なあ、今話題になってるこの動画見た?

なになに?

廃屋に肝試しに行ったら、真っ黒な影が映ってたってやつ

何それ、怖っ

でもさ、どう見ても編集で後付けしてるんだよなあ

なんだ、ヤラセかよ

なのに、コメント欄を見るとみんな信じちゃってるんだよ

みんな純粋だなー

 

笑っちゃうよな。オバケなんているはずないのに

そうそう、オバケなんて……………ん?

どうしたんだよ

いや、後ろのほうから妙な気配を感じて……

なんだよそれ。無理に盛り上げようとしなくていいって

 

………し

でもかすかに声も聞こえるし

だから。そういうのいいって

し………し……

いや、やっぱ聞こえるよ!「し……」って

「し」?………

し………し……し…………し………し……し…………し………し……し…………し………し……し…………

言ってるじゃん!「し……し……し……」って何回も!

おい、それってもしかして……

 

 

…………「死」?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………っっっ!!!!!!!

……………っっっ!!!!!!!

 

 

 

 

登場人物

 

オモコロライター。7月に2作目の共同著書「本が読めない33歳がはじめて国語の教科書を読む」を発売する。

 

かまど&みくのしんの後輩ライター。なぜか二人を慕っている。こんな外見だが作家もしており、二人の前作にちょっと参加した。

 

なぁんだ、雨穴じゃ〜ん

怖い奴かと思ってびっくりした

すみません。おどかすつもりはなかったんですが……

いつからいたの? こんなナリの人間が玄関から入ってきたら嫌でも気づくはずなのに

最初は正面玄関から入ろうとしたんですけど、久しぶりに来たのでセキュリティー番号を忘れてしまって。そしたら裏窓の鍵が開いていたので、そっと……

セキュリティーの意味がない

 

※今はもう閉まっているので、泥棒の方々は入らないようお願いいたします

 

ところでさっき「し……し……」って言ってたけど、あれは何?

「新刊発売おめでとうございます」と言おうとしたんですけど、裏窓から入った罪悪感でなかなか言葉が出なくて

その気持ちがあるならインターホンくらい押せるだろ

 

 

でもわざわざお祝いに来てくれてありがとね。

雨穴は前作で短編小説を寄稿してくれたよね

はい。あのときは楽しかったです。ウェブ記事の頃からずっと読んでいてシリーズのファンだったので、自分がこの企画に参加できるというのは夢のようでした

 

 

 

昨年、かまど&みくのしんは書籍「本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む」を発売した。
その名の通り、生まれてから一度も本を読んだことがない男・みくのしんが、友人・かまどの助けを借りながら読書に初挑戦するドキュメンタリーである。現在、発行部数8万部のヒット作になっている。

 

しかし、そもそものはじまりはウェブ記事だった。

 

まっさらな心で読書を楽しむみくのしんの姿が共感を集め『みくのしん読書記事』はオモコロきっての人気シリーズとなった。

前述の本は、シリーズの書籍化というわけだ。
そしてこのたび、第二弾が発売された。

 

で、今日はそのお祝いにカツ丼を持ってきました。

カツ丼!!嬉しい!

雨穴の手料理か〜! 器用だし美味いカツ丼作るんだろうな

喜んでいただけて嬉しいです。ただ……

ただ?

近くの店で豚肉が1パックしか残っていなくて、一人前しか作れなかったんです。

マジか……!

はい。ですので二人で

そうだね。二人で一人前を分けあって……

二人で一人前のカツ丼をめぐり、醜く争っていただきます

やっぱり怖い奴じゃねーか

 

 

「争う」って言っても、勝負内容によるよな。飯のこととなると、みくのしんも本気だから

単純な取り合いになったら俺の圧勝だと思う。俺の食い意地は異常だから
ですよね。なので、お二人がイーブンに勝負できるゲームを用意してきました。名付けて……

 

 

『みくのしん読書かるた』です

みくのしん読書かるた?

 

 

みくのしん読書かるた とは?

 

上の句は、今までみくのしんが読んできた文学作品の一節
下の句は、それに対するみくのしんの反応

上の句だけを聞いて、それに対応する下の句を取るというゲーム。いわば『みくのしん百人一首』だ

 

ちなみにこれは『走れメロス』の一行目を読んだときのリアクション。
本を読んだことがない男にも知られているメロスの冒頭、すごい知名度だ。

 

選出基準は『現在、公開されている記事に登場する一節』です。その中でも特に私が好きなものを厳選しました

なんでそんなことを

番組スタッフが大御所の芸人に対して企画するやつだろ

でも、こんなに公平なゲームはないと思いませんか?

まあ、たしかに。発言したのはみくのしんで、それを書き留めたのは俺だから、どっちも覚えてるはずだもんな

言った人と書いた人、どっちのほうが発言をより覚えているのか、私も気になります。

よっしゃ!じゃあいっちょやってみるか!

 

ーーー場に並べられた16枚の札

 

ーーーこれらはすべて、みくのしんが有名文学作品を読みながら発した言葉である。

 

ーーー中には「本当に??」と思うものもあるが、すべて有名文学に対する感想である。

 

ーーはたしてどの作品に対する言葉なのか。皆様もぜひ、推理しながらお読みいただきたい!!

 

 

あれ?

 

なんか写真もあるんだけど

みくのしんさんは体全体で気持ちを表す人なので、言葉以外のリアクションも含めました

たしかに俺、読書中に動きまくるからね

読書って一般的に、静かなイメージがあるんだけどな

 

 

第一戦

それでは始めましょう!
よーし!!絶対取るぞーー!!

もし上の句を読んでいる途中に分かったら、読み終える前に取っていただいてもかまいません

まあ、カルタってそういうもんだしね

オッケー!!行くぜ行くぜ!!

 

まいります

 

『メロスは腕に……

 

パァァァアアアアアアンンン!!!!!!!!

 

『メロスは腕に唸りをつけてセリヌンティウスの頬を殴った』に対するみくのしんの反応は『唸りはつけなくてよくない???』です!!

せ……正解です……

よし!!

なんだ……? 今、何が起きた……???

 

太宰治『走れメロス』より

勝者:かまど

 

 

序盤から恐るべきスピードで勝ちに来たかまど。
やはり『書いた人間』のほうが有利なのか?

ちなみにこれは、メロスとセリヌンティウスがお互いを許し合うために『友情の殴り合い』をする熱いシーンへの一言。

 

たしかに。
メロス、もしかしてだいぶキレてた?

 

元の記事は何万文字もあるのに、よくこの一文が分かりましたね

そりゃ分かるだろ。それに、このシーンには特に思い入れがあるからね。誰よりも早く取れる自信がある

どうしてこのシーンに思い入れが?

最高の写真が取れたからね。記事のために写真を選んでて、一人で笑ってたもん

 

 

メロスの真似をして唸りをつけるみくのしん。
この躍動的なショットを撮れたとき、かまどは記事が面白くなることを確信したらしい。

 

かまどによる再現

 

では、つづいて二戦目です。

よしよし。こりゃ楽勝だな。カルタもカツ丼も総取りさせてもらうわ

ちょっと!! これじゃ勝負になんねえじゃん!!

えーと、なんか勝負が荒れそうなので、やっぱり上の句を読み終えてからスタートにしましょう

まあ、ちょうどいいハンデかもね

 

第二戦

それでは、まいります。

 

『そこここと動かしているらしい』

 

………………あれ? なんだっけ、それ?

あ、かまどが分かってない。チャンスだ!雨穴、もう一回読んで!

『そこここと動かしているらしい』

そこここ……あ!

 

うおおお!!!!!

 

これじゃない!?

正解です!

よっしゃあああ!!!

うわあ! 「羅生門」か……! すっかり頭から抜けてた……

 

芥川龍之介『羅生門』より

勝者:みくのしん

 

みくのしんが制した2枚目は芥川龍之介『羅生門』に登場する一節。

 

「そこかしこ」「いたるところ」を意味する「そこここ」という言葉を見てみくのしんがバグを起こしたシーン。
たしかに、文字で見ると混乱しそうになる。

 

ーーー同点で迎えた三戦目。ここからどう展開していくか。

 

第三戦

次は、みくのしんさんがある漢字を見たときに思わず口にした一言です。

漢字……あ、もしかして!

まいります

 

『曾(かつ)て』

 

うお!

早すぎるだろ

お見事

これは覚えてる! 「曾」ってウルトラマンに似てるって、山月記で学んだんだよ

それって学びというのかなぁ?

 

中島敦『山月記』より

勝者:みくのしん

みくのしんがリードした三戦目。
『曾て』は『山月記』にたびたび登場する語句だ。

 

 

最初、みくのしんはこの漢字がウルトラマンの顔に見えたらしく、読書を通して読み方をマスターしていた。

 

『山月記』は新刊にも収録されていますよね

うん。でも『曾て』のシーンは全部カットしたから、ちょうど意識の外にあったなぁ

えー!! カットしたの??!! なんで!!!???

だって……

 

これを本で読むにはしんどすぎるだろ

記事をそのまま収録したわけじゃなくて、書籍用に編集してあるんですね

かまど、大変な仕事してんなー……

 

 

第四戦

さて、次は時間帯に関する一節です。

時間帯?……あ、これか!!

 

ーーーみくのしんは小説の情景描写から『それが何時か』を想像するのが好きだ。
場に出ている札の中で、時間が書かれているものはこの二枚だけ。二択問題である。

これは俺が取らなきゃウソだよ

いやいや、俺だって

ではまいります。

 

『トロッコは泥だらけになったまま、薄明るい中に並んでいる。』

 

え?

 

……どっちだ……?

うーん……

 

いや、でもこれはたぶん……

 

5時じゃない!?
かまどさん、正解です!

よっし!!!

くそおお!!!

 

芥川龍之介『トロッコ』より

勝者:かまど

芥川龍之介『トロッコ』にて主人公の良平が、夕方にこっそりトロッコを見に行くシーン。

 

 

昔ながらの良い職場だ。

 

 

第五戦

 

ーーー続く五戦目も時間に関する一節。

 

ーーーこちらもかまどが制した。

 

太宰治『走れメロス』より

勝者:かまど

 

『走れメロス』でメロスが故郷の村へ帰ってきたシーン。

 

 

『完全に10時』とまで言い切っている。

 

だいぶ競ってますが、今はかまどさんが1ポイントリードしています。

俺のほうが有利なはずなんだけどな~……

お二人とも、次はチャンスですよ。『見たまんま』ですから。

見たまんま?

 

第六戦

まいります。

 

『眼めを細くして気をつけながら、両手を背中に組みあわせて、ぶらぶら往いったり来たりする』

 

うーん……

これは『オツベルと象』の一節だよな

 

ってことは……

 

これだ!!

正解です!!

うわ!! 写真のやつだ!!! これレア度高そうだから、絶対取りたかったのに!!!

カルタの札にレアリティはない

 

宮沢賢治『オツベルと象』より

勝者:かまど

 

宮沢賢治『オツベルと象』にて、工場長のオツベルが偉そうに歩き回るシーン。

 

この回のみくのしんはいつにも増してアクティブだ。
オツベルの真似をして、両手を背中に組みあわせ、ぶらぶら行ったり来たりしていた。

 

よーし、だいぶリードしてきたぞ
くそー……
どんどん行きましょう

 

第七戦

まいります。

 

『オツベルはもう支度(したく)ができて、ラッパみたいないい声で、百姓どもをはげました』

 

またオツベルか……

……ん?

 

あ、俺わかったわ

え?……うそうそ!!全然わかんねーよ!!

みくのしんの感想が印象的だったから覚えてるなあ。本人はわかんないんだ

わかんない!!ちょ、ちょっと時間ちょうだい!!

まあ、俺がリードしてることだし譲ろっか?

急に余裕を見せてきた

なんか悔しい!!けど、取りたいなー!

じゃあヒント出そっかな。
オツベルは象をいじめる悪い男でしょ? だけどそいつが部下たちを威勢よく励ましてる。そのときみくのしんがどう感じるかというと……?

うーん……てことは……

 

もしかしてこれ?…………『かっこいい』って思ったのか……?

……………

でもだいぶ前に読んだから覚えてないんだよな……

……………

これじゃない……のか?

じゃあ……

 

俺がもらいます

は?

かまどさん、正解です

 

ええええええええ!!???? じゃあ俺、合ってたんじゃん!!!

でも取らなかったじゃん

どういう教育!?

 

 

宮沢賢治『オツベルと象』より

勝者:かまど

 

象にひどい仕打ちをするオツベルを、最初は嫌っていたみくのしんだったが……

 

彼の経営者としての肝の据わった態度に悪のカリスマ性を感じ、思わず「かっこいい」と漏らしていた。
しかし『語り手である牛飼いの主観が入っているのではないか』という指摘は結構鋭い気がする。

 

くぅう!!合ってたのに!合ってたのに!!

また差が開いたね

くそおおお!!!!

まだまだ勝負は続きますからね。逆転も十分ありえますよ

よーし、もうこっからは俺、本気で行くわ!!

今まで本気出してなかったかのように言うなよ

 

第八戦

次は少し長いです

 

『厚かましいお願だが、彼等の孤弱を憐(あわ)れんで、今後とも道塗(どうと)に飢凍(きとう)することのないように計らって戴けるならば、自分にとって、恩倖(おんこう)、これに過ぎたるは莫(な)い。』

 

おいおい、長々と……

 

人にものを頼むときは……

 

分かりやすい言葉を使いなさあああああい!!!!!!
正解です!!

うおおおお!!!!!よっしゃああああ!!!!!!!

 

中島敦『山月記』より

勝者:みくのしん

 

『山月記』で、虎になってしまった李徴が旧友の袁傪に、自分の家族をどうかよろしくと頼むシーン。

 

普段は主人公を深く愛し、親友のように感情移入するみくのしんだが、李徴に対しては厳しいコメントをいくつも残している。

 

 

みくのしんは現在、ウェブメディア『オモコロ』で副編集長を務め、悩める若手クリエイターたちの面倒を見ている。
一方『山月記』の李徴は、詩人を目指して挫折し、自暴自棄になってしまった男。職業上、思うところがあったのかもしれない。

 

こっから追い上げていくぞ!!

……やばい

どうしました?

足がしびれてきた

 

ーーーここでまさかのアクシデント発生。圧倒的リードを見せていたかまどの勢いに陰りが……?

 

ーーー足を崩して後半戦スタート。これが勝負にどう影響するか。

足の痺れがおさまるまで待ってくれないの?

するわけねえだろ。相手の弱みには徹底的につけこんでいくからな

 

第九戦

次の一節は記事には登場しないんですが、個人的に思い入れがあるので、入れさせていただきました。

 

『翌年の春休み、私はお姉さんの家に招かれた。』

 

 

ああ!これは!

 

エッチなシーンだ!!

正解です!!(エッチなシーンではないけど)

しゃあ!!!これ、雨穴が書いてくれたやつだもんね!

 

雨穴『本棚』より

勝者:みくのしん

前作に雨穴が寄稿した短編小説『本棚』の一節。

 

 

エッチなシーンは始まらないので、お子様も安心してお読みいただけます。

 

まずいな……だいぶ追い上げられてきた

追い抜くぞ!!

 

第十戦

次は、私がシリーズの中で一番好きな一節です

雨穴’sベストか

まいります

 

『その途端につき当りの風景は、忽(たちま)ち両側へ分かれるように、ずんずん目の前へ展開して来る。』

 

え?

どれだ……?

これは明確に覚えてるわ!

 

これだろ!

正解です!

なんだよ、このセリフ。何も言ってないのと同じじゃない?

そんなことない。俺、このシーン好きだから覚えてるし、結構いいこと言ってたと思う

 

芥川龍之介『トロッコ』より

勝者:かまど

 

良平がトロッコに乗って線路を駆け抜けるシーン。
さしてドラマティックな展開ではないので、つい読み飛ばしてしまいそうになるが……

 

 

みくのしんはここから、芥川龍之介の天才的なイマジネーションと描画力を感じ取っていた。

 

俺、こんなこと言ってたんだ。すっかり忘れてたよ。

俺はすごい印象に残ってるな。読書シリーズの中で『みくのしんの鋭い視点』の描写を、初めて明確に押し出したのがここだったから

私は『読書シリーズ』の名シーンといえば、まずここが思い浮かびます

なんで言った本人だけ覚えてないんだ

 

ーーー勝負の行方が分からなくなってきた終盤戦。
ここで、予想外の事態が発生する。

 

第十一戦

まいります。

『下人はとうとう、老婆の腕をつかんで、無理にそこへねじ倒した。丁度、鶏の脚のような、骨と皮ばかりの腕である。』

 

…………!!

 

これだ!!! 『羅生門』の1シーンね! ここで下人の雰囲気が変わったんじゃなかったっけ

………………

………え?

みくのしんさん、不正解です

 

ーーーここでみくのしん、まさかのおてつき。

ええええええ!!!!! うそ、俺こう言ってなかったっけ???

いや、その札は別のシーンだろ。『羅生門』ですらないもん

でもさぁ! 今、聞いて「雰囲気変わったな〜」って思ったんだから、それが正解でもいいはずだろ!!

カルタの正解を上書きしようとすんなよ

 

おてつきなので、かまどさんに権利が移ります。分かりますか?

当然、分かります。下人が老婆の腕をつかんだときに、骨と皮ばかりで鶏の脚のようだって言ってるんだよ? そういうときに、みくのしんは……

 

チキンが食べたくなるんです

チキンかああああ!!!!!!

 

芥川龍之介『羅生門』より

勝者:かまど

『羅生門』に登場する、すさまじく狂気的な一節だが……

 

みくのしんはこれを読んで、ケンタッキーを食べたくなったらしい。

 

これ、ギリギリまでカットすべきか悩んだよな~。いくらなんでもふざけすぎだと思われそうで

私はここを読んで、ちょっと引きました

だってケンタッキー食いたかったんだもん

 

ーーー残すところ五枚。ここから熾烈な心理戦がはじまる……!?

 

 

第十二戦

次は、私がみくのしんさんの読み方に少し「おや?」と思った一節です。

え? 俺、読書中に変なこと言ったっけ?

よく言うだろ。「チキン食いたい」とか

まいります

 

「彼の家の門口(かどぐち)へ駈けこんだ時、良平はとうとう大声に、わっと泣き出さずにはいられなかった。」

 

うーん……!!

 

これな気がする……!

 

でも俺「おかえり」なんて言ったっけ……? もうおてつきはしたくないし……

こいつ、カルタ中に考えてること全部口に出して言うなあ

 

じゃあ、俺がもらってもいい?

あああああ!!!!!ダメダメダメ!!!

 

あっぶねっっ!!!

みくのしんさん、正解です!

かまども良くないよ? ズルじゃん
ズルじゃねえよ

 

芥川龍之介『トロッコ』より

勝者:みくのしん

 

『トロッコ』の終盤、良平が命からがら家に帰ってきたときの一節

 

 

しかし……

 

みくのしんさん『トロッコ』を読んでるとき、ずっと主人公の良平視点でストーリーを追ってたじゃないですか。でもなぜか、家に帰ってきたときだけ、彼を出迎える人の視点になってるんですよね

あぁ〜、言われてみればたしかにそうだ

これ、記事を読みながら不思議だなーって思ってたんです。なんで「ただいま」じゃなくて「おかえり」だったのかなって

やっぱり帰ってきたシーンは、お母さんのほうが気持ちが乗りやすいってのがあったのかも

なるほど

俺は、このあとのシーンのほうがよく覚えてるなぁ

 

「久しぶりに良平みたいに泣きたい」って言って、子どもみたいな泣き方を再現してたよね

過去の俺、いいこと言うじゃん。大人はこんな風に泣けないからね

そういえばみくのしんさん、そろそろ野原ひろしの年齢に追いつきますもんね

怖っ

 

第十三戦

さて、次はぜひオモコロ副編集長であるみくのしんさんに取っていただきたい一枚です

副編集長的な発言ってことか。それは取らなきゃな

まいります。

 

『たとえ、今、己が頭の中で、どんな優れた詩を作ったにしたところで、どういう手段で発表できよう。』

 

……………!!!!!

 

これだーーー!!!!

 

オモコロがあるだろ!! 『【工作】トラになった俺が優れた詩を発表してみた【ガオー】』って記事を出せばいいんだよ!!

詩作は工作とは違うだろ

正解です!でも二人とも触ってますね

これは俺だわ!!間違いなく俺が早かったもん!!

いやいや!俺だって!

スロー判定行きましょうか

 

スロー判定

思ったより一目瞭然だった

スロー判定するまでもない

正直、全然遅れてた自覚はありました。どうにかならないかと思って大声だしてただけです

お前の人生かよ

 

中島敦『山月記』より

勝者:かまど

 

『山月記』にて、ふさぎこむ李徴にみくのしんがかけた言葉がこれだ。

 

 

オモコロはいつでもライターを募集しています

 

俺、こんなかっこいいこと言ってたんだ。じゃあ、このカルタは取りたかったな〜
俺が取ったんだし、このセリフはかまどが言ったことにしていい?

そういうゲームじゃないだろ

取った言葉を自分のものにするゲーム

だとしたら俺の発言、だいぶ奪われてるんだが???

 

ーーー新たなルールが加わり、残すところ三枚。どうなる!?

 

第十四戦

まいります。

 

『歩ける。行こう。』

 

 

これだ!!!!

はや!!

 

正解です!!
いやったあああ!!!!!

きいいいいい!!!!!!

 

太宰治『走れメロス』より

勝者:みくのしん

 

こちらは書籍版より

 

メロスの決心に呼応するかのような力強い言葉。
主人公と一心同体だ。

 

さて

残すところ二枚ですが……次で最終決戦です!

え!てことは?

次の勝負を制した人が、二枚ともゲットできます!

一気に2ポイントか……。現時点では俺がリードしてる気がするけど、ここを取られるとそれも怪しくなるな……

ところで肝心の札ですが……

 

どちらも『走れメロス』を読んでいる途中にみくのしんさんが発した言葉です。間違えやすいですので気を付けてくださいね

二択問題ってことだね。よーし、頑張るぞー!

 

第十五戦

まいります。

 

『この佳い人たちと生涯暮して行きたいと願ったが、いまは、自分のからだで、自分のものでは無い。』

 

………え?

 

メロスが自分の村を出発する前のシーンでしょ……? どれだ……???

これは……たぶん……

 

こっちじゃない……!!???

え〜? ここでセリヌンティウスの話してたんだっけ……?

判定は……?

みくのしんさん…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正解です!!

や……やった……!!

そうなの!!??

 

太宰治『走れメロス』より

勝者:かまど

セリヌンティウスを人質に取られた状態で、妹の結婚式に出席したメロス。
本当はもっと彼女たちとずっと一緒にいたい。しかし友の命を救うため、シラクスの市に戻らなければならない。
そんな葛藤を感じながら、このシーンを読む人が多いのではないだろうか。

 

ところがみくのしんは、この一節を読むまでセリヌンティウスのことを忘れていたのだ。
薄情ともとれるが、結婚式を心から楽しんでいたということでもある。

ここまで物語に没入できる人間はそういないのではないか。

結婚式、楽しかったんだよなー!

まるで出席したかのように言いますね

 

ちなみに、もう片方の「……雰囲気変わったね」は以下のシーン

 

 

みくのしんはかなり初期から文章表現を味わっていた

 

結果発表

では、結果発表です!

緊張するなー

最初はリードしてたけど、最後の2枚でどうなったかわからなくなったなぁ

お二人とも、私のかけ声に合わせて、自分が取った札を一枚ずつ場に出してください。

運動会の玉入れ形式だね。懐かしい!

 

 

いち

 

 

にい

 

 

さん

 

 

よん

 

 

ごお

 

 

ろく

 

 

なな

 

 

はち……

 

え……
嘘だろ……?

 

というわけで、8:8で引き分けです!!

 

話ができすぎだろ!!!

 

※まるでヤラセのように見えますが、マジで引き分けでした。

 

その後、改めて確認することに。

 

うわ……マジで引き分けじゃん。どこで奇跡起こしてんだよ

こうして見ると、記事を書くときに流れとか構成を悩んだ箇所は俺が取ってるな

俺が取ったのは、かまどが悩まなかった部分なのか

うん。会話の流れで自然に出た言葉って、そのまま書くしかないでしょ? そういうシーンは結構忘れてるみたいだ

逆に、俺の強い気持ちから出てきた言葉は、俺が一番覚えてるみたいだね

 

祝いは両者に……

では、お祝いのカツ丼は二人で分けていただくことにしましょう

そういえば俺たち、カツ丼をめぐって勝負してたんだった

勝負が白熱しすぎてすっかり忘れてた

でも、ちょうど腹減ってきたから、ここにきてのカツ丼は嬉しいね

そうだな!めちゃくちゃ楽しみ!!

では、存分にお召し上がりください!!私の特製カツ丼です!!

 

 

 

ちょっと大きすぎましたかね?

小さいよ

シルバニアファミリーのまんぷくセットじゃん

 

ーーーこうして二人仲良く大盛カツ丼を食した二人。
きっと新たな歴史を文学界に刻んでくれることであろう。

 

 

告知!!

 

かまど&みくのしんの新著『本が読めない33歳が国語の教科書を読む』は、この記事でも登場した『山月記』の他に3編の新作、そしてラランド・ニシダ氏との特別対談を収録しております。
国語が得意だった方もそうでない方も、ぜひお手に取っていただけましたら幸いです。

それでは……

 

またねー!!