マダムと呼ばれる立場になったら無敵な気がする。
銀杏
秋の終わり頃、地下鉄駅のエレベーターに一緒に乗っていた老婦人に「今日は風が強いわねぇ」と話しかけられました。 あまり会話が得意ではない私ですが、その時は咄嗟に「そうですね、銀杏もたくさん落ちてましたし」と返しました。 「あらそうなの。見てなかったわ」と老婦人が笑いました。
自画自賛ですが、老婦人に対する話題選び・季節性・風流さとどれもとっても美しい返答だったなと、今でもたまに思い返します。無記名
会話の一人反省会はみんな覚えがあるだろうけど、こういう「今の良かったな」みたいな反芻もやった方がいいな。
いい声してるわね
お弁当屋さんでバイトをしていたころ、他店にヘルプで呼ばれ、レジ打ちをしていました。
お昼時、賑わう店内とは裏腹に、私は寝不足でかなりローテンションで接客をしていたところ、まるで和製マダム・トレローニーといった出で立ち(眼鏡はしてなかった)の女性がハンバーグ弁当を7つ注文されたので、オーダーを厨房に通したとき、その女性から「あなたいい声してるわね!声優でもやってらっしゃるの?」 と言われ、突然のことにしどろもどろになりながら「アッ、イエ…」と答えるのが精一杯でした。
その後出来上がったお弁当を渡すときも、 「本当にいい声してるわね!」 などと褒めながら立ち去っていきました。
しかし、眠気が覚めるにつれて、じわじわと嬉しさが湧いてきて、その日は普段よりも気合が入ったのを覚えています。その後その店にヘルプで呼ばれることもなく、バイトを辞めたので、その女性と再び会うことはなかったのですが、今でもカッコつけたいときはそのときのダウナーな声を意識しています。
以来、褒められたことはない。
良い〜。注文まではっきり記憶してるあたり本当に嬉しかったんだろうなというのが伝わってくる。
友達いないんでしょう
中学生の頃、坂道で自転車を押しながら帰宅していたら、前方から犬の散歩をしている中年位の女性がやってきました。挨拶をしたら、「あなたいつも1人で帰ってるのね、友達いないんでしょう」と穏やかな笑顔で言われました。
面食らいながらもヘラヘラしながら「あーはい…」と言いその場を去った後、何で初対面のはずなのに人の帰宅事情を知っているんだ…前会った時あったかな…?と考えたのですが、全く思い当たりませんでした。
あと普通に友達もいなかったので、へこみました。内出血
それに気が付いたとしてもわざわざ直接言わなくていいのにマダム。
青汁の飴
とある夏の日にドラッグストアで買い物をし、バスを待っていたときのことです。
「暑いわね〜」と言いながらゆっくりバス停に来たおばあさん。駅で配ってる美味しい青汁味の飴を貰いに行くところだとお話ししてくれました。
バスに乗ってからも隣に座られたので、たわいもない話が続きました。話し下手な私はひたすら相槌だけを打ちながら、「あそこのお家の旦那さんが亡くなって、あの病院はお医者様がアレで、ここの温泉は…」窓から見えるあれこれについて教えてもらいました。
終点に着き、「ありがとうねぇ、今度あったら青汁の飴あげるからね。これ、私の名前」と突然提示された身分証に驚き、個人情報を凝視しながらのお別れでした。
最寄りのバス停を過ぎてもおばあさんの話を遮れず、終点まで乗ることになっていたのですが、そんな情けなさも許せるような良い時間だったと思います。
昭和18年生まれのウラタさん、駅で配る青汁の飴ってなんだよ〜うんも
出来事全部面白いな。身分証ってそんな名刺みたいな使い方できるんだ。駅で配ってる青汁の飴ってなんだよ……。
怪しくないの!
数年前に両親が一人暮らしの家の近くに遊びにきた際、近所の大きめの神社にお参りに行きました。ですが、神社は改修工事中で、コロナ禍ということもあり、人もまばら。残念な時にきてしまったな、とわざわざ田舎から訪ねてきた両親に申し訳ない気持ちになっていました。
お参りもすませ、どこに行ったら時間を潰せるだろうか? と思いつつ、ふと、参道の脇にある謎のモニュメントをみて「あれ何?」と呟いたら、急に知らないおばさんが話しかけてきました。
「あれは、そうりんとうってゆってね!日本に八つしかないといわれる仏教の…」と、マシンガントークがはじまり、 「わたし!怪しくないの!この神社の案内係やってるの!コロナ禍で、案内の業務、おやすみだから!」といって、バッグから分厚い資料をだして、神社の説明から神仏混合の歴史の話をしてくれました。
どんな疑問にも即座に答えてくださり、 おばちゃん独自の考察もされているようで、わからないことは今も勉強中なのだとお話ししてくださいました。
最後に「この神社には九匹の牛が隠れてるから探して帰って!ぜひ!」と言われました。
おばちゃん曰く、神社の改修工事は滅多にあることではなく、むしろ今来ることができるのは、ラッキーであるとのこと。
あの時のおばちゃんのおかげですごく楽しい1日になりました。ありがたいです。そのあと夕方まで牛探しした。
「怪しくないの!」なんて言う人が本当に怪しくない場合あるんだ……。でもまあ自分が怪しくないことを伝える時って怪しくないのって言うしかないよな。
猫
通勤中、それはそれは長いエスカレーターに乗っていたら、後ろに乗っていた知らないマダムに突然話しかけられました。
その時私は、通勤に使っている鞄に映画「アリス・イン・ワンダーランド」に出てくるチェシャ猫のぬいぐるみをぶら下げていました。
マダムはそのぬいぐるみを見ながら「この子、なんて可愛らしいの!?」と目を輝かせて感激した様子で、私もそう言ってもらえて嬉しかったので「可愛いですよね!ちょっとぶさいくで不気味な笑顔してるけど!」と返したら 「そうなの!そこがいいの!可愛いわよね!」と意気投合。
同僚達からは不気味、可愛くないと不評だったぬいぐるみの良さを見ず知らずの方に分かって貰えてとても嬉しかったです。
そしてエスカレーターの終点間際、マダムの最後の一言が「本当に可愛いわ、そのクマちゃん!」 でした。「この子、猫ちゃんです!」「え、そうなの!?」 そこでお互いエスカレーターを降り、別れました。
それから通勤でマダムに再会した事はありません。幸せの青いチェシャ猫
可愛さの共有だけでも嬉しいのにオチまでついてめちゃめちゃ良い話。「この子、なんて可愛らしいの!?」くらい思ったことを素直に言えると楽しいだろうな。
ドレス
チャリで出かけた日の帰り道のこと。
高級住宅街を走っていたら大きな家の前で綺麗なドレスを着たおばさまに呼び止められた。
私が自転車を止めると、唐突に「お恥ずかしいのだけど、チャックを下まで下ろしてちょうだい。」と背中を向けられた。
私はよくわからないまま言われた通りにした。おばさまはパーティー帰りで着替えようとしたけど、四十肩で背中まで手が伸ばせなかった。旦那様が夜まで帰ってこないから誰か女の子が通るのを家の前で待っていた。と訳を聞いて「どうもありがとうね。」と言われて私はまたチャリを漕いだ。
同性だけどなんだかすごくドキドキした。
忘れられない思い出です。三歩
めちゃめちゃ面白い。人を呼ぶでもなく、気長に誰か通るのを待つって選択がマダムの余裕を感じさせる。
どうせ二度と会わないから弾む会話もある。
静岡
静岡の有名ハンバーグ店さわやかに初めて行った時の話です。愛知の友人を頼って高知からさわやかを食べに行ったんですが、事前の評判もあり、めちゃくちゃ期待しながら食べたら、もう評判通りめちゃくちゃ美味しかったんです!美味しい美味しい、ともぐもぐぱくぱく食べていたら、ふと隣の席からの視線を感じそちらに目線を向けると、食事を終えたらしきおじいさんがこちらを向いていました。
「美味しそうでいい!!!」
とにっこり笑顔で拍手して褒め称えてくれました。帰りに友人に「めっちゃいい人だったね」と言うと「静岡の人ってみんなあんな感じだよ」と冷静に言われてウケました。みんなあんなに感じ良い県最高すぎるだろ。
たべっぷりよしこ
いいな静岡県。拍手まで添えてくれるのはちょっとおめでたすぎるな。
仏教
10年くらい前のことです。民族史の研究家たちの足として、田舎から田舎へドライバーとして同行するバイトをしていました。(これ自体すごく面白かった)
四国のとある道の駅に立ち寄った際、研究家達がミーティングをする2時間くらいの間喫煙所で時間を潰していました。
すると「最近は喫煙者は肩身が狭いやなぁ!!」とデカい声でよく日に焼けたじいちゃんが声をかけてきました。そこから1時間くらいじいちゃんの話を聞いていたのですが、「かつて寺に本格的に弟子入りし、八十八箇所巡礼を正式な手順(金無し、食事は施しのみ、全て徒歩)で行った」ということでかなりスペクタクルな話でした。(見た目普通のじいちゃんだし、今はそういった職業でもなさそうでしたが)
話の最後にじいちゃんは、「『まず己が助かり、そして他も助からんことを祈る』が仏教の根底の思想だって教えてもらったんだよ。兄ちゃんは若いから先が長いけど、是非それは覚えておいてくれな」と言って去っていきました。
昔から知らない人によく話しかけられ、毒にも薬にもならない話を多くされてきましたが、このじいちゃんが与えてくれた教訓だけはすごく腑に落ちて、毎年初詣の際には「まず己が助かり、他も助からんことを祈る」とお祈りしています。
まだ元気かなあじいちゃん※後で調べたところ、確かに「仏教はそもそも開祖した者自身の『助かりたい』という思いがあったことを忘れてはならない」とお話されているお坊さんがいました。
クラムグラム
最終的にお坊さんにならなくても寺生活から自分の生きる指針を得られているのかっこいい……。あと研究者のドライバーのバイト、めちゃめちゃ楽しそう。
帰省
大学生の時、一人暮らしをしていた東京から実家の福岡まで、原付で2日かけて帰った。
姫路では、国道の信号待ちで横につけた軽トラのおっちゃんに、「東京から来たんか!どこ行くんや!」と聞かれた。
「福岡までです」と返したら「そうか!遠いなぁ!頑張れよ!」と励まされ、青信号になった途端に軽トラはゼロヨンみたいなスタートダッシュで去っていった。山口では、長旅の疲れと日差しにやられてコンビニの前で座っている時に、60代くらいのご婦人に「大丈夫?」と話しかけられた。
ご婦人のお孫さんが僕と同世代で、同じく東京の大学に通っているらしい。
少し会話を交わした別れ際、「身体に気をつけてね。これでお茶でも飲んで」と500円玉を渡された。ご婦人がいなくなるのを見計らってタバコとガリガリ君を買った。美味しかった。
スーパーカブ
エピソードも良いけど、東京福岡間が原付で二日で行けるんだってところの驚きが大きい。すごい。
執事
若い頃イギリスで一人旅をしていて、ある公園で夕方たそがれていたら、近くにいた現地人のおじいさんに話しかけられました。
しばらく二人でほんとうにどうでもいいことを話して盛り上がったあと、おじいさんに「自分は小さな事業をやっているんだが、どうだろう、執事としてうちに来ないか」とスカウトされました。
よく見ればおじいさんはかなり身なりが良かったのですが、「執事」というあまりにも耳慣れない言葉にそのときは驚いてお断りしてしまいました。
今思えば、騙されていたとしてもあそこでスカウトを受けた方が人生面白かったかもなあ、と思います。たこす
執事ってそんなルートで雇用するんだ……。次があったらぜひ受けよう。
Slowly walk. Slowly Go!
ベトナムに1人旅行しに行った初日、歩行者信号がない横断歩道をバイクがひっきりなしに走る為、先にいたヨーロッパ系観光客2人と渡れずにいたのですが、それを見かねて、歩道で昼寝をしていたぼったくりバイクタクシーのおじさんが「Slowly walk. Slowly Go!」とジェスチャー混じりでアドバイスをしてくれました。
おじさんのゆっくりめな手拍子に合わせおそるおそる進みだすと、不思議なことに1度も立ち止まることなく渡ることができ、対岸についた思わず瞬間3人で喜び合ったのが今でも記憶に残っています。
みんなもベトナムへ行こう!(ぼったくりタクシーは注意しよう!)
高卒
めちゃめちゃ面白い。手拍子までしてくれるってのがいい。おじさんの中に渡る時のリズムみたいなのがあるんだろうな。体験したいような怖いような。
テンション
ワーキングホリデーでシドニーにいたときのこと。その日は妙に機嫌が良くてフワフワしながら歩いていたのですが、眼の前に大きな虹がかかっていることに気付きテンションがMAXに。
そのまま前を歩いていたご婦人に「ヘイ!!虹がかかってるよ!!見て!!!」とでかい声で話しかけてしまいました。
ご婦人は「そ、そうね〜」くらいの返事で行ってしまいました。なんか変なアジア人に話しかけられた……くらいの雰囲気だったように思います。
驚かせて申し訳ない気持ちになったのと、欧米の人でも急にそういう話しかけられ方をすると引くんだなと、ある意味勉強になりました。
北海道を一人旅行していたときのこと。釧路の湿原を見ながら進むノロッコ号に乗りました。
ボックス席で、私の向かいには老年の御夫婦が着席され、「よかったらどうぞ」とお菓子を頂いたのですが、対人用のスイッチが完全にオフだった私は「あ、どもです……へへ……」くらいの返事しかできず、特には会話になりませんでした。
そして列車は出発、どんどん自然の中に分け入っていき、普段見られない光景に内心ブチ上がっていたところ、通りかかった沢を鹿が駆けていく姿が見えました。 THE北海道というイメージの場面だったので完全にテンションがMAXに振り切れ、この喜びを誰かと共有しなくては!!という使命感に駆られ、眼の前のご婦人に「今!!鹿が!!見ました!?」と話しかけてしまいました。
「あら、そうなんですか?見えなかったわ〜」と、自分の熱量とは全く噛み合わないトーンのお返事で、なんだか急に心がしぼんでしまい、「そうですか……」と返し会話は終了しました。
静かに外を見てた知らん人間から急にテンションMAXで話しかけられて怖い思いをされなかったか、それだけが心配です。ぴっちょむ
多分2エピソードの投稿なんだけど、どちらも旅先でテンションが上がりすぎて空回ってしまった話であまりにも良かったので両方掲載させていただきます。良すぎる。今後も旅のたびにテンション上がって人に話しかけてほしい。
風呂エピソードがいっぱいあったので。
ばあちゃん
15時頃に近くの銭湯行って、どこの洗い場使おうかな〜って浴室を見渡したら銭湯の主みたいなばあちゃんと目が合って「アタシ終わったからここ使いなぁ」って場所を譲ってもらった。
その後風呂上がって外靴に履き替えてたらまたも違うばあちゃんに「お姉ちゃんさっぱりしたねぇ」と話しかけられて、ばあちゃんは近くに銭湯がなくてバスで15分かけてここに通ってること、地震で大変な人もいるのに風呂を使える私たちは幸福だということなどの世間話をして別れた。
昼間の銭湯には話しかけるタイプのばあちゃんが沢山いるんだなと思った。蛇口飲み放題
社交場みたいになってるって話はたまに聞くけど、こんな感じなんだ。銭湯の主みたいなばあちゃんって言葉がいい。
ロッカーキー
小さい頃、父親に連れられ近くの銭湯に行きました。
そこは昔からある小さいながらも伝統的な作りの銭湯で、夕方ごろになると地域のおじちゃんたちもバラバラやってくるような所でした。ロッカーに脱いだ服を入れ、ロッカーキーを腕につけて入浴しました。入ってからしばらくして、腕に巻きつけてあったロッカーキーのゴムが経年劣化で緩んでいたのか、無くなっていることに気がつきました。
その時は父親が先に外に出ていたため、どうしようかと一人オロオロしながら浴槽の中を必死に探していました。
そのうち周りにいたおじちゃんの一人が「どしたの?」と声をかけてくれ、鍵をなくした経緯を話すと、「あ〜、なるほどね、だいじょぶよ」とすごく慣れた手つきで浴槽を探し始め、また探している最中に「風呂潜っちゃいけないことはないよ。潜る必要があったら潜ってもいい。」と何か含ませたようなセリフを言いつつ、最終的には鍵を見つけてくれました。結構パニックだったこともあり、呆然としてあまりお礼が言えなかったのですが、おじちゃんの格好良さの印象はいまだに残っています。銭湯という一番無防備な時に助けていただき、ありがとうございました。
cAPSLOCK
たしかにマナー的にはダメだけど、潜らないとどうしようもない時は潜ってもいいのかもしれない。読んでいてかなりハッとした。
恋バナ
一人旅にハマっていた大学生の頃の話です。安い宿を取り、大浴場でお風呂に入っていたところ、後からやってきたおばさまに突然話しかけられ、なぜか恋バナをすることになりました。
当時私は医学科生の先輩と遠距離恋愛をしていたため、それを伝えたところ「あなたすごくきれいだから、どこかのお嬢様だろうと思ったの! お医者様と結婚するのね!」とやたら盛り上がっていました。
それからお風呂を出て着替えて髪を乾かして大浴場を後にするまで、おばさまは「幸せになってね」と何度も何度も言ってくれました。私の何が彼女にそんなにハマったのか分かりませんが、とっても良い思い出です。(ちなみにその1年後その男の人に二股かけられて別れました)かに座
そんな経緯で恋バナが始まることあるんだ。このおばさま物語の中に生きてる感じがして楽しそう。
湿布
40代独身女性です。
大阪の下町に引っ越したのですが、引っ越し先の近くに銭湯があったので行ってみたら、脱衣場で知らないおばあさんに「ちょっとあんた湿布貼ってんか(貼ってくれないか)」と言われました。
一瞬自分が呼ばれたと思わなかったのですが、脱衣場にはその方と私しかいない。戸惑いつつも貼ってあげました。
「これが大阪か〜」と感心しました。ジャッキー
「大阪は人情の街」って話を聞くたびにまたまた大袈裟なと思ってたけど、こういう話を聞くとマジかもしれんと思えるな。他人に話しかけるハードルが異常に低い街かも。(人に湿布貼ってあげるの本当は医療行為にあたるのでダメってゾンビランドサガで言ってたけど、まあ)