生まれて初めて香港に行ったら、勢い余って広東語を勉強したくなった。

行く前は正直「香港ってどうせ都会だし東京の2Pカラーみたいな街だろうな」とめちゃくちゃ失礼なイメージを持っていたのだが……結果、大間違いだった。

ぎちぎちに肩を寄せあう超高層住宅、ありえない頻度で行きかう二階建てバスとトラム、口に合いすぎる美食の数々――。圧倒的なパワーと、むせ返るほどの異国情緒に、すっかり魅了されてしまった。

 

何かを好きになったら、骨の髄までしゃぶりたくなってしまうのが人間というもの……。

 

というわけで、香港の公用語・広東語を勉強してみることにした。

 

広東語(かんとんご)って?

 

一般的に、日本で「中国語」と言うと「北京語」or「普通語」を指す。「ニーハオ」とか「謝謝」とか、みんなにお馴染みのあれだ。

翻って広東語」とは、香港、シンガポール、マカオなどで話されている言語で、文法や単語はある程度似てはいるものの、結構違う。らしい。

筆者は北京語も広東語もまったく知らない。そのため、この時点では「まあ北京語まったく知らんけど、広東語から勉強してもなんとかなるだろ!」と高を括っていた。これが、のちに大きな間違いだと分かることになる。

 

ちなみに北京語の話者数が、世界で9億人超。多すぎ。

広東語はというと、8千万人ほど。十分立派な数字だが、10倍以上の差がある。

そしてこの差が、広東語学習を決定的に難しくしている

 

広東語学習のハードル その1:教材があんまりない

何かを勉強しようと思ったら、まずは大きめな本屋に行くだろう。筆者もそうした。

まずは教科書やドリル、辞書などを買おうと都内の大型書店を訪れたのだが、そこで一つ目のハードルにぶつかる。

※実際に見た本棚のイメージ

中国語(北京語)は、教本、辞書、資格試験の対策本などがたっぷり三棚も使って陳列されているのに、広東語の本は7冊しか置いていなかった。寿司桶のガリぐらいの存在感。しかも辞書などの類はなく「はじめての広東語」というような本が7冊だ。

調べてみたところ、実際に広東語の教本はあまり出版されていないらしい。

とりあえずそこから1冊を購入した。

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この本だけ学習音源がWebで聞けるというのが選んだ決め手だ。これ以外はすべてCD付だった。PCにCDドライブを繋ぎ、CDを読み込ませ、iTunesとかに取り込み、スマホに移して……という過程を想像しただけで面倒くささに発狂してしまいそうだったので、Webで聞けるのは非常にありがたい。

 

広東語勉強のハードル その2:資格試験がない

この記事は当初、「1ヵ月広東語を本気で勉強し、広東語検定みたいなのを最後に受ける」という企画にする予定だった。

しかし、ここで誤算が1つ。広東語検定、ない。

広東語検定に限らず、英語でいうTOEICみたいなものがないか方々調べたが、どうやら日本で手軽に受けられるものは存在しないようだった。

マズい、このままでは着地点がないふわふわした記事になってしまう……。

しかし現時点では有効な目標を見つけることができず、とりあえずは走りながら着地点を探すことにした。

 

というわけで以下は、1か月間の勉強の記録である。

最後には日本で食べられる美味しい香港料理も紹介しているので、ぜひ最後までお付き合いください。

 

1週目

Day1~2:発音、難しすぎワロタ

はい、いきなり「ワロタ」とか言ってすみません。

でも仕方ない。だってワロタのだから……。

購入したテキスト『新・広東語レッスン初級』を開いてみると、まずは発音の練習から始まるようだった。そこで早速、広東語の最大の特徴である「声調」に出会う。

【声調(せいちょう)とは……】

音の高さや、上がり下がりの変化で、言葉の意味を区別するものだよ! 広東語には一般的に、6声調があるとされているよ!

……ん?

6声調???????

 

つまりこういうことだ。

同じ「フー」と読む言葉だけでも、6通りの言い方があり、6通りの意味がある。

※発音はすべて「fuu」なのに、声調次第で全く別の意味になる

 

いやいやいや、唯一の下がる音である第4声調はまだしも、第1と第3と第6や、第2と第5あたりは同じ音で高さが違うだけじゃない? 声の高さって人によって違うから、「”富”(3)のつもりで言ったのに声低すぎて”父”(6)だと思われた」みたいなことない? そこからアンジャッシュばりのすれ違いコント始まらない??? 大丈夫?何言ってるかわかる????

 

これだけでも十分難しいが、さらに子音と母音も日本語より多い

たとえば、日本語で言う「ん」と「っ」はそれぞれ3つずつある。マジで? マジで。

「ん」の発音

n… 「カンヌ」って言うときの「ン」
ng… 「あんこ」って言うときの「ん」
m… 「ランプ」って言うときの「ン」

「っ」の発音

k… 「ラッキー」って言うときの「ッ」
t… 「ラッタ」もしくは「コラッタ」って言うときの「ッ」
p… 「ラップ」って言うときの「ッ」

※アルファベット部分は、テキスト内での発音記号を引用。

どうだろうか。実際に発音してみると、それぞれ口の形や舌の位置が微妙に違うはずだ。日本語では同じ字を当てているこれらの音を、広東語では正確に書き分け、聞き分け、読み分ける。らしい。

 

これは、大変なものに手を付けてしまったかもしれないぞ……。

 

それでもと、二日かけて「聞く」⇒「真似して声に出す」を繰り返し続けた。

「フー(1)、フー(2)、フー(3)」だの「ハー(4)、ハー(5)、ハー(6)」だのとブツブツとつぶやき続け、多少口が慣れてきた。

まだマスターするには程遠いが、いつまでもフーフーハーハー言っていても仕方ないので、次のステップに進むことにする。

次は声調を踏まえて、文章を読む。

最初の例文:

我係日本人。(ngoo5 hai6 yat6 buun2 yan4)

訳: 私は日本人です。

ええと……ん? だから、ええと……「我」は第5声調だからンゴー⤴️で、「係」は第6声調だからハイ➡️で、「日」は第6声調で、「本」は第2声調で、「人」は第4声調でわあああああああああああああああああ

え?マジで?? たった5文字話すだけで頭がこんがらがりそうなんだけど??? 香港の人ってみんなこれちゃんと意識して喋ってんの??? そんなわけないよね??

「そんなわけないよ」

良かったーーーー!!!! だよねだよね! そんなわけないよね!!

 

ちょっと1文読んだだけで、脳みそが危険信号を出してきた。ここで一回、テキストを閉じさせてください。テキストを、閉じさせて、ください。

 

Day3~5: アプリで勉強してみんとす

一度テキストを離れてアプリで勉強してみることにした。ちょうどこの日からは移動する予定が多かったのも理由の1つだ。

言語学習と聞いて真っ先に浮かぶのは「Duolingo」だが、残念ながら広東語は非対応だった。

そこでインストールしたアプリが2つ。

まず1つ目がこれ。「nemo Cantonese」。アプリストアで「広東語」で検索したら真っ先に出て来た。無料。

UIは至ってシンプルで、まずは英語で単語が表示され、数秒後に広東語に訳した単語が出てくる。「YESは……広東語では係(ハイ)だな」と、その数秒の間に思い出すことで記憶に定着させるわけだ。これを、無限に繰り返す。

人間の脳の忘却曲線に寄り添うように同じ単語を絶妙なタイミングで何度も出してくれるので、これをやっているだけで基礎的な語彙が身に着きそうだ。

そしてもう1つがこれ。

「広東語 アプリ おすすめ」でGoogle検索し真っ先に出て来たものを入れてみた。課金制で月額2,200円。まあまあ高い。まあまあ高い金額を払うと、それだけで勉強した気になってしまうので危険だ。

このアプリ、『ling』はレッスン式になっていて、そのレッスンのテーマに沿った単語を例文を使った問題を解きながら覚えていく仕組みだ。

読む&聞く(=インプット)だけだとなかなか身に着かないが、問題を解く(=アウトプット)が加わるだけでグンと手ごたえが上がる。学校でひたすらドリルを解かされたのも意味があったんだなぁ。

 

当面はこの2つのアプリで単語やフレーズをどんどん覚えていくことにする。文法はテキストを進めないことには何もわからないが、一旦は知ってる単語を増やすだけでも意味があるはずだ。

問題の「声調」については、一旦深く考えないことにした。とにかく「聞こえた通りに言ってみる」を愚直にやっていくことにする。

 

平日の通勤時間は、すべてアプリに当てることにした。往復でlingのレッスンをちょうど1単元こなせるからだ。我ながら偉い。

 

Day6~7: 詳しい人に聞く。着地点が決まる

 

このタイミングで、FMブルー湘南のラジオ番組『ささゆかのヨコスカトリコロール化計画』にゲスト出演させてもらうことになった。

(※そのときの音源はSpotifyなどで聞けるので、興味と時間があったら是非聞いてみてください)

聞けば、ナビゲーターを務める佐々木裕華さんは香港通で、広東語学習者とのこと。せっかくなので、収録後に広東語の勉強方法を聞いたり、この記事の着地点をどうしようかの相談をしたりしてみることにした。

佐々木裕華さん:通称ささゆかさん。ラジオパーソナリティ、コラムニストとして幅広く活躍中。自身も熱狂的なサポーターである横浜F・マリノスの魅力を伝えるラジオ『ささゆかのヨコスカトリコロール化計画』を毎週日曜FMブルー湘南にて放送中。

香港がきっかけで広東語を勉強してくれてるなんて、嬉しいです!

(筆者) 完全に香港側の物言い! そもそも、ささゆかさんが広東語の勉強を始めたきっかけはなんだったんですか?

両親が香港通で、実は私の名前も「裕華国貨」っていう香港の百貨店から取ってるぐらいなんですよ。それで香港に通ってるうちにだんだん友達が増えたりもして、彼らと話せるようになりたくて勉強し始めました。

動機が強いですね! 勉強を始めてどれくらいなんですか?

コロナ禍から始めたので、2~3年くらいですかね。ゆるゆるやってるので、やっと少しずつ聞き取れたり、文字を見て意味がわかるようになったりしてきました。

聞き取り、難しすぎませんか? 6声調に絶望してるんですけど……。

わかります!!

とにかく音を聞くのが大切なので、テキストだけで勉強するのはあんまり意味ないかもしれません。アプリとか、YouTubeとかを活用するのがいいですね。

なるほど。アプリはオススメありますか?

私はこのあたりを使ってますよ。

あ! 真ん中のやつ使ってます! 正しい道を歩んでたようで安心しました! ほかの2つも落としてみよう。

あとは、YouTuberなら、スラング先生CatOnKneesさんLingmukさんあたりがオススメです。学習用の動画は探せばたくさん出てきますよ。

香港在住の日本人YouTuber。このあとこの人の動画をめちゃくちゃ観た。

音が大事となると、実際に話してみるアウトプットの機会も大事ですよね。そういった部分はどうしてますか?

首都圏にも本格的な香港料理屋が増えてきてるので、店主の方と仲良くなって話してみるのもいいですよ。私は横浜の綱島にあった八十港って店によく行ってたんですけど、今休業中なんですよね……。(※著者注:撮影時時点。2024年5月、東京麻布十番に移転して営業再開)

なるほど、都内の香港料理店に行って、広東語で注文してみたらいいかもしれませんね。記事の落としどころにもなりそう。

いいですね! 面白いと思います!

ちなみに僕のモチベーションを上げるために聞きたいんですけど「広東語勉強しててよかったなぁ」と感じる瞬間とかってありますか?

香港旅行で、ホテルのスタッフさんに「広東語を勉強してるの」って言ったら抱き着いて大喜びしてくれたことがあったんです。デモとか、コロナとか、香港がいろいろと難しい時期のあとだったのもあって熱烈に喜んでくれたと思うんですが、そのときの彼女の顔を見たら「ずっと勉強を続けていこう」って強く思いました。

良い話だ……。外国人が日本語勉強してたら我々も嬉しいですしね。

あとは広東語に限らずなのですが、話す言語によって自分の性格が変わるような感覚があって、香港に行くと感じるあのエネルギーをトレースしながら世界を見られる気がするんです。 広東語を話している時の自分は日本語を話す時よりもアグレッシブで人懐っこくなる感じが結構好きです。

外国語学ぶと、そうやって世界の解像度が上がるのがいいですよね。モチベーション上がってきました、頑張ってみようと思います!

よかったです!

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その翌日、東京・飯田橋にある香港料理店、香港贊記茶餐廳(チャンキー チャーチャンテン)に赴き、3週間後の取材許可を得ることができた。

というわけで、ここからこの記事の目的「香港料理を広東語でバシッと注文できるようになる!」というところに置くことにする。

ただ、注文で使う広東語だけを丸暗記するのでは面白くないので、その日までに最大限の広東語を頭に詰め込んでいこうと思う。

 

2週目

Day8~11: 「書く」がすごい

テキストだけでは意味ない、と言いつつも、基礎的な文法は理解することに越したことはないはず。

というわけでここからは、付属の音声を聞きながらテキストをゴリゴリ進めつつ、もらったアドバイスを参考にアプリやYouTubeで補完していくことにした。

 

さすがに2週目ともなれば6声調にもだんだんと慣れてきて、初見の文章でも発音記号を見ながらならある程度はそれっぽく読めるようになってきた。

テキストの第一課(十四課まである)を終えたところで、基本的な疑問形や否定形、そのほか細かい表現がだいたいわかってきて、このあたりで謎の万能感に包まれるようになる。

あーはいはい、「你哋係唔係都係中國人呀?」と来たら、疑問形で「都」が「too」みたいな感じだから「あなたたちは全員中国人ですか?」だな。わかったわかった、完全に理解した。

じゃあ、サクッと第二課もやっちゃいますか。

 

ええと、第二課は……はいはい、こういうね…………あー…………うん、なーんもわからん。

 

急に知らない単語いっぱい出てくるし、知らない文法モリモリだし……。謎の万能感は、ページ1枚めくっただけで吹き飛んでしまった。

 

しばらくそうやって進めていくと、どうやら語学学習はこれの繰り返しだなと改めて気付くことになる。

「広東語の方は、だいたい覚えた (キリッ)」「何が何だかわからない……」の無限ループ。万能感と絶望感のまったく整わない交互浴。

 

そんな一進一退のなかでも、「これは良かったな~」という勉強方法が2つあるので紹介したい。

 

1つ目が「書く」ということ。

何をいまさらと思われるかもしれないが、タイピングなどではなくノートにペンで文字を書くと、情報が頭に入る量が段違いに多い。ように思う。

テキストには各課に「この日本語を広東語に訳してみよう!」という練習問題が付いていて、その答えをノートに書くと、今までもやもやとしか認識していなかったフレーズが脳内でめきめきと実像を結んでいく。

小中学校でやらされてた漢字練習とか、正直「手の体操でしかないし無駄だなぁ」と思っていたのだが、「書く」は、意外と馬鹿にできない。皆さんも二度と馬鹿にしないでほしい。

 

もう1つが、アプリとテキストの二毛作にしたことだ。

アプリは語彙が増えるが文法の解説はしてくれないので、自然と類推するようになる。「あ、この”個”は多分英語でいう冠詞っぽいな~」「”私は美しい”みたいな形容詞文はBe動詞いらないんだなぁ」といった具合である。

それが後からテキストで出てくると、初見ではない分、スッと頭に入ってくる。「あ、これアプリでやったやつだ!」というセルフ進研ゼミ現象が起こるわけだ。

語彙面でも、テキスト・アプリ両方で出てくる頻出単語は「大事なんだな」と直感的にわかって良い。

 

Day12~14: サボり始める

そんなアプリを、ついにサボり始めました。

 

「通勤電車では絶対アプリをやる」の誓いを立ててたんだけどね~~~~~~。

誓いを破るまでにかかった日数は、わずか10日ほどでした。検証結果:人は誓いを10日で破る。

「今日は飲み会で遅くなったからTwitterを見ていい」とか「1日やらなくても翌日2倍やればいい(やらない)」とか、少し気を抜くと自分で無限に特例を作って、自分を許してしまう。

電車でアプリをやらないだけに留まらず、ついにはテキストを開かない日も出てきてしまった。「そういう日は、YouTube動画で広東語を勉強すればOK」という新たなルールを作って切り抜けた(切り抜けてない)。

果たしてこんなペースで大丈夫なのか………?

 

3週目

Day15~18: やり方を変えてみる

相変わらず、テキストとアプリの二毛作を続けている。

テキストは第五課まで進んだ。「我唔鍾意佢男朋友(私は彼女のボーイフレンドを好きではない)とか「我唔想返工(私は会社へ行きたくありません)とか実用的なフレーズが言えるようになってきた。

ただ、第四課に出てきた数量詞で一度心が折れた。

日本語で言う「一回」「二回」の「回」のような、モノを数えるための助数詞にあたるものだ。

少し紹介しよう。

数量詞:

個(goo3)……一番よく使うもの。人、リンゴ、腕時計などを数える。

うん、まあわかる。

枝(jii1)……細長いものを数えるときに使う。ボールペン、ビール瓶、ろうそくなど。

はいはい、日本語の「一本」的なね。

帳(jeung1)……表面が平らなものを数える。写真、紙、イスなど。

イス? イスって平らかな? まあ平らなのかな? 広東語圏ではそうだったのかな?

條(tiiu4)……魚、ズボン、橋、縄、川などを数えるときに使う。

ん? 何括り? あるなしクイズの「なし」側?

 

これでほんの一部で、テキストに載ってるだけでもめちゃくちゃある。そして法則がいまいち掴めない。

まあ流石にテキスト側としても「これを一日二日で覚えろ」とは思っていないはずなのだが、この難しさを前に「楽しいな」を「面倒だな」が若干上回ってしまった。

テキストのボリューム自体も増えてきており、「1日1課やれば2週間でテキスト完走できる」と思っていたが、Day15にしてまだ第五課である。牛の歩み。

 

ここでカンフル剤にすべく、少し新しい風を吹かせてみることにした。

 

ラングエッジ・エクスチェンジだ。

直訳すれば「言語交換」。日本語に興味がある香港人をつかまえて「私は日本語を教えるから、あなたは広東語を教えてくださいね」とやるわけだ。

調べたら、このラングエッジ・エクスチェンジ用のアプリがあった。

tandemというアプリで、無料でだいたいの機能を使える。

勉強したい言語、話せる言語を登録して、あとは需要と供給がマッチングすれば、外国人とチャットや電話ができるというものだ。見た目が完全にマッチングアプリなので妻にホーム画面を見られると気まずい、ということを除けば、かなり使えるアプリだと思う。(会員登録するときに公式から「出会い目的で使うなよ」と3回くらい言われた)

プロフィールを設定。マッチングアプリみがすごい。ちなみに、今回は短期決戦でマッチングするために課金した。ザッピング画面で優先的に表示されたりするらしい。年間4,700円。やはりお金を払うと、それだけで何かをやった気になってしまって危険だ。

課金の甲斐もあってか、翌日に大阪在住の香港人・オリバーさんと知り合うことができた。

 

Day19~21: オリバーさんとの通話で己の現在地を知る

オリバーさんとは、その日のうちに通話をすることになった。日本に来て9か月という彼は、すでに日本語ペラペラ。すごすぎる。

こんばんは~! 日本語の勉強したかったので、話せてうれしいです!

同じくです! 早速ですが、ちょっと僕の広東語の発音を聞いてもらってもいいですか

もちろんです!

ええと…… 你住唔住大阪呀?(大阪に住んでますか?) ……伝わります?

伝わります、伝わります! でも実際はそういう時に「住」はあんまり使わないですね。代わりに「喺(ある・いる)を使います。

良い……! そういう「生の広東語知識」みたいなやつもっと欲しいです! 例えば、「你好(ネイホウ)」って言わないって本当ですか?

言わないですねえ。教科書では「こんにちは」=「你好」って習うかもしれませんが、香港人はほとんど言わないです。

実際は、なんて言うんですか?

ふつうに「ハロー」ですね。あと、「ありがとう」は「多謝」「唔該」よりも「サンキュー」が多いです。

この記事を読んでいる皆さんに朗報です。香港はハローとサンキューでやっていけます。

 

その後、いくつかフレーズを話してみたが、通じるものもあれば通じないものもあった。発音以前に、とっさに正しい声調がどうだったか思い出せなくなるのが致命的だった。やはり短期間の勉強なので、まだ全然体になじんでいない。

オリバーさんからもらったアドバイス:

・まずは声調を正確に言えるようにしつつ、もっと語彙を増やしてみるのがいいと思う

・リスニングは、アニメを広東語で観るのがおすすめ。好きなもので勉強するのが一番いい。

・広東語は、北京語ほど強く抑揚をつけない。広東語学習者はそこを間違えがち。

身になるアドバイス、ありがとうございます!

ちなみに加味條さんは、北京語は話せますか?

いえ、まったく。

ええええっ! それは随分チャレンジャーですね。あえて例えるなら、日本語を知らずに沖縄方言を学ぶみたいなものですよ!

そうなんですか!? やりながら薄々、気付いてはいましたが……。

行き詰ったら北京語を勉強してみるのもありかもしれませんね。頑張ってください!

===========

その後、いっちょ前に日本語のアドバイスなどをし、通話を終えた。日本語なんていくらでも教えられるだろうと思っていたが、いざ「ファミチキ買うときの一番自然な言い方ってなんですか?」と聞かれると難しい。

オリバーさんと話して、結構勉強したつもりでも咄嗟に言いたいことが全然出てこないし、発音や声調もまだまだ全然ダメだという自分の現在地がわかった。

あと1週間で、どこまで伸ばせるか……。

 

4週目

Day22~29: 結局は復習 & 追い込み

この時点で、テキストの新しい項目を読んでも、何も頭に入ってこない状態になっていた。

おそらく短期間に詰め込み過ぎて、情報を新たに注いでもすべてこぼれ出てしまっているようだ。

※イメージ

どっちみち、あと1週間しかないので、これ以上は新規単元には取り組まずに、復習を頑張ることにした。

学校でもやたら復習しろと言われて「復習は何も生まないってよく聞くけどなぁ」などと思っていたが、まさか自分から進んで復習をする日が来るとは。

 

それ以外にも、オリバーさんに聞いた通りアニメも観てみてみようと思う。使うのは、みんな大好きNetflixだ。

Netflixの言語別検索機能を使って、広東語吹き替えがあるアニメ作品をソートしてみた。かなりの作品数を広東語で視聴できる。さすがNetflix。

とりあえず、子供向けアニメの『パウ・パトロール』を広東語吹き替えで視聴してみることにした。1話観て「水(seoi2)」しか聞き取れなかった。

 

その後も、テキストを見直したり、アプリをやったり、YouTube動画を観たりし……

あっという間に、最後の日が来た。

 

Day30 香港贊記茶餐廳へ

飯田橋にやってきた。

今日お邪魔するお店は、こちらの香港贊記茶餐廳

茶餐廳(チャーチャンテン)とは喫茶店とファミレスの合いの子みたいな業態の店で、香港では牛丼屋ぐらいあちこちにある。ちなみに牛丼屋(すき家)もあちこちにある。

ただ筆者は「好きか嫌いか」でしか食べ物の味を語れないバカ舌なので、食レポ要員としてこの人にも来てもらった。

オモコロ副編集長の、みくのしんさんだ。

みくのしん:香港料理は全くの初見プレイ。

早速入店。

あらためて今日の目標は、香港出身の店員さんに、広東語で注文をしてみることだ。

今日は、僕が現地で食べておいしかったものを、みくのしんさんにも是非食べてほしいなと思います!

すごく楽しみ! 香港料理って何があるのか、あんまりわからないんだよね。

せっかくなので、何を食べるかは料理が出てきてのお楽しみにしましょうか。

 

そして、いよいよ注文の時……。果たして、付け焼刃の広東語は通じるのか――?

※ここからは、あえて日本語訳は載せないので、何を注文しているか想像してみてください!

唔該! 點嘢吖。

你有冇雲吞麵呀?

雲吞麺? 一碗呀?

係呀、要一碗呀。同埋、我要一個西多士呀。

花生醬? 定係咖吔?

花生醬呀。我要兩個蛋撻、同兩杯奶茶呀。

凍奶茶呀?

唔係、熱奶茶呀。唔該晒! ……注文完了です!

すげーっ! 今のバッチリ通じました?

大丈夫ですよ! ちゃんとわかりました。

良かったー! 実際に喋るのは初めてなのでめっちゃ緊張しました。だいぶカタコトだったけど……。 

指さして「これ!」とかじゃなかったもんね。すごいわ!

じゃあ、料理を待ちましょうか。

 

数分後、頼んだものが到着! まずはこれだ。

ええと、これは……。

ワンタン麺です!「そんなん日本にもあるじゃん」って思うかもしれないですけど全然違うんですよ。

そうなの? 見た目は普通そうだけど……。じゃあ早速いただきます!

んん! 何これ、うまい!! 麵がすごく独特な食感だ……! 細くてプチプチしてて、それでいてコシがあって。

そうなんですよ、エビワンタンも是非一緒に。

ワンタンもうめー! なんだろう、ゴマ油が効いてる感じ? めっちゃ芳ばしい

全体的に、日本で食べる一般的なワンタン麺と全然違いますよね。正直、ワンタン麵ってラーメン界ではTier4くらいじゃないですか。

なんてこと言うんだ。ちょっとわかるけど!

ただ現地でこれ食べて美味しすぎて、すっかりハマってしまいました。余裕のTier1。

いや、これはうますぎるよ。もっとあちこちで食べられるようになるべき。

続いて出て来たのがこれ。

これは、「奶茶(ナイチャ)」こと香港式ミルクティーですね。

有名なんだ?

香港の代表的な飲み物らしいです。なぜか毎回このカップで来ます。

あ、おいしい! 甘くないんだ!

苦味というか、茶葉の風味がしっかりしますよね。そんな奶茶と一緒に食べたい料理が来ましたよ!

これ、なんだかわかります?

ええ、なんだろう。……厚揚げ?

違います、これは西多士 (サイドーシー) と言って、香港式のフレンチトーストなんです。バターとシロップががっつり染み込んでいて、中にはピーナッツバターまで入ってます。

カロリーやばそっ!

これはすごい……っ! 噛むとバターとピーナッツバターが口の中でジュワーってなる!

からのちょっと苦いミルクティー! 合うなぁ!

最後はエッグタルト。香港の定番デザートだ。

これ有名なの?

名物と言ってもいいんじゃないでしょうか? 街中のあちこちで売ってるのを見ました。

なんて言えばいいんだろう……卵味です。

エッグタルトだからね。

いや思ってるより卵というか、見た目から想像するより卵なんですよ。

「卵」しか言ってねーじゃん!

めっちゃ卵じゃん。

ですよね! 

生地からバターの香りがしっかりするなぁ。甘さはすごく控えめなんだね。

ちょっと遠くに塩気もあって……系統的には、茶碗蒸しとかに近いのかも。

これを摘まみながらミルクティーを飲む、と。このティータイムめっちゃいいじゃん!

あっという間に完食。

香港料理、食べてみてどうでした?

めちゃくちゃうまかった! 中でもワンタン麵がすごく良かったなぁ。あれが本場の味なんでしょ?

香港で食べたまんまでしたね。

それ嬉しくない? 海外旅行の楽しかった思い出を、そのまま東京でまた楽しめるわけじゃん。

あとは加味條さんが広東語で喋ってたから、海外旅行した気分も味わえたわ。

お店の雰囲気も、海外っぽいですからね。

楽しかったから、また次の記事では別の言葉を覚えてもらって、別の国の料理を出す店に行きましょう! 

絶対嫌です。負荷が高すぎるんで。

というわけで、広東語での注文は成功! 1ヵ月勉強してみた結果としては「飲食店で注文できる程度にはなる」ということでした。

 

 

……なーんちゃって。

はい、まずは皆さんに謝罪からです。めっちゃ嘘つきました。

 

第4週、実はめっちゃサボってました。

復習をガンガンやって正しい発音を……なんて言ってたけど、実際にはテキストをパラっと見ただけ。その証拠に、毎日勉強した内容をメモっていた日誌があるんですが、1週目がこの量(↓)に対し……

↑ 1週目の日記

4週目はこう。

↑ 4週目

ひどい。Day26以降は日誌をつけることすら諦めている。

いや……言い訳させてもらうと……副業のいろいろな締め切りとか被っちゃって……いや、ちがうな……単純にモチベーションが枯れていた。1ヵ月走って、明確に息切れしていた。

テキストを見直したり、アプリをやったり、YouTube動画を観たりし……

なんてことも書いてたけど、嘘。テキストはパラっと見ただけ。アプリもチラッと見ただけ。YouTubeも……まあYouTubeはボーっとしてれば観られるから観た。

Netflixで『パウ・パトロール』を1話観て、「水」しか聞き取れなかったのだけが本当。殺してくれ。

 

じゃあ実際に第4週に何をやってたかと言うと、注文で使えそうなフレーズの丸暗記でした。最悪それだけやっとけば記事の形にはなるかなと思って……。

 

1ヵ月、広東語を勉強してみてわかったこと

というわけで最後に、あらためてこの1ヵ月を振り返ってみようと思う。

 

言語学習はなんだかんだ楽しい

まあ、最後こそ息切れしてしまったとはいえ、未知の言語を学ぶのは楽しかった。

ささゆかさんとの話の中でも出ていたが、言語を学ぶと世界への解像度が上がる。まだほんの少ししか学べていないが、それでも次に香港に行ったら、入ってくる情報量が爆増しているはずだ。

知らない世界を知り、異なる考え方に触れる機会として、言語学習は楽しい。

 

外国人の日本語にリスペクト

オリバーさんも含め、日本語を学ぼうとしている外国人、実際に学んでいる外国人へのリスペクトの念がより一層増した。

同じ漢字を共有している日本語と広東語ですら、勉強するのはこれほど難しいのだ。その大きなハードルを越えた人、越えようとしている人は、みんなすごい。

香港の飲食店で「トッピング」という日本語が「トシピソグ」になってるのを見てケタケタ笑ってしまったが、もう笑えない。筆者が日本語学習者だったら「トッピングもトシピソグも一緒や!ええ加減にせい!!」と思うだろうから。

 

1か月でやるもんじゃない

元も子もないことを言えば、言語学習は1ヵ月でどうこうしようというものではない。

年月をかけて、頭にその言語を馴染ませていくプロセスが必要だ。

それに1ヵ月は、「一夜漬け」のように無酸素運動で走り抜けるには逆に長い。筆者が勉強苦手なだけ、と言われればぐうの音も出ないが、完全にガス欠してしまったのは大きな反省点だ。

 

広東語の勉強自体は、今後も続けていきたい。

ただ、筆者には「香港で働きたい」や、「香港人のあの人とツーカーになりたい」といったような明確な目標があるわけではないので、まあきっとゆるゆるとした道のりになることだろう。(今回は「記事」という強い動機があったが……これが終わると、どうだろう)

 

……といった、なんともフワッとした展望とともに、この記事を締めさせていただく。

 

最後に、1個だけ。

香港贊記茶餐廳に行ったあと、飯田橋駅から東京メトロ南北線に乗ると……

ホームが香港MTRみたいで香港に来た気分が味わえておトクです。

 

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。

(終)

 

撮影に協力いただいた香港贊記茶餐廳の公式サイトはこちら!

https://chankichachanten-iidabashi.jp/

 

(↓画像ギャラリーもあります)