? 単純に子ギツネからしたら、普通の光景も不気味に見えるってことなのかもね
いろいろ考えを巡らせてるなあ。まあ、読んでいけば分かると思うよ
案外、これも単なる芋煮会だったりしてね! ほら、このお話もなんとなく東北っぽいしさ!
「ああ、葬式だ」と、ごんは思いました。

葬式なの????
うん
芋煮会は?
開催されてません

でも、大きな鍋……

煮葬???
聞いたことない日本語だな
え? もしかして……死体を鍋で煮て処分してんの???
そんな因習村みたいな儀式しねえよ。多分、参列者に振る舞う料理を作ってるシーンだと思うけど
なるほど。昔はそういう光景が当たり前だったのか……
その小さな、こわれかけた家の中には、大勢の人があつまっていました。
よそいきの着物を着て、腰に手拭をさげたりした女たちが、表のかまどで火をたいています。
大きな鍋の中では、何かぐずぐず煮えていました。
ここまでやけに不気味な雰囲気だったから、鍋の中身も何か意味がありそうに思っちゃった
この文章から、「何かありそう」な緊張感を覚えてたってことか。だから、「葬式」と「鍋」が妙な形で繋がったんだろうな
人間の表情も見えないというか、口から下しかカメラに写ってない感じしない? 無表情&無言で作業してる人たちをヌル〜っと長回しで撮ってるように見えてキモかったんだよ
みくのしんって、カメラワークまで考えながら読書してんの???

冷静になったら恥ずかしくなってきた。お葬式の光景をみて、「兵十のお母さんが煮られてる」って言ってたの? 間抜けすぎるだろ
間抜けってことはないだろ。実際、小学校の授業でもよく出る勘違いらしいよ
じゃあ、かまども子どもの頃は同じ間違いしてたってこと?
どうなんだろう。もしかしたら、当時は俺もそんな勘違いしてたのかもしれないけど、今や正解しか覚えてないからなぁ

でも、少なくとも俺は今、小学生と同じ間違いをしたってことだよな。それはいくらなんでもヤバくない?
別にヤバくはない。小学生というより、初めて読む人がやりがちな誤読ってことじゃないかな
これは、さすがにバカにされるだろ。みんなから「こいつ、まともに本読んでねえじゃねえか」って言われない?
そんな意見は気にしなくていいし、そういう人は「ごはん」のくだりで呆れて帰ってると思う
「兵十の家のだれが死んだんだろう」

何にしろ、笑って読んでる場合じゃないってことだよな。人が亡くなってるわけだから
お午がすぎると、ごんは、村の墓地へ行って、六地蔵さんのかげにかくれていました。

六地蔵ってのは……あの、ズラッと並んでるお地蔵さんのこと?
そうそう。『かさじぞう』とかに出てくるようなお地蔵さんのイメージでいいと思うよ
なるほど。ごんはそこに隠れてるわけね
いいお天気で、遠く向うには、お城の屋根瓦が光っています。

墓地から見る景色って抜けがいいから気持ちいいよな〜。俺も実家の墓参り行くから分かるんだけど、田舎の墓地ってビューがいいんだよ
海を望むカフェとかで使う語彙だろ、それ
亡くなった人に「ここで眠っててほしい」と思って選んだ場所なのかな〜とか思って、センチな気分になるんだよね
墓地には、ひがん花が、赤い布のようにさきつづいていました。
と、村の方から、カーン、カーン、と、鐘が鳴って来ました。

なんか雰囲気のある邦画みたいなシーンだ……。1部はドタバタコメディだったのに急な路線変更だな
今は葬式のシーンだからそう感じるんじゃない?
途中で監督変わった?
小説の途中で監督交代しねえよ
葬式の出る合図です。

もしかして、ごんはここでイタズラしようとしてんの? それはやばくない?
やがて、白い着物を着た葬列のものたちがやって来るのがちらちら見えはじめました。

さすがにごんも空気読むよね? 言葉は分からなくても、なんか沈んだ空気ってことは分かるはずだよね?
話声も近くなりました。葬列は墓地へはいって来ました。

でも、今は地蔵の影に隠れてんでしょ? たしか、うなぎのときもそうじゃなかった?
あのときは草陰に隠れてたんだっけ?
そうそう! それと状況が似てるんだよ! あのシーンと対比してるんじゃない?!
人々が通ったあとには、ひがん花が、ふみおられていました。

しばらく誰も来てなかったってことか……。この村でも、久しぶりに人が亡くなったんだろうね
踏み折られた彼岸花を見て、すぐにその感想が出てくるのもすごいな
ごんはのびあがって見ました。
兵十が、白いかみしもをつけて、位牌をささげています。

「かみしも」ってのが何なのか分からないけど……昔の服みたいなこと?
そうそう。要はこの時代の喪服を着てるんだと思えばいいよ
やっぱり兵十の家族が亡くなったのか……。さすがにしんみりしてきたな……
いつもは、赤いさつま芋みたいな元気のいい顔が、きょうは何だかしおれていました。

なんちゅう言い方してんだ
しんみりしてきたんじゃねえのかよ
だってさ、人のことを「赤いさつま芋みたい」って言う??? 相手のことを舐めてないとこんな言い方しないだろ

ごんは、兵十の怒った顔しか見たことないのかもね。イタズラばかりしてるから、いつも怒って真っ赤になった顔ばかり見てるのかもよ?
みくのしんは「赤いさつま芋みたいな顔」で、怒った表情をイメージするんだね。俺は血色がよくて健康的な顔を想像するけど
ええ〜? 絶対、焼き芋みたいな怒り顔だと思うけどなぁ

こんな感じでさ
たしかに、熱々のサツマイモみたいなツラだけども
絶対こんな顔だって! 教科書にもこの顔を載せといてほしい!
教科書にこんな顔載ってたら、全国の小学生が落書きしまくるだろうな
いつもは、赤いさつま芋みたいな元気のいい顔が、きょうは何だかしおれていました。

ごめんごめん。ちょっとふざけちゃったね。今はそんな空気じゃないのに
その自覚はあんのかよ
ごんも「いつもと様子が違うな」って思うかもね。「今日はさすがにおふざけはやめとくか……」って気分にな──
「ははん、

「ははん」って!! なに、鼻で笑ってんだよ!!
別にせせら笑ってるわけじゃないだろ。「はは〜ん」って何かに気付いたときにも言うセリフでしょ
にしても、なんか口角あがってない?! こいつ悪ガキだな〜! もっと優しいキツネの話だと思ってた!
「ははん、死んだのは兵十のおっ母だ」
ごんはそう思いながら、頭をひっこめました。

お母さんが亡くなったときくらいは気を使ってあげようよ。いくらイタズラ好きでも場をわきまえないとさ
さっきまでサツマイモの顔して遊んでたくせに
その晩、ごんは、穴の中で考えました。

あ、何もせずに帰ったのか。さすがにお葬式の場でイタズラはできなかったんだね
「兵十のおっ母は、床についていて、うなぎが食べたいと言ったにちがいない。

あ、え!? そういうこと???!!?
よくもまあ、読書しながらこんだけ景気よくリアクションできるよな
あれってそんなに大事なうなぎだったってこと??!! お母さんの最後の晩餐になるくらいの……

たしかに、兵十も途中でうなぎを置いて帰ってたもんね! あれって、お母さんの具合が気になって帰ったんじゃない?!
たしかに。そうかもしれないね
そんなうなぎで、おふざけかましちゃったのか……! これはまずい!!!
それで兵十がはりきり網をもち出したんだ。

ただのイタズラのつもりが、取り返しのつかないことになっちまった……
ごんも、そうだと分かってたら、あんなことしなかったのかもね
そうだよ! ……でも、兵十からしたらそんなこと関係ないもんな
ところが、わしがいたずらをして、うなぎをとって来てしまった。

これはヘコむよな〜! いろんなことをグルグル考え続けて眠れなくなっちゃうぞ
だから兵十は、おっ母にうなぎを食べさせることができなかった。
そのままおっ母は、死んじゃったにちがいない。

しかも、ごんにはそれを打ち明けて相談する親も友だちもいないんだよ? 子どもがこれを一人で背負うのは厳しいって……
ああ、うなぎが食べたい、うなぎが食べたいとおもいながら、死んだんだろう。

これはヘラヘラ読んでる場合じゃないわ。まさかこんな話だったとは……
ちょッ、

「ちょッ」って何?!
ヘラヘラ読んでる場合じゃないって言った直後に見せる表情か?
反省してると思ったのに! ここで「ちょッ」とか言うかね??!?

最悪だ……こいつ、インターネットの人間だったか……
「ちょwww おまwww」の「ちょ」だと思ってる? 違うからな
とっさの一言でネット用語が出てくるヤツにはロクな人間がいないよな
だから違うんだって。多分、舌打ちの表現だと思う

舌打ち? あぁ、「ちぇっ」みたいなことか
そうそう。人の葬式で2ちゃんねる用語とか使わないだろ
「ちょwww ワロスwww」ってニュアンスじゃないのね?
児童文学で、そんなニュアンスを帯びることはない
ちょッ、あんないたずらをしなけりゃよかった。」

気持ちは分かるけど、こんなこと言うなよ!! 若いなぁ……!!
そりゃあ子ギツネだから若くはあるだろうけど
子どもだからしょうがないのかもしれんけどさぁ……。反省とか後悔の前にやることあるだろ……
ホントにもう……どいつもこいつも……

謝れない人、増えてます!!
急にACジャパンのCMみたいなこと言い出したな
言い訳してもいいけど、まずは謝ろうよ?? 君たちは、どうしてそこで「ごめんなさい」が言えないんですか!???
なんか嫌なことでもあったの?

まあ……キツネと人間では言葉も通じないからね。この場合はしょうがないけども……
「ごめんなさい」を言いたくても、伝える手段がないってことだもんな
でも、僕たちは言葉が使えるわけですから。「ごめんなさい」くらいまっすぐに言いましょうね。キツネじゃないんだから
やっぱりなんか嫌なことでもあったの?
三
兵十が、赤い井戸のところで、麦をといでいました。

兵十はどんな気持ちなんだろ。セリフがないから、何を思ってるのかがイマイチ分からないな……
ずっとごんの視点で描かれてるからな。兵十の気持ちはこっちで想像するしかないんだろうね
なんだよそれ……本当に謝らなきゃいけないときと同じストレスかかってんじゃん……
兵十は今まで、おっ母と二人ふたりきりで、貧しいくらしをしていたもので、おっ母が死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。

そもそも、そんな人をイタズラのターゲットに選ぶなよ……。そのせいで、兵十は最後の親孝行もできなかったんだぞ……
『ごんぎつね』の初読ってこんなにダメージ食らうものなんだな
俺はもう、兵十寄りの視点で読んじゃうかも。ごんの舌打ちまで見ちゃったわけだし、もう許せねえよ
「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」
こちらの物置の後から見ていたごんは、そう思いました。

そうか……お前もか……
お前、情緒の可動域ひろいな
ごんも同じ立場だからこそ、兵十の気持ちが痛いほど分かっちゃうんだよな……。でも、これがきっかけになって2人が分かり合えるようになったり──

でもなぁ〜〜〜!!!
あれこれ考えさせられてるなぁ。さすが国語の教材になる作品だ
この2人の境遇って同じようで違うじゃん。兵十は繋がりのあった人を失って孤独になったわけだから、はじめから一人ぼっちだったごんとは理解しあえないんだよ……

なにこれ、NARUTOじゃん!!!
?

集英社『NARUTO』より
サスケは家族のぬくもりを知ったうえで失ってるから! はじめからひとりぼっちだったナルトとは違うんだよ!!!
いま何が起きた? 気を抜いてたら、いつの間にかNARUTOの話になってるんだけど
サスケが兵十で、ごんがナルトってことでしょ?!
でしょ? と言われても困る
ナルトは封印された九尾のせいで、ずっと一人ぼっちで……
九尾……

あ、キツネって、そういう……?
違うよ
『ごんぎつね』って『NARUTO』の元ネタなんじゃない?!
ガバガバすぎる考察すんな
ごんは物置のそばをはなれて、向うへいきかけますと、どこかで、いわしを売る声がします。

いわしかぁ。旬は夏だけどな〜。秋でもまだ美味しいでしょうね
お前、魚が出るとすぐに旬の話するよな
いわしは手でもさばけますから。ご家庭でも簡単に調理できますよ
スーパーの鮮魚担当?
「いわしのやすうりだアい。

この本、油断してるとすぐ俺の腹を減らしてくるな……
これだけで腹減らしてる方もどうかと思う
いきのいいいわしだアい」

買いてえ〜〜〜〜〜〜〜!!!!
またスイッチ入っちゃった
しょうがないじゃん! 本を読んでたら急にいわしのCMが入ってきたんだもん!!!
どこに広告効果を感じてんだ
ごんは、その、いせいのいい声のする方へ走っていきました。

ほら、ごんもいわしにつられて走り出してんじゃん
と、弥助のおかみさんが、裏戸口から、「いわしをおくれ。」と言いました。

いいな〜。俺もこのあと買って帰ろうかな。いわしって、美味しいのにいつでも安いイメージがあるから嬉しいんだよな〜
いわし売は、いわしのかごをつんだ車を、道ばたにおいて、ぴかぴか光るいわしを両手でつかんで、弥助の家の中へもってはいりました。

フライにしてもいいけど、なめろうにしても美味いよなぁ。めんどくさいけど、骨を抜いてつみれにするのもアリだよね?
『ごんぎつね』を読みながら献立を考える奴があるかよ
あ、「いわしの梅煮」とかいいかも! 最近作ってなかったし、今日の晩飯それにしようかな!
オレンジページでも読んでんのか?
ごんはそのすきまに、かごの中から、五、六ぴきのいわしをつかみ出して、

は?
もと来た方へかけだしました。

こいつ、全然反省してねえじゃん!!!!!
次から次へと、感情が忙しいやつだ
なんでムキになってまた盗んじゃうんだ!! やっぱり「ごめんなさい」が言えないとこうなっちゃうんだよ!!!
まあまあ。みくのしんもキツネだから言葉が通じないのかも、って言ってたじゃん

だとしてもだろ。「ごめんなさい」は自分のために言う言葉でもあるんだから
なんか立派なこと言ってんなぁ
かまども昔よく言ってたじゃん。自分の間違いを認めないと、間違った自分のまま生きていくことになるんだって。「ごめんなさい」は相手への謝罪の前に、自分の軌道修正のために使うようにしたら? って教えてくれたでしょ
俺、そんな小っ恥ずかしいこと言ってたんだ
それなのに……ごんは陰で舌打ちして、次の日にはいわしを盗んで……

おれ、こいつ、嫌い
ゴーレムみたいな口調になるな
おれ、兵十、好き。うなぎ、トモダチ
うるせえバカ
そして、兵十の家の裏口から、家の中へいわしを投げこんで、穴へ向ってかけもどりました。

あ、そういうこと? 「お詫びにこれをどうぞ」がやりたかったんだ
そうそう。ごんも悪いとは思ってるんだよ
なるほど……。これが、キツネなりの反省の示し方なのか……

う〜ん……???
あんまり納得できてないみたいだね
やっぱり、まず「ごめんなさい」を言ってからだと思っちゃうな。 一番しんどいところを後回しにして、「自分、反省してます」を見せるところから始めても意味がないというか……
みくのしんって謝れない人に対して厳しいんだな。なんか意外だ

俺が、それでたくさん失敗してきたからね。自分の間違いを認められなくて、ムキになって……で、また同じことを繰り返していろんな人に怒られてきたから
そういえば、出会った頃のみくのしんは「謝罪=負け」だと思って、テコでも謝ろうとしなかったっけ
そうそう。「どっちが悪い」とか、「誰のせいなのか」とか考えるとプライドが邪魔して謝れなくなっちゃうんだよな。それは今でもそうかもしれないけど……

でも、最近になって「そういう状況になっちゃったこと」については、素直に謝れることに気づいたんだよ。そう思ったら、「誰が悪いか」を考える前に、まっすぐに「ごめん」って言えるようになったし、それからは物事がすごく分かりやすくなったんだよな
へえ〜。たしかに、最近のみくのしんには謝れない奴って印象はないかもな
今のところ、俺の人生って、「ごめんなさい」のパワーを思い知った人生なんです。だから、謝れなくて損してる人を見ると、悔しくてたまんないんだよ
途中の坂の上でふりかえって見ますと、兵十がまだ、井戸のところで麦をといでいるのが小さく見えました。

でも、この話って、動物と人とは言葉が通じない設定なんだよな〜。そんな切ない話ってないよ……
謝りたくても謝れない関係ってことだもんね
なのに、「ごめんって言えよ!」って迫るのも可哀想か。これが、ごんにとってのお詫びの表し方なのか
ごんは、うなぎのつぐないに、まず一つ、いいことをしたと思いました。

これって「いいこと」かな? こんなの、LINEスタンプで済ませて謝った気になってるようなもんじゃない?
まあまあ。ごんもキツネとしてできることをやるしかないんだからさ
にしても、直接顔を見せるくらいはしてもいいんじゃない? 眉毛をひぃん……って下に向けて、尻尾を垂らしてたら、気持ちは伝わるはずだよ
つぎの日には、ごんは山で栗をどっさりひろって、それをかかえて、兵十の家へいきました。

次は栗をお届けするのか。これ持って行ってるときも虚しいよなぁ……分かる分かる……
虚しい気持ちだと思うんだね。ごんは良いことをしてる気でいそうだけど
そんな単純な気持ちじゃないはずだよ。片想いの「ごめんなさい」って苦しいだけだから……
そういうもんなのか
まさか、こんな表紙の本で、切ない話になるとは思わなかったな
こんな表紙の……

!
?
おいおい!!

表紙に栗が書いてあるじゃん!!! ここで伏線張ってたのか!!! 最初にちゃんと見とけばよかった!!!
こんなの伏線でもなんでもない
ってことは、このあとイガ付きの栗とかキノコも届くんですか?!? じゃあ、ついでにお米まで届けて炊き込みご飯セットにしてくれ!!!!
ごんの贖罪を食材として見るな

まさか表紙がネタバレしてたとはね! 『猿の惑星』みたいなことすんなよな!
こんなのネタバレでもなんでもない

そう思うと可愛いな〜!! この子が舌打ちしたり、しょんぼり栗を運んでたりしたのか。いじらしい話じゃん!
ごんに対する印象がこんなに変わるんだ。表紙が持つ情報量って侮れないんだな
ほら〜、表情が見えたらこっちの感じ方も変わってくるんだよ。やっぱり直接顔を見せることが大事なんだって!!
裏口からのぞいて見ますと、兵十は、午飯をたべかけて、茶椀をもったまま、ぼんやりと考えこんでいました。
へんなことには兵十の頬ぺたに、かすり傷がついています。

かすり傷……? ケンカでもしたのかな
どうしたんだろうと、ごんが思っていますと、兵十がひとりごとをいいました。

ひとりごと……か。何を言うんだろ。緊張するわ……
ずいぶん溜めて読むね。気になるなら続きを読んだらいいのに
それはそうなんだけど……

「ひとりごとをいいました」でページが終わってるんだよ。ページをめくる前に、どうしても考えちゃう溜めが効いてるというか……
へえ〜。たまたまだろうけど、結果としていい演出になってるんだ
どうする? これで、ページをめくったら……茶碗を持った兵十が……

「あのクソぎつねが……ゼッテーぶち殺す……」とか言ってたら
お前のイメージする兵十は、漆黒の意思を持ちすぎている
「デスモアプロを食って、のたうち回っておっ死ね……!」とか言ってたらどうしよう……
※デスモアプロ……みくのしんがナスをネズミに食い荒らされたときに、ブチギレながら設置していた殺鼠剤。
「一たいだれが、いわしなんかをおれの家へほうりこんでいったんだろう。

兵十もいわしのことは気付いてたんだね。捨てられてなくてよかったじゃん
おかげでおれは、

……え?
盗人と思われて、

これはやばい!!!!
いわし屋のやつに、ひどい目にあわされた」と、ぶつぶつ言っています。

キッツイ話!!! 俺もう読みたくねえよ!!!!
できればもうちょい頑張ってほしいな
謝ることから逃げて、良かれと思ってやったことは全部裏目に出てしまう感じ……10年前の自分を見てるようでしんどすぎる
ごんは、これはしまったと思いました。

そうそう……こういうのって大抵うまくいかないんだよ。精一杯のお詫びも通じないから、「じゃあ、謝らない自分でいた方が楽じゃん」って思いそうになるんだよなぁ……
10年前のみくのしんには、そういう葛藤があったんだね
「ごめんなさい」を省略したら、伝わるものも伝わらないんです。「良かれと思って」は、言葉と一緒じゃないと意味がないんですよ……
でも、ごんは言葉が通じないんでしょ? だったら、こうするしかないんじゃない?
やるせねえなぁ……
はぁ……もう……

どうにかしてしゃべれよ、もう!!!!!!
無茶言うなよ
無理やり頑張って「ぉえんなさい」くらい発音しろ!!! で、兵十もムービー撮れ!!! 「お見事! 謝るキツネちゃん!」つってテレビで取り上げてもらえ!!!
勝手にごんぎつねを面白動物動画にノミネートさせんな
かわいそうに兵十は、いわし屋にぶんなぐられて、あんな傷までつけられたのか。

一回ミスると、どんどん悪い方に転がってくよな……。寝る前に「あのとき素直に謝ってれば……」って何度も後悔するんだよ……
償いが届かないごんに、やけに共感してるね。きっとみくのしんにも、似たような経験があったんだろうな
数え切れないくらいあるよ。「何が悪いのか分かってないのに、反省したポーズだけすんな」って怒られたり、お詫びの品を持ってったのに、「それを受け取ったら許したことになる」って話を聞いてもらえなかったり……
聞いてるだけで胃が落ち込んでくるような思い出だ
「ごめんなさい」の土台ができてないと、何をやっても積み上がっていかないんです……。だから、初手で謝ることが大事なんですよ……
ごんはこうおもいながら、そっと物置の方へまわってその入口に、栗をおいてかえりました。

まあでも! この栗は盗んだものじゃないから! これなら誰にも殴られずにすむよな!
裏目に出ることを警戒してるなぁ
いや……? 地主のヤバおじさんが「オレの山でとった栗だろ」ってケチつけてくる可能性も……?
疑心暗鬼になりすぎだって
つぎの日も、そのつぎの日もごんは、栗をひろっては、兵十の家へもって来てやりました。

兵十からすると怖いだろうなぁ……。毎日身に覚えのない山菜が宅配されるんだから
そういう言い方すると、嫌がらせみたいに聞こえるな
言葉がかわせないだけで、こんなにうまくいかないもんかね。俺は言葉が通じる世界に生きててよかった……
そのつぎの日には、栗ばかりでなく、まつたけも二、三ぼんもっていきました。

まつたけ……かぁ……
意外に冷静だね。うなぎのときみたいに大騒ぎすると思ってたけど
するわけねえだろ。俺を何だと思ってるんだよ
そう思わざるを得ないだろ

だってほら……ここまで全部裏目に出てるからさぁ。これも「あいつ、いわし盗んだくせに、偉そうにマツタケ食いやがって!」って思われたらどうする?
考えすぎじゃない?
い〜や、こういうときはロクでもないことが起きるって知ってるんだよ。俺だって、だてに失敗続きの人生を送ってないんだ
なんて悲しい経験則だ
四
月のいい晩でした。

怖ぇ始まり方すんなよ!! 絶対悪いこと起きるじゃん!!!
この一文だけでそんな感想になるんだ。満月の夜なんて、むしろいい景色だと思いそうだけど
そう? 月が明るい夜って、真っ暗闇よりも悪事が映える気がしない? 景色の陰影がつきやすくて、影も不気味に伸びてて……嫌なことをくっきり浮かび上がらせる演出力があると思うんだよな
みくのしんって照明効果まで意識しながら本読んでんの???
ごんは、ぶらぶらあそびに出かけました。
中山さまのお城の下を通ってすこしいくと、細い道の向うから、だれか来るようです。

なんか物語の目的が分からなくなってきたな。このお話のゴールってどこなの?
……う〜ん、俺がそれを教えちゃうと元も子もないからなぁ
お互いに会話がないまま進んでるから不安なんだよな〜。この話ってどこにたどり着くんだよ
話声が聞えます。チンチロリン、チンチロリンと松虫が鳴いています。

ほらぁ……なんか、時代劇の仇討ちのシーンみたいじゃない? 誰かの飲んだ生唾が聞こえてきそうな緊張感があるわ……
葬式のシーンといい、このシーンといい。みくのしんって景色の描写から読み取る情報が多いんだな
インパラを狩る寸前のライオンの距離感というか……。今は静かだけど、何かの拍子に「ドッ!!!!!」と動き出しそうな緊張がある気がする……
一度でいいから、みくのしんの目になって本が読んでみてえよ
ごんは、道の片がわにかくれて、じっとしていました。

ごんって、人と会うときはいつも隠れてるね。切ない距離感だ
話声はだんだん近くなりました。それは、兵十と、加助というお百姓でした。

「加助」って人は、初登場だよね? また新キャラが出てきたのか
「そうそう、なあ加助」と、兵十がいいました。

……これ、何の話してんだろ? ごんの栗の話かな?
さあ、どうだろうね
これってごんが聞いていい話じゃなさそうだな。一旦、聞こえないところまで離れたほうが──

……えぇ?
なに笑ってんの?
いや、次に書いてある言葉が……。なにこれ、加助のセリフ?
「ああん?」

怖ァ!!! ヤンキーの口調じゃん!!!
緊張感をもって読んでたんじゃねえのかよ
なんだよ、コイツ! 兵十のお友だちかと思ってたのに! めちゃくちゃメンチきってんだけど!?
そんなこと書いてないだろ
「おれあ、このごろ、とてもふしぎなことがあるんだ」

こっちは兵十のセリフだよね? 多分、ごんのお詫びのことを言ってるんだろうけど……
「何が?」

加助、バカでした
なんて言い草だ
だってさぁ〜! 兵十が「最近、不思議なことがあって……」って言ってるのに──

何がぁ?
そんな言い方じゃなかったはずだ
俺の中で加助はこういう奴なの。こいつはヤバい。暴れ出したら、話聞かないと思う
「おっ母が死んでからは、だれだか知らんが、おれに栗やまつたけなんかを、まいにちまいにちくれるんだよ」

兵十は察しがいいね。お母さんが亡くなってから山菜のお届けが始まったことまで気付いてるんだ
「ふうん、

ふうん
だれが?」

だれがぁ〜?
もうそのキャラ付けやめてくれ
なにがぁ〜?
普段のお前じゃねえか
普段の俺、こんなんじゃねえよ
「それがわからんのだよ。おれの知らんうちに、おいていくんだ」
ごんは、ふたりのあとをつけていきました。

兵十もこんなやつとよく付き合ってんな。「なあお前、話聞いてる?」ってイライラしないのか?
「ほんとかい?」

ほんとぉかぁ?
そのデカブツ用のアフレコやめてくれよ
こいつ、かなりの木偶の坊だな。兵十の話、理解できてる?
一旦、その演技プランを見直してくれ
「ほんとだとも。うそと思うなら、あした見に来いよ。その栗を見せてやるよ」

この感じだと、兵十はその栗に手を付けてないみたいだね。そりゃそうか
事情を知らないと、ただ不気味なだけだしね
それを今、ごんが盗み聞きしちゃってるってことか。切ないなぁ……
「へえ、へんなこともあるもんだなア」

だめだ。加助がしゃべると笑っちゃう
失礼なやつだな
兵十の気持ちが知りたいのに! 受け答えするやつが面白すぎて、全然頭に入ってこねえ!
それなり、二人はだまって歩いていきました。

ごんはこれを聞いてどう思ってるんだろうね。「よかった、気持ちは伝わってる」と思うのかな
どうだろうね。ごんの心情描写はないから想像するしかないけども
この話を本人が聞いちゃってるのも、いいのか悪いのか分からないよな。次から、栗を届けるとき、バレてもいいようにわざと物音立てたりするんじゃ──
加助がひょいと、後を見ました。

やばい!! バレちゃう!!!
ごんぎつねってこんなに躍動感を伴って読む本だっけ?
これはまずいだろ。よりによって加助にバレるんだぞ!!

こう歩いてて……

なんだぁ〜?
お前もう加助禁止な
なんでだよ! こんなにおもしれえキャラなのに!
お前が勝手に愉快なキャラに仕立ててるだけだ
ごんはびくっとして、小さくなってたちどまりました。

ほら、ごんもビビってんじゃん! やっぱただものじゃないんだって!
加助は、ごんには気がつかないで、そのままさっさとあるきました。

怖ぇえ〜! これもうホラー映画だろ!
こんな愉快なホラー映画があるか
吉兵衛というお百姓の家まで来ると、二人はそこへはいっていきました。

また新しいキャラだ。吉兵衛って人の家に向かって歩いてたんだね
ポンポンポンポンと木魚の音がしています。
窓の障子にあかりがさしていて、大きな坊主頭がうつって動いていました。

またお葬式? これは、兵十ん家とは関係ないやつかな
そうみたいだね。別の人の家だし、兵十のお葬式からはしばらく時間が経ったあとの話だから
誰だろ。次は、いわし売りのお母さんが亡くなったとか?
ごんは、「おねんぶつがあるんだな」と思いながら井戸のそばにしゃがんでいました。

「おねんぶつ」って何? 念仏のことなんだろうけど、これがお葬式だったら、ごんもそう言うもんな
……たしかに、これ何なんだろう。兵十のお母さんの初七日とか、そういうことなのかと思ってたけどどうも違うみたいだ
そもそも、なんで関係ない人の法事の話が入ってきたの? どういう意味があんの?
そんなこと言われても。俺、なんでもかんでも知ってるわけじゃないよ

かまどは学校で習ったんでしょ? なのに分かんないの?
まっすぐな瞳で酷なこと言うなよ
頼むよ。注釈も何も書いてないから、かまどを頼るしかないんだって
まいったな……。俺も、何が正しいのかは知らないけど……

念仏講のイメージ
もしかしたら、ここでいう「おねんぶつ」は念仏講みたいなことかもね。昔はみんなで念仏を唱える集会があったって聞いたことあるし
へえ〜。そんなお経のカラオケ大会みたいなことやってたんだ
もしくは誰かの一周忌とか? とりあえず、何かしらの法事に兵十が参加してるって状況なんじゃないかな
なるほど。じゃあ、ごんにとっては、直接関係ない法事ってことね?
やけにこだわるね。そんなに気になるシーンかな?
いや、だって……
ポンポンポンポンと木魚の音がしています。
窓の障子にあかりがさしていて、大きな坊主頭がうつって動いていました。
ごんは、「おねんぶつがあるんだな」と思いながら井戸のそばにしゃがんでいました。

誰の法事か次第で、ごんがどういう気持ちで見てるのかが変わってくるでしょ。結構大事な情報だと思うんだけど
そんな粒度で話を理解しようとしてるんだ。だとしたら、たしかに気になる情報だろうな
兵十と関係のある法事だったら、めっちゃしんどい気持ちでこれを聞いてると思う。でも、他人の法事だったらまた違う気持ちで聞くことになると思うんだよな〜
なるほど……。何にしろ、詳細は書いてないから、一旦みくのしんが自由に想像していいんじゃない?
しばらくすると、また三人ほど、人がつれだって吉兵衛の家へはいっていきました。
お経を読む声がきこえて来ました。

じゃあ、これはごんにとってチクリと胸が痛む時間なのかもね。他人の法事ってことは、そういう距離感なんだと思う
たしかに、自分と関係のある葬式だったら、チクリと痛むくらいじゃすまないか
これはうなぎのことを反省したり、後悔するだけの時間じゃないと思う。自分がやった悪いことと良いことを、じんわり振り返る時間なんじゃないかな
五
ごんは、おねんぶつがすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。

5部はさっきの続きから始まるのか。ごんは、何を考えながら念仏を聞いてたんだろうね
兵十と加助は、また一しょにかえっていきます。
ごんは、二人の話をきこうと思って、ついていきました。

ずっと着いていこうとしてるなぁ。まあ、話も気になるもんね
兵十の影法師をふみふみいきました。

影が踏めるくらいの距離? ずいぶん大胆に近付くね。さっきまで物陰に隠れてたのに
夜道で暗いから多少は近付いてもいいんじゃない?
もしかしたら、いっそ気付かれたい気持ちもあるのかもな。 今のごんには「悪いことを謝りたい」と、「いいことを知ってほしい」の2つがあるから
お城の前まで来たとき、加助が言い出しました。

きたっ……! 加助だ……!
コイツが出てくると、みくのしんの読書が乱れるからイヤなんだよ
そんなこと言うなよ。最重要人物だぞ
『ごんぎつね』を読んでて加助のこと覚えてる奴いねえよ
「さっきの話は、きっと、そりゃあ、神さまのしわざだぞ」

おい、コイツ神様の仕業とか言ってんぞ!!!
お前、加助がツボに入りすぎなんだよ
さっきまで「ああん?」とか「何がぁ〜?」とか言ってたのに! おねんぶつが終わって出てきたら……

おまえ、神様を信じるかぁ?
加助は狂信者ではない
「えっ?」と、兵十はびっくりして、加助の顔を見ました。

ほら、兵十もビビってんじゃん。お前が急に神様とか言うから……
「おれは、あれからずっと考えていたが、どうも、そりゃ、人間じゃない、神さまだ、神さまが、お前がたった一人になったのをあわれに思わっしゃって、いろんなものをめぐんで下さるんだよ」

急に賢くなってない?!??
最初からバカではないんだよ
おねんぶつが終わった途端に、加助がまともになった!! 念仏の効果すごすぎるだろ!!!
「そうかなあ」
「そうだとも。だから、まいにち神さまにお礼を言うがいいよ」
「うん」

でも、念仏を聞きに行って、なんで神様が出てくんの? お礼を言うなら仏様だろ
変なところで正しいこと言うな
まあ、ちょっと抜けてるのも加助の可愛いところだよね。念仏の意味とかよく分かってなかったんだろうな
ごんは、へえ、こいつはつまらないなと思いました。

なんで? こんなにおもしろいのに?
加助で笑ってんのお前だけなんだよ
おれが、栗や松たけを持っていってやるのに、そのおれにはお礼をいわないで、神さまにお礼をいうんじゃア、おれは、引き合わないなあ。

なるほどね。神様の手柄になってるのが面白くない、と
ごんからすると、こういう愚痴も言いたくなるよな
まあねえ……。その気持ちも分かるけど……

イワシのときみたいに、裏目に出て、兵十がひどい目に遭ってないだけでも十分じゃない?
ずいぶん控えめな感想だ。みくのしんはそう思うんだね
うん。俺だったら「俺のせいで、余計なことが起きてなくてよかった」ってまず安心すると思う。この時点で、結果を求めるのは気が早い気がする
でも、このまま神様のおかげと思われたら、ごんはずっと報われないじゃん

それは望みすぎでしょ。「ごめんなさい」が伝わって、許されて、相手から「ありがとう」までもらえるなんて、みんなの夢なんだから
手厳しいなあ
こういうのは、地道に積み重ねて3年後くらいに「あ、これごんだったの?」じゃなきゃ。許される瞬間って、ポロッとカサブタがとれるくらい地味なものなんですよ
みくのしんって、「ごめんなさい」に対してシビアな目線を持ってるんだな

ダテに「ごめんなさい」だらけの人生送ってないからね
なんて悲しい経験則だ
ごんも反省する自分に慣れてはいけませんよ。謝罪はまだ始まったばかりなんです
お前、マジでどういう人生送ってきたんだよ
六
そのあくる日もごんは、栗をもって、兵十の家へ出かけました。

これは偉いね! ここでちゃんと続けるのは誰でもできることじゃないよ! これは褒めてあげてほしいです!
なんかもう「ごめんなさい」の専門家みたいな振る舞いだな
あんな話を聞いちゃうと、「今日は別にいいか」「週イチでも十分でしょ」と自分に甘くなりがちなんですよ。そこで続けられるってことは、ごんが芯から反省してるってことがよく分かりますね
謝罪の実況解説を聞いてる気分だ
兵十は物置で縄をなっていました。

ん?「縄をなって」って何?
藁をより合わせて縄を作ることを「縄を綯う」って言うんだよ
へえ〜。要は作業中ってことね。なんか兵十っていつも作業してるよな
それでごんは家の裏口から、こっそり中へはいりました。

こいつ、裏口好きだな〜
そりゃあ表から「ごめんください」とはいかないだろ
今の兵十とごんの関係では、ここが正門なんだな。大丈夫! 表口から入れるようになる日が、いつか来るから!
そのとき兵十は、ふと顔をあげました。

気付いたね
嬉しそうだなぁ。「バレたらヤバい!」とは思わないんだ
バレるにしても、これはかなりいいタイミングでしょ! ごんは自分がやってることを見せようと思ってないから。あくまで自然な流れで姿を見られて……ってのがいいんですよ!

この日は「こらー!」で、逃げ帰ってもいいんだよ。言葉も通じないし、ここのすれ違いはしょうがない
でも、その後で……

「あ、栗……?」ってなるじゃん。そしたら、「あ、今までのキノコも?」「あのマツタケも?」ってなるでしょ。今までとは逆で、これまで積み重ねた良いことがどんどん連鎖していくボーナスステージに突入するわけよ
……。
コツコツ続けてると、どこかで誰かがちゃんと分かってくれる日がくるんだよ! これがあるから、人生って続けても損はないと思えるよな!

ただ、ちょっとバレるのが早かった気もするけどね。もっと時間かけてチャージしたかったな〜!
善行を溜め攻撃みたいに言うなよ
それでごんは家の裏口から、こっそり中へはいりました。
そのとき兵十は、ふと顔をあげました。

……で? ごんはそのあと……?
と 狐が家の中へはいったではありませんか。

急に兵十視点???

すげえ顔してんな
びっくりした……。今までずっとごんの視点だったから……
そう言われてみれば、兵十のごんに向ける目線が描かれたのはここが初めてなのか
それでごんは、うら口から、こっそり中へ入りました。
そのとき兵十は、ふと顔を上げました。
と、狐が家の中へ入ったではありませんか。
今まで「ごんは」だったのが、突然「狐が」になってんの、めっちゃ怖くない?! 同じ景色を見てるはずなのに、急にバケモノに視界をジャックされたみたいだ……
みくのしんは主観映像のように物語をイメージしてたのかな。だから、急に語り手が変わると動揺するんだろうね
たった3行なのに、この2人が絶対に分かり合えないって伝わるのスゴすぎる!!! 小説ってこんなことまでできんの!??
そこまで演出効果を感じられる方もすごいだろ。俺、『ごんぎつね』でそんなこと考えたことないよ
こないだうなぎをぬすみやがったあのごん狐めが、またいたずらをしに来たな。

兵十目線になったら見える世界が全然違う……
「ようし。」

いつの間にかカメラの高さも変わってるし、画面に映る手も、毛のないつるつるの人間の手になってんじゃん……
みくのしんのようにカメラワークまで思い描いてると、そういう感想になるんだな。羨ましい読書体験だ
ごんの目線で読んできた自分まで、急に異物扱いされたみたいでゾッとするわ……
兵十は立ちあがって、

うん……うん……
納屋にかけてある火縄銃をとって、

あ、え!?
火薬をつめました。

まずいって!!!!!
まあ、兵十にとっては因縁の相手だからさ
でも、銃は話が違うんじゃない!???

頼む兵十……! いっぺん、ごんの表情を見ろ……!!!!
(本の中の人物に祈ってる……)
ごんも「くぅ〜ん」って眉毛をさげろ!! 言葉は伝わらなくても、表情は伝わる!!!
そして足音をしのばせてちかよって、

なに足音を消してんだよ!!! 床きしめバカ!!!!!
今戸口を出ようとするごんを、

待って待って待って!!!!

何これ?!?
今戸口を出ようとするごんを、ドンと、うち

どこで文章終わってんだよ!!!!
これまた、すごいところでページをまたいでるな。面白い偶然だ
何も面白くねえよ!!! 俺はどういう気持ちでページをめくればいいんだ!!!!!!

読みたくねぇ……!!! 俺がめくったらごんの運命が決まっちまう……!!!!
ページをめくる手に命がかかってる気分なんだ。すごい読書体験だ
……いや、「うちましたが、」って続いてる可能性もあるか。「うち殺そうとした次の瞬間!」の可能性だってあるし
それはめくってみなきゃ分かんないんじゃない?
はぁ……もう……
そして足音をしのばせてちかよって、
頼むぞ……
今戸口を出ようとするごんを、
もうこれ以上嫌なこと起きんでくれ……
ドンと、うち
頼む!!!!!!

ました。

ました!!!!!!
たった3文字で人間ってこうなるんだ
なに撃ってんだよ!!! 俺がこんなに騒いでるんだから、兵十も一旦話を聞けよ!!!!!
本の中の人物に無茶な要求をするなよ

………………まだ分からない。「うちました」と書いてるけど、「うち殺しました」とは書いてないもんね
撃たれて、ビックリして逃げ出して、それっきり二度と会うことはありませんでしたとさ……ってラストかもな
そういう、ほろ苦いエンディングかもな!! なあ!??
そうであれ!!!!
ごんは、ばたりとたおれました。

もおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!
こんなに全身全霊で本が読めたら楽しいだろうな
本って、いつも俺の話を聞かないよな!?? もうちょい融通きかせろよ!!!!
めちゃくちゃなこと言うな
兵十はかけよって来ました。

結局、最後まで分かり合えないままかよ。なんて後味悪い話──
家の中を見ると、土間に栗が、かためておいてあるのが目につきました。

おいおいおいおい……

おいおいおいおい……

おいおいおいおい……
「おや」

「おや」じゃねえだろ!!!!!
のろまみてえなセリフを吐きやがって!!! お前、加助かよ!??!?!?
と兵十は、びっくりしてごんに目を落しました。

どうせ言葉も通じないんだから、最後まで栗に気づかないまま終ればいいのに……
だいぶ酷な提案だなぁ
でも、それならごんにとってのバッドエンドだけですむじゃん。なにも兵十までバッドエンドにしなくていいだろ……
「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは」

もっと違う形で言えただろ……!! 数年後にごんと一緒に栗ご飯食べながら言うセリフだろ、それは……!!
『ごんぎつね』に、そんな幸せなエンディングを求めていたとは
言葉が交わせない世界って残酷すぎるな……。兵十のこの言葉も、相手に届かな──
ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。

言葉、通じてんじゃん
そうだね。お互いの言いたいことは伝わってるみたいだし
は? 動物と言葉通じる世界ってこと?? じゃあ、ごんは最初から謝れば──あ? でも、兵十に姿を見られたらすぐに撃たれるから──え??
だから……じゃあ……

???
みくのしんがオーバーフローを起こしちゃった
最初から言葉が通じる世界だったってこと??? これがドンデン返しってやつ???
これはドンデン返しではない
兵十は火縄銃をばたりと、とり落しました。

……。
青い煙が、まだ筒口から細く出ていました。

なんだよ、この話……

なんだよこの話!!!!!!!!


ということで、みくのしんの人生初の『ごんぎつね』はこんな感じでした。
ここまで読んでいただいたあなたもお疲れ様でした。大人が初めて『ごんぎつね』を読んだら、こんな表情になるんですね。

『ごんぎつね』ってこんな話だったの!?? これは子どもに読ませちゃダメじゃない??!
多分だけど、これって日本人が初めて出会うバッドエンド作品なんじゃないかな。だからみんな強烈に覚えてるのかも
それにしては、みんなポップな思い出として語ってなかった? こんな悲しい話だって誰も教えてくれてない気がするんだけど……
まあ、大人になってから、新鮮に悲しい話として『ごんぎつね』を語ることってないからなぁ

やるせない話だったな……。こんな答えの出ない話を授業でやってどうするんだよ……
いろいろ考えちゃう余地のある作品だよな。だからこそ、国語の教材に採用され続けてるんだろうけど
そう言えば、俺も読みながら偉そうに「ごめんなさいとは」とか語ってたよな。今思うと恥ずかしいわ……何を偉そうに……
別に恥ずかしいことじゃないだろ。みくのしんはそう読んだってだけの話なんだから

これを読んで、僕は何を思えばいいんですか? 「最終的に償いきれてよかったね」と言えばいいの?
みくのしんがそう思うのなら、そういう感想でもいいと思う。答えなんかないんだし
でも……ってことは、許されるには殺されるしかないってことですか?? じゃあ、僕が今まで言ってきた「ごめんなさい」は何だったんですか???

兵十は誰が許してくれるんですか?
どうなるんだろうね。少なくとも、『ごんぎつね』というお話はこれでおしまいだけども
俺たちはここで読み終わるけど、兵十の生活はまだ続いていくんだよ? こんなことがあっても、明日からまたメシ食って生きていかなきゃいけないんだよ?
はぁ……
兵十も疲れるなぁ……

以上、みくのしんの初めての『ごんぎつね』でした。
とても長い記事でしたが最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
最後に、みくのしんから届いた読書感想文を掲載して、この記事の締めとさせていただきます。
彼の読書と同じく奔放な文章になっているので、人によっては読みにくいかもしれませんが、よかったら読んでいってください。

これ、誰が書いたの? スティーブン・キング?
ウルトラミラクルバッドストーリーだったんかよ。聞いてないよ!!!ふわっとやさしくてかわいい「ルンルン♪ちゅんちゅん♪」で、このいわし1匹ときのこ2つ!これをあわせたら合計いくつになるでしょう〜? みたいな絵本じゃないんですか? ついでに算数も勉強しちゃおう! みたいなさ。
もう。そんな。え、ま、モ。メジ、まじかよ。おう。えー。まじ?マジで?
……たしかに。たしかに言われてみれば「ごんぎつね」ってタイトル。ここから色合いが暗かった気はしないでもない。もっとポップだったら「ごんぎつねのまんぷくだいぼうけん!」とかだったはず。そうじゃなかった時点で気づかなければいけなかったのか。いやぁ。すごい作品でした。マジかよ。
聞くところによると小学校の低学年で読んでるんですか? こんなにも悲しい胸糞展開の作品を低学年に!? ……え? 胸糞展開とか言っていいのかな……? 結構びっくりしたんだけど、え? みんなどうしてたの? これ?
これ、子どもの頃に読んだら衝撃だって。「ごんぎつね」見たあとの家までの帰り道
λ…… λ…… λ…… λ……
λ…… λ…… λ…… λ……
λ…… λ…… λ…… λ……↑こうでしょ!?
↑こうなるでしょ!?すごいぜ。日本の教育。びっくりしました。感情的になってしまう。流石に度肝を抜かれました。
でも、ちょっと落ち着いて、もっともっと視野を馬になったと思って考えてみよう。
ごんぎつねを読み終わったら、どうしても「ごめんなさい」について考えてしまう。でも、話がまとまらない。
ちょっと脳みそ守るぶ厚い白。これ、外して。直刺しUSB-C。裸族のお立ち台よろしく、頭にパソコン繋いで思ってることを書いてみます。
子供の頃から誰しも両親や先生から教わってきたと思います。「ありがとう」「こんにちは」「ごめんなさい」は言いなさい。
礼儀に関わるその言葉らは、歳を重ねるに連れてその登場回数は増え、当たり前になりすぎるとその言葉の100%の意味で使われることが少なくなってくる。
大事な言葉だったのに、味のしなくなったガムのようになって、そのうち「まぁいいか」と使わなくなるときがくる。
だけど、そうなってからが、すごく、すごく、怖い。
「ごめんなさい」が言えない人は、最初は好奇心。まぁ、いいんじゃない?というシンプルな感情だったりする。
普段頼まないジュースを買うような気持ちで、もしくは「お通しってカットできるんだ!」って気付く瞬間みたいに、「ごめんなさい」を省略することを覚えていく。
でも、その時。突如。新規性がなくなったと思われた「ごめんなさい」の本当の顔が現れる。
それまでは適当に「ごめんねー」などと使えばよかったのに、完全に自分の落ち度で怒られたときにこそ言わないといけない「ごめんなさい」これがすごく言いにくくなっているのだ。
これまでの「ごめんなさい」と段違い。「ごめんなさい」の大始祖。「ごめんなさい」のスピリット・オブ・ファイア。これを前に手も足も出なくなってしまう。
ここ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
本当に!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ここ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!僕は人生のこと全然わからないけど、35年も生きてるから僕なりにはわかる!(「いやいや45歳の私に比べればー」◀はぁ!? 「80歳のワシよりはー」◀とか言うな!!!!みんな長生きで最高だろ!!!!!!!!!1年何日あると思ってんだ!生きてんだぞ!!!!)
ここなの!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
いままでの「ごめんなさい」は!!!!!!!!!
突如出てくる本当の大ボス!!!!!!!原点であり頂点の「ごめんなさい」を言えるようにするためのいわば練習!!!!!!!!!!!!!!!!!!「ごめんなさい」を言わなくても人生が変わらないであろう時に「ごめんなさい」が言えるかってのが!!!!!!!!!すごく!!!!!!!!!すごく!!!!!!!!!!!!!!!!!!大事なの!!!!!!!!!腹筋なの!!!!!!!!!!!!毎日の筋トレなのーーーーーー!!!!!!!!!!!!
……僕も謝れると思っていたのに、肝心要で謝れない大人だったし、もしかしたら今でも反射で大事な時に謝れていないかもしれない。
もちろん、だからと言っていつ何時もヘコヘコ媚びへつらうように「ごめん」を連打するのも違う。これをすると本当の「ごめんなさい」にエンカウントしなくなる。それは自分が気づかないうちに人生が淋しく収束しはじめる行為でもあるので、やらないようにしたい。
こんなにも難しい「ごめんなさい」のこと。ごんぎつねを読んで、なんだか改めてその意味と向き合えた気がしました。ありがとうございます。あれから、寝る前や一人便所の時に考えたりしては、まとまらずにうーんと悩んでる。だから教科書に載ってるんだな。
なんか一年とは言わず、1週間後、いや、明日にでも小っ恥ずかしくなるようなこと言ってる気がするけど、本当だと思う。
「ごめんなさい」が言えない人。言えてると思っててもそれに気づいてない人。たしかに謝らなくていいところで謝る必要はないけど、損して得する練習だと思って僕と一緒にやってみませんか。そのときは負けだと思えるようなことも、実はプラスになってたりするんだよ!
こないだ桃を人にあげたんです。そしたら、桃はなくなるんだけど、でもその人は喜んでくれて、美味しい桃の食べ方を教えてくれました。これと一緒だと思うんです。
う〜ん。違うかもしれません。だとしたら、ごめんなさいっ!

後日、いわしの梅煮を作ったそうです。
(おしまい)
おしらせ

みくのしんの読書実況の本が発売中です。
第1弾は「初めて本を読む」というテーマで、みくのしんが「本を読んだことがない」を卒業するまでを追いかけました。
太宰治や芥川龍之介などの名だたる文豪の作品に挑んでいます。

ライター仲間の雨穴も短編小説を寄稿してくれました。この本でしか読めない作品も併せて、ぜひご覧ください。

第2弾は「教科書を読む」というテーマで、みくのしんが「本が読めない」を卒業するまでを追いかけました。
人生2冊目の読書で「山月記」を前に挫折してから、また本が読めるようになるまでの記録が収録されています。

小中高の国語の作品に挑み、最終的に、清少納言「枕草子」にチャレンジしました。ホワイトボードを目一杯使った読書をぜひご覧ください。
以下、画像ギャラリーに、『ごんぎつね』を読み終わったあとに、みくのしんから送られてきた写真を掲載します。
ちょっとしたおまけなので、お暇な方は見ていってください。

かまど
みくのしん








山口むつお
原宿
ヨッピー
上田啓太
かんち

ナ月

ブロス編集部







